『REBEL STREET』('82)/V.A.

『REBEL STREET』('82)/V.A.

P-MODEL、町田町蔵、
ALLERGY、ZELDAら
ポストパンクが集結した
『REBEL STREET』

『REBEL STREET』('82)/V.A.

『REBEL STREET』('82)/V.A.

2022年の締め括りである今週の邦楽名盤紹介は何にしようかとあれこれ考えていたのだが、どれもこれも決定打に欠ける気がしていたところ、先日、当コーナー担当編集者から『REBEL STREET』を渡された。そうか、今年はこのオムニバス盤が出てからちょうど40年か。そこに触れた媒体をまったく見ていないし、それを記念して復刻盤が出たというニュースも聞かないけれど、“祝、『REBEL STREET』40周年”なのだ。ここ数年、独断と偏見が強くなってきた当コーナーである。令和4年の最後はニューウェイブ、ポストパンクの歴史的名盤と言っていい、このアルバムを取り上げてみた。(CD版が出た時、タイトルが『REBEL STREET I』となったようだが、本稿では『REBEL STREET』で統一しています)。

貴重な情報収集の場だったオムニバス盤

さっきラジオを聴いていたら、映画『ホイットニー・ヒューストン I WANNA DANCE WITH SOMEBODY』を紹介する場面に出くわした。“先週公開されたんだよな? 観に行かなくちゃなぁ…”などと思っていると、パーソナリティーの方が、彼女がどういうシンガーであるかを説明。その中で、1992年の映画『ボディガード』を上げて、ホイットニー自身も歌っているこのサウンドトラックアルバムは史上最も売れたサントラだと言いながら、“今の若い人はアルバムと言っても分からないかもしれないね”と自嘲気味に言葉を継いでいらっしゃった。えっ、そうなの!? 今やサブスクリプションが主流で、アルバム単位で音楽作品に触れる必要がなくなっていることはそれなりに分かっていたつもりだが、ある世代にとってアルバムは過去の遺物になっているのか…。そのパーソナリティー氏の物言いはかなり大袈裟なものだったのかもしれないけれど、パラダイムシフトに完全に置いていかれたようでショックはショックである。これもみうらじゅん氏が言うところの“老いるショック”の一種だろうか。

アルバムが遺物であれば、オムニバスアルバムという形態はもはや化石に近いものかもしれない。“オムニバス”とは[芸術分野においては、複数の作者による独立した作品を集め、ひとつにまとめたものもの]であり、[音楽の場合は、複数のアーティストの音源をまとめたアルバムを「オムニバスアルバム」と称する]とのこと。[ある特定のテーマに沿って編集したオムニバスアルバムを「コンピレーション・アルバム」と呼ぶことがある]とも付け加えられている([]はWikipediaからの引用)。大雑把に言うと、テーマ性の高いオムニバスがコンピレーションといったところだろうか。個人的な思い出を語らせてもらえれば、このオムニバス盤というスタイルは金のない若い時分には随分とありがたい代物だった。とりわけ、当時ですらラジオでもほとんどかからないようなジャンルの音楽を聴けるという点では、新しい音楽の見本市…というと大分大袈裟な言い方だけど、それに近い利便性を持ったアルバムであったように思う。自分に限らず、多様化していく邦楽シーンにおいて、テレビやラジオに飽き足らないリスナーにとっては貴重な情報収集の場であったことは間違いないのではなかろうか。個人的にオムニバス盤と聞いて思い出すのは1982年リリースの『REBEL STREET』である。どんな作品か。本作にはどんなアーティストがそれぞれどんな楽曲を提供しているかを説明するのが手っ取り早い。以下、個別に解説する。

M1「Turnin' Loose」/E.D.P.S.
“東京ロッカーズ”の中心的存在だったバンド、フリクション。そのギタリストだったツネマツマサトシが脱退後に結成した3ピースバンドがE.D.P.S.である。エッジーなギターサウンドはニューウェイブらしくあるものの、ファンキーでありつつ骨太なリズム隊はロックそのもの。ポストパンクにありがちな単調さもあまり感じられず、実にグルービーな演奏を聴かせている。特に後半のテンションの高さは圧倒的な聴きどころだろう。

M2「Erua Ela」/Chance Operation
フリクションの前身バンドと言っていい3/3を経て、これまた“東京ロッカーズ”のバンドのひとつであるミラーズの中心メンバーとなったヒゴヒロシ(肥後宏)が1980年に結成したバンド。地を這うようなリズムに絡むサックスのリフレインはポップだが民族音楽的で、耳に不思議な感覚を刻む。ギターは終始インプロ、アドリブっぽい。そうかと思えば、中盤で聴こえてくるベースのフレーズはファンキーであって、予測不能のおもしろさがある。

M3「Modern Beat」/Lizard
Lizardも“東京ロッカーズ”のバンドのひとつ。エフェクトをかけたヴォーカルや随所で登場するシンセサイザーを駆使した音色はニューウェイブ感が際立ってはいるものの、クールな構成が楽曲全体に独特の緊張感を与えている。そこがスリリングでとてもいい。基本のバンドアンサンブルがしっかりとしているからだろう。中盤のソロパートでキーボード→ギターとリレーされる箇所はプログレからスノッブさを漂白した感じで(?)聴きやすい。

M4「あわのうた」/NON BAND
1970年代後半、AUTO-MODのGENETとマリア023を組んでいたNONが脱退後に結成したバンド。楽曲全体を彩る躍動感のあるフィドルに、途中からスティールパンも加わって、他にはない幻想的な世界観を創り上げている。そして、NONの可愛らしいヴォーカリゼーション。“バンドじゃない”というバンド名も相俟って、まさにポストパンクと言って良かろう。アウトロ近くで聴かせる短いアンサンブルからはすっぴんのバンドの姿も垣間見える。

M5「フ・ル・ヘッ・ヘッ・ヘッ」/P-MODEL
この時期、すでにメジャーで3枚のアルバムを発表していた、言わずと知れた日本を代表するテクノバンド。これは『ANOTHER GAME』や『PAUSE』、『核P-MODELライブ達成記念』などにも収録されている楽曲の最も古いバージョンだという。パッと聴きには妙な難解さはなく、アッパーではないけれどしっかりダンサブルではあって、演奏の緊張感もある。ポップなナンバーと捉えることもできるだろう。歌詞の解釈さえ求めなければだけど…。

M6「ボリス・ヴィアンの憤り」/和田哲郎with町田町蔵
もはや作家としての顔がすっかり定着したパンク歌手、町田町蔵(現:町田康)と、連続射殺魔でヴォーカル&ギターを務めた和田哲郎(現:琴桃川凛)とによるユニット。アジテーション風にシャウトしていく歌のスタイルは何ともらしく感じるところだが、ドライなギターサウンドはニューウェイブ調で、アフターパンクを意識していたことを想像させる。リバース的な音処理も、さほどサイケサイケしてないところもいい。意外にも結構ポップ。

M7「Wake Up」/ALLERGY
のちに、元BOØWYの高橋まことやPERSONZの本田毅らとともにDe-LAXで活動することになるヴォーカリスト、宙也。彼が中心となって1981年に結成されたバンドがALLERGYだ。ロックバンドらしい疾走感の中にも明るく弾けるような空気感がある上、アンサンブルの巧みさ、展開の妙味など注目すべきポイントは多い。パンクの先を見据えていたバンドの志しの確かさをうかがわせるナンバーと言える。歌詞にもポジティブなスタンスが感じられる。

M8「のみ水」/突然段ボール
元たまの石川浩司のランニング姿は突然段ボールからの影響だったというのは知る人ぞ知る話(石川と突然段ボールはのちにコラボ作品を制作している)。この楽曲からもナゴム勢にも似た変則的なポップさが感じられる。パンクからDIY精神を上手く抽出し、自由闊達にクリエイティビティを発揮した印象。2003年に中心メンバーのひとりだった蔦木栄一(Vo)が逝去するも、メンバーチェンジを繰り返し、活動休止することなく、現在も活動中。

M9「ロンド」/Shampoo
P-MODELの平沢進のプロデュースでデビューした折茂昌美(Vo&Gu)と足立眞理(Key)によるユニット(1990年代にヒットしたイギリス人女性デュオとはまったくの別物)。ダウナーなサウンドに乗せて無機質な歌が繰り返される様子はまさにロンドであって、この時期のニューウェイブのひとつの側面とも言えるだろうか。そんな中でチラリと聴かせるギターのメロディアスなフレーズが心憎い。彼女らも解散することなく現在も活動中だ。

M10「ここ そして ここじゃない場所」/DAISUCK & PROSTITUTE
1970年代には“ジャックス・ミーツ・夕焼け楽団”や“ヨコハマ・ロックの導師”とも言われていた吉野大作。プロスティテュートは彼が1980年に結成したバンドで、ここではその1stアルバムのタイトルがアーティスト名となっている。ノイジーでフリーキーなギターとサックスが奔放に鳴らされるアバンギャルドなナンバー。間違いなく即興だろう。ライヴ録音で音は粗いが、それゆえに鬼気迫る演奏がダイレクトに味わえる。

M11「ソナタ815」/ZELDA
最も長く活動した女性ロックバンドとしてギネス認定されたガールズバンドの草分け的存在。本曲はLIZARDのモモヨがプロデュースしたアルバム『ZELDA』にも収録されたナンバーで、これはそのプロトタイプといったところか。ハンドメイド感が伝わってくる録音状態は今となっては当時の彼女たちの意欲を感じさせる。民族音楽的なリズムからは、のちにワールドミュージックに傾倒していく彼女を見出せる…とは穿った見方だろうか。

OKMusic編集部

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