INTERVIEW / Ashnikko「自然と、今起
こっていることの関係性」――Ashni
kkoが語る、アルバム『Weedkiller』
の背景 「自然と、今起こっているこ
との関係性」――Ashnikkoが語る、ア
ルバム『Weedkiller』の背景

青髪のアニメライクなルックスで、エロ、グロお構いなしな“アンチ・ポップのポップ・スター”Ashnikkoが、3月に初の来日公演を行った。
これまでロンドンを拠点にTikTokなどソーシャル上で人気を集めてきたAshnikkoだが、会場の東京・恵比寿LIQUIDROOMに赴いた筆者にとって印象に残ったのは、開演前に目の前にいたグループがkemioや整形男子・アレンなど国内のクィア・アイコンをしきりに話題にしていたことだった。辺りを見渡しても、会場はジェンダー的にも人種的にも世代的にも同定できない、開かれた空間となっているように感じられた。
そんなAshnikkoは8月に待望のデビュー・アルバムとなる『Weedkiller』をリリースする。差別に抗する態度そのものがエンパワメントの象徴となっていたAshnikkoであるが、今度の作品は環境問題とテクノロジーをテーマにられているのだという。NMEの取材で語ったキーワードは“卵、キノコ、恍惚/多幸感”。Ashnikkoが明け透けに披露してきた強烈な身体性は、よりプリミティヴで深刻な主題を伴い、ミックステープ『DEMIDEVIL』以来およそ2年半ぶりのカムバックを果たす。
いまだにAshnikkoを単なるTikTokスターだと考えてはいけない。東京公演の直前に行った今回のインタビューから、コンシャスなデビュー・アルバムの背景にある心境の変化や苦悩が垣間見えてくることだろう。
Interview & Text by namahoge(https://twitter.com/namahoge_f)
「一貫性があってストーリーを感じさせるようなアルバムを作りたかった」
――大阪でのライブはどうでしたか?
Ashnikko:すごくよかった。日本でライブをするのは初めてだったから、ここで私のリスナーに会うのも初めてだったんです。みんなすごく礼儀正しくて、丁寧で、これまでの経験と全然違って……ステージの下から卑猥な言葉を叫ばれるのに慣れているから。今夜もとても楽しみです。
――日本での滞在中、熊野古道の動画をInstagramにアップしていましたね。
Ashnikko:うん、熊野古道の全部を歩いたわけではないけど、3日間かけて20時間くらいは歩いたかな。本当に、本当に楽しかった。
――熊野古道についてはどのように知りましたか? 伝統的な霊地ですが、日本では若い人が訪れる印象があまりないようなスポットでもあります。
Ashnikko:たしかに若い人は少なかったかも。ユネスコの世界遺産に登録されていたから知って、調べるのに苦労はなかったかな。ツアーに出る前に自然の中で充電するのが好きなんです。スペインにある世界遺産のカミーノ・デ・サンティアゴもいつか歩いてみたいんですよね。
――ハイキングが好きなんですか?
Ashnikko:どちらかというと、アクティブな瞑想が好きなんです。自然の中でひとりで考え事をするような。木々の中にいると心も落ち着きます。
――8月にリリースされるデビュー・アルバム『Weedkiller』では、環境破壊とテクノロジーをテーマにしているそうですね。
Ashnikko:『Weedkiller』の曲の多くは、私にアウトドアな志向が生まれるようになって、サイケデリックをたくさんやるようになったのと同じ時期に生まれたと思います。自然と、今起こっていることの関係性。自然の中に一人でいると、インスピレーションが湧いてくるんでしょうね。
だから正直なところ、熊野古道を訪れた後、コンクリートの世界に戻ってくるのが少し寂しかった。でも、東京は大好きだし、大阪も少し観光しました……それは新しいタイプの冒険なんです。都会でパーティをするときと、もっと瞑想的な状況にいるときと、バランスを取ることが大切だと思っていて。ステージにたったひとりで立つこと、そして自分の体を強く主張することを、相殺できるようにしておかないと。
――今度のアルバムはミックステープ『DEMIDEVIL』からおよそ2年の期間が空いています。シングルのリリースもありませんでしたが、その理由について教えてください。
Ashnikko:この2年間の多くをツアーに費やしていました。体調を整えつつ毎晩のようにライブをするのは大変で、さらにマルチタスクに音楽を作るのは本当に難しい。それでもツアーの隙間で少しずつ曲を作っていって。
それと、ただ単に曲を出すだけではダメだと思ったんです――これまでリリースしてきたようなやり方では。ちゃんと一貫性があってストーリーを感じさせるようなアルバムを作りたかったんです。曲の配置に意味があって、アルバム用の曲だけが入っているもの。私ってひどい完璧主義者でもあって、『DEMIDEVIL』をアルバムと呼ぶのは怖かった。だって、それぞれの曲はアルバムに収まるように意図して書いたわけではなかったから。
「自然に対する愛を伝えようとしているだけ」
――どのようなきっかけでアルバム制作を進めることになったのですか?
Ashnikko:ちょうど2年前に表題曲の「WEEDLKILLER」ができて、同じ時期に、それに伴う短い物語を書いたんです。物語が先か、曲が先かわからないけど。でもその時に、全てのパズルが収まったようにピンときました。「WEEDLKILLER」をタイトルにしてアルバムにしようって。この問題について私はもっともっと言いたいことがある、って。
――その問題というのは?
Ashnikko:私は専門家ではないから、その質問に答えるのは難しいですね……。私はただ、自然に対する愛を伝えようとしているだけだから。生きていれば地球に対してどうしてもインパクトを与えてしまう、でも、そんな中でどうやって恩返しをできるか。そういうことに頭を悩ませているんです。
――スケールの大きなテーマとなったのはどうしてでしょうか?
Ashnikko:うーん、大人になったからかも。でも「WEEDLKILLER」は、人生の中で私を傷つけた人たちを描くような……すごくパーソナルな内容なんです。マクロな評論ではなくて、私個人の体の自律感覚を取り戻す、そんな歌になっていると思います。
それに、個人の体験であると同時に、私が夢見ているファンタジックな世界の話でもあって。自然との相互関係を、視覚的に発想したストーリー。だから音楽だけでなく、物語としても楽しめる内容になっているかと思います。
――物語を作るのに際して、よくご覧になっているという日本のアニメ(※筆者注:『美少女戦士セーラームーン』や『Re:ゼロから始める異世界生活』のファンを公言している)からのインスピレーションはありますか?
Ashnikko:どうだろう。アルバムの中でということなら、たぶん、「Possession of a Weapon」はちょっと『PSYCHO-PASS サイコパス』みたいな雰囲気があります。武器を持っている感じとかね。ビジュアル面では、クリエイティブ・ディレクターが『天使の卵』(※筆者注:1985年公開のOVA。監督・脚本に押井守)や『新世紀エヴァンゲリオン』、あとは伊藤潤二の漫画にすごくインスパイアされているんですよね。
――コラボレーターに関して、すでに先行シングルとしてリリースされている「Worms」のプロデューサーに100 gecsのDylan Bradyが入っていますね。
Ashnikko:そうそう、Dylanとは何度か一緒に仕事をしたことがあるんです。でも、彼が普段やっている音楽性と違うからみんな驚いているんじゃないかな。
――プロデュースのほとんどはSlingerが担当しています。
Ashnikko:Slingerとは私が19歳か20歳の頃から一緒に仕事をしているんです。音楽的な背景も一致していて。今回のアルバムはある種、彼とのコラボレーション作品になっていますね。
今回、私やSlingerがすごく影響を受けたのは映画『DUNE』のサウンドトラックです。私が書いた物語に関連する音を配置するような、スコアのような作品です。物語が上映されるような雰囲気になっていると思う。
――なるほど、楽しみにしています。それでは本日はありがとうございました!
【リリース情報】
==
*2023年8月リリース予定
■ Ashnikko オフィシャル・サイト(https://www.ashnikko.com/)
青髪のアニメライクなルックスで、エロ、グロお構いなしな“アンチ・ポップのポップ・スター”Ashnikkoが、3月に初の来日公演を行った。
これまでロンドンを拠点にTikTokなどソーシャル上で人気を集めてきたAshnikkoだが、会場の東京・恵比寿LIQUIDROOMに赴いた筆者にとって印象に残ったのは、開演前に目の前にいたグループがkemioや整形男子・アレンなど国内のクィア・アイコンをしきりに話題にしていたことだった。辺りを見渡しても、会場はジェンダー的にも人種的にも世代的にも同定できない、開かれた空間となっているように感じられた。
そんなAshnikkoは8月に待望のデビュー・アルバムとなる『Weedkiller』をリリースする。差別に抗する態度そのものがエンパワメントの象徴となっていたAshnikkoであるが、今度の作品は環境問題とテクノロジーをテーマに綴られているのだという。NMEの取材で語ったキーワードは“卵、キノコ、恍惚/多幸感”。Ashnikkoが明け透けに披露してきた強烈な身体性は、よりプリミティヴで深刻な主題を伴い、ミックステープ『DEMIDEVIL』以来およそ2年半ぶりのカムバックを果たす。
いまだにAshnikkoを単なるTikTokスターだと考えてはいけない。東京公演の直前に行った今回のインタビューから、コンシャスなデビュー・アルバムの背景にある心境の変化や苦悩が垣間見えてくることだろう。
Interview & Text by namahoge(https://twitter.com/namahoge_f)
「一貫性があってストーリーを感じさせるようなアルバムを作りたかった」
――大阪でのライブはどうでしたか?
Ashnikko:すごくよかった。日本でライブをするのは初めてだったから、ここで私のリスナーに会うのも初めてだったんです。みんなすごく礼儀正しくて、丁寧で、これまでの経験と全然違って……ステージの下から卑猥な言葉を叫ばれるのに慣れているから。今夜もとても楽しみです。
――日本での滞在中、熊野古道の動画をInstagramにアップしていましたね。
Ashnikko:うん、熊野古道の全部を歩いたわけではないけど、3日間かけて20時間くらいは歩いたかな。本当に、本当に楽しかった。
――熊野古道についてはどのように知りましたか? 伝統的な霊地ですが、日本では若い人が訪れる印象があまりないようなスポットでもあります。
Ashnikko:たしかに若い人は少なかったかも。ユネスコの世界遺産に登録されていたから知って、調べるのに苦労はなかったかな。ツアーに出る前に自然の中で充電するのが好きなんです。スペインにある世界遺産のカミーノ・デ・サンティアゴもいつか歩いてみたいんですよね。
――ハイキングが好きなんですか?
Ashnikko:どちらかというと、アクティブな瞑想が好きなんです。自然の中でひとりで考え事をするような。木々の中にいると心も落ち着きます。
――8月にリリースされるデビュー・アルバム『Weedkiller』では、環境破壊とテクノロジーをテーマにしているそうですね。
Ashnikko:『Weedkiller』の曲の多くは、私にアウトドアな志向が生まれるようになって、サイケデリックをたくさんやるようになったのと同じ時期に生まれたと思います。自然と、今起こっていることの関係性。自然の中に一人でいると、インスピレーションが湧いてくるんでしょうね。
だから正直なところ、熊野古道を訪れた後、コンクリートの世界に戻ってくるのが少し寂しかった。でも、東京は大好きだし、大阪も少し観光しました……それは新しいタイプの冒険なんです。都会でパーティをするときと、もっと瞑想的な状況にいるときと、バランスを取ることが大切だと思っていて。ステージにたったひとりで立つこと、そして自分の体を強く主張することを、相殺できるようにしておかないと。
――今度のアルバムはミックステープ『DEMIDEVIL』からおよそ2年の期間が空いています。シングルのリリースもありませんでしたが、その理由について教えてください。
Ashnikko:この2年間の多くをツアーに費やしていました。体調を整えつつ毎晩のようにライブをするのは大変で、さらにマルチタスクに音楽を作るのは本当に難しい。それでもツアーの隙間で少しずつ曲を作っていって。
それと、ただ単に曲を出すだけではダメだと思ったんです――これまでリリースしてきたようなやり方では。ちゃんと一貫性があってストーリーを感じさせるようなアルバムを作りたかったんです。曲の配置に意味があって、アルバム用の曲だけが入っているもの。私ってひどい完璧主義者でもあって、『DEMIDEVIL』をアルバムと呼ぶのは怖かった。だって、それぞれの曲はアルバムに収まるように意図して書いたわけではなかったから。
「自然に対する愛を伝えようとしているだけ」
――どのようなきっかけでアルバム制作を進めることになったのですか?
Ashnikko:ちょうど2年前に表題曲の「WEEDLKILLER」ができて、同じ時期に、それに伴う短い物語を書いたんです。物語が先か、曲が先かわからないけど。でもその時に、全てのパズルが収まったようにピンときました。「WEEDLKILLER」をタイトルにしてアルバムにしようって。この問題について私はもっともっと言いたいことがある、って。
――その問題というのは?
Ashnikko:私は専門家ではないから、その質問に答えるのは難しいですね……。私はただ、自然に対する愛を伝えようとしているだけだから。生きていれば地球に対してどうしてもインパクトを与えてしまう、でも、そんな中でどうやって恩返しをできるか。そういうことに頭を悩ませているんです。
――スケールの大きなテーマとなったのはどうしてでしょうか?
Ashnikko:うーん、大人になったからかも。でも「WEEDLKILLER」は、人生の中で私を傷つけた人たちを描くような……すごくパーソナルな内容なんです。マクロな評論ではなくて、私個人の体の自律感覚を取り戻す、そんな歌になっていると思います。
それに、個人の体験であると同時に、私が夢見ているファンタジックな世界の話でもあって。自然との相互関係を、視覚的に発想したストーリー。だから音楽だけでなく、物語としても楽しめる内容になっているかと思います。
――物語を作るのに際して、よくご覧になっているという日本のアニメ(※筆者注:『美少女戦士セーラームーン』や『Re:ゼロから始める異世界生活』のファンを公言している)からのインスピレーションはありますか?
Ashnikko:どうだろう。アルバムの中でということなら、たぶん、「Possession of a Weapon」はちょっと『PSYCHO-PASS サイコパス』みたいな雰囲気があります。武器を持っている感じとかね。ビジュアル面では、クリエイティブ・ディレクターが『天使の卵』(※筆者注:1985年公開のOVA。監督・脚本に押井守)や『新世紀エヴァンゲリオン』、あとは伊藤潤二の漫画にすごくインスパイアされているんですよね。
――コラボレーターに関して、すでに先行シングルとしてリリースされている「Worms」のプロデューサーに100 gecsのDylan Bradyが入っていますね。
Ashnikko:そうそう、Dylanとは何度か一緒に仕事をしたことがあるんです。でも、彼が普段やっている音楽性と違うからみんな驚いているんじゃないかな。
――プロデュースのほとんどはSlingerが担当しています。
Ashnikko:Slingerとは私が19歳か20歳の頃から一緒に仕事をしているんです。音楽的な背景も一致していて。今回のアルバムはある種、彼とのコラボレーション作品になっていますね。
今回、私やSlingerがすごく影響を受けたのは映画『DUNE』のサウンドトラックです。私が書いた物語に関連する音を配置するような、スコアのような作品です。物語が上映されるような雰囲気になっていると思う。
――なるほど、楽しみにしています。それでは本日はありがとうございました!
【リリース情報】
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*2023年8月リリース予定
■ Ashnikko オフィシャル・サイト(https://www.ashnikko.com/)

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