ドレスコーズ

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【ドレスコーズ インタビュー】
僕は懐かしい感覚になるものとして
音楽をとらえている

今回のアルバムは、
一番ドメスティックな感じなのかなと

アルバムタイトルの“式日散花”は「式日」から来ていると思いますが、“さんか”は“散花”の他に“讃歌”のニュアンスも含んでいる印象がしました。どんな想いを込めてこのタイトルにしたんでしょうか?

まず“式日”という言葉がなんとなく自分の中ではテーマとして初めからあったんですけど、他にも候補はありました。前作の『戀愛大全』と対になるようなタイトルを考えた場合、やっぱり四字熟語がいいなぁということでいろいろ考えたんですよ。“大全”に合わせて次は“白書”にしようかなと考えたこともあったんですが、四文字の“◯◯白書”となると“幽遊白書”に勝てる気がしないなぁとか(笑)。そうやっていろいろと悩んでいるうちに、ふと“散花”と閃いて。これは日本人の感覚なのか、お別れを花が散るさまで例えるという。このタイトルはきれいな響きだなぁと。

“白書”と言えばアメリカンニューシネマの『いちご白書』もありますが、ああいうやるせない物語みたいなムードも今作の全体に感じます。

アメリカンニューシネマは60年代の終わりに若者たちが熱狂的に掲げた理想みたいなものが旧世代の力に組み伏せられて失敗に終わり、大きな挫折を味わった世代による映画ですよね。まさにおっしゃるとおり、そういった挫折感や虚しさといったものはこのアルバムのテーマと共通しています。“若者の理想が時代を変えられるかもしれない”という動きが、現実の前に敗れてしまったあの時代の映画や音楽には、好きなものがたくさんあるので。

あと、先ほど「襲撃」のサウンドに関して80'sの香りがすると言いましたが、「在東京少年」もそうですね。あの頃のUK的なダンサブルなロックサウンドです。

これはもろにRoxy Musicですね(笑)。「在東京少年」はこのアルバムの中でやや異色の曲かもしれません。今までの自分の作品にはよくあるタイプの曲だと思いますけど、今回のアルバムはとてもドメスティックな印象の曲がほとんどなので。幼い頃に知らず知らずのうちに聴いていた音楽の影響が、とても強く出ています。

ドメスティックという点ですと、「メルシー、メルシー」の湿度を感じるメロディーも、そういうテイストを感じます。

こういうメロディーは日本人好みのものですよね。でも、The Beatlesの「ミッシェル」のように非常にイギリス的とも言える気もしますけど。雨に濡れた歩道、ロンドンの霧に煙る風景なんかを想起させるような。そこになぜか郷愁を感じるんですよね。

“郷愁を誘う”“懐かしい感覚になる”も、今作を言い表すキーワードだと思います。

僕はずっと音楽をそういうものとしてとらえているんじゃないですかね。子供の頃からThe Beatlesや親が好んで聴いていた音楽に、なぜか懐かしさを感じていたので。今でもすごく覚えているのが…幼稚園の頃、何気なく触ったオルゴールから「エリーゼのために」が流れたんです。その時、あるはずのない記憶が脳裏にパッと浮かんで。ヨーロッパ風の駅舎のようなところで西洋人の女の子とかくれんぼしている記憶なんですけど、僕は未だにそれが前世の記憶じゃないかと思っていて(笑)。その懐かしさに、胸が締めつけられるようなたまらない気持ちになったんですね。なので、子供の頃の僕にとって“音楽を聴く”という行為は、郷愁を味わうための行為でした。7、8歳の子供なのにThe Beatlesを聴きながら、“あぁ、懐かしいねぇ”って言っていましたから(笑)。

(笑)。そういう原体験が現在の志磨さんにとっても大きいということですね。

はい。だから、僕は斬新で聴いたこともないような音楽というのは、今までもこれからも作らないでしょうね、たぶん。そういうものとして音楽をすごく偏愛しているので。

『式日散花』は志磨さんの音楽に対する根源的体験が反映されている作品でもあるということですね。全体の構成としては9曲目の「式日」までが本編で、10曲目の「ドレミ」はボーナストラックですが、カーテンコールみたいなイメージですかね?

素敵な言い方で…ありがとうございます(笑)。おっしゃるとおり、カーテンコールですね。

《ドント・レット・ミー・ダウン》って言われてみれば“ドレミ”だなと。そういう面白さもある曲でした。

ええ、駄洒落です(笑)。こういうのは得意です。

映画『零落』主題歌として書き下ろしたので、本編とは別の位置づけにしたんですね?

そうですね。

『式日散花』はMVを手がけた山戸結希監督、ジャケットを描いた不吉霊二さんとコラボレーションを重ねることができた作品でもありますね。

はい。アルバムのテーマを深く理解して、この作品に新たなインスピレーションを与えてくださった、とても心強い共作者のおふたりです。4人のバンドメンバーに加えて、おふたりもこのアルバムの共作者ですね。

10月から全国ツアーが始まりますが、どのような想いがありますか?

楽しみですね。まだ何も考えていませんが(笑)。当日を迎えるまでには、何か良いアイディアが浮かんでいると思います。まず僕がある程度大まかな流れを考えて、それをもとにメンバーと一緒に作り上げていくことになるはずです。リリース直後の新曲をお客さんが口ずさんでくれるのは、いつも不思議な気持ちです。ついこないだまで僕の頭の中にあったものが、他の人の口から聞こえるとびっくりします。“あぁ、いつの間にか僕だけのものではなくなったんだなぁ”という不思議な感覚ですね。

取材:田中 大

アルバム『式日散花』2023年9月13日発売 EVIL LINE RECORDS
    • 【初回限定盤】(CD+Blu-ray)
    • KIZC-90731~2
    • ¥7,480(税込)
    • 【初回限定盤】(CD+Blu-ray)
    • KIZC-90731~2
    • ¥7,480(税込)

ライヴ情報

『the dresscodesTOUR 2023』
10/09(月) 宮城・SENDAI CLUB JUNK BOX
10/13(金) 福岡・BEAT STATION
10/14(土) 岡山・YEBISU YA PRO
10/21(土) 愛知・名古屋CLUB QUATTRO
10/22(日) 大阪・心斎橋BIG CAT
10/28(土) 北海道・札幌cube garden
10/31(火) 東京・Zepp DiverCity(TOKYO)

ドレスコーズ プロフィール

2003年「毛皮のマリーズ」結成。日本のロックンロール・ムーブメントを牽引し、2011年、日本武道館公演をもって解散。翌2012年「ドレスコーズ」結成。2014年以降は、ライヴやレコーディングのたびにメンバーが入れ替わる流動的なバンドとして活動中。8thアルバム『戀愛大全』(2022年)、LIVE Blu-ray & DVD『ドレスコーズの味園ユニバース』(2023年)が発売中。9thアルバムが2023年9月13日に発売予定。秋にはアルバムをひっさげたツアーも開催予定。近年は菅田将暉やももいろクローバーZ、上坂すみれ、PUFFY、KOHHといった幅広いジャンルのアーティストとのコラボレーションも行なっている。音楽監督として『三文オペラ』(2018年 ブレヒト原作・KAATほか)『海王星』(2021年 寺山修司原作・PARCO劇場ほか)などに参加。俳優として映画『溺れるナイフ』Netflixドラマ『今際の国のアリスSeason2』などに出演。映画『零落』(2023年 浅野いにお原作・竹中直人監督)では初のサウンドトラックを担当。現在は東京新聞にてコラムも連載中。ドレスコーズ オフィシャルHP

「式日」Teaser Movie

「襲撃」MV

「少年セゾン」MV

「最低なともだち」MV

『式日散花』全曲試聴トレーラー

OKMusic編集部

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