【MOROHA インタビュー】
MOROHA×松居大悟で焼き付けた
大切な感情
MOROHAが松居大悟監督とのタッグで、74分ワンカットシューティングの青春譚『アイスと雨音』に挑んだ。主題歌「遠郷タワー」を務めた他、劇中では代表曲「革命」「四文銭」などを生演奏。結成10周年、メジャー進出しようがぶれない彼らを感じてほしい。
このプロジェクトの成り立ちを教えてください。
アフロ
監督の松居さんとは友達なんですよ。2016年に「tomorrow」のMVを担当してもらったけど、その前から僕らのライヴを観に来てくれてたし。で、そんな松居さんが飲みの席で“最近あったすげぇ悔しかったこと”みたいな感じで話し始めたのが、自分たちのやるはずだった舞台が内々の事情で中止になっちゃったっていう。
現実で起きた悔しいエピソードが映画に入り込んでるというか。
アフロ
うん。“どうにか自分の中で納得させたいから作品にしようかな、なんて思ってるんだよね”って。松居さんはまだフワッとした感じで話してたんで、俺は“今すぐやらないと悔しい気持ちがなくなっちゃうよ”と言ったんです。友達が超個人的なエゴで想いにケリを付けるために何か作りたいってところには、すごくシンパシーがありましたね。だって、MOROHAが音楽でやってることと同じだから。
じゃあ、MOROHAの楽曲ありきで始まったわけではなく?
アフロ
そうじゃないですね。ただ、“一緒に何かやりたいね”とは、そこでも話してて。
UK
何かをする上で一生懸命に伝えようとする人には、自分たちも同じくらいの気持ちで応えたいですよね。
アフロ
それですぐオーディションを開いて俺も立ち会ったんですけど、なんか選ぶ側だと偉そうな気持ちに一瞬なっちゃって。映画に出てくるプロデューサー的な椅子に座るようになったら終わりだなと思いました。自分は一生懸命やる側でいたい。
オーディション当日の夜、松居監督がキャストの田中怜子さんに電話をかけた時の“大阪に帰らず東京にいてください”という言葉が、主題歌「遠郷タワー」のきっかけになったそうですね。
アフロ
電話を横で聞いてて、その言葉が印象的で。そういうことを自分も誰かに言われたかったのかな。僕も長野から出て来てますしね。
UK
でも、何かを言われたいとか、俺はそんなにないかな。受け身よりも自分主体でいたいです。よく考えると、怜子からしたらものすごく試されてる感じがしない?
アフロ
うわっ、確かにそうかも! “お前に言われんでもおるわ!”って思うね。
UK
そうそう! 自分がやれると思って勝負しに来てるんだからさ。俺らも上京した頃に言われたとしたら、むかつくでしょ?
アフロ
“むしろ、俺が東京だ!”くらいの心意気だよね。
その強気さも見え隠れしつつ、「遠郷タワー」は帰らなかった人、帰れなかった人にやさしさをもって響く曲になったと思います。
UK
劇中は相当ヒリついてるし、観賞後はきつく感じる人もいるかもしれないし、この葛藤に役者のみなさんも少なからず共感してるはずで。だから、そういうのを最終的に音楽で救いたいと思いました。僕はできるだけ撮影現場に足を運んで、役者の方々が演じてる時とオフの時を見るようにして。で、その場でバックミュージックを作るイメージでギター弾いてると、どうしてもやさしい曲になるんですよ。
アフロ
“エンディングはエッジの効いた本編の受け皿になれるような曲がいい”というUKの意見に、俺も賛成でした。あとね、ちょっと裏話。メインキャストの6人じゃない枠として、オーディションに合格した子が本当はもうひとりいたんですよ。その男の子がすごく良かったんだよなぁ。当日は緊張しすぎて、松居さんに“松井秀喜監督と頑張りたいと思います!”って言っちゃって。
(笑)。野球選手の名前と間違えて。
アフロ
はい、顔を真っ赤にしてねぇ。メガネかけてて内気な感じで、たぶん参加者の中で会場に来るまでに一番勇気が必要だった人だと思います。もうね、ある日突然ラップをやり始めた過去の自分を見るような想い! 稽古の現場には1度来たんだけど、周りのメンバーのプロフェッショナルさに心が折れちゃって。あの子のことが…というか、あれは俺だな。ずっと頭にあったんです。スポットライトが当たった怜子と当たらなかったそいつ、その関係性は歌詞を書く上で強く意識しましたね。それこそ《カウント10じゃ終われない人生 その後にイレブンやトゥエルブが待ってる》のところなんかは、彼に届いたらいいなと考えたりもしたし。
話を聞いてても思うけど、映画の内容自体に引っ張られすぎてはいない曲ですよね。
UK
映画に付随する曲ではなく、やっぱりMOROHAとして納得がいく曲でありたいので。その意味で、これまでで一番いいメロディーが作れたと思います。
アフロ
きっかけは何にしろ、結局は俺の実体験が歌詞になりますからね。むしろ、それしかできない。母親に“もう帰って来なさい”と言われた時よりも、“悔いのないように頑張りなさい”と言われた時のほうが実家に帰りたくなったりするんですよ。そういう人間らしさに“うわぁ!”って触発されることが多いかな。
MOROHAは今年で結成10周年ですが、そうした根幹にあるものは変わらない?
アフロ
変わらないですね。技量や人間性は年輪を重ねたと思うけど、MOROHAとして最初に書き始めた1行目から筆圧はずっと強いまま。
その1行目って覚えてますか?
アフロ
10年前にMOROHAとして書いた1行目の歌詞?あっ、《田舎の町の路上から》ですね! そう考えるとすごいな、今「遠郷タワー」にこうしてつながってる感じが。やっぱり根っこの良さは変わってない。
UK
俺のMOROHAの始まりの音(コード)はAmでした(笑)。妙に納得するなぁ。苦しいけど好きだから、一生懸命になれることだから10年続いてますね。
アフロ
あとは松居さんじゃないけど、MOROHAも悔しい想いをしてるから見返したい。“お前らなんか絶対に売れない”みたいな態度を取ってきた連中はたくさんいるんでね。まだまだ“なんで分かってもらえないんだよ!”とも感じてます。でも、竹原ピストルさんとか俺がいいと思ってる音楽が世間にちゃんと認知されるようにもなってきてるし、この前の『NHK紅白歌合戦』を観て自分の力をどこかで見限ってたことに気付けて。そんな自分を今は超えたいんです。
取材:田山雄士
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配信シングル「遠郷タワー」2018年1月1日配信開始
VAP
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アルバム『MOROHA BEST~十年再録~』2018年6月6日発売
YAVAY YAYVA RECORDS / UNIVERSAL SIGMA
『MOROHA自主企画「破竹」第十六回
×GRAMHOUSE主催「RUSH HOUR」』
3/11(日) 長野・伊那GRAMHOUSE
w)LITE
『MOROHA自主企画「破竹」第十七回』
3/20(火) 大阪・梅田シャングリラ
w)真心ブラザーズ
『MOROHA 自主企画「怒濤」第十四回』
3/28(水) 東京・TSUTAYA O-nest
w)後日発表
『MOROHA ZEPP TOKYO 単独ライブ』
12/16(日) 東京・Zepp Tokyo
モロハ:2008年結成。舞台上に鎮座するアコースティックギターのUKと、汗に染まるTシャツを纏いマイクに喰らいつくMCのアフロからなる二人組。互いの持ち味を最大限生かすため、楽曲、ライヴともにGu×MCという最小最強編成で臨む。その音は矢の如く鋭く、鈍器のように重く、暮れる夕陽のように柔らかい。相手を選ばず、選ぶ筈がなく、“対ジャンル”ではなく“対人間”を題目に活動。ライヴハウス、ホール、フェス、場所を問わず聴き手の人生へと踏み込む。道徳や正しさとは程遠い、人間の弱さ醜さを含めた真実に迫る音楽をかき鳴らし、賛否両論を巻き起こしている。雪国信州信濃から冷えた拳骨振り回す。MOROHA オフィシャルHP