進化を続ける真新宿GR学園、その実力
が夜の新宿に咲き乱れる『電音部 GR
SQUAD vol.2』レポート

クラブミュージックを基盤とした音楽原作キャラクタープロジェクト『電音部』。その新エリアとして2022年11月から活動を開始したのがカブキエリア・真新宿GR学園だ。そんな彼女たちをメインアクトとしたライブイベント『電音部 GR SQUAD』vol.2が2023年8月29日に新宿BLAZEにて開催された。

新宿歌舞伎町をホームとする彼女たちが、新宿歌舞伎町にある新宿BLAZEで開催する今回のイベント。その出演者にはクラブミュージック界の一線で活躍する面々が名を連ねる。そのラインナップを見ただけでも期待に胸が膨らまずにはいられない。この日、新宿BLAZEではどのようなライブが繰り広げられたのだろうか、その様子をレポートする。

開演時間である18時を迎えると、アブストラクトなビートが会場の空気を震わせ始める。オープニングDJを務めたのはvol.1と同じくDJ ATSUKI。夜の新宿を体現したかのような怪しげで骨太なビートが響きわたると、それに吸い寄せられるように場内には観客が集まってくる。それに呼応するように、鳴り響くビートは一層力強さを増していった。
DJ ATSUKI 撮影:エドソウタ
その後、トラップビートを中心としたプレイが展開されると、Orphanの「dying light」から選曲はロックな空気を帯び、さらに力強さを増していく。ステージ上で大きく身体を揺らすDJ ATSUKIの姿も非常に印象的だった。
会場内に観客が満員となった頃からだろうか、サウンドはキャッチーさを帯び始める。スクリーンにはhuezによる色彩豊かな映像が映し出され、ノリの良いビートに観客は身体を揺らす。フロアが一体となっているのをヒシヒシと感じた。
会場内にノイズが響き渡る、湧き上がる歓声、そこでATSUKIは安倍=シャクジ=摩耶の「狐憑き」をドロップ、会場の空気をさらにヒートアップさせたのだ。熟練DJが魅せる見事な展開作り、流石の一言に尽きた。この盛り上がりから地続きに、本公演はライブパートへと移行していった。
OHTORA 撮影:エドソウタ
ライブパート一番手に登場したのは、vol.1と同じくOHTORAだ。鳴り響くトラップビート、登場と共に「Cheater」のセルフカバーを歌い上げると、観客はそのサウンドに身体を任せる。
「夏の最後の思い出にしていただければと思います!」
OHTORAがそう語ると、次のビートが流れ出す。続いたのは新曲「Flight 」、エモーショナルなメロディに骨太なビート、会場は宣言通り“夏”の空気で包み込まれた。
さらに新曲が続く。「クソみたいな人生 」、ローテンポで展開されるサウンドに、相変わらずの骨太なビートが乗り、上質なダンスミュージックが完成する。心地よいマリアージュが会場を酔わせると、「SEASIDE MAGIC」が続く。会場には心地よい夏の終わりの空気が流れた。
「ここからが本番です! 飛び跳ねる準備はできていますか?」
OHTORAから観客に一つの問いかけがなされると、骨太なビートが鳴り響く。続いてのナンバーは「TOXIC」。身体を突き動かすアッパーなサウンド。サビでは観客全員が飛び跳ねる姿も見られ、会場は高い熱気に包まれた。
ここで楽曲は一段階メロディアスな空気を帯びる。続いたのは「Akashic World 」と「Digital Tattoo」の二曲。ロマンチックでありながら激しい、そんなサウンドに見事に言葉をハメていく。そしてOHTORAのライブもラストナンバーへ。締めくくりとして選ばれたのは夏の終わりにぴったりの新曲「Coconuts 」だった。途切れることなく続くグルーヴィーな空気が会場を虜にする。ここまで8曲を披露し、OHTORAはステージを後にしたのだった。
会場に鳴り響く切ないピアノの音色。それに合わせて女性MC・にゃおみが儚い歌声を披露する。S.L.N.Mによるライブ、その一曲目は「不健全」だ。
S.L.N.M 撮影:エドソウタ
ここからサウンドはドープな方向にスイッチし、ユキテロ、宮地も合流。S.L.N.M全員が揃っての「疑音」が続く。腹の底から響く宮地の力強いバイブスと、ハスキーでスキルフルなユキテロのフロー、そこににゃおみのクールな歌声が続き、一つの音楽を作り出す。三者三様の声表現は、聴くものを大いに酔わせた。さらにここにスローなビートで構成された怪しげな一曲「GENT」が続くと、会場はS.L.N.Mが持つ独特の世界感に飲み込まれていった。
ここで改めてS.L.N.Mから観客への挨拶、ここまでのパフォーマンスに大盛り上がりするフロアに向けて「めっちゃ固いと思ってたのに、めっちゃ柔らかいやん!」と驚きの言葉を漏らすと、そこから休むことなく次のナンバーへ。チルアウトな空気を存分に含んだ「LIKE」「かっぱ」を披露し、三人は回遊するようにステージ上を漂った。
ユキテロがボイスパーカッションを奏でる。そこに宮地のラップが乗ると、重厚感溢れるビートが追走する。スタートしたのは、S.L.N.Mがプロデュースを手がけた真新宿GR学園「禁言」のセルフカバー。オリジナルに対して力強さをプラスしたS.L.N.Mによるパフォーマンスは、聴くものの血を強制的にたぎらせる。本楽曲のラストにはS.L.N.M 3MCによる「いけないんだいけないんだ 先制で抉ってやろう」も聞くことができた。その場に集まったすべての人が手を天に掲げ、このパフォーマンスへの歓喜の気持ちを表現したのだった。
「どこまでいけるのか俺たちに見せてくれ!」
そうシャウトすると、アップテンポのビートが走り出す。続いたのは「swipe!!!!」。高速で走るトラックに、3MCが発する言葉が乗ると会場はさらにヒートアップしていく。
「お前らのこと、今日で大好きになったわ!」
そしてS.L.N.Mのライブもラストナンバーへ。披露したのは「娑婆にさらば」だ。流れ出すレトロなメロディ、そこにドラムが乗ると、そこには新たなグルーヴが生まれる。そこに3MCの巧みな言葉が合わさると、グルーヴは音楽へと昇華され、聴くものを虜にした。フロアに集まりし人々は、首を振って会場を揺らす音楽を楽しんだのだった。こうしてS.L.N.Mのステージは大盛況の中で幕を閉じた。
S.L.N.Mが去ったステージに、二腕二脚のタコが現れる。次のライブまでの数分間、摩訶不思議な動きで会場を楽しませるタコ。その正体は、餓鬼レンジャーのメンバーとして活動するパフォーマー兼DJ、タコ神様だった。
ポチョムキン 撮影:エドソウタ
タコ神様によって魅了された観客の前に、満を辞して次なるライブアクト、餓鬼レンジャーからポチョムキンが登場する。一曲目に披露したのは「80BARZ」だ。キャッチーな言葉を使ってタイトなライミングを作り出し、それを硬派にビートははめていく。そのパフォーマンスには、長きに渡り活動してきたベテランラッパーの貫禄を感じずにはいられない。
「さっきのは僕自信の自己紹介だったんですけど、今度はタコ神様のテーマソングを」
そう告げると、エスニックな香り溢れる四つ打ちサウンドが会場を包む。曲の名は「タコダンス」、そのハッピーな空気にタコ神様もDJブースから飛び出してダンスを披露する。聴覚と視覚、その両方から観客のテンションを上げるパフォーマンスがそこにはあった。
ポチョムキン&OHTORA 撮影:エドソウタ
多幸感あふれる空間にポチョムキンはOHTORAを呼び寄せる。続いたのはコラボ楽曲「SUMMERTIME MAGIC」。OHTORAの伸びやかなボーカルと、ポチョムキンの重厚なラップ、二つが合わさるとそこに最高のマリアージュが生みだされた。さらにここに新曲「NIAGARA」が続き、珠玉のサマーチューンが会場に夏の空気を運び込む。その心地よい熱気に観客の身体は自然と動きだしたのだった。
「俺、昔すぐそこの個室ビデオでバイトしてたんですよ。」
そんな衝撃のカミングアウトに会場が笑いに包まれると、続けて一句。
「くりかえされる諸行無常 よみがえる性的衝動 by 向井秀徳
流れ出すエモーショナルなサウンド、続いたのは「BRAND NEW LOVE」だ。落ち着いた面持ちで丁寧に言葉をハメていくポチョムキン。そのどっしりとしたパフォーマンスに、ポチョムキンが長きに渡る活動で培ってきた強い土台を感じずにはいられなかった。
「最後はめでたくてハッピーなサウンドでぶち上がる曲を」
鳴り響く祭囃子、ラストナンバーは「おてもやんサンバfeat.水前寺清子」を披露。ハッピーで多幸感あふれるトラックに、お祭り感あふれるラップが乗る。曲にあわせてタコ神様も踊り出すと、新宿BLAZEはさながら盆踊り会場と化した。こうしてポチョムキンによる熱いステージは締めくくられたのだった。
吉田凛音 撮影:エドソウタ
『電音部 GR SQUAD vol.2』も、真新宿GR学園のパフォーマンスを残すのみとなった。ここでステージに姿を表したのは大神纏役・吉田凜音だ。披露したのは「神パラサイト」、そのノイジーなビートにきっちりと言葉をはめると、明滅するステージの上を縦横無尽に自在に舞い踊り、観客を魅了する。

をとは 撮影:エドソウタ

曲が終わるとバトンタッチ、続いてステージに現れたのはりむる役・をとは、披露した楽曲は「焼ケ鮭」。激しいビートに甲高い猫撫で声、そのマリアージュが聴くものを酔せる。曲名の通りの酩酊状態を音楽で表現するという、鮮烈なパフォーマンスがそこにはあった。
SONOTA 撮影:エドソウタ

真新宿GR学園から最後に登場したのは安倍=シャクジ=摩耶役・SONOTA、披露したのは新曲「pHyCooo」だ。貫禄ある立ち振る舞いで、ローテンポのビートに巧みに言葉をハメていく。その圧巻のパフォーマンスは聴くものをを魅了し、会場を大いに揺らしたのだった。
三人によるソロパフォーマンスを経て、ついにステージ上に真新宿GR学園の3人が揃う。MCを挟むと、ここで本家「禁言」を披露することを宣言。再びあの重厚感あふれるビートが流れ出し、三人の声が儚くも艶かしくビートに乗る。同ライブ内でS.L.N.Mによっても披露された本楽曲、アーティストが変わることで、そこには全く新しい魅力が吹き込まれる。それを存分に感じさせるこのパフォーマンスがそこにはあった。
ここにEDM調のビートがスタート、続けて披露したのは「Siren」だ。ビートに身体を揺らしながら言葉をハメていく三人。その振る舞い、その歌声、全てが異なった魅力を放ちつつも、それが一つの音楽として混ざり合って新たな魅力を生み出す。そのマリアージュは会場に一体感と高揚感を与えずにはいられなかった。
真新宿GR学園 撮影:エドソウタ
ここで11月に真新宿GR学園活動1周年を記念したライブが開催されることが発表され、会場が湧く。そして本ライブも締めくくりの一曲へ。
EDMサウンドで始まったこの日のラストナンバーは「Crush」。再び披露される三者三様のパフォーマンスに、再び観客は大きな盛り上がりを見せ、この日のライブは最高潮のまま締めくくられたのだった。
vol.1から2ヶ月、その間に真新宿GR学園は確実な進化を遂げていた。一人一人が別ベクトルに魅力を強化させ、そのマリアージュは味わいを増すものとなっていたのだ。今後、真新宿GR学園がどんな進化を見せるのだろうか、大きな期待を抱かずにはいられない。彼女たちの今後の活躍にも注目していきたいと思う。
取材・文:一野大悟 撮影:エドソウタ

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