井上小百合インタビュー「夢が叶った
」~シス・カンパニー新作舞台『奇蹟
』で井上芳雄・鈴木浩介と共演

シス・カンパニーの新作舞台『奇蹟 miracle one-way ticket​』(作・北村想、演出・寺十吾)が2022年3月12日(土)〜4月10日(日)、世田谷パブリックシアターで上演される(その後、大阪に巡演)。記憶を失くした名探偵(井上芳雄)とその相棒(鈴木浩介)のバディ・ストーリー。果たして、どんな舞台になるのか。共演する井上小百合に話を聞いた。
ーー 舞台『奇蹟 miracle one-way ticket​』に出演が決まったときのお気持ちをまず教えていただけますか。
井上小百合(以下、井上):シス・カンパニーの舞台公演に出演することが夢だったので、夢が叶ったような気持ちでした。
ーー シス・カンパニーに所属されたのも、同事務所への思い入れが強かったからと伺っています。
井上 はい! 最初にシスの北村社長に直談判したときは断られてしまったんです(笑)。それでも「シスの公演にキャスティングだけでも考えていただきたい。お願いします!」とずっと繰り返し言ってきたので、まさかシス・カンパニー所属の一員として、この公演に参加できるなんて。本当に諦めないで頑張ってみて、よかったなと思いました。
ーー井上さんとしては、シス・カンパニーおよびシス・カンパニーが手がける公演の、どんなところに惹かれているのですか?
井上 やはり、すごく面白い演劇作品をたくさん手掛けていることですね。プロデューサーとしてさまざまな公演を制作している社長は、自身が役者の経験もあるので、役者への熱い思いが感じられます。そんな社長がずっと、自ら最前線に立って挑戦し続けていることが魅力的だなと思いました。
例えば大ベテランばかりが揃う少人数のお芝居が観られるのも、シス・カンパニーだからこそ。お客様にとって贅沢な観劇体験を得られるのはもちろん、それに参加できることは役者にとっても大変に貴重なことだと思えます。
ーーそんな中での、今回の『奇蹟』です。戯曲を読まれた第一印象を教えてください。
井上 なんというか、これまで読んだことないタイプの戯曲でした。戯曲というより、小説を読んでいるような感覚で読み進めていけました。お話は会話で進められていきますが、その会話の間に入るト書き(※俳優たちの動きなどを指示する注釈のこと)の量が半端じゃなくって! それは役者へのメッセージでもあるのかな、と受け止めながら読んでいました。
面白い言い回しをしている掛け合いのシーンもあるんですけど、これをただ単にコメディでやるには勿体ないというか。これをどうやっていくのか、私たち役者のセンスや力量を問われている気もします。
ーー井上さんが演じられるのはどういう役回りの役なんでしょうか?
井上 マリモちゃんという役を演じます。最初は、清楚でかわいらしい女性なのかな?と思ったのですが、脚本を読み進めていくと、彼女の中には毒もある。その陰影のつけ方が難しいかも、と感じています。最初から含みのあるキャラクターを見せてしまうのも違うかなと思っているので、何かうまいやり方を稽古の中で模索していこうと考えています。
また、過去のマリモちゃんと、現在のマリモちゃんを行き来するので、その辺の時間の変化を表現していく必要があるんです。過去のマリモちゃんは、幼すぎても違うだろうし、作り込みが難しそう。稽古場でいろいろ体を張ってやっていくしかないかと。
ーー共演者の方々の印象についてもぜひ伺いたいです。
井上 井上芳雄さんについては、出演されてきた色々な作品を拝見していますが、ストレートプレイからミュージカルまで、シリアスなものからコメディ作品まで、とにかく引き出しが多い方だなという印象です。芳雄さんは稽古初日からセリフも表現も完璧に仕上げてこられると他の役者さんから聞いたことがあるので、近くで拝見しながら、勉強させていただきたいなと思っています。
また、鈴木浩介さんは、まだお会いしたばかりですが、舞台やテレビのバラエティ番組で拝見する限り、とても面白そうな方だなと思います。だから、浩介さんみたいな方が稽古場にいてくださると、私みたいな人見知りは、とても助かるんじゃないかな(笑)。
井上小百合 (撮影:加藤孝)
ーー井上さんは、2020年4月に乃木坂46を卒業されてから、俳優としての経験値を着実に積んでこられた印象ですが、ご自身では楽しいですか。
井上 楽しいです! すごく楽しいです! 一つひとつ夢みたいなことがたくさん起こっているので、大事にしていかないといけないなと思いながらも、本当に毎日が楽しくて。感謝、感謝です。
ーーアイドル時代の経験がこれからの俳優人生にどう影響していくと思われますか。
井上 乃木坂46では、本当にいろいろな経験をさせていただきました。その全てが私の身になっています。ダンスや歌、お芝居のレッスンを受けさせていただきましたし、殺陣やウォーキングまでも経験しました。
私にとって、ある意味で、学校のような場所でした。お芝居のことも人間関係もすべてを学ばせていただきましたし、本当に全部が身になっているんです。私はもともと人前に立つことも苦手でしたしーーだから地元の人たちが一番驚いていると思うんですけどーー、人の前に立って何かを表現することができるような人ではなかったんです。そんな私を表現者として確立してくれた。すべてに感謝しています。
ーーところで井上さんが最近ハマっていることはありますか?
井上 私は音楽が好きで、テナーサックスを学生時代に吹いていたんです。もともとジャズをやりたかったんですけど、私のいた学校の吹奏楽だとクラシックしかやらなくて。グループを卒業したことを契機に、もう少し自分のことが考えられる時間が確保できるようになったので、ちゃんと教室に通ってレッスンしたいと思っています。テナーサックスのレッスンに通ったり、ジャズの勉強を始めたり……。今も、たまに時間が空くとカラオケに楽器を持っていって1人で吹いたりしています!
ーー素敵ですね。どこかでお仕事につながるかもしれませんね。
井上 吹奏楽をやってるときに講師の先生に言われた「音楽って、ただ楽譜通りに吹いているだけじゃ音楽って言わないんだよ」という言葉が今でも胸に残っています。作曲した方の思いやメッセージみたいなものを読み取って、自分なりにどう表現していくか。その表現ができたときに初めて音楽になるんだよ、という意味なんですが、これは役者にも通ずることだと思うんです。
台本をいただいて、ただ「はい、覚えました」だけでは、役者とは呼べない。そこから何を伝えたいか、どういう表現をすればいいのか、観た方はどういう気持ちになってくれるのか……。そういうことを全てひっくるめてこそ、役者と呼べると思う。だから私は、ただ覚えて喋ることだけは絶対にしないようにと思っています。それは音楽をやってきたからこそ思えることかもしれません。
ーー2020年にYouTubeチャンネルを開設されましたよね。どういう思いで始められたのですか。
井上 私は、お芝居をやりたいという気持ちだけでずっと突き進んできたのですが、今振り返ると、10年ぐらいの間に、私の夢を一緒に応援してくださる方々がいたからこそ頑張れた部分がたくさんあったんです。だからグループを卒業して、いよいよ役者として一歩踏み出したいという時に、今まで私を支え、応援してくださった方々を蔑ろにしたくはなかったんです。そういう方々を改めて大切にしていきたいなと思い、YouTubeチャンネル開設に至りました。
アイドルからお芝居の道に進みたいと考える方はこの世界にたくさんいらっしゃると思いますが、その中で、私は何を頑張るのか、私は何が好きで、何をしたいのか。それを可視化できた方がいいなと思いました。例えば日本舞踊を習ったり、着付けの練習をしたりして「いつ時代劇のオファーが来てもいいように準備してます!」と提示していた方が応援もしていただきやすいでしょうし、私のことを全然知らない方にも知っていただけるチャンスだと思うんです。コロナ禍というのも大きなきっかけですが、そういう思いでチャンネルを立ち上げました。
ーー今回のタイトルに絡めて、井上さんご自身が感じた“奇蹟”はありますか?
井上 私の人生、限りなくたくさんの奇蹟が起きているのですが……。でも一番最初にこの世界に入ったきっかけが、あるラジオ番組で「お菓子のパッケージモデルを決める」という企画に参加したことでした。
そのオーディションに合格した人はお菓子のパッケージモデルになるけど、落ちたらDJ体験をして帰るという企画で、私はラジオのマイクの前で何かを喋ってみたいと思って参加したんですね(笑)。そうしたら最終選考に受かって、パッケージのモデルになりました。あのオーディションがなかったら、私はそのままDJ体験をして、普通に家に帰って、今何をしてたか分からないです。本当に神様のいたずらというか、それがまず一つ目の奇蹟だったかなと思います。
ーー最後に、観劇を楽しみにされているお客様やファンの方々にメッセージをお願いします。
井上 私がシス・カンパニー公演に出られることは、それ自体が、もう本当に大きな“奇蹟”だと思っています。今まで応援してくださった方にはぜひその“奇蹟”を目撃していただきたいなと思いますし、役者として成長していく自分の姿をお見せできたらいいなぁとも思います。私自身にとっても、とても大きな公演になると思いますので、ぜひ劇場にお越しください。よろしくお願いします。
井上小百合 (撮影:加藤孝)
取材・文:五月女菜穂
撮影:加藤孝
スタイリング:中川原有(CaNN)
ヘアメイク:奥山信次(barrel)

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