この情熱にダウンは要らない!『Won
der Festival 2024 [冬]』実録レポー
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やって来ました、世界最大級の造形・フィギュアの祭典『Wonder Festival 2024 [冬]』である。

幕張メッセ 入場口付近
夏の初潜入からおよそ半年。前回は右も左も分からず圧倒されっぱなしだったけれど、“にどめまして”の今回はもう、何も怖くない。ガレキがガレージキットの略だって分かっているし、この祭りに集まるのが造形を愛する強敵(とも)たちであることも分かっているし、なんなら前回以来、フィギュア好きに拍車がかかっているくらいだ。この心と足取りに迷いなんて無い!

会場風景
なんて考えてたら、初手から思いっきり迷った。ワ、ワンフェス分かった気になってすみませんでした!
祝40周年だよ! 強敵集合

『我が造形に一片の悔い無し展』 C)武論尊・原哲夫/コアミックス 1983
まず目指したのは、『北斗の拳』40周年を記念した特別企画『我が造形に一片の悔い無し展』のコーナーだ。堂々たるケンシロウ像が説明不要のオーラを醸し出している。
MAマン《北斗の拳 ラオウ 胸像》 C)武論尊・原哲夫/コアミックス 1983
話題のペイントアーティスト兼YouTuber、MAマンの塗装作品を初めて生で見て大興奮。これが独自の塗装テク“3D二次元彩色”である。二次元のマンガを三次元作品に落とし込んだモノを、あえて二次元っぽくデフォルメした陰影で仕上げる……という脳がバグりそうな手法だ。トゲトゲの兜や、血管の浮き出た左手が特にドラマチックなので注目を。
ハッヒホッタ屋《汚物は消毒》 C)武論尊・原哲夫/コアミックス 1983
ここでは他にも「北斗の拳」を愛する個人作家や企業による作品を多数見ることができる。ケンシロウやラオウはもちろん、「汚物は消毒だ〜!」のモブキャラや「でかいババァ」など名脇役たちのフィギュアも登場しているのが楽しい。
展示風景 C)武論尊・原哲夫/コアミックス 1983
ジャギとケンシロウを撮影していたら、不意に隣にいた小さい子が「パパに似てるー!」と声をあげて衝撃を受けた。
どっちが? いや、どっちにしたってどんなパパ? 恐る恐るちらっと振り返ると、優しそうなお父さん(中肉中背)が「おいおい」と微笑んでいた。なるほど、少年にとってお父さんはケンシロウみたいな強くてかっこいい存在なのかな……? なんて想像してほっこりしてしまった。

ジャギさん!

ちなみに、後ほどコスプレゾーンにて再現度の高〜いジャギさんを発見。もしかしてこちらのジャギさんのお子さんでしたか?

企業ブースで癖がダダ漏れ
ワンフェスは国際展示場の1〜8ホールを使って開催される。まずはそのうちの7〜8ホールを占める、企業ブースを見てみよう。人気アニメやゲームの新作フィギュアが多く展示されている、心躍るエリアだ。

バーンバーンバンバーンバーンバンバンバン バン! のテーマ曲が聞こえるとつい足を止めずにはいられない。
展示風景
TVアニメ『勇気爆発バーンブレイバーン』の凛々しいフィギュアの展示には多くの人が集まっていた。「イサミーーッ!」などの名言吹き出しアクリルスタンドが併せて展示されているのも憎い。

膨大なコンテンツを前に、同行の編集部員氏に「何をどこまで撮ったらいいか分からない……」と弱音を吐いたところ「自分の好きなものを撮ればいい」と言ってもらえたので、ほっと一安心。それでは早速、筆者の好きなフリーレン様を二連発でどうぞ!
展示風景

展示風景 ※他にもまだまだ撮ったけれど、記事が大長編になってしまうので自重します。
自分好みついでに、実は事前にXでチェックしていた『NieR:Automata』のアイテムを鑑賞するべく、「TAKUMI ARMORY」のブースへ。同ゲームのアニメ化の際に企業依頼によって製作されたという、原寸大の随行支援ユニット「ポッド042」+武器「白の契約」「白の約定」が、今回のワンフェスで特別展示されるというのだ。
TAKUMI ARMORY《白の契約》、《ポッド042》
おー! 実際に見てみると、意外と大きい。お話を聞いてみると、ポッドは公式資料に基づいて忠実にビジュアルを再現しているだけでなく、設定には無い機構部分まで補って、リアルにアームや指の関節が可動するそう。どうりで説得力も存在感も想像以上なワケである。同工房では、依頼を受けて製作したモノの“直し(リテイク)”が入ったことがないのが自慢だそうだ。つねに依頼人の想像を超える仕事だなんて……うらやましい。見習いたい。

一般ディーラーの闇鍋へダイブ〜運命のゴジラを探して〜
続いて、1〜6ホールを埋め尽くす一般ディーラー(個人製作者)のエリアへ。アニメあり特撮ありオリジナルキャラクターあり、ドールもジオラマも工芸品も何でもありの闇鍋である。造形という名の鍋にさえ入れば、ワンフェスって本当に幅広い作品を受け入れて美味しく煮込んでいるのだな、としみじみ思う。
人気個人ディーラーの「グリズリーパンダ」のブースにて
取材班2名は散策する上で、“かっこいいゴジラを見つけること”をミッションとして掲げてみた。ああ会場内にゴジラは数えきれないくらいいるけれど、運命のゴジラには出会えるだろうか。
「DRAGON★ROAD」のブースにて

やがて、ビビッときたのが「DRAGON★ROAD」のブースで見つけたこちらのゴジラだ。躍動感のあるポーズが印象的で、溢れ出す昂りというか、滾っているというか……ゴジラを謳歌している感じがする。作家さんに素敵なポーズですね、と伝えると「(資料となる3枚ほどの画像を)舐めるように見ましたもん!」と嬉しそうに語ってくれた。製作期間は1ヶ月ほどと勢いを持って作り上げたそうで、それも何だか納得。熱いうちに打ちまくった鉄の匂いがする。
「四畳半工房」のブースにて
と思えば、「四畳半工房」のゴジラにも心を掴まれる。己の力と責任をグッと引き受けているというか……ストイックにゴジラやってる感じがする。作り手さんに苦労したポイントを聞いてみたところ、荒々しい皮膚のテクスチャーに特にこだわったという。塗装担当さんからは、なかなか色が奥まで入らない、との悲鳴が上がったそうだ。なるほど、あまたの断末魔の声が刻み込まれた感じのこの皮膚はそうして出来ていたのか。
「ススキガレージ」のブースにて
ゴジラでなくスペースゴジラではあるが、「ススキガレージ」のブースで出会ったこの華麗な姿にも目を奪われた。特に、背中に生えたクリスタルの付け根みたいな部分がカッコいい。こんな綺麗なゴジラがいるんですね! と作家さんに話しかけてみたところ、曰く一般的なスペースゴジラとは「全然違います(笑)」とのこと。気になって後で検索してみたら、本当に全然違っていてびっくりした。作り手のイメージを膨らませる力ってすごい。

〜例外的にお触りOK! 蛾ですけど〜

「すいか屋」のブースにて
ゴジラばかりだと不公平(?)なのでモスラも。取材班は二人とも虫が大の苦手なのだが、「すいかクラブ」のモスラは素通りすることができず、思わずシャッターを切った。羽や眼の色彩もさることながら、細部まで作り込まれたフワフワ感こそがこの作品のチャームポイントだ。
繊細なフワフワは、3Dプリンターではなく粘土で造形しているそう
隣には彩色前の真っ白い同モスラが。質感を直に触って確かめてもらいたい、との思いから並べてディスプレイしているのだそうだ。「ぜひ触ってみてくださいね」と笑顔で差し出してもらったのだが、なかなか気持ち悪くて触れない。塗装前のこの状態でも、自分の脳は頑にコレを巨大な蛾だと認識し続けていた。ついに触れた瞬間の辛そうな顔は、造形への最高の賛辞として受け取ってもらえただろう。

お口直しのコスプレコーナー

「原神」の綺良々ちゃん
ホールから出たコスプレフリーゾーンは、可愛い&カッコいいコスプレを披露する参加者と、それを撮影する人とで大賑わいだった。夏と違って、比較的ロボットものなどのダイナミックな被り物のコスプレイヤーさんが多い印象を受けたのは、やっぱり気温がロボ向きだからだろうか? 
パトレイバー!
他のコスプレイベントではNGとされている、長いモノ・大きなモノの持込みが許可されているのも、ワンフェスならではの見どころだ。

再び挑戦! 塗装体験タイム
さて、ここでお楽しみ「体験コーナー」についてのレポートを。会場内には塗装やジオラマ作り、粘土造形を体験できるプログラムが用意されている。中には、著名な講師のレクチャーを受けられるチャンスということで早々に満員御礼となっているものもあった。
筆者が挑戦したのは塗装体験の中の「てぶくろぼっと」をつくろう! というもの。材料やツールは全て揃っており、造形に詳しいスタッフさんたちからアドバイスをもらいながら進められるので、初心者でも安心だ。
塗料の薄め具合を尋ねてみたら「うーん、ゆるいマヨネーズくらい?」とのこと。ははーん。

前回の塗装体験では、ワンフェスオリジナルキャラの「キットくん」を制限時間ギリギリまでかけて塗装した挙句、黒目が大きくなりすぎてちょっと微妙な可愛らしさになってしまった……というビタースウィートな思い出が残った。だから正直に告白すると……もう一度ワンフェスの取材に行ける、と決まってから、すでに筆者はリベンジのためのイメトレを始めていたのだ。もう迷わない! 大切なのは“どうなりたいか”というイメージだ!
それにしても、緊張して指先の力の入り具合が半端じゃない。
本媒体「SPICE」にちなんで、唐辛子の模様を入れよう♡ 震える手を動かしていると、「柄を入れるのは上級者ですね〜、よくできていますよ」と見回りしているスタッフさんが声を掛けてくれた。

うれしい。もっと頑張りたい。
そこから勢いづいて、冗談のように塗装が加速した。やっぱり自分も、作り手さんにはできるだけ積極的に感動を伝えよう、と心に誓い直すのだった。
そしてボディパーツの塗装を終えたら、鬼門である顔のパーツへ。浅く刻まれたガイド溝に沿って、マーカーで目・口のラインを引いていく。ふたつのパーツを合体させたら、トップコートをシュパーッと吹きかけて、乾燥機にIN! である。今回は、顔が描けた瞬間から確かな手応えがあった。
「あっ、きました。今回はイケる気がします!」
そして数分後……
テーン……

にっ、滲んだぁーーーっ(泣)!!

乾き切る前に擦ってしまったのか、右目に黒い涙が……ごめんよ……ツメが甘くて……
またしても落ち込む筆者を、スタッフさんたちが励ましてくれた。「時間がある時に、ちょっと手直ししてみてください」「簡単にできますので」。なるほど、作品との対話をどこで終わらせるかは自分次第で、絶対的な終わりというものは無い。俺たちの闘いはまだまだここからだ!
※ちなみに翌日、滲んだ部分を爪楊枝で削ったら割と可愛くなりました。
体験コーナー風景

一緒に体験していた人の中には、おひとり様の若い女性もいてちょっと意外だった。お話を聞いてみると、ディーラーの友達を尋ねて来てみたものの、フィギュアの世界をどう楽しんだらいいかわからなかったので、取っ掛かりとして体験コーナーに来たんです〜、とのこと。「難しいけど面白かったですね」と言うお姉さんの持つ紙袋には、お友達の店で買ったというガレキが。今後、自分でもガレキ作りに挑戦するのだそうだ。あまりに美しいストーリーに、つい(フェス運営さんの仕込んだエキストラの方なのでは?)と疑ってしまったが、お姉さんは「違います(笑)」と微笑み、再び祭りの中へダイブしていった。

造形の宝箱☆ワンダーショウケース

会場風景 右手にワンダーショウケース
塗装体験に夢中になっていたら、TVアニメ『勇気爆発バーンブレイバーン』のステージを見そびれてしまった。無念……次のTVアニメ『ダンジョン飯』のステージにもかなり惹かれたが、どうしても行きたい場所がもう1ヶ所あるので心を決める。

ワンフェスが選出する新進気鋭の推しアーティスト紹介コーナー、「ワンダーショウケース」である。今回選ばれた3名のアーティストの作品の中でも、とりわけ印象的だった《三平くんと魚紳さん》の作者、芳雛氏のブースにお邪魔して、まずは感動を伝えた。

芳雛《三平くんと魚紳さん》
バレリーナのようにしなやかで軽い身体、あどけない目鼻立ちやピンと立った指先など、キュートさ満点の三平くん。『釣りキチ三平』の三平くんが大好きだという作者が、その思いのたけをぶつけたラブレターのような作品である。“好きだから、つくる”というのはモノづくりの原点で、純度も強度もそれだけ高い。
芳雛《「少年つりトップ」より トップ君》 こっちも可愛い!
ボディのダイナミックな反り・ねじれを表現する上で、デジタルの仕上がりと自分の感覚に齟齬があり、出来上がったものに手を加えて、作り直して……を繰り返したという芳雛氏。うっすら見える三平くんのおへそは譲れないこだわりだったようで、実際の漫画では描かれていないものの「ええ、心の眼で見ました」と力強く語ってくれた。
肌色を求めて、ぶらり散歩〜まさかの漁獲〜

さあいろいろ巡って、取材もひと段落。けれどレポートの絵面として何かがちょっと物足りないような気がする……それはきっと、エロだ。もう小さじ一杯の肌色を求めて、しばらく歩いて回ることにした。成人向けゾーンは残念ながら記事に載せられないので通り過ぎ、一般ディーラーのゾーンを進んでいく。すると……
「音波屋」のブースにて 見栄えより重力を優先した、リアルな構図のインパクトがすごい。

こ、これは! 商品サンプルにグチャっと体を突っ込んだ、コスプレ(?)キューピーたちだ。肌色っちゃ肌色だけど、これは今求めているエロでは無い……そう知りつつも、引力に負けて吸い寄せられてしまった。作家さんにおすすめアイテムを尋ねると「うーん、こちらの牡蠣はやっぱり、胆いりですね」と示してくれた。我々は大人なので「牡蠣だけにね」のひと言は心にとどめて微笑みあった。
ポン酢と紅葉おろしの生牡蠣ストラップ、購入しました。晩酌のおつまみにします。
「エロだって言ったのに、ガチ牡蠣買っちゃってすみません」
「いいんですよ」
取材班の肌色探しは、そこから更にしばらく続くのだった。

〜大きいことはいいことだ〜

「フジヤマサンカク」のブースにて
例えば「フジヤマサンカク」のブースにおわした、ホロライブのマリン船長とか……どうでしょう。敢えてグラビアチックに斜めに煽って撮ってみた。
顔、ちっさ!
「Sasaki Workshops」のブースでは、なんと原寸大のトキ(『ブルーアーカイブ』の人気キャラ、しかもバニーガール衣装)のフィギュアと一緒に記念撮影ができるという特別企画が。せっかくなので順番待ちの列に並んで、夢のランデブーを実現してみた。
「Sasaki Workshops」のブースにて、原寸大トキと撮影中
いざ隣に並んでみると、原寸大だけに実在感が漂い、カメラを構えるのに少し緊張する。彼女がもしこちらを見ていたら、なかなか胸にフォーカスは当てられなかっただろうな、なんて思った。

冬の祭りにダウンは要らない
滞在およそ5時間。二度目の参戦となったワンフェスで何より感動したのは、作り手たちの熱い目線だ。これまで造形ですごいのは“手”だと思っていたけれど、“目”もすごい。対象をまずはよく見ること、そして表現を補ったり強化するため、自分なりの心の眼で見ること。それは、ほぼほぼ恋することと同義である。
沢山のフリーレンを見た中でのマイベストは、くまさんだー氏によるこちら。ドライフラワーとの組み合わせが最強にエモーショナル。

『ワンダーフェスティバル2024冬』の会場内は、冬の寒さを忘れさせる温かさで、心地いい温度だった。それは人の多さではなく、場にいる一人一人の熱さに原因があるのだと思う。やりたいことをやっている人しかいないからこそ、多分あの場所にいる人たちの血は街をゆく人たちより何℃か熱い。だから冬のワンフェスに行くなら、分厚いダウンコートは不要なのかもしれない……通路を歩くときに邪魔だし!

まだまだ計り知れない奥深さを抱いたワンダーフェスティバル、次回は2024年7月28日(日)に開催予定。また次回は【ゴジラ70周年✕海洋堂60周年】を記念し、東宝特撮ワンフェスを開催すると発表されている。
また行きたいかと聞かれたら、やっぱり答えは盛大にYES! である。
文・写真=小杉 美香、写真(一部)=林 信行

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