特級グランプリは北村明日人! 受賞
直後の会見をレポート~第46回ピティ
ナ・ピアノコンペティション閉幕

2022年8月21日(日)、第46回ピティナ・ピアノコンペティションが閉幕した。国内最大規模のピアノコンクールである同コンクールには、今年も、A2級(未就学児部門)からグランミューズ部門(中学3年生以上のピアノ愛好者)まで、のべ42,850人(予選参加者数29,752人)が参加。その最高峰に位置する年齢制限なしの「特級」ファイナルが8月17日(水)サントリーホールにて開催され、北村明日人(きたむら・あすと/26)がグランプリに輝いた。
北村明日人(中央)と、歴代グランプリの野村友里愛(2021・左)、尾城杏奈(2020・右)。
既にピアニストとしての活動実績のある北村は、ファイナルにおいてクラシック音楽の王道・ベートーヴェンの協奏曲を演奏(指揮=飯森範親、演奏=東京シティ・フィルハーモニック管弦楽団)。情感あふれる演奏で会場中を魅了し、審査員票による「グランプリ」と、聴衆による投票で決まる「聴衆賞」をダブル受賞した。審査員の評価も聴衆からの評価も2位に大差をつけての受賞だったという。
例年実施されているライブ配信のチャット欄でも視聴者たちから熱烈な応援コメントが寄せられ、ピアノコンクールを超えて「玄人のクラシックコンサート」然とした圧巻のステージとなった。
表彰式後には、プレス向けの会見が行われ、受賞直後の北村が登場。「(演奏が終了した直後から)ずっと楽しい」と朗らかに笑いながら、記者からの質問に応じた。
東京藝術大学音楽学部附属音楽高等学校を卒業後、5年間チューリヒの音楽大学で学んだ北村。一次予選からファイナルまで、「弾きたい曲、好きな曲だけで構成した」と語る。
「(指導者の)伊藤恵先生からは、『地味な選曲だね』と言われました(笑)。でも、同時に『あなたらしいんじゃない』という言葉もいただいて、それが勇気になりました。吹っ切れたというか」(北村)
北村は既にRahn Musikpreis(スイス)1位など国際コンクールでの実績も持つ経験豊富なピアニストだ。コンチェルトの演奏は今回が7回目だが、ファイナルで披露したベートーヴェン第4番は初めて演奏したという。
「ピアニストとしては、あくまで曲を中心として、なるべく自我、自分の存在をなくしていくことを目指しています。この曲がどれだけすごいのか、それを伝えていくのが僕の役割だと思っていて。今回は、それが実現できたというか。オーケストラとの掛け合いのなかで……あの、本当におこがましいんですけれど、自分がベートーヴェンになって、今まさにこの曲を作っているような……そんな感覚に陥りました」(北村)
少々照れつつ話す北村は、指揮を執った飯森範親氏への感謝を続けた。
「指揮によって、自分の表現を引き出してもらった気がしました。『ああ、僕はこういう音楽がしたかったんだ』と。本当に楽しくて! 今も楽しいままです」(北村)
指揮の飯森範親(右)とコンサートマスタの戸澤哲夫(左)とファイナリストたち。
セミファイナルで演奏した、同じくベートーヴェンの《テンペスト》と、ファイナルで披露したピアノ・コンチェルト第4番。激しさと、穏やかさ。一見対照的に感じられるこの2曲について問われた北村は、「確かに対照的にも思えますが」と納得しつつ、共通する面も感じていると応える。
「(コンチェルト第4番は)表面的には穏やかですが、どんと構えた景色の中に《テンペスト》と同じようにしっかりとした軸が感じられます。なにか“守りたいもの”をずっと掴み続けているような……。そういう点では、全く別のものではないように感じます」(北村)
5年間の留学を経て、現在、東京藝術大学大学院に在籍中の北村。今後の目標を聞かれると、アンサンブルや伴奏に興味を持っていると明かした。学内にて友人の伴奏を行うこともあり、今後は自己研鑽に励みつつ、「他楽器の演奏家たちとも積極的に交流し、関係性を広げていきたい」と満面の笑みで語った。
グランプリ発表時
なお、特級銀賞には神宮司悠翔(じんぐうじ・ゆうと/東京藝術大学音楽学部附属音楽高校2年)、銅賞には森永冬香(もりなが・ふゆか/東京藝術大学3年)、入選には鶴原壮一郎(つるはら・そういちろう/東京藝術大学2年)。また「サポーター賞」(※)の1位には、セミファイナリストの今井梨緒(いまい・りお/桐朋学園大学大学院2年)が輝いた。コンテスタントたちの演奏は、ピティナ公式YouTubeチャンネルにてアーカイブ配信されている。
今後の入賞者たちの活躍に期待したい。
左から、銀賞・神宮司悠翔、銅賞・森永冬香、入選・鶴原壮一郎、サポーター賞1位の今井梨緒
(※)サポーター賞とは:二次予選からファイナルまでの期間、 演奏の技術だけではなく、ピアノと歩んできた道とその向き合い方、人柄など、様々な要素を総合して「応援したい奏者」に一日一票投票できる。今年度から新設された。
取材・文=SPICE編集部

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