SHAG、スペアザ、Afro Begue、パジャ
海、ジャムバンドたちが名演を繰り広
げた『WHAT IS JAM? VOL.8』オフィシ
ャルレポート

SUGIZOLUNA SEAX JAPANTHE LAST ROCKSTARS)率いるジャムバンド・SHAGが8月11日に横浜BAY HALLで開催したライブイベント『WHAT IS JAM? VOL.8 “THE 1ST ANNIVERSARY”』のオフィシャルレポートが到着した。

「この前のSHAGのライブはどうでした? 今、僕が一番やりたいのがこのバンドなんです!」……SUGIZOが私に向かって目を輝かせてこう言ったのは昨年の1月……2021年12月にSHAGのブルーノート東京公演に足を運んでから、1月後にお目にかかったときであった。そして「日本でジャム・シーンをもっと盛り上げていきたい」とも。そのSUGIZOの思いが形となったのが、音楽の多様性・可能性に満ちたヴァイブラントなライブ・ジャム・シリーズ『WHAT IS JAM?』である。2022年8月11日に「Vol.1“New Dawn”」と題して船出を切った同イベントは、東京のみならず、神戸、京都、名古屋など各地で回を重ね、1年後の記念すべき同日=8月11日に「Vol.8“THE 1st ANNIVERSARY”」が開催された。
会場となった横浜ベイホールは、本来は2階のホールへとつながるエントランス部分も「MODULAR BOOTH」と題してtatata5やYumi Iwaki、Kenichi Takagi、坪口昌恭、HATAKENが、それぞれユーロラック・モジュラーシンセなどによる演奏を繰り広げる。また、2階のホールでも会場後方にDJ BOOTHのコーナーが設けられ、この日はGIVE UP GUYSが出演。このあたりも『WHAT IS JAM?』ならではの魅力である。
パジャマで海なんかいかない
パジャマで海なんかいかない
そのGIVE UP GUYSがビートの効いた音楽を場内に響き渡らせ、観客はすでにテンションが上がっている中、記念すべき1周年のステージにトップで登場してきたのは、SHAGでもキーボードを務める別所和洋が率いる5人組のパジャマで海なんかいかない、だ。ネオソウルやジャズをルーツとしながらも、エクスペリメントなサウンドを追求するグループだけあって、エレクトリック・ベースのHarunaとドラムのSeiyaの繰り出す抜群のグルーヴとリーダーBessho(別所和洋)の洗練されたハーモニーの上で、FiJAとChloeが張りのある歌声で6曲を披露。のっけからハイ・エナジーなパフォーマンスに魅了されまくる。
Afro Begue
Afro Begue
2番手は、セネガル人で打楽器ジャンベの達人オマール・ゲンデファル率いるAfro Begue。SHAGでベースも務めるKenKenが2020年から参加し、昨年にはキーボードにNaotoを新たに迎えてさらにパワーアップした同バンドなだけに、強烈なアフロ・グルーヴが繰り出され、そこにオマールのジャンベが炸裂するのだからして、盛り上がらないはずがない。さらに2曲目からサプライズ・ゲストでシアターブルック佐藤タイジがギターで参戦して観客は大喜び。会場ごと揺れんばかりのノリノリ状態になっていた。
SHAG
SHAG
SHAG
そして、3番手にいよいよSHAGが登場。2020年の1stアルバム『The Protest Jam』に収録の「Initiation of Rebellion」で幕を開けると、続いては完全インプロヴィゼーションによる演奏へ。類家心平の天空を突き刺すようなトランペット・ソロやSUGIZOのアグレッシヴなギター・ソロが炸裂。結果、SHAGの持ち時間が切迫するほどの大熱演が展開され、演奏の最中にKenKenから「時間大丈夫?」という言葉が飛び出すほどであった。続いては、パジャマで海なんかいかないのChloeが加わり、1997年にリリースしたリミックス3部作のうちの『REPLICANT TRUTH?』に収録されていた「REPLICANT DELIVER...」を歌ったのだが、このヴァージョンをライブで披露するのはこれが初めてということで、貴重極まりない。そして、ラストはChloeに替わってアルト・サックスのパトリック・バートリーが加わり、KenKen作曲の「KAMOGAWA」へ。マイナー調のバラードから一転してファンキーな16ビートが交互に登場する構成が特徴で、聴衆をどっぷりと曲に引き込みながら、同時に乗せまくっていたのが実に印象的であった。
さらに、SHAGのステージが終了後、SUGIZOは1階エントランスのMODULAR BOOTHでHATAKENとコラボを展開し、ベースのKenKenもホール後方のDJ BOOTHでGIVE UP GUYSと一緒にプレイし、観客の目を釘付けにしてもいたのも見逃せなかった。
SPECIAL OTHERS
その興奮冷めやらぬ中、4番手にステージに登場してきたのは、1995年に結成され、2006年にアルバム・デビューして以来、日本のジャム・シーンを牽引してきたSPECIAL OTHERSだ。SUGIZOは以前から同バンドに注目していて、今回の記念すべき「THE 1st ANNIVERSARY」の出演へと至った。先月の7月25日に配信したばかりの「Falcon」からスタートすると、今年5月25日に配信された「Bluelight」と6月25日に配信された「Bed of the Moon」と新曲を軸にし、加えて、それらの合間にその場のインプロヴィゼーションがかなり展開されていたのは特筆に値する。最後に人気曲「BEN」が飛び出したものの、スペアザをよく知るファンにとってはかなり新鮮なステージだったのではないだろうか。終演後にメンバー4人に聞いたら、やはり『WHAT IS JAM?』をかなり意識したとのことで、お互いにそれぞれの出方を見合いながら演奏をしていった、と口を揃えて言っていた。と同時に、スペアザのインプロヴァイズにおける底力を見せつけられたとも言え、非常に興味深いステージであった。加えて『WHAT IS JAM?』の持つ超が付くほどの重力……恐るべし!
そのSPECIAL OTHERSの演奏が終了すると、ステージにはこの日出演した4つのバンドのメンバー、それにゲスト陣も含めた全員が登場しての一大ジャム・セッションへと突入。20人以上がところ狭しと一同に揃う眺めだけでも壮観だが、E7コード一発によるその場の完全インプロヴィゼーションの上で、それぞれがソロを回していく様も圧巻! 同じドラムを4人のドラマーが代わる代わる叩き、キーボードにはバンドからの鍵盤奏者に加えてモジュラーシンセサイザーで出演していた坪口昌恭も参入。ヴォーカルの女性ふたりもその場で即興の歌詞を付けて歌い、場内は興奮の坩堝と化す。そして、なによりも出演している当事者たちが心からこのイベントを楽しんでいるのが伝わってくる象徴的なシーンでもあった。
これまでの『WHAT IS JAM?』シリーズでも、ステージ上でSUGIZOとKenKenが一貫して発してきた言葉「What Is Jam? This Is Jam!」の通り、出演者と観客とが一体となって音楽を楽しむ……これこそがまぎれもなくジャムだ。イベント終了後、SUGIZOは「ここ数年の間に『WHAT IS JAM?』でのフェスを実現したい!」と熱く語っていたが、その日が確実に近づいているのが感じられる、大盛り上がりの「Vol.8“THE 1st ANNIVERSARY”」であった。
文=音楽ライター石沢功治(Koji Ishizawa)
撮影=Keiko Tanabe

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