L→R 桑田佳祐、松任谷由実

L→R 桑田佳祐、松任谷由実

【桑田佳祐&松任谷由実
リコメンド】
桑田佳祐とユーミンとの夢のコラボが
2023年に蘇った意味と背景とは?

多くの日本の人たちが知る
スタンダードナンバーに

 楽曲の基本構造に変化はないままに新たにレコーディングされた今回の「2023」。世界観は1986年から変わっていないものの、長年第一線を走り続けてきたミュージシャンならではの遊び心が付け加えられている。そこは桑田(あるいはサザン)、ユーミン、それぞれのファンのみならず、今回のリスナーのお楽しみ、聴きどころだろう。中盤、「もろびとこぞりて」のメロディーに続く《Un uh… あなたへの/Un uh… プレゼント》のあと、桑田がユーミンの「恋人がサンタクロース」を、ユーミンが桑田の「波乗りジョニー」を、そして桑田とユーミンで「ルージュの伝言」のフレーズを歌っている。「波乗りジョニー」と「恋人がサンタクロース」とで“SURF&SNOW”というのも洒落ているし、サザンでもKUWATA BANDでもなく桑田ソロナンバーというのも粋だ。「ルージュの伝言」に関しては、2018年の『NHK紅白歌合戦』でユーミンと共演したことを自身のラジオ番組で振り返った桑田が“チュッと来たね、ルージュの伝言が”と語っていたというから、その辺が関係しているのかもしれない。ちなみにその『紅白』での桑田とユーミンとの共演は件の『メリー・クリスマス・ショー』以来のことだったという。いずれにしてもキャリアならではの余裕が感じられるところだし、それぞれの楽曲が──「Kissin’ Christmas (クリスマスだからじゃない)」が初めて発表された37年前から考えれば、多くの日本の人たちが知るスタンダードナンバーになったことを軽く誇示しているようにも思える。桑田とユーミンは確実に日本の音楽シーンを変革してきた。そんなプライドも垣間見える。そんな気もする。

 世界はもちろんのこと、日本国内を見渡しても《これから何処に向かって進んでるのか/時々わからなくて哀しいけど》というのは37年前と変わらない──いや、さらに先が見えなくなっている感覚もある2023年現在。それでも、「Kissin’ Christmas (クリスマスだからじゃない) 2023」は《きっと大丈夫だよね今夜の瞳/新しい日を夢で変えてゆける》と続けている。音楽の力があれば世の中はきっと“互いに歩み寄り、穏やかに対話する”方向へ進んでいくはず。そんな想いが込められ、売上の一部をセーブ・ザ・チルドレンに寄付することを表明することで、より具体的に行動に移している点も忘れてはならない。37年振りに蘇った桑田佳祐松任谷由実とのコラボレーションは、そんな前向きな提言を、改めて我々に教えてくれているようだ。

文:帆苅智之

■「Kissin’ Christmas (クリスマスだからじゃない) 2023」スペシャルサイト
https://southernallstars.jp/feature/special-kc2023-southernallstars
■サザンオールスターズ オフィシャルHP
https://southernallstars.jp/
■松任谷由実 オフィシャルHP
https://yuming.co.jp/
シングル「Kissin’ Christmas (クリスマスだからじゃない) 2023」デジタル:2023年11月27日リリース CD:2023年12月20日発売 アナログ(7inch):2024年2月14日発売 タイシタレーベル
    • 【CD】
    • VICL-38800/¥1,100(税込)
    • 【アナログ(7inch)】
    • VIKL-30120/¥1,650(税込)
桑田佳祐 プロフィール

言わずと知れたサザンオールスターズのヴォーカリスト。78年、シングル「勝手にシンドバッド」でデビュー。ハイテンションなラテン系のサウンド・アレンジに、早口でまくしたてるハチャメチャなヴォーカル。——かなり過激で衝撃的な登場だった。
ソロ活動に関しては、88年の『Keisuke Kuwata』を皮切りとし94年までに3枚のアルバムをリリースしているが、それ以外でも、計画的なものからゲリラ的なものまでバンドを離れての活動はかなり多様だ。
まず96年に、夷撫悶汰(いぶもんた)と称し<Act Against AIDS>のイベントに参加。40〜60年代のスタンダード・ジャズの名曲を演奏し、これを97年にビデオでリリースした。81年には嘉門雄三、二度目は嘉門雄三&VICTOR WHEELSと名乗り、斉藤誠らと渋谷EggManにおいて洋楽のカヴァーでゲリラ・ライヴを敢行。
更に86年、「いつかデタラメのロックをやってみたかった」という桑田の想いから、河内淳一らと平均年齢32歳のKUWATA BANDを結成。シングル4枚とアルバム『NIPPON NO ROCK BAND』をリリースしている。また、桑田と小林武史を核にした音楽集団SUPER CHIMPANZEEで91年に、60〜70年代の洋楽の名曲をライヴ演奏。95年にはチャリティ・シングル「奇跡の地球(ほし)」でMr.Childrenの桜井和寿と共演した。
近年では、本人出演のコカ・コーラのCMで流れる「波乗りジョニー」をソロ・シングルとして01年7月にリリース。——「TSUNAMI」などのヒットでサザンもその健在ぶりを大いにアピールしたが、01年後半からはソロに重点をおいた活動を展開していく。まず、同じくコカ・コーラCMソングに起用された「白い恋人達」が当然のごとくビッグ・ヒット。02年には、異色のブルージー・ナンバー「東京」、アルバム『ROCK AND ROLL HERO』、ベスト盤『TOP OF THE POPS』をリリース。作品の素晴らしさはもはや言及するまでもないが、セールス的にもことごとく大きな成功を収めた。サザンオールスターズ オフィシャルHP(ファン)
サザンオールスターズ オフィシャルHP(アーティスト)
Wikipedia

松任谷由実 プロフィール

今なお日本のポップ・シーンでトップの地位に君臨しつづける女王・松任谷由実、通称ユーミン。73年に荒井由実として『ひこうき雲』でデビューを果たす。細野晴臣率いるキャラメル・ママの都会的センスに溢れたバッキングと彼女のリッチでファッショナブルな世界観は、歌謡曲/四畳半風フォーク一色だったポップ界に新たな価値観を呈示した。また76年に松任谷正隆(キャラメル・ママ〜ティン・パン・アレイ)と結婚したことにより強力なブレーンを得た彼女は二人三脚での活動を開始し、より大衆的なポップスの名曲を創りだしていく。
80年代に入ると、時代をリードする先導者としてミリオン・セラーを連発、若いカップルの恋愛、ライフスタイル——サーフィン、スキーなどをテーマにしたユーミン・ブランドを確立。OL層を中心にファッション、恋愛の教祖として熱狂的な支持を得た。90年代に入ってもその勢いは衰えず、ワールド・ミュージックやエスニック風味を取り入れるなどの新境地を見出し、ラテン・テイストの「真夏の夜の夢」、アルバム『カトマンドゥ』が大ヒットを記録する。
 豪華なステージ・セットやゴージャスなサウンド・プロダクションに目を奪われがちな彼女だが、すぐにメロディを口ずさめる楽曲こそが、メガ・ヒットの要因であり、かつ最大の魅力であるといえよう。松任谷由実 オフィシャルHP(アーティスト)
松任谷由実 オフィシャルHP(レーベル)
スタッフオフィシャルTwitter
松任谷由実 オフィシャルFacebook
松任谷由実 オフィシャルYouTube
Wikipedia
オフィシャルファンクラブTwitter

「Kissin’ Christmas
(クリスマスだからじゃない) 2023」
[Official Audio]

OKMusic編集部

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