『BABY Q 納涼祭』大阪場所第一夜、
安部勇磨、塩塚モエカ、長岡亮介、向
井秀徳が四者四様の弾き語りで酔わせ

BABY Q 納涼祭 2021.8.26(THU)なんばHatch
CUE=素晴らしい音楽に触れるキッカケと、休=最高の休日という2つの願いが込められたインドアフェス『Q(キュー)』が、この夏2年ぶりにカムバック。タイトルを『BABY Q 納涼祭』とし、8月12日(木)、13日(金)に東京で、8月26日(木)、27日(金)に大阪で開催された。今回はなんばHatchを舞台に、実力派4組が弾き語りで魅了した大阪公演第一夜の模様をレポート。
●安部勇磨
『BABY Q 納涼祭』
6月に1stソロアルバム『Fantasia』を発表した安部が、同作にも参加した香田悠真(Key)とDYGLの嘉本康平(Gt)を招き今夜のトップバッターを務める。当然、幕開けはアルバム表題曲「ファンタジア」。美しいピアノと朴とつとしたボーカルをまといゆったりと幻想を描けば、会場は夕暮れにも似た温かな空間に早変わり。そして次は脳内に<ありがとさん>のフレーズをリピートさせ観客の体を揺らすと、続くMCでは東京公演を振り返り「すげーしゃべり過ぎて15分押して、迷惑をかけてしまって(笑)」と反省がゆえの早口。だが、その飾らない姿が人々の緊張を解き、リラックスしてもう2曲。
『BABY Q 納涼祭』
舞台に落ちる水玉模様の照明と相まって水中のような浮遊感を生む「風まかせ」、独り言にも聴こえる歌声や別世界で響くような鍵盤で言葉を刻みつける「おまえも」でもっと深みへ。と思いきや、今日は時間を確保したというMCで再び素の顔。来場者に聴きたい曲の2択アンケートを実施し、香田と手掛けた映画『その日、カレーライスができるまで』の劇中歌とその撮影現場の裏話も披露する。今回もトークでひと山つくり、気づけば早くもゴール間近。
『BABY Q 納涼祭』
スパートは、優しいピアノと爪弾くギターが熱を帯びる歌を際立たせる「さよなら」で没入させ、最後はアンケートで票を得た安部のバンド・never young beachの曲「明るい未来」を。「手拍子いいですか?」(安部)と煽れば、待ってましたとばかりに今日一番のクラップが起きて朗らかにフィニッシュ。演奏後、パッと明るくなった会場に彼の笑い声が響いたのは満足感の表れに違いない。
『BABY Q 納涼祭』
胸元で小さく手を振って定位置につく可憐な様子に音が鳴る前からハートを射抜かれるが、もちろん曲が始まればもっと魅惑的。時にエキセントリックに時に神秘的に声を操り、出だしは「no.6 for yusho」と「62」で脈打つような生々しさも交えてオーディエンスを急速に引きつける。
『BABY Q 納涼祭』
そして給水タイムでさえ張り詰めた時が流れるなか、歌声もギターも徐々に熱を上げる「繭」と、静かに「今日は(自分の所属するバンド)羊文学の曲はやりません」と微笑むMCを挟んで、今度は「猿」でムードをチェンジ。ルーパーでコーラスを重ねどんどん厚みを増す音像はガーリーでコケティッシュな一面も見せ、「Yeah!」のシャウトも切り裂き、まるで実験を観察している感覚に。すると次は「ファンタジー」で広げる危うくてダークな感触と、「愛しいひと」の夜の雰囲気で別の横顔。マイナーコードをなぞる粘度の高いボーカルは不安さえ抱かせもするが、エフェクトをかけたそれはどこかおしゃれな響きも。
『BABY Q 納涼祭』
しかしまだまだ彼女の魅力は色を変え、「こころ」ではなじみのいいメロディに細かく刻むギターを合わせて日常に寄り添い、前進力をおすそ分け。さらに「最近思ったことを歌にした新しい曲を」(塩塚)と奏でる「世界の秘密」では、葛藤や悲しみの粒子を集めた言葉を透明感あるボーカルで突き抜けさせる。そしてついに迎えた最終は「Bowie」。鼓動のようなギターに合わせる泣き出しそうな歌声は琴線に触れて湿度をぐっと上げ、余韻をたっぷり残して約35分間のステージは終了した。
●長岡亮介
『BABY Q 納涼祭』
曲名を彷彿とさせるような、揺れる水面を音で映し出す「湖畔」からライブはスタート。清涼感のなかにもひとクセを混ぜつつ多彩な展開で雄弁にギターを歌わせ、観客は1曲目からその聴きごたえに釘づけだ。そしておしゃべりで和ませながらのチューニングと、ウキウキさせる軽やかな英詞のポップ「Lounge Lover」を挟み、ここからは選曲でも魅せるカバータイムへ。
『BABY Q 納涼祭』
まず選んだのはプリンスのラブソング「Crazy you」で、甘くムーディに心地よく。これに続くのはファンにはおなじみのウィリー・ネルソンのカバーから、今宵は「Night Life」。ドリーミーな質感の途中にフッと加熱する瞬間もあり、赤い照明も加わって古い洋画を観ているような気分にもなる。さらにグレン・キャンベルの名曲「Wichita Lineman」、ビル・モンロー&ザ・ブルーグラス・ボーイズの「Drifting Too Far From The Shore」を続け、温もりあるボーカルを響かせたり、豊潤なギターの音色と三拍子でノスタルジックにしたりとあの手この手。しかも「ウィリーさんの曲です」や「ブルーグラスと呼ばれるジャンルの曲です」など、ちょっとした解説もつけ足して音楽への興味も高めてくれる。
『BABY Q 納涼祭』
そんな好奇心を刺激するひと時のあとは、自身のバンド・ペトロールズのナンバーをセレクト。鋭いギターと畳みかけるボーカルがスリリングな「TANOC」で観客の心を右往左往させておいてから、音で会話するように綴るウエディングソングの「Iwai」で晴れやかに締め。最後まで1曲1曲に異なる感情を生む色彩豊かな全8曲は、ギター1本とは思えぬ充足感を味あわせてくれた。これぞさすが名手のアクト!
向井秀徳アコースティック&エレクトリック
『BABY Q 納涼祭』
NUMBER GIRLZAZEN BOYSなどで活動する彼だけに、セットリストも気になる今夜の初手はKIMONOSの「Yureru」。絞り出す声がのった煽情的で強いロックは早々に観客を高揚させる。そして「CRAZY DAYS CRAZY FEELING」と「YOUNG GIRL SEVENTEEN SEXUALLY KNOWING」を皮切りに各バンドの新旧楽曲を続々投下。
『BABY Q 納涼祭』
ラップでたきつけたかと思えばセンチメンタルに物語を伝え、うれしい動揺を与えると、最新の「排水管」オリジナルメジャーバージョンでは焦燥感も上乗せ。だが、それにとどまらず「鉄風鋭くなって」と「ZEGEN VS UNDERCOVER」という00年代のキラーチューンを立て続けるから、その鋭利な言葉にヒリヒリし、かき鳴らされるギターとあの中毒性抜群のフレーズに血は逆流。会場の空気も限界まで膨張するようだ。
『BABY Q 納涼祭』
すると曲後、向井は減圧するように「シュー」と息を吐きチューニングして続く「KARASU」でスローダウン。哀愁も漂う味わい深いボーカルは胸に迫り、人々は動きを止めて聴き入ることに。しかし現在位置はもう終盤。「OMOIDE IN MY HEAD」のギターと歌でひたひたと詰め寄り再浮上し、ラストは疾走感十分に「はあとぶれいく」。そのビートは観衆の動きを同期し、アッパーに駆け抜けてライブは終わりの時を迎えた。

『BABY Q 納涼祭』
無論、興奮さめやらぬ客席では拍手がやまない。これにこたえ向井が再登場し、「共に演奏を!」と長岡亮介を呼び入れる。そして「1982年度のグラミー賞最優秀メロディアスポップグループ部門を受賞したフィッシュアンドチップスの「忘れられへんねん」という曲をやります」(向井)、「何それ。日本の歌ですか(笑)?」(長岡)という噛みごたえあるMCを経てアンコールへ。何度も聴いているヒット曲は、彼らの手で甘美かつエネルギッシュに仕立てられ想像のはるか上をいき、これだけでも来た甲斐があるというものだが、2人はさらにもう1曲「Water Front」もプレイ。圧巻のパフォーマンスはダメ押しのように聴く者をドラマチックでディープな音世界へ引きずり込み、『BABY Q 納涼祭』大阪公演初日はフロアが沸騰したまま幕を下ろした。
『BABY Q 納涼祭』
取材・文=服田昌子 撮影=ハヤシマコ

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