猿之助と愉快な仲間たちが帰ってきた
! 七川劇団リターンズ『新説 堀部
安兵衛』芝居と歌と踊りのステージを
みせる

2022年10月20日(木)に、「猿之助と愉快な仲間たち第2.5回公演 七川劇団リターンズ『新説 堀部安兵衛』」が開幕した。歌舞伎俳優の市川猿之助がプロデュースする演劇プロジェクトの公演で、脚本は横内謙介、演出は市川青虎。会場は歌舞伎座から徒歩圏内の銀座博品館劇場とあり、猿之助と愉快な仲間たち(以下、愉快な仲間たち)でお馴染みのメンバーに加え、歌舞伎座や他の劇場に出演中の俳優も登場する。出演者と各回の日替わりゲストは次のとおり。
<出演>
穴井豪、石橋正次、石橋正高、市川郁治郎、市川右田六、市川喜介、市川澤五郎、市川笑猿、市川翔三、市川翔乃亮、市川青虎、市川段一郎、市川段之、市川三四助、下川真矢、下村青、大知、立和名真大(以上、50音順)。
<ゲスト>
20日(木)15時:坂東新悟、嘉島典俊
21日(金)15時:市川猿之助、市川團子/19時:市川猿之助、尾上右近、市川團子
22日(土)15時:市川猿之助、中村鷹之資、市瀬秀和/19時:市川猿之助、中村隼人、市瀬秀和
23日(日)15時:市川猿之助、浅野和之、市川團子
お芝居、踊り、芝居愛に溢れた公演の模様を、19日に行われたゲネプロの写真とともにレポートする。
■銀座博品館劇場からはじまる物語
物語は、博品館劇場からはじまる。劇団襖座の制作スタッフ・富山(大知)は困っていた。『新説 堀部安兵衛』を上演したいのに、支配人の小松(郁治郎)が「やらない」と言って譲らないのだ。実は小松は、かつてシアター停車場という小さな劇場でスタッフをしていた。
しかしその劇場主の奈良橋徳治(石橋正次)が、突然失踪。その責任は自分にあると考えた小松は、人が死ぬ芝居、借金を描く芝居を頑なに拒んでいたのだ。青年会議所の大森(澤五郎)や博品館劇場スタッフの原田(立和名真大)も気にかけている。さらに、消えたはずの徳治もまた、遠くから小松を見守っている。ふたたび集まった七川劇団によって、『新説 堀部安兵衛』の上演がはじまるのだった。
冒頭では、前回のあらすじも紹介され、「初めてご覧の方もウェルカム」な空気があたたかい。劇中劇は、タイトルのとおり高田馬場の決闘がモチーフとなっている。中山安兵衛は、武士の生まれだが、いまは飲んだくれて、長屋で暮らしている。演じる下川のほどよいダメさが心地よかった。気のいいご近所さんたちと、仲良くやっている安兵衛だが、そこへ予期せぬ来訪者が。さらに一通の書状を受け取るのだった……。
■安兵衛、長屋から高田馬場の決闘へ
歌舞伎俳優と歌舞伎以外のキャリアの「仲間たち」が、それぞれのアプローチで盛り上げる。段之、段一郎たち歌舞伎俳優は、遊び心も仕事も忘れない職人芸で長屋の空気を濃厚にする。ミュージカル出身の下村やダンサーの穴井は、持ち前の華やかさはそのままに、いかにも深川芸者、いかにも江戸っ子で、生き生きと長屋に馴染んでいた。
青虎は演出を手掛け、さらに俳優として芝居でも踊りでもさすがの存在感をみせる。石橋正高による愛すべきお調子者キャラとの掛け合いでは、歌舞伎座スケールの声と身体性の高さを、鮮やかなツッコミに生かす。
若手の活躍も頼もしく、笑猿はしっとり丁寧な芝居と艶やかな踊りで楽しませ、喜介の明るさは、観る者を笑顔にする。翔乃亮のキレッキレの芝居は登場した瞬間から目をひき、強く印象に残る。
石橋正次は、「現在」「劇中劇」で重要な役に温かな血の通った心ある。立廻りでは、新国劇育ちの殺陣も冴えわたる。
物語は、現在の博品館劇場、徳治と七川劇団たちがいる世界、七川劇団による劇中劇『新説 堀部安兵衛』の三層で展開した。しかし、複雑だとは感じさせなかった。ストレートなメッセージをストレートな台詞で訴えてくる。ど直球のお芝居の向こう側に、役者が役の設定をこえて「芝居の力」を信じ「死ぬときに幸せだと言える人生を願っている」のだと想像させた。そこから生まれるリアリティに心を動かされた。
後半には、七川劇団による踊りと歌のショーが繰り広げられる。コンテンポラリーダンス、耳馴染みのある昭和歌謡、ゴージャスな民謡など、キャスト総出演で盛り上げ、日替りゲストが華を添える。お芝居とは異なるキャストたちの表情を楽しんだ。
猿之助と愉快な仲間たち第2.5回公演 七川劇団リターンズ『新説 堀部安兵衛』は、博品館劇場で23日(日)まで。
取材・文・撮影=塚田史香

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