ナノ

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【ナノ インタビュー】
10周年のアルバムは
未来を感じさせるものにしたかった

10年後の自分が歌う“10年前”は
今よりもっと重みがあるものになる

ちなみに今作の中で一番好きな曲は?

ヴォーカルコラボの3曲、「We Are The Vanguard with DEMONDICE」「Broken Voices with KIHOW from MYTH & ROID」「A Nameless Color with __(アンダーバー)」です。自分のオリジナルよりも大好きすぎて!

そう言えばKIHOWさんとコラボした6曲目「Broken Voices with KIHOW from MYTH & ROID」からも、アイデンティティーの希求という「Evolution」に近しいメッセージは感じたんですが、歌詞はどんなふうに書いていったんでしょう?

全てのコラボ曲で歌詞はコラボ相手の世界観をイメージして書いたので、もうその人なしでは絶対にあり得ない歌詞ばかりなんですね。ちょっとおこがましい言い方かもしれないですけど、その人のために書いた歌詞だから歌ってもらった瞬間、もう鳥肌が立つような、まるで恋文を音読されているような不思議な気持ちになるんです。で、KIHOWさんの歌声ってライヴで聴かせていただいた時、いい意味で未完成な気がしたんですよ。ハスキーな低音でロックもカッコ良く歌いこなせる女性ヴォーカリストって数少ないですけど、どこか闇を持っていて、魂から歌うことを軸にしていて、歌うたびに違う声色が生まれる。その未完成な感じがすごく美しく聴こえて、この壊れた声たちが合わさった時にきれいなメロディーになる…っていうイメージから歌詞を書いていきました。

MYTH & ROIDのTom-H@ckさんによるサウンドも壮大で、“これこそバトルアニメのタイアップ曲では!?”と思いました。

本当にTom-H@ckさんにしかない世界観があって、どうやってナノとKIHOWの声が乗るのか、デモを聴いた段階ではまったく想像がつかなかったんですけど、完成したら大好きすぎて! DEMONDICEとコラボした「We Are The Vanguard」もナノチームでつながって作曲をお願いしたCarlos K.さんからデモが届いた時点で、カッコ良さがヤバかったです。そこからどんどんイメージが湧いてきて! まず、“DEMONDICEは何を目指して歌っているんだろう?”と彼女のライヴや楽曲に触れて感じたのが、やっぱり“世界を変えたいんだな”ってことだったんですね。フォロワー全員に何か刺激を与えて、世界を変えていく…それが彼女のやりたいことじゃないかと思ったから、ナノとDEMONDICEがライヴステージの上から“世界を変えていこうぜ!”って、みんなに声をかけていくようなイメージで歌詞も書いていったんです。

それで“我々が先陣を切っていくんだ!”と宣言するようなタイトルになったんですね。全編英語詞で、しかもラップ詞はDEMONDICEさん自身が書かれているという。

やっぱり英語ネイティブで洋楽を聴いて育ってきたヴォーカリストさんとやると、ノリが独特になるんですよね。しかも、日本の女性でこんなにラップがうまい人は聴いたことがないっていうレベルなので、ラップ詞は絶対に彼女自身に書いてもらったほうが本人も納得いくだろうと、テーマだけ伝えてお願いしたんです。そしたら、みんなの予想を200パーセント超えたようなラップが返ってきて! レコーディングも最初からふたり一緒で、まず自分が主線を録り、次の歌やコーラスを入れて、最後にDEMONDICEにラップをやってもらうという流れだったから、お互いにいろいろやりとりをしてアイディア出ししながらやれました。言ってみれば、遊びながら作業するような、そういうアメリカンなスタイルも今回やりたかったんですよ。

では、__(アンダーバー)さんとコラボした9曲目の「A Nameless Color with __(アンダーバー)」はいかがでした? 蝶々Pさんの作曲・編曲で、こちらは一転、疾走感あふれるポップチューンに仕上がっていますが。

一番サックリできたのが、この曲だったかもしれないです。彼とはお互いを知り尽くしていて、10年間の絆というものがありますから、この曲に関しては特別な想いがあったんですよ。一緒にコラボし始めた当時はお互いアマチュアの歌い手だったのに、10年経ってもこうしてガツガツやっている姿がちょっと泣けるというか。“よく続けてこれたなぁ、本当に頑張ってきたなぁ”という気持ちがあるし、__(アンダーバー)さん自身も10年もあんなに自由で唯一無二の存在でいるのを貫くって、すごく難しいことだと思うんですよ。子供の心をずっと大切にして、普通の人なら大人になるにつれて失くしてしまう夢と希望を忘れない。その姿がタイトルのとおり、何の色にも染まっていない“名もなき色”にしか見えなくて。でも、“ふと疲れた時には10年前を振り返ってみよう”っていう、いわば、この曲は__(アンダーバー)さんに対してのお手紙なんですよね。

彼の生き方をリスペクトしつつ、彼のようにみんなも自分自身の色を見つけていこうと歌っていますから、いわば普遍的な応援歌とも言えますよね。

__(アンダーバー)さん自身が本当にファンのためにエンターテインメントをやっている方なので、必然的にそうなるというか。__(アンダーバー)さんに向けて書きつつ、これはナノたちの声が届く人たちへの応援歌になってほしかったんです。あと、10年前に1stアルバム『nanoir』で彼とコラボした「第一次ジブン戦争」という曲に出てきた歌詞やテーマを使っていたり、それこそラップの部分は丸ごと「第一次ジブン戦争」をリスペクトしたものになっているんですよ。他にも最初に彼とニコニコ動画でコラボした「アンハッピーリフレイン」のタイトルが入っていたりもするので、当時の曲を聴いていた人やアンナノファンには絶対聴いてほしいですね。

《10年前の君に問いかける》というフレーズもあったりして、__(アンダーバー)さんと出会った“10年前”というのがひとつのキーワードになっていますが、だから続く10曲目の「Circle of Stars」では逆に《10年後を想像してみよう》と歌っているんでしょうか?

そうですね。10周年アルバムだからこそ“10年”というのは大事にしていたところではあって、10年先の自分にとっては今が10年前になるだろうし、10年後の自分が歌う“10年前”という言葉は今よりもっと重みがあるものになるだろうし。たぶん歌い続けるごとに重みを増していく歌詞だろうから、この曲たちを10年後の自分が歌った時にどう感じるのか楽しみですね。

7曲目の「CATASTROPHE」で絶望を歌っているのに、続く「Happiness」からは未来への希望があふれ、「A Nameless Color with __(アンダーバー」で10年前を振り返りつつ、最後は「Circle of Stars」で美しく締め括るという流れも感動的でした。

あぁ、嬉しいです! 最初はカッコつけた曲を持ってきて終わるアイディアもあったんですけど、やっぱりハッピーエンドは誰もが望むものなので、きれいに終わるのがベストかなぁって。そのへんの曲順はかなり今回こだわりました。

生きる意味を求めて歌い続けようと表明する2曲目の「FIGHT SONG」から、みんなを鼓舞する「We Are The Vanguard with DEMONDICE」の流れも胸アツですし、「FIGHT SONG」を作曲された堀江晶太さんもナノさんご自身たっての希望でオファーをされたそうですね。

自分にとって堀江さんは最初に大切な曲をくれた作家さんなんですよ。「No pain, No game」(2012年10月発表のシングル)はアーティストとしての軸を作ってくれた曲で、完成した当時には“自分、もしかしたらアーティストとしてやっていけるかも!”っていう自信もくれたんです。なので、堀江さんには感謝しかなくて、今回も絶対に曲提供してもらいたいと思って“堀江さんの思うナノを書いてください”とオファーしたら、当時の面影もありつつパワーアップした楽曲が届いて。自分の“FIGHT”を書きつつ、最終的には聴いている全ての人が明日に挑める応援歌にしようと、ネガティビティーから始まるポジティブを書きました。

だから、力強いデジタルロックで《この硝子のメンタリティー》なんていう素直な言葉が、ポロッと書けたのかもしれませんね。4曲目の「Heart of Glass」と併せて聴いて、実はナノさんの心って硝子なのかもなと感じました。

よく気づきましたね! 自分って外見は誰にも労ってもらえないくらい強いイメージなんですけど、実は結構弱くて、いつも打たれまくっていて、心がグシャグシャになったりもするんです。だけど、強がって、それをずっと隠して育ってきたから、一周回ってそんな自分に歌いかけたのが「Heart of Glass」なんですよ。アルバムで唯一の、もう恥ずかしいくらい自分のための曲であり、ライヴでひとりの世界に入って歌うための曲なので、早くライヴで歌いたいですね。作曲の草野華余子さんとも、まさかご一緒できるとは思っていなかったから、決まった時はすごく嬉しかったです。編曲の岸田さん(岸田教団&THE明星ロケッツ)も以前に別の曲でご一緒させていただいたので、まさに夢のコラボですね。

アーティストという仕事を選ばれている人って、多かれ少なかれ硝子の心を持っているように感じるんですよ。本当にハートの強い人はむしろ芸術なんてやる必要がないわけで、欠落があるからこそ芸術で埋めようとするんじゃないのかなって。

そこがすごく難しいところで、硝子の心って割れちゃったら終わりなんですよね。だから、割れないように必死にもがいて、だからこそ音楽に縋って、救いを求めて自分の全てを注ぎこむ。たぶん普通の社会で生きようとしたら、とっくに割れちゃっているところ、自分のクリエイティビティーに勇気をもらって、ファンからパワーを貰って、なんとかやっていけているんです。リスナーのパワーって本当にすさまじくて、みんなの声にどれだけ救われてきたか! だから、最後は《Finally the life in my heart of glass is breaking away》って解き放たれるんですよ。“break away”って“しがみついていたものから離れる”っていう意味なんで、ようやく硝子が壊れなくなるんです。

じゃあ、これはハッピーエンド?

そうですね。救いかな? 自分の人生は正直まだそこまで辿り着いていないんですけど、やっぱり解き放たれることが自分の希望なので。そして、解き放たれるための唯一の方法が自分とともに苦しんでいる“君”に音楽を届けていくことなんです。

だから、《君の温もりに触れて》とあるんですね。そんな苦しみや弱さも認めつつ、希望を歌うアルバムなのに、タイトルに“NOIXE”(ノイズ)と名づけた意図は何だったんでしょう?

結局、音楽っていろんな音が組み合わさることで成り立っていて、もとは全部雑音だし、同じように人生もいい意味での雑音が合わさってできているんじゃないかと思うんです。このアルバムだって一曲一曲はテーマが違うし、バラバラに聴こえるかもしれないけど、全部通して聴くと“これがナノの人生だ!”って言えるものになっているわけで、雑音って必ずしも排除すべきものじゃないんですよね。足してみたら、もしかして自分にとって素晴らしいものになるかもしれない。つまり、人生に無駄なものなんてひとつもないっていうことです。

そこまで深い意味合いがあったとは! とはいえ、タイトルに“ノイズ”を冠している「Let's Make Noise」のメッセージは、それとは若干異なる気も…。

逆に、これはただ馬鹿騒ぎができる曲が欲しくて作った曲なんですよ。自分の曲ってメッセージ性の濃い曲がほとんどで、たまに“重いな〜”って疲れてしまう時があるから、みんなと一緒にただ雑音を鳴らして、音を出して声を出して、全部忘れられる曲が欲しかったんです。だから、作詞もいつもとは全然違うやり方で、捻った要素も深読みされる要素も何もなく、“もうメッセージなんてどうでもいい! ただ騒ごうぜ!”というノリで書きましたね。いい意味で薄っぺらい曲です(笑)。

確かに客席が声をあげ、腕を振り上げている景色が見える曲ですよね。じゃあ、そのイメージを作曲の木暮栄一(band a part)さんにもお伝えして?

そうですね。木暮さんってバンドをやっているので、いい意味で音が生々しいんですよ。直しも少なくて、まさにバンドで演奏しているかのような仕上がりになっているのがこの曲の良さだと思います。

と、いろんな想いが詰まった10曲なのに、トータル分数は40分もなくて。意外と短いのにも驚きました。

だから、すごく濃厚なんですよね。この濃厚さでもっと長かったら、お腹いっぱいになってデザートに行けなくなっちゃう。今回はアニソンカバーが5曲入ったDISC 2がデザートみたいな位置づけなので、最後は大好きなあの名曲たちをナノバージョンで聴いて、ただただハッピーになってほしかったんです。イメージとしてはアイスクリームをポンポンポンと5スクープ乗せたような感じですね。

デザートとはいえ「TRUTH〜A Great Detective of Love〜」以外は全て自ら英訳詞されていますから、それなりに時間と手間はかけられてません?

確かに(笑)。全世界の人たちに届けたくて、海外で人気のあるアニソンを選曲しましたから、特に海外の人たちの反響が楽しみですね。

YouTubeでの英語動画にせよ、海外のファンに届けるということをナノさんは非常に大切にされていますよね。そこには何か使命感みたいなのもあったりします?

海外を見ていて、自分がデビューした頃からまったく変わっていないのが、アニメ人気なんですね。日本のアニメやアニソンって本当にすごいと改めて思いますし、自分が過去にアニソンを英訳して歌った時、海外の人たちから“やっとこの曲の意味が分かった”とか“今まではデタラメに歌っていたけど、よりこの曲を好きになった”とかって言ってもらえて、すごく嬉しかったんです。逆に、曲の素晴らしさや良さが半分も伝わっていなかったと思ったら悔しくて。もちろん日本語のままの本家様でも十分カッコ良いんですけど、自分は歌詞が大好きな人間なので、この歌詞の素晴らしさを伝えざるを得ないっていう使命感はあるかもしれないです。なので、“まず本家様を聴いてください。その上でナノの英詞で聴いてみてください!”って言いたいですね。

とはいえ、原曲のメッセージを極力残しつつ、英詞でもカッコ良く聴こえるように翻訳するというのは、かなり難しいですよね。

そこは技術が必要なので、自分の今までの作詞家としての能力をフル回転させてます。直訳だと歌がカッコ悪くなっちゃうんで、洋楽っぽくも聴こえるんだけど歌詞の世界観は本家様っていうバランスは、もうめちゃめちゃ大事にしていますね。あとは、日本人からしても慣れ親しんだ曲たちが英語で歌われることによって新鮮に響いたり、また改めて原曲を聴くきっかけになったりするかもしれないじゃないですか。さらにチャレンジャーな人たちには、ぜひ英詞で歌ってもらいたいです!

そして、アルバム発売を記念してのワンマンが渋谷ストリームホールで開催されますが、こちらには__(アンダーバー)さんもゲスト出演されるとか。

実は他にもゲストが登場する予定なんですよ。なので、ちょっとフェスに近い感覚で、みんなに楽しんでもらえるライヴになる自信は120パーセントあります! ライヴタイトルの“NOTHING BUT NOISE”は“もうノイズでしかない!”という意味で、みんなのいろんなノイズが集まって最高の傑作になるというイメージですね。デビュー日の3月14日には11周年を迎えるので、このライヴが開催される頃には10周年イヤーは終わっているんですよ。なので、次の10年の第一歩になるライヴになってほしいし、この日のステージに立った時は、たぶん未来しか見ていないです。それまでにみなさんにもアルバムを聴いてもらって、一曲一曲にナノとしてのメッセージはありますけど、それが全てではないですし、聴く人によって解釈も違うだろうから、それぞれ自分に当てはめてほしいって今回は強く思っています。自分もいろんなアーティストの曲を聴いて、それがご本人のために書かれた曲でも、いつの間にか自分のファイトソングになって救われたりしているから、ぜひ自分のファイトソングや癒しソングを見つけてください!

取材:清水素子

アルバム『NOIXE』2023年2月8日発売 日本コロムビア
    • COCX-41945〜6
    • ¥4,400(税込)
    • ※CD 2枚組

ライヴ情報

『NOTHING BUT NOISE』
4/08(土) 東京・渋谷ストリームホール

ナノ プロフィール

ナノ:アメリカ・ニューヨーク州出身。卓越した歌唱力で日本語と英語を使い分けるバイリンガルシンガー。2010年よりYouTubeなどの動画サイトに、洋楽等のカバー楽曲の投稿を始め、12年に1stシングル「nanoir」にてデビュー。オリコンデイリーランキング10位を記録し、新人では異例のチャートアクションを起こす。翌年3月に行なわれた新木場STUDIO COASTでの1stライヴは2,500枚が即日完売に。15年に発売した3rdアルバム『Rock on.』はオリコンデイリーランキング4位を獲得するなど、J-POP界において、確固たる地位を築いている。また、これまで数多くのアニメ主題歌を担当、国内のみならず海外からの支持も獲得し、海外ワンマン公演をはじめ、数々の海外フェスにも出演。YouTubeオリジナルコンテンツは総再生回数1億回超え、2020年に行なった配信ライヴでは日本を含めた世界23カ国にて視聴された。その人気はとどまることをしらず、その歌声に、国境はない。ナノ オフィシャルHP

「Evolution」MV

『NOIXE 』
クロスフェード動画(Crossfade video)

OKMusic編集部

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