劇団壱劇屋東京支部のWORDLESS殺陣芝
居『五彩の神楽』竹村晋太朗に聞く。
「台詞がないことに気負わず、生き様
を見に来てください」

大阪の「劇団壱劇屋」旗揚げメンバーの一人・竹村晋太朗を中心に、2020年に発足した「劇団壱劇屋東京支部(以下東京支部)」。竹村作・演出の殺陣芝居を活動の軸に据えながら、数々の2.5次元舞台などに出演し、着実に勢力を広げている所だ。その東京支部が満を持して上演するのが『五彩の神楽』。台詞を一切使わない、60分一本勝負の「WORDLESS殺陣芝居」の作品5本を、5ヶ月連続で上演する力技の企画だ。2017年の大阪初演は「CoRich! 舞台芸術アワード」「関西Best Act」で、そろって一位に選ばれるほどの絶賛状態となった、伝説の舞台。まさに東京支部の一世一代の大勝負と言えるロングランを前に、関西から援護射撃をせんと、大阪初演の5作品をすべて観劇した筆者が、竹村に話を聞いてきた。

■『五彩の神楽』にたどり着くために、ここまでやってきた。
──東京支部は、発足後すぐに新型コロナウイルスが直撃して、出直してもまったくおかしくなかったにも関わらず、何とか踏ん張って活動を続けられてますね。
本当ですよね。ずっと一緒に活動していた劇団員ばかりだったから、根性論的な感じで、踏みとどまることができたんじゃないかと思います。外部の人ばっかりだったら、こうはいかなかっただろうなあ、と。
──ここまでの東京の活動を振り返ってみていかがですか?
今は大阪で上演してきた殺陣芝居を、順番に(東京で)上演してますけど、それは東京と大阪の違いを体感してみよう、という狙いがありまして。それでわかったのは、大阪は割と劇団を箱推しするとか、作品推ししてくれるイメージなんですけど、東京は役者さんの分母が大きいせいか、個人推し、役者推しが結構主体なんだと、かなり感じましたね。
劇団壱劇屋東京支部『五彩の神楽』メインビジュアル。
──そう言われると大阪は、役者一人ひとりというより「壱劇屋が好き」というファンが多い気がします。
僕らも始めはそのスタンスでいたんですけど、次第に「これは狙い目が違うのかな?」と考えるようになりまして。それで今は、東京のいろんな役者さんにゲストで出ていただいて、要所を締めてもらうという感じになっています。東京は本当にいろんな人がいるので、殺陣が異次元の方をお呼びするとか。もうね、速さもきれいさもすごい人がいるんですよ。そうやって自分たちの芝居を続けながらも「僕らも個々で推されたいよね」ということは、ずっと話題にしています(笑)。
──『五彩の神楽』をこのタイミングで上演するのは、先程言われた「順番」が回ってきたからでしょうか?
むしろここまで順番通りやっていたのは、『五彩の神楽』にたどり着くのが目的、という気持ちがありました。やっぱり劇団員たちがスキルアップして「一皮向ける」というのを体感したのが、この作品だったので。そこでさらに二皮向けるためにも、絶対に外したくない一大企画だと思っています。
──初演で特に、印象に残ったことはありますか?
それまでのWORDLESS殺陣芝居は、だいたい僕が主演だったので、僕の中で処理できていたことを、他の人にやってもらうというのが、やっぱり難しかったです。トップの『憫笑姫(びんしょうき)』は西分(綾香)が主演だったんですけど、どうしても僕とは筋力の差があるので、演出的にエフェクトをかけるような感じにした、とか。逆に言うと、それによって確実にアレンジが変わって、表現方法にブーストがかかったという所はあります。
──他人にやってもらうと、思わぬ副産物が出てくるというか。
ありますあります。「思ってたのと違う!」は、悪い時もありますけど、もちろんいい時も存在するので。「わー、その手触りおもしろー!」っていうのは、やっぱり多発しました。あと最終話以外、僕は脇に回ったので、ストーリーの道筋を立てる責任がなくなって「僕がこう表現したら、主役はどう返してくるか?」と、好きにやらせてもらった部分も、若干ありましたね。でもそれがあったから、5ヶ月で確実にパワーアップしていきました。
劇団壱劇屋 東京支部「五彩の神楽」PV

■「がんばる人を描きたい」と思って作った5作品。
──上演される5本の話を振り返ってみたいのですが、先程出てきた『憫笑姫』は、妹のために戦士となった姉の成長物語で、いわゆる「王道」という感じを受けました。
『五彩の神楽』の芯は「がんばる人を描きたい」ということだったんですけど、僕は自分の姉のことを「すごい人だな」とつねづね思っていたので、姉の強さが見えるような話を描きたいなあ、と。姉を演じた西分は、(末満健一が主宰する)「ピースピット」を経たこともあり、攻撃力と発散力が高めなんです。それを生かしつつ抑える芝居ができたら、WORDLESSでも爆発できるかな? という狙いがありました。
──その末満さんが、悪役の王様を演じていたのは、今考えるとかなりレアですね。
本当に。僕らも改めて動画を観た時に「末満さん、戦ってるで!」って、面白がってしまいました(笑)。公演前は「女の人が戦うことを、どう受け止められるのか?」と不安があったんですけど、最初に考えていた「がんばる人」感がだいぶあったので、思ったより皆さん応援してくれましたね。今回も西分が主役ですけど、5年間でだいぶ成長して、圧倒的に殺陣が上手くなりました。見比べると、本当にビックリすると思います。
劇団壱劇屋『憫笑姫 -Binshouki- 』(2017年)。 [撮影]河西沙織(劇団壱劇屋)
──2本目の『賊義賊(ぞくぎぞく)』はタイトル通り、腕っぷしの強い女性義賊が主役ですが、これは5本中最も娯楽性が高かった印象があります。
5本の話を考える中で、1本ぐらいは『ルパン三世』みたいな、ポップな作品を入れておきたいと思ったんです。やっぱりみんな、ルパンとか『CAT’ S EYE』とか好きじゃないですか?(笑)あとは台詞なしで、コミカルなことがどこまでできるだろう? というのを試した所もあります。それは思いの外、皆さんニコニコとご覧になってましたね。言葉がなくても、表現はいくらでもできるという手応えを、感じた作品でもありました。
──今回は、主演が中村るみさんから小玉百夏さんに変わりますが。
小玉さんは、僕がスタントマン事務所にいた時の同期です。中村さんはバトントワリングをやってたので、それを生かした殺陣を付けたんですが、小玉さんは男性より強い(笑)。しかも女性的なアクションじゃなくて、ゴリゴリのハードパンチャータイプなんですよ。新たなミューズというか、軍神が誕生するんじゃないかと思います。
劇団壱劇屋『賊義賊 -Zokugizoku- 』(2017年)。 [撮影]河西沙織(劇団壱劇屋)
──3本目の『心頭音(しんとうおん)』は、盲目の剣士としゃべれない少女の、ヘヴィな恋物語でした。
(主演の)吉田青弘さんは、それまで何回か壱劇屋に出ていただいて「ヨッシー(吉田)さんの動きはこんな感じ」という手触りがわかる人だったんです。それで一個何か負荷をかけたら、面白い動きになるんじゃないか? と思って。そうしたら、ヒロインの今中美里がタップダンスをやってたんです。それで「盲目の男性と、タップの音でコミュニケーションを取る少女が絡んだら、どういう化学変化が起きるだろう?」というので、盲目の人をやってもらうことにしました。今回の再演も、ヨッシーさんには出てもらいますし、今中も今はうちの劇団員になってるので、引き続き出演します。
──よく考えたらWORDLESS殺陣芝居って、意外と恋が絡んだ話が多いですよね。
でも僕、自分では両思いの話はようやらんので、(両思いの話を)やるなら人にやらせようと思ってました。自分が主役の奴は片思いばかりだし、外部でも僕は基本、片思いをしています(笑)。どの話も割とまんべんなくファンがいるんですけど、『心頭音』はちょっとディープで悲劇的な話が好きな人に、支持されてるみたいです。
劇団壱劇屋『心踏音 -Shintouon- 』(2017年)。 [撮影]河西沙織(劇団壱劇屋)
──4本目の『戰御史(いくさごし)』は、一番物語の解釈の難易度が高い話だったと思います。戦士がいろんな武器を手にするたびに、忌まわしい記憶がよみがえる、ちょっとサイコな話というので、合ってるでしょうか?
ざっくり言うと、そんな感じです。これは初演が、座長の大熊(隆太郎)と赤星マサノリさんがメインだったんですけど、僕の中ではあの二人は、いい意味でちょっと変(笑)。大熊のパントマイムの技術と、ビームが出てるような赤星さんの眼力を活かすにために、常識外にどんどん出ていってみようと思いました。お客さんを置いていくわけじゃないですけど、ちょっと突っ走ってみた作品でもあります。
──「突劇金魚」のサリngROCKさんに「THE ROB CARLTON」の満腹満さんという、殺陣をするイメージのない2人をゲストに呼んだのには驚きました。
武器の種類を増やすことと、畑の違う人を呼ぶことで、エンターテインメント性とクレイジー度を上げようと思ったんです。満腹さんはデカいから、無言で立っているだけでも結構怖いし、サリngさんもおきれいやけど、銃を持って睨まれるとかなり怖い(笑)。それは狙い通りでしたね。次はうちの岡村(圭輔)と小林(嵩平)がメインになるんですけど、大熊と赤星さんのクレイジーさはきっと難しいから、この2人ナイズドされたクレイジーさを探ってみようと。お互いに情報を与えない形でどんどん指示を出して、二人を混乱させるという、新しいチャレンジを考えています。
劇団壱劇屋『戰御史 -Ikusaonsi- 』(2017年)。 [撮影]河西沙織(劇団壱劇屋)
──最後の『荒人神(あらびとかみ)』は、満を持しての竹村さん主演でしたが、これまた一筋縄ではいかない内容でしたね。当時取材した時は「悪い人が裁かれない世の中が嫌だなあ……ということを表した世界になる」というヒントを出されていましたが。
そう言った記憶もあるし、実際にそんな気持ちで書きました。殺陣芝居ってどうしても、倒すべき悪役が出てくるんですけど「悪い人だけど、矜持があるからいい」という悪人って、いるじゃないですか? 僕はそれが、ちょっと嫌なんです。矜持のない悪人は、もっと嫌ですけど(笑)。人に何かをしでかした奴には、ちゃんと罰を与えなければ……というのを考えだした結果「世界をぶっ壊そう!」という話になりました(笑)。人間ちょっとズレたらろくでもないし、ろくでもない人が上手く生きているという世の中にブチ切れるという。
──確かに痛快というより「殺陣って結局は殺人なんだ」ということを痛感した記憶がありますが、一方で5作品全部を観てきた人にとって、ご褒美のような仕掛けもありました。
あの五作品まとめてのカーテンコールのような展開は、目標としていましたね。やっぱりこの話は、今回も僕が(主役を)やらんとダメだろうなと思います。
劇団壱劇屋『荒人神 -Arabitokami- 』(2017年)。 [撮影]河西沙織(劇団壱劇屋)

■海外進出をめざして、5ヶ月の間に発見されたい。
──今回の再演で、目標にしていることってありますか?
物理的な技術力のアップはもちろんですけど、海外に行きたいんですよ、僕。東京は観客のパターンがいろいろあって、それこそ外国の人や、外国に向けて活動している人もいるので、僕らがやっていることは、海外でどれだけ通用するのか? と考えたりするんです。だから5ヶ月間、こんなクレイジーな企画をする中で、新しいお客さんや役者さんだけでなく、そういうのを制作する人たちに見つけてもらいたいと思ってて。今までの活動から、さらに別路線に飛躍していけたら……というのはあります。
──確かに5ヶ月間も公演を続けるのは、小劇場ではかなり異例ですが、大阪ではすでに一回やってますしね。
でも今は、コロナ禍というのがあるので。「コロナがあるのに5ヶ月やんの? 狂ってるなー」とよく言われます(笑)。ハードなのは今(8月)がピークだと思いたいけど、何とか乗り切って年末まで行きたいですね。
──もう一つ心配しているのが、大阪に帰ってきてくれるかな? ということなんですが。
いやー、そうなんです。それはずっと気にしていて、みんなとも話すんですけど「今はコロナがなあ……」という感じで。今年は完全に東京だけで埋まっちゃったので、来年以降落ち着いたタイミングで、大阪や地方の公演ができたらなあと思っています。
劇団壱劇屋 五彩の神楽「憫笑姫」PV
──やっぱり久々に、壱劇屋フルメンバーが出演した舞台を観たいですよね。
ねー。この前の(大阪の壱劇屋の)『code:cure』は観に行けなかったんですけど、SNSに上がってたダイジェスト動画を観たら、すごく面白そうだったので「早く(フルの)動画をよこせ!」って言ってます(笑)。
──あの公演には、若手育成の狙いもあったようですが、いい感じに大熊さんのような変態な身体が増産されたと思いました。
いいですねえ。そういう謎の生産工場(笑)。これまではどちらかが作・演出をしている時は、片方が中間管理職みたいな立ち位置になってたんですけど、今は両方とも作演をやりながら中間管理職みたいになってて、僕も大熊も大変だと思うんです。でもやっぱりお祭り的なことは、どこかでできたらいいですよね。昔大熊が書いて、僕が「ドラゴンナリタ」という格闘家に扮する、アクション芝居のシリーズがあったんですけど、結構「あれをやってよ!」というリクエストがあるので、どこかでやれたらいいなあと思います。
──では最後に、やっぱり「台詞がない芝居なんて、観てわかるの?」とためらってる人がまだいっぱいいらっしゃると思うので、そういう方々に向けてメッセージを。
今日も稽古をしながら思ってたんですけど、人間が立ってるということ自体の情報量ってすごいんです。昔から小説とかで「悲しい背中」って描写があるけど、そういう言葉が存在するってことは、背中だけで伝わることは山ほどあるはず。稽古をするたびに、それをヒシヒシと感じます。実際いまだに「台詞をしゃべらないの?」って聞かれますけど、言葉以上に雄弁なものがあるってことを、僕たちは知っているので。「台詞がないからわからない」なんてことは一つもないので、ぜひ何の気負いもなく、戦う人たちの生き様を見に来ていただけたらと思います。
劇団壱劇屋 五彩の神楽「賊義賊」PV
取材・文=吉永美和子

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