【仙台貨物 インタビュー】
今年の仙台貨物は
“中世ヨーロッパ”と
“多様性”がテーマ
青春感とか夏休み、
がむしゃらな感じといった印象
途中でガラッと変わる歌詞が奏功して、いい感じに危なさが香る曲になっています。では、2曲目の「儀露珍」。この曲は王道的なメタルという味わいのナンバーですね。
サティ
“中世ヨーロッパ”という言葉が出始めた時、千葉さんと俺と社長と元レコード会社の担当だった人とで、ご飯を食べに行ったんですよ。そこで、中世ヨーロッパをイメージできるアイテムって何かという話題になり、“ギロチンで処刑かな?”という話が出たんですけど、元レコード会社の人が“ギロとトライアングルのチーンという音でさ”みたいなことを言い出して(笑)。“それ、いただき!”って感じで、もうそこでほぼ全部のイメージが浮かんだんですよ(笑)。ギロとトライアングルが交互に鳴っていて、ドンパン・ドンパンってドラムが入ってきて、メタルチックなリフがあれば成立するなと。「儀露珍」はそういう流れで作りました(笑)。
イガグリ千葉
この曲は“ギロチン”どいう言葉がら入っていっだんですよね。歌詞の内容も千葉さんの中で“あっ、こういう歌詞にすよう!”どある程度決まっだんで、歌詞を書かせてもらうごどぬすますた。
ギロチンのことを歌ったメタルチューンということで怖い曲かなと思ったのですが、《悪い事は やってはいげません》というストレートな歌詞になっていて。
イガグリ千葉
そう! 悪い事をすた人ぬギロチンするどいう。中世ヨーロッパの禍々すい世界ではなくて、分がりやすくて、伝わるものどいうごどを意識すて書ぎますた。サビどがはライヴの時ぬ、みんなで叫べるどいいなど思いますね。タイトルが漢字なのは仙台貨物ぬ「絶交門」(2008年10月発表のシングル)どいう曲があるんだげども、千葉さん的ぬは「絶交門II」みだいな感覚なんですよ。それで、“儀露珍”どいうタイトルにすますた。
フルフェイス
さっきも言ったように俺はメタルの定義が分からないので、これはハードロックなのかなと思いました。
どちらかと言うとメタルですね…。
フルフェイス
メタルなんですね!? メタルを分かっていなくて弾いているという(笑)。この曲のギターはどうだったかな? 特に凝ったことはしていないと思うけど。
イントロのリフでワーミーを踏んでいませんか?
フルフェイス
あれはピッキングハーモニクスです。サティさんが作ったデモでピッキングハーモニクスが入っていたので、それを再現しただけです。この曲はそういう感じで、特に話すことはないというか。
とはいえ、フルフェイスさんはギターの音がすごくカッコ良いですよね。ダークな質感で、歪みのキメが細かくて、でも音の抜けがいいという。最近はどんな機材を使われているのでしょう?
フルフェイス
ここ数年は基本的にプラグインを使っていて、キャビネットで鳴らしていないんですよ。全部ライン録りですね。プラグインはサティさんが選んでいるのでよく分からないけど、確かボグナー系の音だった気がする。
フルフェイス
そうだよね。わりとハイパワーなPUが乗っているギターを使って、アンプのゲインをあまり上げないという状態で弾いています。
3曲目の「プロフェッショナル」はここまでの2曲とはテイストが違って、パンキッシュかつ明るい雰囲気のファストチューンですね。
イガグリ千葉
最初ぬ中世ヨーロッパをモチーフぬすた曲を2曲ど、仙台貨物らすい夏っぽいものを2曲ぬすようどいうごどぬなりますて。それで、夏っぽい曲はギガさんぬ作っでもらいますた。
フルフェイス
「プロフェッショナル」は最初に聴いた時に、10代後半とか20代前半とかの青春感とか夏休み、がむしゃらな感じといった印象を受けましたね。歌詞の内容はその段階ではまだ出来上がっていなくて、青春っぽさにあふれた曲だなと思ったことを覚えています。
サティ
もともと仙台貨物ははこういう曲ばかりだったんです。始まりがメロコアパンクで、パワーコードとオクターブ奏法ができる曲をやりたいということだったから。2000年代初頭にメロコアが流行ったじゃないですか。ああいう音楽をやりたいというところから始まったバンドなので、「プロフェッショナル」は仙台貨物のど真ん中という印象です。
アッパーな曲調と“やりすぎて滑ってしまうのは怖い。ちょうどいい落としどころが分からない”という悩める歌詞のマッチングが絶妙です。それに、2番でレゲェっぽくなるアレンジもいいですね。
フルフェイス
それはデモの段階ではなくて、弦楽器隊のプリプロで変えちゃいました。その場のノリで俺がツクチャー・ツクチャーという裏打ちのコードを弾いたら、“それ、いいね!”ということになったんです。
サティ
これも“夏ってこういう感じだよね”というところに収まっていると思いますね。レゲェを入れたらハッとするだろうというようなことではなくて、自然とこうなったという感じです。
フルフェイス
そうだね。それに、この曲もレコーディングはサクッといきました。今回は1日で4曲録ったんですよ。
えっ!? 早いですね。
フルフェイス
早かった。4曲で半日かかっていないくらいだったんで。すごくスムーズでしたね。あとは、「プロフェッショナル」みたいな曲は、あまりかっちりしすぎるのは違うというか。「Ē janai ka」とか「儀露珍」みたいなメタルっぽい曲はタイトさが求められるけど、こういう曲は少しラフなほうが合うなので、そういうことを意識して弾きました。
イガグリ千葉
この曲の歌はプリプロをすた段階で、ギガさんぬ今の感じでいいど言われだんです。そのままでいっでくれと。なので、“分かりますた!”っで本番もサクッど録りますた。“ライヴでやったらこうなるだろうな”どいうイメージが自分の中ぬあったがら、まさぬライヴのテンションで歌いますた。
サティ
俺、この曲のギターの音は意外と気に入っていますね。たぶんフェンダーのジャズマスターか何かで録ったんですよ。“夏っぽいギターって何だろう?”と考えた時に、ちょっとサーフミュージックみたいなイメージが浮かんできて、ジャズマスターを使うことにしたんです。そうなるとフェンダーのコンボアンプで鳴らすのが一番いいのかもしれないけど、さっきフルフェイスが話したように、最近はもうアンプは鳴らしていないんですね。完全にプラグイン。俺は最後の最後まで音作りを悩んでしまうほうなのでプラグインは便利なんですよ。個人的にキンキンした音は好きじゃないので、この曲はジャズマスターのミックスポジションで弾いたんじゃないかな?
「プロフェッショナル」はサティさんのシャープな音とフルフェイスさんのファットな音というキャラクターの異なるギターのアンサンブルも聴きどころです。さらに、サティさんはギターソロも弾かれていますよね。
サティ
ドレミファソラシドを弾くだけのソロなんですけどね(笑)。ただのドレミファソラシドで、どれだけエモくできるかということにトライしました(笑)。
シンプルなフレージングでいながら感情があふれ出ているのが、すごくカッコ良いです。そして、シングルを締め括る「秘密基地」は、さわやかかつキャッチーなナンバーで。
イガグリ千葉
仙台貨物のイメージどが、夏っぽさを打ぢ出すた曲は、こういう感じの曲が多いんです。
フルフェイス
この曲は“THE 仙台貨物”という感じですね。こういう曲のほうがやり慣れている感がある。だから、逆にデモを聴いた時に、“今回はどういうふうなアレンジにしようかな?”と弦楽器隊が悩む。
フルフェイス
そう。ちょっと変えていかないとダメだと思うけど、もうバリエーションが出尽くした感じがあって“どうしようかな?”というのはありました。
この曲でサティさんは8ビートの上でシャッフルのノリのフレーズを弾かれていて、すごいことをするなぁと思いました。
サティ
ヨナ抜きフレーズ(笑)。“夏と言ったら沖縄でしょう!”というところで、自然と出てきました(笑)。
なるほど(笑)。でも、普通は思いついても乗せない気がします。
サティ
乗せないでしょうね。俺も一応、普通のフレーズも用意していたんです。だけど、普通にしたら沖縄にならないんですよ。とはいえ、リズムとしては気持ち悪いかもしれないから、作曲者に何か言われるかなと思いつつデータを投げたら、何も言われなかったので、だったらいいかと(笑)。仙台貨物は「秘密基地」みたいな曲調が多くて、そうすると似てる曲ばかりになるから、バランスをとるために自分があえて崩しているというのはありますね。
捻りを効かせたアプローチをすることで、独自の魅力を持った曲に仕上がっています。それに、千葉さんはコミカルな雰囲気の声や歌い回しをされていますが、この曲はすごくイケメンに感じる瞬間があって衝撃を受けました。
イガグリ千葉
それ、よぐ言われるんですよ。なんでだろうな〜。本当ぬ仙台貨物のライヴを観で、泣がれる方どががいらっしゃるんですねー。
それは分かる気がします。
イガグリ千葉
そう? 千葉さん的ぬは“なんでだろうなぁ?”どいう感じなんですよ。笑顔ぬなっでもらいだいどいうごどは考えでいるげど、感動させようどがは思っでないな〜。
オーディエンスのいろいろな感情を揺するライヴであることや、ピュアな千葉さんが“つらいこともあるけど、前を向いていこう”というようなことを歌うとより刺さるというのが理由になっていると思います。ライヴと言えば、「Ē janai ka」のリリースと同時に始まるツアーも楽しみです。
イガグリ千葉
今度のツアーはセットリスト的ぬは、さっぎも話すたようぬ“メタルはじめました”どいう作品の楽曲をちょっど多めぬ入れで、今回のシングルの曲だぢも入れで、その上で定番の曲もすっかり入れで、やっでいごうど思っでいます。いろいろな楽すみ方をすてもらえるライヴぬなるど思うので、ぜひ期待すてでくださいー。
フルフェイス
コンセプトが分かりやすいツアーになりそうなので、すんなりまとまってくれそうな気はしますね。観に来てくれる子たちにも伝わりやすいツアーになるんじゃないかな? 楽しんでもらえる自信はあるので、ぜひ遊びに来てほしいです。
サティ
今度のツアーは衣裳が大変なのboで、どうなるかなというのはありますけど(笑)。そういうところも含めてちゃんとふざけつつ、お客さんを深く惹き込む世界観を作れるといいなと思っています。
取材:村上孝之
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シングル「Ē janai ka」2023年10月4日発売
C-block/HAPPINET CORPORATION
- 【TYPE-A】(CD+DLカード)
- LHMH-1058
- ¥2,200(税込)
- 【TYPE-B】(CD)
- LHMH-1059
- ¥2,200(税込)
- 【TYPE-C】(CD)
- LHMH-1060
- ¥1,100(税込)
『仙台貨物トゥアー2023 秘密基地でx xしたって Ē janai ka』
10/06(金) 千葉・柏 PALOOZA
10/10(火) 愛知・名古屋 Electric Lady Land
10/11(水) 大阪・BIG CAT
10/15(日) 宮城・仙台 PIT
10/17(火) 東京・Spotify O-EAST
センダイカモツ:2001年に宮城県仙台市で結成。宮城県が産んだ謎の運送屋集団! メタルからカントリー、しっとりしたバラードから演歌まで、オールジャンルを暖かい宮城弁であなたのハートへお届けいたします! 赤字のため09年の日本武道館をもって倒産(活動休止)したが、仙台復興のため11年に再稼動。21年、5年振りに帰ってきた仙台貨物は七福神に扮し、“すしざんまい木村社長”とのコラボで話題沸騰に。22年は夏前回モード! アロハに身を包みドンキホーテとコラボしながら全国行脚。『氣志團万博』への出演も果たし、ツアーファイナルを日比谷野音で締め括った。仙台貨物 オフィシャルHP