クラシックギタリストのパク・キュヒ
にインタビュー 久しぶりに東京で行
うリサイタルへの抱負とは

クラシックギタリストのパク・キュヒが、2023年4月14日(金)紀尾井ホールにて『パク・キュヒ ギター・リサイタル2023』を行う。この度、インタビュー記事が届いたので紹介する。

パク・キュヒが4月14日に紀尾井ホールでリサイタルをひらく。コロナ禍で来日が難しかった彼女にとって久々の東京でのリサイタルとなる。今回のリサイタルは、4月12日に発売されるニュー・アルバム『The Live』に収められている曲が披露される。
ーー今回のリサイタルのプログラムについて教えてください。
4月12日に発売される初のライヴ・アルバムに入っている曲を中心に選びました。そのライヴ・アルバムは、昨年12月にソウルで録音したもので、既に韓国では発売されています。そこでは、コンサートでは弾いてきたけど、あるいは、学生時代から弾いてきたけど、録音のなかった曲を取り上げました。
ーーバラエティに富んだ選曲ですね。
コンサートのプログラムを決めるとき、私はいつもバランスを考えます。いろいろな時代の国と地域からスタイルの違った音楽を選ぶことが多いですね。今回は、ギターの大切なレパートリーをクラシック音楽ファンのみなさんにも紹介したいと思いました。つまり、ギター曲だけではなくいろいろな曲を書いた作曲家、一般のクラシック音楽ファンにもなじみのある作曲家のギターのためのオリジナル曲を中心に選びました。
パク・キュヒ   (c)changho
ーーファリャやヒナステラの作品ですね。
ファリャのギターのオリジナル曲はこの「ドビュッシー讃歌」だけなのです。ファリャが大胆にギターの低音だけを使っているので、ギターの暗いところをお聴かせできると思います。
ピアソラの先生としても知られるヒナステラも、ギター・オリジナル曲はこのソナタがあるだけです。ギターでは南米音楽を外せないですよね。ソナタは、ヒナステラが友人のギタリストにプレゼントした曲です。4つの楽章から構成されていて、第1楽章ではアフリカの民族音楽が使われています。空と大地を表す音楽です。第2楽章スケルツォは南米のいろんなリズムが使われていて、ギターって多彩だと思ってもらえるでしょう。第3楽章は、ラプソディ風の即興の歌です。第4楽章はアルゼンチンのリズム。
ーーベートーヴェンの「ディアベッリの主題による変奏曲」で有名なディアベッリのソナタも弾かれます。
ディアベッリはギターのオリジナル曲を3つくらい残しているのですが、それらはギタリストの大切なレパートリーとなっています。ギタリストのジュリアン・ブリームが、ギターの特長を伝え、ギターの魅力を発揮できるように編曲したものを演奏します。
ベートーヴェンのピアノ・ソナタのような名曲だと思います。古典のしっかりとしたソナタも、ギターの歴史のなかにもあることを知っていただきたいと思います。
ーーシューベルトの作品はいかがですか?
シューベルトには、オリジナルのギター・ソロ曲はないのですが、ギターっぽく書かれた曲はたくさんあります。テノールの望月哲也さんと「美しき水車小屋の娘」全曲をツアーで演奏したことがありますが、そこからシューベルトにはまりました。そして、シューベルトの歌曲をギター・ソロでも弾きたいという気持ちが芽生えてきました。彼の歌曲はギターに本当に合っているといつも思います。チェロの方と「アルペジオーネ・ソナタ」を演奏して、そこからいろいろな方のシューベルト解釈も勉強しました。「セレナーデ」は一番有名な曲ですよね。素晴らしいギター編曲版があります。「涙の讃歌」は、もともとテノールの歌で、ギターの低めの音を使います。ギターにアレンジされたもののなかで一番好きな曲です。
パク・キュヒ   (c)changho
ーーヴィラ=ロボスはブラジルを代表する作曲家ですね。
ヴィラ=ロボスの曲は、子どもの頃、避けていました。不協和音について初めて学んだ曲で、ナスやニンジンなど嫌いなおかずのイメージがあり、苦くておいしさがわかりませんでした。でも、大人になって、彼の深い和音の作り方にはまりました。最近、一番にはまっている、一番好きな作曲家です。大人になって再解釈して、さらに良い音楽にしたいと思っています。前奏曲、ショーロス、エチュードを5曲つなげて組曲のように演奏します。イメージはバガテルのような感じです。すべての曲が違う特徴を持ち、5曲目のエチュードの盛り上がりへと向かいます。
ーー今回のリサイタルへの抱負をお聞かせください。
紀尾井ホールは、大きなキャパシティなのに(PAなしの)生の音で演奏できるというのは、世界でもなかなかないホールなので、そこで演奏できることはありがたいと思います。お客さまの記憶に残る、良い音楽を演奏したいですね。
今回のプログラムは、今私の一番好きなレパートリーを集めた本当に濃いプログラムです。重みはあるけれど、聴きやすく仕上がっていると思います。一つの物語のようにしようと思っていますので、そこを聴いていただけたら、うれしいです。
デビュー10周年のツアーがコロナ禍と重なってキャンセルとなり、その後も日本に来られなかった時期があり、悔しく悲しかったのですが、今年やっと日本でリサイタルができるようになり、そのあたりの熱い思いが伝わると思います。今回は、自分の日本での活動の再スタートというような気持ちのコンサートです。
とにかく楽しいコンサートにしたいと思っていますので、是非、多くのみなさんに来ていただきたいと思っています。
パク・キュヒ   (c)changho
ーー近況を教えていただけますか?
韓国で室内楽のコンサートが増えて、いろんな演奏家の方たちと共演しています。シューベルトでは、ソプラノの方と歌曲を共演したり、チェロの方とアルペジオーネ・ソナタを演奏したり。ピアソラではポップスのアレンジで演奏したりもしました。そのほか、韓国で初めてギター・フェスティバルをひらくので、私の大好きなギタリストたちを招くのがとても楽しみです。
この間、1年ぶりにヨーロッパに行って、オーストリアとスロベニアで演奏してきました。日本では、ソロのコンサートのほか、この6月に坂東祐大さんのギター協奏曲を初演します。
ーー最後に、4月12日に発売されるアルバム『The Live』についてもひとことお願いいたします。
昨年12月に、ソウルの響きの良い150席の小さなホールで4回公演をして、全部、録音して、良いテイクを選んで、ライヴ盤を作りました。今回が11枚目のアルバムですが、人生で1度はライヴ盤を出したいと思っていて、一つの夢をえることができました。
ーーありがとうございました。
ライター:山田治生

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