【電音部 インタビュー】
多彩な要素がミックスされた
コンテンツ『電音部』の魅力とは?
原案・原作をバンダイナムコエンターテインメント、キャラクターデザインをMika Pikazoが務める音楽原作キャラクタープロジェクト『電音部』。3月にはパシフィコ横浜で昼夜二部公演を成功させるなど話題が広まっている同コンテンツについて、統括プロデューサー・子川拓哉氏と統括ディレクター・石田裕亮氏に開発の経緯や魅力について語ってもらった。
ストーリー構築の上で
一番アツいのはバトルもの

L→R 子川拓哉(統括プロデューサー)、石田裕亮(統括ディレクター)
『電音部』というコンテンツは、もともとどういういきさつで生まれたものなのでしょうか?
石田
我々はバンダイナムコエンターテインメント内において新規事業に取り組むチームに所属しているのですが、サウンドエンターテインメント事業…つまり、音で遊ぶことをテーマにした事業の一環としてASOBINOTESというレーベルを立ち上げ、そのレーベルを生かしながら音楽で遊ぶことに最適化された新規IPとして考えました。
子川
簡単に言うと、新規事業としてレーベルを立ち上げ、そこで我々のコントロールが効く新しいキャラクターを作りたいというところが始まりです。“ファンメイドポリシー”と呼んでいるのですが、我々が提供した音楽をユーザー様にリミックスしてもらったり、クラブでかけてもらったりして、自由に使って遊んでほしいというのがベースにあります。
音楽で自由に遊んでほしいという部分は、二次創作的なこともOKにしているということですか?
子川
そうですね。“キャラクターのイラストは自由に描いてSNSで拡散してください”と、むしろお勧めしているかたちです。音楽に関してはまだそこまで踏み込めていませんが、昨年はリミックスコンテストを開催しましたし、クラブでかけるのはOKにしているので『電音部』の楽曲に特化した非公式のクラブイベントも数多く存在していて、我々もよく遊びに行っています。今度、関西でもやるらしいです。
石田
ユーザー様の意見や感想を直接聞けるので助かっています。
子川
“誰かオススメのトラックメーカーさんいますか?”とか話しかけたりもしますね。本当は昨年6月に新木場のageHaで、公式のクラブイベントを開催する予定だったんです。発表もしていたのですが、昨今のコロナ状況で中止になってしまって。
そのageHaも1月末でなくなってしまいましたね。

子川拓哉(統括プロデューサー)
『電音部』は小説や漫画などにも展開されています。学園ものでDJの部活があって、秋葉原や原宿などの学校同士で対決するといったバックストーリーはどういう感じで考えられたのですか?
子川
ストーリー構築の上で一番アツいのはバトルものだと思ったんです。
石田
クラブミュージックという音楽ジャンルがキャラクターもののコンテンツ好きの界隈にはまだ馴染みが薄いジャンルだったので、“部活のバトルもの”という設定があれば、分かりやすいし、入ってきやすいのではないかと。そこでキャラクター、クラブミュージック、DJを題材に学園ものを作ろうということになりました。
学園ものの音楽コンテンツは、確かにアイドル的な方向性が多いです。『電音部』にもそういった方向性がありながら、でも音楽が非常にマニアックなクラブミュージックであるというのが特徴です。クラブミュージックに造詣が深くなければ難しいと思うのですが。
子川
私が学生時代からクラブミュージック好きで、前職のバンダイナムコアミューズメントではミュージックカフェを運営していたのですが、そこにDJ機材を持ち込んで“カフェだけど盛り上がれる!”といったことをやっていたんです。そこからの発展型として、『電音部』ではキャラクターごと作ってしまおうという感じでしたね。
なるほど。先ほど話に出た非公式イベントですが、そこに集まるユーザー層はどんな感じですか?
石田
初期はトラックメーカーさんとか実際に音楽を作っている側の方が多かったのですが、今は『電音部』きっかけでクラブカルチャーに興味を持たれて“試しに行ってみよう”という感覚で来られるアニメ好きの方も多いです。あと、このプロジェクト全体として“いろんなカルチャーと遭遇できる”ということもポイントにしているので、アイドルカルチャーやダンスのカルチャーなど、さまざまな視点から入ってこられる方もいますね。

石田裕亮(統括ディレクター)
トラックメーカーにはTAKU INOUEさん、同人系の老舗IOSYSさん、水曜日のカンパネラのケンモチヒデフミさん、世界的ボカロPのkz(livetune)さん、シティポップブームの仕掛け人のひとりtofubeatsさん、VTuberの周防パトラさん、今声優界隈でも人気のTomgggさんやNeko Hackerさん…といった、ものすごい方が大勢参加されていて。
子川
一番最初にお願いしたのがTAKU INOUEさんで、実はバンダイナムコスタジオにいた時の先輩なんですよ(笑)。ローンチしてまだ2年弱ですけど、トラックメーカーさん同士でも話題にしていだいて、わりといい反応をいただいています。
楽曲に関しては何か注文をしたりするのですか?
子川
歌詞に関しては少し打ち合わせすることもありますけど、楽曲に関してはどのエリアがいいかトラックメーカーさんのご意見もうかがいながら、曲は作りたいように作ってもらって、それをそのまま発表しています。キャストの中にはもともとこういうクラブミュージックが好きな方もいますけど、『電音部』をきっかけに興味を持って聴いてくれるようになった方も多いです。ユーザーの方も同じで、好きな声優さんが『電音部』をやっているからという入口でクラブミュージックを聴き始めて、他のトラックメーカーさんにも興味を持つようになったという方が増えていますね。
石田
変にレベルを下げて作ってもらうということをしていないので、ラップがあったりと歌う上で非常に難易度の高い曲が多いのですが、キャストのみなさんも難しいと言いながら、新しいことへのチャレンジを楽しんでくれているようです。
ジャンルの選定はどういうふうに決めていったのですか?
子川
エリアを分けたことに意味があります。例えばAKIBAエリアならアニソンっぽい曲やアイドル系で、アイドルEDMやスピードガラージ、HARAJUKUエリアは可愛い系のフューチャーベースといった感じで。
HARAJUKUエリアの曲にはダークポップな曲もありますよね。
石田
原宿の女の子って病みメイクしていたりして独特じゃないですか。可愛いだけじゃないというか。
子川
AZABUエリアはシティポップやハウス系の音楽ですけど、シティポップやハウスと言えばお洒落、お洒落と言えばお金持ちということで麻布に(笑)。
90年代までは西麻布交差点近辺にハウスで有名なクラブが多数集まっていましたね。
石田
そういう伝統も鑑みてシティポップとハウスの代表がAZABUみたいな。