タクティカートオーケストラ特別公演
、若きソリストを迎え華やかに Coc
omi(Fl.)&高松亜衣(Vn.)&角野
未来(Pf.)が三者三様の演奏で魅了
その後、颯爽と現われたのは指揮の榊真由。榊は、桐朋学園大学時代に梅田俊明のもとで指揮を学んだ。さらに、昨年までNHK交響楽団で首席指揮者パーヴォ・ヤルヴィのアシスタントを務めるなど、着実に成長を続けている。
スネアドラムのリズムに導かれ、メロディが囁くような弱奏で示される。そのメロディは、ひとすじの長いクレッシェンドに乗ってさまざまな楽器によって受け継がれていく。精巧なこの作品を、榊は慎重に築き上げる。メロディを奏でるメンバーの一人ひとりの思い入れが聴く者にも伝わってきた。
最初に演奏されたのは、モーツァルト《フルートと管弦楽のためのアンダンテ》K.315。丸みを帯びたしっとりとした独奏フルートの響きが印象的である。呼吸に力みがなく、その優美な表現は作品の魅力をいやましに高めてくれる。
続くサン=サーンス《ロマンス》作品37では、独奏フルートは低音域をたっぷりと歌い上げていく。オーケストラの創出する繊細なハーモニーの変化を巧みに捉え、独奏フルートは気品のある音を通して情趣豊かに音楽を表現した。カデンツァでは、彼女の尊敬するエマニュエル・パユによるものをとり上げた。
弾き終えた後、Cocomiはホールの響きの美しさに触れたのち、「同年代の知り合いも出演しているオーケストラなので、心強かったです」と語った。
このコンサートでは、チャイコフスキー《ヴァイオリン協奏曲》作品35から第1楽章を選曲した。オーケストラの問いかけるような表現に応えて、独奏ヴァイオリンはじっくりと奏で始める。今どきのさらりとした表現ではなく、高松は熱い語り口で音楽へ深く没入していく。オーケストラを牽引するかのような思い切りのよい、強い推進力も彼女の魅力である。ポロネーズリズムが躍動する部分へ向かっていく時のエネルギーの凝縮度の高さは、実に見事である。パッションほとばしるチャイコフスキーであった。
演奏を終えた高松は、「見たことのない景色、こんなにたくさんの方に聴いていただけたのは初めてです」と感想を述べていた。
角野の演奏には無駄な動きがなく、身体の使い方も自然である。硬質で透き通るような音で、弱音もホールの隅々まで浸透していく。即興的な表現も見られ、カデンツァにはラヴェルの「道化師の朝の歌」(《鏡》より第4曲)を取り入れる。しなやかな音楽の流れのなかで、音の遠近や質感、色合いを細やかに変化させる。さらに、リズムも鋭敏に刻み込み、弾むような躍動感とともに陰影豊かな音楽を生み出していた。
演奏後、角野は「こんなにたくさんの人がいらしているとは……ありがとうございます」と感謝の気持ちを表わした。
本公演は、2022年5月25日(水)よりイープラス「Streaming+」にてアーカイブ配信が決定した。配信は5月31日(火)23:59まで(視聴券購入は5月31日(火)21:00まで)。若き音楽家たちの演奏をお聴き逃しなく!(編集部)
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