「攻殻機動隊ＡＲＩＳＥ border:3 G
host Tears」ホセ役 鈴木達央インタ
ビュー（後編）

まずは、過去の作品に逆上ってヒントを探してみようということで、以前の作品たちの中で素子が興味を持つ人物達に共通点があるのではないかと思って、そこから何かが見えないだろうかと考えました。
　
そうしたら、達観したとかピュアだとかそういうことを考えることを捨てたほうがいいんだなということがわかってきて、彼を年齢不詳と考えたほうがいいんだなと、彼自身も何歳なのかわからないのではないかと思ったんですよ。
　
脳みそは10代前半かも知れないし、70代が乗っている可能性があるのだけど、10代でも、70代でも同じことをいう可能性があるよねって。年を取ろうが取るまいが変わらないものってなんだろうと思ってアプローチしないといけないんだなと。
　
人間は肉体の見た目が、視認できる自分を表す一つのシンボルじゃないですか。脳みそも五感から入ってくる情報を信頼しているからこそ、シワが増えてきたな、髭濃くなってきたな、体臭が出るようになってきたなというところから年を感じることができる。でも、年齢感がなくなることで、その人が持っている深みが無くなるんですよ。
　
だから「脳みそが年を感じない、認識しないということになったらどうなるんだろう？」という観点からホセの精神の根幹にあるものを探すようになっていきました。
　
――これだなと思えたのはどのタイミングだったんでしょう？
彼からでている何もかもが混在したカオスな言葉の中に込められている気持ちが見えた時にちょっとだけホセのアプローチが見えたなと思いました。
でも、実は今でも迷っていて、こればっかりは冲方さんの頭の中にしか無いんだなと思いました。本当は収録前に冲方さんと話をしたかったのですが、収録が終わった今こそ話をしたいなと思っています。
　
――アフレコの時のエピソードは？
めっちゃ雪降った時でした（笑）
都心の交通が全部麻痺してしまい、黄瀬（監督）さんが来られないというトラブルが。
　
他の作品で黄瀬さんとはご一緒させていただいたことがあったので楽しみにしていたのですが、まさか会えないとは思っていなかったですね。
　
アフレコ自体も1時間押しで、坂本真綾（草薙素子役）さんも間に合わないということで、みんなで談笑していました。
そこからしてカオスな現場でした（笑）
　
――真綾さんとはどんな話をされたのですか？
真綾さんから一番最初に聞かれたのは「（攻殻機動隊を）観てた？」ということでした。そこで「素子演じるの、ぶっちゃけ重くないですか？」と聞いたんですが、「最初はすごかった。」と言っていたのが印象的でした。
　
俺もそうなんですが、自分が見ていた好きな作品だと自分でハードルを設けてしまうんですよ。どんなに意識しないようにしても無意識にしてしまうので、それを超えるのに世界新記録を出すぐらい見当もつかないことをトライしようとするから大変ですよね、という話を真綾さんとしていました。
　
真綾さんは百戦錬磨ですし、いろんなことを経験されている方なので、そこに安心感を覚えたところもありましたし、全身全霊でぶつかっていこうという気になれたので、すごく助けられました。
　
――今回の作品では今までの作品に無い素子が出てきますが、素子と演じる上で気をつけた点はどこですか？
見ている人たちが嫌になるぐらい素子とホセが通じているんだなってことを出したかったので、攻殻機動隊っぽい言葉ではないですけど「バカップル」でいたいなと思いました。深いところでは彼は彼女を必要としている、彼女は彼を必要としているという図式を意識して演じています。
　
――作品のどんなところに注目して欲しいですか？
今回の作品では隅から隅まで全部観て欲しいんですよね。
僕は声優として、ホセに焦点を当ててフィルムを観た時にどうなっているかぐらいしか話をすることしかできないので、全体の1/3ぐらいしか話せてないんですよね。
　
アニメーターの方や監督はじめ大勢のスタッフが作り上げてくれた世界がふんだんに盛り込まれている作品なので、キャラクターの表情だったり、音楽だったり、細かいところまで逃さず観てもらいたいです。
　
みんなの努力の結晶がフィルムに詰まっているので、そういうところが皆さんに届けばいいなと思います。1回観ただけではわからない部分もあると思うので何度も見ていただければと思います。
　
――ありがとうございました。
　

　


(c) 士郎正宗・Production I.G／講談社・「攻殻機動隊ＡＲＩＳＥ」製作委員会』