L→R 真一ジェット(Key)、細川大介(Gu)、松川ケイスケ(Vo)、塩﨑啓示(Ba)、重田雅俊(Dr)

L→R 真一ジェット(Key)、細川大介(Gu)、松川ケイスケ(Vo)、塩﨑啓示(Ba)、重田雅俊(Dr)

【LACCO TOWER インタビュー】
このバンドで
追い求めてきたものって、
生きていくための術だった

みんなで乗り越えていくという想いは
10年前と比べものにならないほど強い

「魔法」「棘」「非公認」と新曲も3曲収録されていますね。

松川
前に大介が言っていたんですけど、ベストだからって昔を振り返るだけじゃなくって、これから先の第一歩も置いておきたいっていう。だから、新曲は絶対に入れたかったんです。
細川
ベストってどうしてもひと区切りついちゃうイメージだったので、そうなりたくなかったから新曲を入れたいと。さらに、僕たちの曲を象徴するようなものとして、白っぽい曲、黒っぽい曲を作ろうと思ったんです。あと、20年やってくる中で、白でも黒でもない、灰色っぽい曲も出てきたから…今までは自分たちのために歌っていたものが、タイアップとかをやらせていただいて、誰かのための歌うことも出てきたんですよね。そこで生まれた曲は激しいんだけど、ちょっとやさしいところがあって。だから、今回は白が「魔法」で、灰色が「非公認」で、黒が「棘」という。

分かりやすい説明をありがとうございます。ただ、「魔法」も真っ白というよりは絶妙な色合いですよね。

細川
それは歌詞の面も大きいですよね。

そうなんです! 曲調はポップなんですが、歌詞はドロッとした文学の香りがするじゃないですか。

細川
“白だとこうだ”と決めつけちゃうと、どんどん狭まっていっちゃうじゃないですか。そうはさせないのがケイスケの歌詞の能力で。ただの白っぽい曲で終わらせないんですよね。
松川
僕、そんなに突き抜けてハッピーな歌詞を書くことができなくて。できないっていうのは、僕がそう思っていないからなんですよ。もともと根暗なので(笑)。で、曲作りに僕は参加しないんですね。曲は僕以外のメンバーで作って、そのあとに僕が歌詞を書くっていう。みんなが“この曲はこうだ!”と分かりやすいかたちで出してくるケースが最近は増えていて、そうすると僕は歌詞をとことんドロッと書けるっていう(笑)。ちょうど昨日完成したんですけど、MVを観ていただければ、僕が考えていたことが分かると思います。

すでにMVが公開されている「棘」では、今のLACCOらしい“黒”が表現されているというか。《「未来」になれない「明日」の死骸を 棘棘に変えて》という歌詞も、年齢を経たからこそ染みるものがあると思いました。

松川
それだけ聴くと、本当に暗い言葉を使っていると思うんですけど(笑)。「棘」はあえて中2っぽく書いたんです。速いビート感も我々が今やるからいい味が出るのかなって。

MVでは細川さんがエレキギターは以前からの右利きで、アコギは新たにレフティーで弾いているシーンが映し出されていますが、2022年7月に局所性ジストニアであること、スイッチギタリストになることを発表されていましたね。

細川
この曲、左で弾いているところも何カ所かあるんです。というのも、これを作った時に、啓示が“この曲に左で弾いたギターを入れろ”と言われて。レコーディングした頃は、まだたいして弾けなかったんです。それでも絶対に入れろと。“下手くそでもいいからパッケージに残してくれ。それが歴史を作っていくんだ!”と言われ、無理矢理頑張ったっていう。
松川
あいつ、そういうの好きだからね(笑)。

塩﨑さんはうまい下手じゃなく、細川さんという人を曲の中に入れたかったんだと思いますよ。

細川
そうですね。僕、今までは完璧なものしか作りたくなかったし、完璧なものしか見せたくなかったんです。すごい神経質なので。今回の左で弾いたギターも自分としては納得していないんですけど、それでもいいかなって吹っきれて。レコーディングではアコギはMVのように左で弾いていないんですけど、エレキは何カ所かを左で弾いています。

では、MVは“これからは左でも弾いていきます!”という姿勢の表明?

細川
そういうことですね。

先日、ツアー延期を発表した松川さんの喉の不調もですけど、こういう病気や怪我は今後もあるかもしれないじゃないですか。でも、それをカバーできる技術や心の強さが、今のLACCO TOWERにはある。それも20年らしさのひとつだと思います。

細川
ありがとうございます。それはチームの心の強さだと思っていて。僕ひとりだったら辞めちゃっていたと思うし。でも、メンバーが“そのままでいいよ”って受け入れてくれたり、弾けるまで待っていてくれたり。ケイスケの喉の調子が悪い時も、僕らでどうやってフォローできるか考えて。いつ、誰が、どうなるか分からないですけど、みんなで乗り越えていくっていう想いは、10年前とは比べものにならないぐらい強いです。
松川
やっぱり僕らぐらいのキャリアになると、何かしらの爆弾を抱えていて。僕は歌い方を変えながら、自分に合わせながらやってきたので、何かが起こって立ち止まる瞬間には意味があると思っているんですよ。そういうのは今までにも何度かありましたけど、今回はなかなかヘビーでしたね。ただ、とんとん拍子できたバンドではないので、そういうところもアルバムに出ていると思います。

そして、もうひとつの新曲「非公認」は分けるなら灰色とおっしゃっていましたね。

細川
ザスパクサツ群馬さんとタイアップさせていただいてから、僕たちは応援歌を作るようになっていったんですね。その時に、みんなを鼓舞するような曲を作るためには、自分たちが今までカッコ良いと思ってきたものだけでは作れないことに気づいたんです。例えば、みんなで一緒に歌うことは、それまでやってきていなかったんですが、チャレンジしていって。そうやって出来上がった曲を聴くと、白と黒どっちなのか分からなくなってきて。ただ、いい塩梅の灰色みたいな曲ができたのは嬉しかったんです。今回の「非公認」はザスパクサツさんの公式タイアップソングではないんですけど、僕らはまったく同じ気持ちで作ったから灰色の曲になったっていう。

自分たちだけではなく、いろいろな人やものの色が入って、いい意味で淡くなる、広くなるということでしょうか?

細川
そう! どっちつかずっていう感じではないんですよ。白と黒に青とか黄色とか、いろんなものが混ざって灰色になったみたいな。ある意味、深みがある色ですよね。

これ、公式の応援歌じゃないから“非公認”というタイトルになったんですか?

松川
そのとおりです。これ、載せていただいていいんですけど、僕らはずっとザスパクサツの応援歌をやらせていただいていて、毎年毎年“どういうことを書けば応援歌として成立するんだろう?”ってどんどん考えるようになったんですね。その中で、たまたま今回は公式としてのご縁がなくて。ただ、今回はあまり上手にお別れできなかったんです。いろんな事情があるので、100パーセント文句だけではないんですが、その状況を黙って頷けるほどザスパに対しての応援を安く考えてもいなかったので(笑)。でもだからって、応援したくないとはまったく思わなかったんです。それは別の話なので。だから、公認をいただけなくても、応援したいんであれば誰でも応援していいっていう曲を書こうと思ったんです。その中で、多少は僕の中の“やんちゃ”が騒いで(笑)、公認じゃないならタイトルも“非公認”でいいんじゃないかっていう。

怒りとか文句ではなく、ウィットというか、逆に愛を感じました。

松川
そうです。言いたいくらいの文句があるなら直接言っていますし。純粋に、応援しているチームには勝ってほしいし。ただ、事実は事実なので。

他のいろんなことにも重ね合わせられそうな心境ですよね。

松川
日本語のいいところって、そこだと僕は思っていて。余白がある歌にしたかったんです。まぁ、僕らしか分からない内情も、実は入っていますけど(笑)。

そして、ジャケットも非常にアーティスティックですね。

松川
これ、心臓と同じかたちなんです。このバンドで追い求めてきたものって、流行とかではなく、生きていくための術だったから、20年を表現するとなると心臓だったんですよ。で、我々のアイデンティティーは何かっていうところで、各メンバーの楽器の一部が入ったものと、果物…果物ソングは我々の代名詞なので、そこをまとめて入れたっていう。

では、“絶好”というタイトルの心は?

松川
これは大介が言ってくれた、新曲を入れたかったっていうところと似ているんですけど、ここで終わりではなく、今がまさに絶好のタイミングっていうことで。これから歩いていく未来もそうですし、みんなのいろんな絶好なタイミングに、僕らの楽曲が寄り添えればいいなっていう想いがあって。あと、“絶好”って“絶好”だけでなかなか使いませんよね。“絶好の○○”って使うので、その○○にそれぞれの何かが当てはまるように。

そんな未来に関して見えているものはありますか?

細川
メンバーみんなに言えることだと思うんですけど、変わらないことが怖かったりするんですよ。“LACCO TOWERってこういう感じだよね”って言われたら崩したくなるし。次のアルバムも今までの延長線上で作ろうとは思っていなくて。まだ具体的に動いているわけではないんですけど、僕の頭の中では“これをLACCO TOWERでやるんだ!?”って振りきってもいいのかなって。20年やってきたし、もっともっと新しいところに挑んでいきたいと思いますね。

その前には、1月からは20周年ツアー『絶好旅行』の振替公演もありますしね。

松川
そうですね。僕のせいで長引いてしまって(苦笑)。
細川
ケイスケの件もあるけど、20周年は一年だけじゃないと僕は思っていて。今まで一年に一枚アルバムを出すっていうルーティンがなんとなく決まっていたけど、それも取っ払うような感じで、このアルバムを持って長くツアーを回るのも面白いと思っています。

長く楽しめそうなアルバムですしね。

細川
そうですね。だからこそ、次のアルバムは相当なことをやらないと埋もれちゃうなって(笑)。

取材:高橋美穂

アルバム『絶好』2022年12月7日発売 日本コロムビア
    • COCP-41841〜4
    • ¥6,050(税込)

『LACCO TOWER 年忘れワンマンライヴ「みんなが選曲 LTS146総選挙」』

12/26(月) 東京・渋谷Spotify O-Crest

LACCO TOWER プロフィール

ラッコタワー:日本語の美しさを叙情的リリックで表現し、どこか懐かしく切なくさせるメロディー、またその世界とは裏腹な激情的ライヴパフォーマンスで、自ら“狂想演奏家”と名乗り活動。自身主催のロックフェス『I ROCKS』を2014年から開催している。復活したレーベル『TRIAD』と契約し、15年6月にアルバム『非幸福論』でメジャーデビューを果たし、20年に5周年を迎えた。LACCO TOWER オフィシャルHP

「魔法」MV

「棘」MV

「藍染」MV

OKMusic編集部

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