【コレサワ インタビュー】
5年間の感謝を
伝えるものにしたいと考えていた
人前でギリ脱げるレベルの
肌着みたいな状況
コレサワさんはご自身の実体験や素直な心情などを活かして歌詞を書かれているわけですが、自分の内面を曝け出すことに抵抗がないのは今でも変わりませんか?
変わらないです。でも、自分にとって見られて恥ずかしいところまではいっていないんですよ、まだ。人前でギリ脱げるレベルの肌着みたいな状況。だから、私的には恥ずかしいと思うレベルでは全然ないです。それは顔を隠しているからというのもあると思いますね。実像がないというか、歌っているのは“れ子ちゃん”(アイコンであるクマのキャラクターの名称)じゃないですか(笑)。だから、ストレートにいけるんじゃないかって気はしますね。
もうひとつ、コレサワさんは多くの女性から共感を得ていますが、女性ウケを狙った歌詞を書いているわけではないことも感じます。
確かにそうですね。女の子の気持ちを描いた曲ですけど、いつも歌っている相手は好きな人とか異性なんですよ。男性に向けての愚痴とか訴えとかを歌った曲だから、女の子のために作っている感覚はないですね。これからも女性ウケとか男性ウケとかは意識せずにやっていきたいと思います。
そうあってほしいです。話を『かわいくしながら待ってるね』に戻しますが、アップテンポの「ペーパードライバー」はアルバムのいいアクセントになっていますね。
これもめっちゃ前に書いたもので。だけど、2回くらいしかライヴで歌っていなかったんです。ライヴの前の日にパッとできて、“明日やってみよう!”と思ってやってみたんですが、その時は“いい曲だな”という感覚にあまりならなくて、また違う時にバンドでもやってみたんですけど、なんかしっくりこなくて、ずっとお蔵入りになっていたんです。それを前作の『サマラブ』(2022年8月発表のミニアルバム)の時に引っ張り出してレコーディングしたら、満足できるものになったんですね。だけど、『サマラブ』には入れないで次にしようと思って、今回入れることにしたんです。だから、この曲は蝉の声が入っているんです(笑)。
出だしの蝉の声で一気に夏に連れて行かれる感覚が魅力的です。
夏のアルバムじゃないから入れなくて良かったんですけど、合うんですよね、この曲に。ちょうど今年のツアーも5月から8月にかけて回るから、夏に向かっていく時期に歌えるということでいいかなと思って活かしました。
正解だったと思います。それに、この曲の浮遊感がありつつ疾走するサビは本当に心地良いです。
そういうふうにしたかったんです。なので、サビらしくないのですが、ヴォーカルをダブルにして左右に振りました。歌が真ん中にあるんじゃなくて左右に平行にあるかたちにして、オープンカーで気持ち良い風を浴びながらドライブしているような感じを表現したかったんです。それに、レコーディングは気持ちは一発録りというか。サウンドも歌もあまり整えすぎないことを意識したので、楽し気な感じとかハッピー感が出ていると思います。
あと、この曲は歌詞が本当に良くて!
恋人と一緒にドライブにいくことに憧れている女の子かと思いきや、この主人公は確実に他の男性とドライブした経験がありますよね。
えっ!? …そう言われると、確かに(笑)。そこは気づかなかったな。でも、この子、めっちゃ助手席に乗っていますよね(笑)。
そういう過去もある女の子ということがリアリティーを生んでいます。
この曲を作った頃につき合っていた人が運転するのが好きな人だったんですよ。なので、めっちゃ助手席に乗っていました。その頃の自分は免許を持っていなかったから、その人が疲れた時とかに運転を変わってあげたいと思っても変われなかったんですね。そういうもどかしい気持ちがあったので、免許を持っていない女の子の心を歌った歌詞になったんです。
ドライブする楽しさを知っていて、でも相手を思いやって強く言えないという歌詞になっていて、主人公が可愛いんですよね。続いて、“せつないけどさわやか”という味わいが10代の恋を彷彿させる「さよなら恋人」も聴き逃せません。
これは言われたとおり、10代の失恋をイメージして作りました。学生時代のことを思い出しながら、それこそ自分ではない人が歌うような感覚で歌詞は書きましたね。今の自分が10代の心を歌うことで説得力があると思って、サウンドは少し大人っぽいというか、落ち着いた感じになっています。リアルタイムの心情を描いたものではないのは私の曲としてはちょっと異色ですけど、メロディーがすごく気に入っているし、いいかたちに仕上がったのでアルバムに入れることにしました。
いつもとは違う作り方をされたんですね。さらに、「君が帰った後には」という弾き語りの曲が聴けることも今作の魅力を高めています。
コロナの時に弾き語りの生配信ライヴをしたんですが、その配信ライヴのタイトルが“君が帰った後には”で、その時のオープニングソングとして作った曲です。
恋人が帰ったあとの寂しさがありつつ満たされている感覚もあるという心情を描いた歌詞とアンニュイなヴォーカルのマッチングが絶妙です。
ありがとうございます。歌詞がすごくお気に入りの曲だから弾き語りでやってもいいかなって気持ちになったんだと思います。自分的には歌詞の意味とかを説明する気はあまりなくて、読んだ人が“なるほど”と思ったり、クスッとしてもらえたらと思いながら書きました。
多くを語っていないのに主人公の姿が鮮やかに浮かんでくるのはコレサワさんならではと言えます。さらに、目の前で弾き語りをしているかのようなリアルな空気感にも耳を惹かれました。この曲は一発録りでしょうか?
いえ、ギターと歌は分けて録りました。この曲はエンジニアさんもとにかく部屋感を出したいと言っていて、最後のほうにルームの音に切り替わるんですよ。エンジニアさんが“こういうのどう?”ってやってくださって、その切り替わりをめっちゃみんなで研究しました。“ここで切り替わってみよう”とか“ここから切り替わったらどうだろう?”という感じで、ここはすごくこだわりました。