ヴァイオリニスト堀内優里、神秘的な
バルトークと華麗なヴァイオリン曲の
連なり~デビューリサイタルに向けて
思いを語る

ヴァイオリニスト・堀内優里。テレビ朝日・題名のない音楽会の「題名プロ塾」からデビュー後、ソロや室内楽、また様々なジャンルで活動してきた彼女にとって、初となる大規模リサイタルが、2024年1月7日(日)、東京・浜離宮朝日ホールで開催される。
「輝きのはじまり」という副題が付けられた今回のリサイタル。そのメインとなるのはバルトークのヴァイオリンソナタ第1番。ハンガリーの作曲家で、伝統的なクラシック音楽に加えて祖国の民俗音楽の語法を吸収し、独自の語法を確立したバルトーク。晩年は、大戦の影響からアメリカへと渡ったが、祖国・ハンガリー、そしてその民族音楽への思いは絶えることがなかったという。
その彼のソナタ第1番を中心に組まれた今回のプログラム。その曲目への思い、そして今後の活動について聞いた。
堀内優里
ーー本格的なデビューリサイタルの今回の公演、メインにバルトークのヴァイオリンソナタ第1番を据えられるのは、なかなかない選曲に思えます。
バルトークは中学生の頃から好きな作曲家なんです。初めて聞いたのはヴァイオリン協奏曲だったのですが、音楽の独自の和声感や、神秘的な要素に魅力を感じて好きになりました。大学院でも晩年・アメリカ時代のバルトークを研究対象にしていました。
好きになって以来、ヴァイオリンソナタ第1番はいつか演奏会で演奏したい、とずっと思っていた曲でした。
ヴァイオリンソナタ第1番は、全体を通してすごく色彩感の強い曲で、特に第2楽章はトランス状態に入っていくような、バルトークの強い神秘性を感じます。最後の第3楽章は、まさに彼が研究していた伝統的な民族音楽のようなメロディで始まります。
バルトークがまだ40歳ごろと元気だった時期の作品で、アメリカ時代のバルトークの方が有名な曲は多いと思うのですが、音楽への熱意という点ではこの曲の方がより強く、溢れるほどのものを感じます。
あと、この曲は普通のヴァイオリンソナタのように、ヴァイオリンが主役でピアノが伴奏、という立場ではなくて、互いに強烈な主張がないと演奏できない曲だとも思います。やりたいと思っても、ピアニストの方に簡単にOKをいただけるような曲ではないと思いますし……そういう意味では、今回のリサイタルで バルトークの研究でも有名なジョルジュ・ナードル氏にハンガリーで学ばれた長富彩さんと、この曲をご一緒できることがとても楽しみです。
堀内優里
ーーバルトークを中心とされたプログラム、サラサーテやラヴェルといった、民族音楽を強く取り入れた作品も演奏されますね。
曲目はこだわりを持って決めました。前半がバルトーク中心に重たい曲が多いので、後半では、民俗音楽の要素が強いという意味ではバルトークと関係がありつつも、やはり新年ということもありますし、​お客様に耳馴染みもあるような華やかな曲を、と思って選曲しました。
ラヴェルのツィガーヌは、バルトークのソナタ1番と同じ、ハンガリー出身の女性ヴァイオリニスト・イェリー・ダラーニに捧げられている曲です。前半のテンポが遅い、ヴァイオリン独奏の部分の「ラッサン」はアドリブ的で民俗的な要素が強く出ている技巧的な部分として楽しんでいただきたいです。
サラサーテは、そのラヴェルと同じイベリア半島のバスク地方の出身で、ヴァイオリンの超絶技巧も勿論ですが、民俗的な要素の強い作品も多く残した作曲家です。
「バスク奇想曲」は、まさにその彼のルーツのバスク地方の舞曲が起源にある曲です。前半は舞曲「ソルツィーコ」のリズムで、奇想曲というタイトルにふさわしいような気ままな雰囲気、後半はより舞曲の要素が強く出て、踊り出したくなるような雰囲気がある曲です。「序奏とタランテラ」は、ヴァイオリニストだったサラサーテらしい、ヴァイオリンの超絶技巧が最大限発揮されている曲で、お客様にも楽しんでいただける作品かと思います。
1月7日開催『堀内優里 デビューリサイタル』曲目
ーーもう1曲、ヴィターリのシャコンヌを選ばれたのはどういう理由でしたか?
ヴィターリのシャコンヌだけ少し選曲の理由が違っていて、私の師匠である藤原浜雄先生が、以前リサイタルの1曲目で演奏されていた曲で、その時の演奏が本当にかっこよかったのです。それ以来、私もいつかリサイタルをする時には、最初にこの曲を弾きたい、と思っていた曲で、今回のプログラムの最初の曲に選ばせてもらいました。
短い主題の変奏曲ですが、その主題がどんどん大きく広がっていく、ひとつの壮大なドキュメンタリーを見ているような曲だと思っています。
ーー今回共演される長富彩さんの印象はいかがですか?
私よりも音楽経験も、人生経験もすごく豊かにある方だと思っているので、リハーサルも重ねる中で本当にいろいろなことを学びながら、一緒に音楽を作って、コンサートを作っていけたら良いな、と思っています。
また長富さんの先生がバルトークの研究家としても著名な方で、今回バルトークを演奏するにあたって『絶対任せられる!』と思って嬉しく思っています。長富さんのバルトークはまだお聞きしたことはないんですけど、今からどんな風になるのかとても楽しみです。
ーーデビューリサイタルとなる本公演ですが、今後の活動についてお聞かせください。
ジャンルレスに活動していきたいと思っています。
音楽って、今こそジャンルがいろいろ分けられていますけど、音楽の成り立ちっていうのは全部一緒なんだということを強く思っていて、私が色んなことに興味があるタイプというのもありますけど、どんなジャンルでも全部できたら良いな、って思っています。
クラシックも勿論ですし、今も沢山出させていただいているポップスなら、いつか「堀内優里ストリングス」として、いろいろなアーティストさんに自分の音を欲しい、と思ってもらえるようにヴァイオリンを続けたいと思っています。またジャズも興味があって、ステファン・グラッペリというヴァイオリニストがすごく好きでよく聞いているのですが、いつかちゃんと勉強できたら、と思ったり。
そしてクラシックなら、本当に夢という感じではあるんですが……バルトークはヴァイオリン協奏曲2曲に加えて、ヴィオラ協奏曲も未完でしたが書いています。私はこれまでヴィオラもカルテットなどで長く続けてきたので、いつかバルトークが残したその3曲を演奏して、CDが作れたら、と思っています。
ーーまさにその夢に向かう序章としてのデビューリサイタルでのバルトークとなりそうですね。最後にお客様にメッセージをいただけますか?
2024年が始まってすぐのコンサートを、浜離宮朝日ホールという、素晴らしい素敵な舞台で、デビューリサイタルという形で演奏できることを本当に光栄に思っています。
特にこの数年、いろいろな世界情勢の変化もあって​、自分がいる環境に凄く感謝することが増えました。デビューリサイタルとなる今回の公演も、自分の音楽をお客様と共有できることそのものに感謝しながら演奏できればと思っています。ぜひ皆様にいらしていただけたらと思います。
堀内優里
堀内優里 プロフィール
第2回Kグランプリコンクール2位(最高位)、第1回ジェラール プーレ ヴァイオリンコンクール第3位受賞。
第42回霧島国際音楽祭賞、またトリオ・スペラとして音楽監督賞受賞。
2021年にはテレビ朝日「題名のない音楽会」プロジェクト「題名プロ塾」にてプロデビュー。これまでに東京交響楽団、札幌交響楽団と共演。またポローニア・クァルテットのメンバー(ヴィオラ)としても活動し、サントリーホール室内楽アカデミー第6期修了。
これまでにヴァイオリンを塩貝みつる、澤菜穂子の各氏に師事。現在、ヴァイオリンを藤原浜雄氏に師事。ヴィオラを磯村和英氏に師事。桐朋学園大学大学院修士課程2年在学中。

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