ドイツの演劇祭で評価を得た岡田利規
の作品を、本谷有希子演出で日本語初
上演 家納ジュンコ、栗原類、山中崇
、環 ROYら出演

2023年3月4日(土)~3月22日(水)KAAT 神奈川芸術劇場 <中スタジオ>にて、KAAT 神奈川芸術劇場プロデュース『掃除機』が上演されることが決定した。
本作は、KAAT「忘」シーズンを締めくくる作品として、チェルフィッチュ主宰・演劇作家・小説家の岡田利規による作品を、劇作家・小説家・演出家の本谷有希子演出で上演する。『掃除機』は、岡田が2019年にドイツの公立劇場ミュンヘン・カンマーシュピーレ劇場に書き下ろし、自ら演出した『The Vacuum Cleaner』(ドイツ語上演)を、日本語により日本初演するもの。引きこもりの40代の娘、無職の30代の息子、80代の父親が暮らす家の情景を「掃除機」の目線から描く本作は、日本のみならず世界的な社会問題として露わになってきた「8050問題」が扱われている。この問題は、解決の困難さゆえに置き去りにし、忘れられがちな問題でもあることから、<忘>シーズンにふさわしい演目として、今年度のKAATシーズンプログラムにラインアップされた。
岡田利規とKAATの縁は深く、2011年の開館以来、主宰するチェルフィッチュの話題作を次々と上演してきたほか、2015/16年のKAAT キッズ・プログラム『わかったさんのクッキー』、2020年『「未練の幽霊と怪物」の上演の幽
霊』オンライン配信、2021年『未練の幽霊と怪物-「挫波」「敦賀」-』と、ともに創作活動を行ってきた。岡田が初めて高齢の世代を取り上げ、家族の話を書いたことでも、岡田自身が新しいフェーズと言う本作。ドイツでの初演後、日本での日本語上演を望んでいた岡田からの提案もあり、KAATでの日本初演が実現する。
『The Vacuum Cleaner』を、『掃除機』として日本“語”初演を手掛けるのは、本谷有希子。本谷は、2000年に立ち上げた「劇団、本谷有希子」にて劇作・演出を手がけ、ストーリーの中に人間の内面やコンプレックス、自意識を描き出す独自の筆致とエンターテインメント性を兼ね備えた作風で、話題作を次々に発表し、劇作家・演出家として注目されてきた。小説家としても活躍の場を広げ、大江健三郎賞、三島由紀夫賞、芥川賞の純文学新人賞の三冠を得ている。2012年の劇団公演ののち、演劇公演の演出とは暫く距離を置いて活動していた本谷だが、近年は自身の小説の舞台化を積極的に行い、静的なテキストを複数の俳優で演じ分ける方法などで立体化する取り組みを行うなど、新たな視点で演劇作品に取り組んでいる。今回、演劇、文壇でともに活躍する二人が、初めて顔合わせをする。
本作は、ある一家の掃除機<デメ>の視点での語りや、岡田戯曲の魅力でもある各役のモノローグで物語が綴られていく。上演するにあたり、演出の本谷はこの戯曲の魅力を引き出す表現方法を模索し、2年以上前からワークショップを重ねてきた。本谷ならではのアプローチのひとつが、ラッパー環 ROYによる音楽。ミュージシャンとしてだけでなく、ダンサーとのコラボレーション、絵本出版等、ジャンルを越えて活躍する環が、本谷との初めての協働作業により、岡田の“言葉”にどんな変化を与えるのか。環は、一家の長男の友人<ヒデ>役で俳優としても出演。一家の長女で、引きこもりの娘<ホマレ>役に、コメディエンヌとして独特の存在感を持つ家納ジュンコ、無職の息子<リチギ>役に、悪役から理想の上司まで自在に演じ分ける山中崇、そして2人の父親<チョウホウ>を、モロ師岡、俵木藤汰、猪股俊明という、ベテラン俳優が、3人で1役を演じる。また、俳優として成長を続ける栗原類が、掃除機<デメ>役を務める。
(上段左から)家納ジュンコ、栗原類、山中崇、環 ROY(下段左から)俵木藤汰、猪股俊明、モロ師岡
本谷の思考や魅力が詰まった演出や、2010年以降、社会問題となっている「8050問題」を扱う点にも注目したい。
演出・本谷有希子 コメント
岡田さんと自分の共通点は何か、と考えてみても、パッとは思いつかない。でも“ない”とは思わない、流石に。あると思う。その部分に全力で重なってみることも、思い切り外れてみることもできると思う。岡田さんからもらったテキストの、五人の役名の下には、こんな説明書きがあった。「80代」。「娘。50代。引きこもり。」「息子。40代。無職。」「友人。」「掃除機。」――俳優達とミュージシャンと、自分のものではない言葉に触れながら、あるかないかもわからない共通点を、探り続けていきます。
作・岡田利規 コメント
『掃除機』は、8050問題と呼ばれることもあるひきこもりの高齢化の問題を扱った、ある家族の情景を描いたぼくの戯曲です。このテキストを本谷有希子さんが演出するというプロダクションが今シーズンの KAAT のプログラムに入ったことに興奮しているという意味でも緊張しているという意味でもどきどきしています。ぼく自身が演出するのでは決して生まれない本谷さんならではのテイストを持つものとしてお客さんに届けられる上演になるでしょう、その期待に興奮するのです。そしてその際に『掃除機』というテキストがどのような晒され方をするのか、ということに緊張するのです。
KAAT 神奈川芸術劇場 芸術監督・長塚圭史 コメント
『掃除機』に寄せて
岡田利規さんの『The Vacuum Cleaner』(掃除機)は、ミュンヘンの公立劇場カンマーシュピーレで2019年の12月にレパートリー作品として初演されました。岡田さんが同劇場のレパートリー作品を手掛けたのは今作で実に4作品目であり、またさらなる新作のクリエイションが同国で準備されているということで、岡田さんの国際的な活躍が窺えます。ミュンヘンではもちろんドイツ語での上演でしたが、元々の戯曲は日本語で紡がれています。今回この原本とも言える日本語版『掃除機』を世界初演しようというわけです。
演出は文壇での活躍めざましい本谷有希子さん。本谷さんは演劇界で活動を始め、その後重心を小説に移しました。暫く演劇界と距離を置かれていましたが、2019年自身の小説を舞台化する試みを始め話題を呼びました。これまでのセオリーから離れ、改めて言葉を立体化することに関心を抱いた小説家であり劇作家でありそして演出家である本谷さんが、果たして岡田さんの台詞世界をどう立ち上げていくのか興味は尽きません。
本作は社会と折り合いのつかない家族を鋭い筆致とユーモアで描きます。無職の40代息子と引きこもりの50代娘を抱える父親はすでに80歳を過ぎています。そしてこの家族の停滞し続ける風景を長年見つめてきた掃除機の「デメ」。この奇抜な設定が思いがけない視界を広げていきます。社会問題としてはっきりとそこにあるのにも関わらず、その解消の困難さゆえに置き去りにし忘れ去られてしまう中高年層の引き篭りと、その世話から逃れることの出来ない高齢者の、所謂「8050問題」を圧倒的な筆致で描いた怪作。ミュンヘンでも高く評価された岡田利規さんの『掃除機』と、新たな
視点で演劇を捉え始めた演出家・本谷有希子さんの競演にご期待ください。

SPICE

SPICE(スパイス)は、音楽、クラシック、舞台、アニメ・ゲーム、イベント・レジャー、映画、アートのニュースやレポート、インタビューやコラム、動画などHOTなコンテンツをお届けするエンターテイメント特化型情報メディアです。

連載コラム

  • ランキングには出てこない、マジ聴き必至の5曲!
  • これだけはおさえたい邦楽名盤列伝!
  • これだけはおさえたい洋楽名盤列伝!
  • MUSIC SUPPORTERS
  • Key Person
  • Listener’s Voice 〜Power To The Music〜
  • Editor's Talk Session

ギャラリー

  • 〝美根〟 / 「映画の指輪のつくり方」
  • SUIREN / 『Sui彩の景色』
  • ももすももす / 『きゅうりか、猫か。』
  • Star T Rat RIKI / 「なんでもムキムキ化計画」
  • SUPER★DRAGON / 「Cooking★RAKU」
  • ゆいにしお / 「ゆいにしおのmid-20s的生活」

新着