L→R アフロ(MC)、UK(Gu)

L→R アフロ(MC)、UK(Gu)

【MOROHA インタビュー】
根拠のある曲がしっかりと揃った
結成15周年を飾る5作目のアルバム

“あなた”があっての
自分たちになった「六文銭」

「命の不始末」と「ネクター」の並びは、酒の苦みでつながっている感じが染みました。どっちも自分の心を削った曲ですけど、曲調は背中合わせというか。「命の不始末」では激しい怒りが全面に出ていますよね。

アフロ
そうですね。でも、感情をこれだけガツンと発散できて、生々しい表現を曲に閉じ込められたという意味で言えば、怒りまくっている曲も楽しく作っていたりするんですよ。このエネルギーと同じくらいの快感があるので。

「0G」もそうですが、30代半ばになっても怒りを歌う姿勢がMOROHAらしくていいですよね。この曲はアフロさんが過去にGalaxyのスマホのCMのナレーションを経験されているから、一段と深みが出た感じがあって。

アフロ
確かにちょっと考えましたよね。あのCMをやっていた俺が《スマホポケットしまっとけ》と歌っていいものかと。だけど、スマホ自体を否定するような内容じゃないし、これはアプローチとして問題ないと思います。むしろ、この曲をスマホの広告にしてほしいくらい。“使いすぎるのではなく、あなたが本当に必要な時に使ってくださいね”という曲だから。パチンコを“遊びすぎに注意しましょう”と言うのと同じで。

具体的な企業名をサビに持ってくるところが、「奮い立つCDショップにて」(2010年発表の1stアルバム『MOROHA』収録曲)を彷彿させます。攻め気の良い部分がそのまま変わっていないってすごいことじゃないですか?

アフロ
俺、このやり方に味を占めているのかも。曖昧にぼかさずストレートに歌うのが好きで、リスナーもきっと好きですよね。単語を並べただけでストーリーが浮かぶ感じがあって、こういうワードを使うと聴くほうも耳を貸してくれやすかったりするし。具体名を出すことは難しいことではないので、ミュージシャンにオススメです。CMが来なくなるかもしれないけど。

逆に、今回のアルバムでこれまでになかった新しさを感じる部分は?

アフロ
ギターはさ、意外と昔のアイディアを引っぱり出してきてたりもするんだよね。
UK
そうそう。当時は活かせなかった素材だけど、今は料理できるような腕になった感じです。「命の不始末」は10年以上前から原型があった曲で、「チャンプロード」も昔のリフを改変して完成させました。

「チャンプロード」の1番の終わりで鳴るゴングっぽい音とか、「スコールアンドレスポンス」の同じく1番終わりで弦をこすって出すスクラッチっぽい音とか、UKさんの技が随所で効いていますよね。

UK
ありがとうございます!
アフロ
あのスクラッチ感、カッコ良いよね。雨が降り続く曲だから、俺は靴裏がキュキュッて鳴っているのを想像したよ。
UK
おー! じゃあ、その感じで作ったことにしておこう(笑)。

ラップに関してはどうですか?

UK
全体的にやさしさが出たと思います。「命の不始末」や「0G」みたいに怒りを歌うにしても、そこにやさしさが見える。「ネクター」の愛憎も含め、そういう機微が歌えるようになってきたんじゃないですかね。「主題歌」でも人の不幸を書いた上で愛情表現がしっかりできているので。
アフロ
「主題歌」はコロナ禍の状況を描写したとあって、こっちから叫ぶイメージではなく、世の中の人たちに手を振り返している感覚が強かったんですよ。みんなのアクションに対する肯定とか、報われない悲しみを思いやるとか、俺たちなりのアンサーを歌えた曲になった気がします。《差しのべて掴んだ手のひらの数は 同時に見殺しにした数だったりして》のラインは、『日程未定、開催確定TOUR』で計20カ所のライヴハウスしか支援できなかった無念さを込めていたりもするんですけどね。

助けられなかったライヴハウスも同じくらいあったと。

アフロ
そう。何も行動を起こさないほうがフラットなようでいられて、“選んで助けなかった”という無力さを覚えずに済むから、心は平穏でいられるのかもしれない。だけど、動いた自分を必死で肯定するこの感じを如実に歌えたのは良かったと思います。

そして、シリーズとして作り続けてついにここまで辿り着いた感じもある「六文銭」は出来上がってみていかがですか?

UK
「一文銭」から「五文銭」までは自分たちの話が軸だったんですけど、《あなた》があっての自分たちになったのが大きな違いですね。歌う側が主人公ではありつつ、ヒロインが存在するというか。《あなた》がいないと成立しない曲。そのテーマにも、やっぱりやさしさが感じられます。
アフロ
言われてみると、そのとおりだね。俺らは性格が悪いから、いっそ「六文銭」でさらに憎しみをぶちまけるべきだったかなとか、今になって考えちゃったりもするけど。

茨の道は「五文銭」までで十分に歌ってきたと思いますよ。

アフロ
それもそうか。だけど、この曲って最初から「六文銭」を作ろうとしていたわけじゃなかったよね?
UK
うん。決め打ちで作った感じではなくて、ある程度できた段階でこの曲は「六文銭」になると思った。
アフロ
なので、「一文銭」から「六文銭」までの歌詞を並べた最後の6行は、タイトルを決めたあとにつけ加えたんです。すごくナチュラルに、おそらく文銭シリーズの締めになるであろう相応しい曲ができました。

《あなたがいた だから名曲》はシンプルですけど、MOROHAのこれまでの活動を踏まえて聴くと途轍もなく強固なものになる、いろいろなドラマが見えてくる歌詞ですね。

アフロ
ありがとうございます。サビの頭2行《あなたの名前を呼びたくなる曲 それを略した言葉が名曲》が出てきたのは嬉しかったな。これがスッと出た瞬間、曲を書き上げたような気持ちになったんですよね。“この曲を聴くとあの人を思い出す”みたいな現象ってあるけど、そこで相手の名前をふと呼びたくなっちゃうことがあって。そうなった時に名曲だなと感じるっていう心の流れが、自分にすごくしっくりきたんです。

UKさんのギターも素晴らしかったです。特に《「就職でライブ来れなくなるんですけどMOROHAに負けないように頑張ります」》あたりからの展開。メロディーとコードを鳴らしつつ、ベースやドラム的な音も出して、4人くらいの役割をひとりで担っている感じが。

UK
言わせてもらうと、そこについては天才だと思ってます(笑)。このメロディーは本当にお気に入りで、マジで全てを超えられた感じがある。文銭シリーズってループでストイックに弾くのを主体としてきたけど、「六文銭」はまさに集大成だし、いわゆる歌モノと同じようにしっかり展開をつけた上で名曲にしたかったんです。だから、その後半部分はキーを揃えながらも別の曲くらいの気持ちでとりあえず作っていって、最終的に前半の流れと美しくミックスさせて。こういう頭の使い方で臨んだのは初めてでしたね。《MCアフロ 本名 滝原勇斗》のところでイントロのフレーズがもう一回出てくるのは、ヒーローが大ピンチで助けに来てくれるイメージで弾きました。

アフロさんの感情に沿うように掻き鳴らされるストロークもドラマティックです。すごく濃厚なアルバムになりましたね。

アフロ
ずっと大切にしてきたことなんですけど、ちゃんと根拠のある曲が揃ったのが嬉しいですね。何を歌った曲なのか、どうして生まれた曲なのか、どう思ってどう結論づけたのか、そういう部分が真っ直ぐ伝わってきて、俺たちの顔の皺に刻まれている感じがします。
UK
ライヴで何度も演奏してきた10曲をまとめたアルバムなので、新曲という印象は自分たちにそこまでないんですけど、それでもここから深みがどんどん増していく予感はありますね。1stアルバムの曲を今やると全然違うテイストが出るように、音源化された曲たちが先々どう化けるのかが楽しみです。
アフロ
“こうやって受け取ってくれるんだ!?”みたいなお客さんのリアクションで、曲に対する俺らの認識が変わる可能性だってあるし、それが次の曲につながることもあるからね。

これはファンのために伺いますけど、文銭シリーズが終わったとしてもMOROHAの活動は終わらないですよね?

アフロ
大丈夫。続きます!
UK
大喧嘩したら辞めるかもしれないですけど(笑)。
アフロ
いやいや。大喧嘩したとて、MOROHAを辞めたらフリーターだからね。

「俺が俺で俺だ」で《いつかやるパッツパツの東京ドーム》と歌っているので、心配するのもおかしな話ですが。

アフロ
俺、15年前にお客さんが3人の時点で“武道館でやる”と言っていたんですよ。3人を7,500人にできたってことは、7500人から50,000人のほうが比率的にはいけますよね?
UK
確かにそうだ。
アフロ
ただね、ひとつ心配なことがあって。このアルバムができたあとに新曲をまた作ったんだけど、その歌詞が“もう書けない!”みたいな内容なんです。
UK
あははは!
アフロ
ちなみに、新曲の仮タイトルは“愛してる”です。気になるでしょ? ぜひ、ライヴへ聴きに来てください。お待ちしております!

取材:田山雄士

アルバム『MOROHA V』2023年6月7日発売 UNIVERSAL SIGMA
    • UMCK-1750
    • ¥3,300(税込)

ライヴ情報

『MOROHA自主企画「怒涛」第二十二回』
6/20(火) 東京・恵比寿LIQUIDROOM
W) ビッケブランカ

『「MOROHA V」RELEASE LIVE』
7/23(日) 東京・Zepp Shinjuku

『MOROHA 「日程未定、開催確定ツアー」 』
北海道・札幌KLUB COUNTER ACTION
青森・八戸FOR ME
福島・club SONIC iwaki
山形・酒田*hope
長野・松本ALECX
新潟・CLUB RIVERST
東京・新代田FEVER
東京・下北沢ERA
東京・新宿MARZ
神奈川・横浜F.A.D yokohama
愛知・名古屋CLUB ROCK'N'ROLL
大阪・Fandango
京都・Live House nano
岡山・CRAZYMAMA 2nd Room
香川・高松TOONICE
徳島・club GRINDHOUSE
福岡・BEAT STATION
大分・club SPOT
鹿児島・SR Hall
沖縄・G-shelter

MOROHA プロフィール

モロハ:2008年結成。舞台上に鎮座するアコースティックギターのUKと、汗に染まるTシャツを纏いマイクに喰らいつくMCのアフロからなる二人組。互いの持ち味を最大限生かすため、楽曲、ライヴともにGu×MCという最小最強編成で臨む。その音は矢の如く鋭く、鈍器のように重く、暮れる夕陽のように柔らかい。相手を選ばず、選ぶ筈がなく、“対ジャンル”ではなく“対人間”を題目に活動。ライヴハウス、ホール、フェス、場所を問わず聴き手の人生へと踏み込む。道徳や正しさとは程遠い、人間の弱さ醜さを含めた真実に迫る音楽をかき鳴らし、賛否両論を巻き起こしている。雪国信州信濃から冷えた拳骨振り回す。MOROHA オフィシャルHP

「ネクター」MV

「チャンプロード」MV

"夜に数えて"
【2022.2.11 単独 日本武道館】
("YORU NI KAZOETE"
from MOROHA LIVE at BUDOKAN)

OKMusic編集部

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