「全日本模型ホビーショー」で見る美
少女プラモキットの現状

 まずは最近のフィギュア・ホビー事情から。

 やはりなんといっても大きいのは、世界的な物価の急上昇に加えて、最近の円安がどこまで続くか、どう推移していくかで今後の業界に大きな影響を与えることになりそうなこと。
 現在の状況でフィギュアの値付けをすると、通常サイズで3万円程度が割と普通になった感じになっています。1年前に受注があったフィギュアが最近発売されていますが、それがだいたい1万円台半ばでものすごく安く感じるようになっているというのも怖いところ。この状況にあわせて、フィギュア企画も大きく変わってきそうです。
 明るい話題としては、ホビー系リアルイベントがコンスタントに開催されるようになってきたこと。最近もネイティブの18禁フィギュアを集めた通称「エロホビ」やボークスの「ホビーラウンド」、そして「全日本模型ホビーショー」が同日に開かれていました。11月は13日に「AK-GARDEN」、18~20日に「TAMASII NATION」、26日に「メガホビEXPO」と3週連続でイベント開催が予定されています。いつも書くことですが、立体は実物を目の前で見てこそ、その魅力が伝わるもの。ウィズコロナのなかでのホビーイベント開催は主催者側も苦労が多いと思いますが、今後も楽しみなのです。
 今回はそんなホビーイベントのなかから「全日本模型ホビーショー」について。ますます隆盛を見せる美少女プラモデルについてレポートしましょう。
 まずは美少女プラモの最先端、コトブキヤ。
 「メガミデバイス」「フレームアーム・ガールズ」など定番の人気シリーズに加え、メカ系の元祖ともいえる「武装神姫」のプラキット化新作「ストラーフ」も登場。ファンタジー系「アルカナディア」ではケモ耳&ケモ尻尾キャラやケンタウロスなど意欲的なバリエーションを展開。普通の女の子のプラキット「創彩少女庭園」も新作やアクセサリなどを発表しています。
 幅広いラインナップはさすがコトブキヤ、クオリティ含めこのジャンルでは一歩先んじているのです。
 アオシマは「マクロス」関係を展開。
 バトロイド少女の新作の発表や今後のラインナップのチラ見せなどを行っていますが、注目は参考展示のランカ・リー。付属の専用布服を着せることができるという、いわばプラキットとドールの中間的な仕様なのです。
 最大規模のブース規模を誇るBANDAI SPIRITSでもいくつか美少女プラモデル系がありました。
 すでに一部発売中で大人気になっていますが「機動戦士ガンダム 水星の魔女」の主要キャラを「Figure-rise Standard」で展開。プラキット展開最初期から美少女キャラが用意されているというのは、時代の変化を感じます。
 BANDAI SPIRITSのオリジナルシリーズ「30MS(30 MINUTES SISTERS)」では新作発表もありましたが、「ウマ娘 プリティーダービー」とのコラボでトウカイテイオーも発表。トウカイテイオーは「Figure-rise Standard」で発売されたばかりというタイミングでしたが、違う規格での登場。その企画意図や仕様の違い、さらにそれぞれのシリーズでその他の「ウマ娘」の展開があるのかどうかというのも気になるところ。
 そして、グッドスマイルカンパニーとマックスファクトリーブース。
 美少女プラキット関係では、それぞれのシリーズの新作等を展示していますが、マックスファクトリーは「エヴァンゲリオン新劇場版」のアスカとマリのプラキットも発表。これは今回のホビーショーでの個人的最注目アイテムです。
 このフィギュアはもともとPVC製完成品フィギュアとして発売されていたもの。元のフィギュアは1/6スケールで全高約27.5センチですが、見た感じでは1/8スケールの全高20センチくらいに縮小されていました。
 このプラキット化でおもしろいのは、これはキャラクターのプラキット化ではあるのですが、同時に“フィギュア”のプラキット化、再モデル化であるということ。これまでマックスファクトリーはガレージキットで出ていたロボをプラキット化していましたし、フィギュアでいえば「DEAD OR ALIVE」の霞のプラキット化も行っていました。ただ、霞の場合はもとのフィギュアからはかなり小さな1/20スケール。今回のマリ、アスカはオリジナルに近いサイズでの女性フィギュアのプラキット化というのが異なるのです。このサイズであれば、元の原型が持っていたディテールやニュアンス(PVC化されたときにはどうしてもだるくなる部分も)含めてプラキットに落とし込めていると思われます。日本のフィギュア業界のトップ原型師のひとり、智恵理氏の原型が楽しめるプラキットということでも注目なのです。また、この2体だけではなくシリーズが続くことを匂わせた告知も行われていました。まだ出ていないあのキャラがPVC製フィギュアを経ずにプラキット用原型として出ることになるのか、そこも楽しみなのです。
 さらに、展示のバックパネルにはランナーらしき構造図が描かれていましたが、曲線だらけのこのフィギュアをどのように分割・構成するのか、そういったところも実際に商品を手にして確認したいものです。
 もともとプラキットとPVC製フィギュアでは成型が異なり、キャラクター、特に女性キャラクターの柔らかいラインはプラキットが不得意なところでした。ですが、さまざまな工夫が凝らされた結果、現在のように大きなジャンルになってきたわけです(不得意なところの対応として顔パーツだけPVCを使っているのものも多いですが)。
 プラキットの特性を生かした可動フィギュアが多いというのもPVC製フィギュアとは違うところですが、以前BANDAI SPIRITSが出していたFigure-riseLABOのホシノ・フミナや南ことり、今回のマックスファクトリーのアスカ、マリのように固定ポーズのプラキットも出てきています。PVC製フィギュアの価格高騰の中で、こういったタイプのプラキットが今後どのような展開を見せるかも興味深いところ。プラキットの価格はまだかなり抑えられていますし。
 フィギュアのプラキットは、現在の最注目ジャンルとしてその動向から目が離せません!

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