May'nインタビュー15周年記念ライブ
を振り返る「自分自身を制御できなく
なったのはキャリアの中で初めて――

アーティストデビュー15周年を記念したライブ『May’ n 15th Anniversary Monthly Concert「1 to 5」』の最終公演となる「1 to 5 -MUSIC-」が閉幕し、16周年へ向けて歩みを進め始めたMay’ n。約5ヶ月に渡って開催されたライブの裏側やオンラインライブだからこそ発見できたことや、レーベル移籍後初となるアルバム『momentbook』に対する思いまでじっくりと話を聞いてきた。
――『May’ n 15th Anniversary Monthly Concert「1 to 5」』(以下、「1 to 5」)は本来有観客で行われる予定のライブでした。オンラインライブになると聞いた時の率直な感想はいかがでしたか?
2020年の最初の方にツアーが中止になってしまったんですが、特別版という形でオンラインでもライブができましたし、「お客さんを入れられないかも」とは思いましたが、オンラインでも毎月ライブができるのは幸せだな、という想いがあったので、昨年より前向きな気持ちでスタートしました。12月にもコンセプトライブ『15Colors』を行って、それを経ての『1 to 5』で「オンラインでしかできないこともあるかも」と気づき始めていた時期だったので、オンラインでしかできないことを探そうという前向きな気持ちで始まったというのはあります。
――どのライブもオンラインでしか出来ない演出が詰まっていました。そういったアイデアはどのように生み出していったのでしょうか?
やっぱりオンラインだからこその近さを感じてもらいたいし、普段のライブだと足元での演出はなかなかできないので、目の前を遮るものがないからこその演出にしたいというのは、最初からチームの方にお伝えしていました。あとは15周年の記念で毎月ライブができるからこそコンセプトや音楽ジャンルを分けていたので、久々に歌える曲とか歌が一番映える演出っていうのも、今まで以上に考えることができたかなと思います。ありがたいことなんですが、持ち歌が増えるたびになかなか歌えない曲が増えてきていたので、コンセプトを分けてやったライブだからこそ10年近くぶりに歌えた曲もあった。だから終わった後はやり切ったなという思いがあります。
――今回のライブは公演ごとにコンセプトが分けられていますが、セットリストを組むときに注意したことはありますか?
ライブの1曲目はテーマを象徴するものにしようと思っていたので、『POP』だったらポップな曲、『ROCK』だったらロックな曲でスタートを切れる楽曲を意識してセットリストを作りました。あとは、久々な曲を歌いたいなと思いつつも、そういう曲ばかり並んでしまうと緩急がつけ辛かったりするのでその辺りも考えました。オンラインライブなので、家で見ていたり、何かしながら見ることもあると思うので、テンションをあげつつも落ち着いて見られるポイントをちゃんと作って、テンションの差が生まれないようにすることも注意しました。有観客のライブを作る感覚とは全然違う感覚でしたね。
――とはいえ今回のセットリストはテーマの言葉に囚われず選んでいる印象がありました。
毎回、良い意味でサプライズは入れたいと思っています。ですが、今回『POP』はポップな曲を選んだつもりだったんですけど、みんなにポップじゃないって言われましたね(笑)。セットリストを組む時にはCD音源を聞いて決めるんですが、ライブをやるたびにテンションが上がってロックサウンドになっていき、ロックな気分で歌っている自分がいるので、リハーサルの時に「あれ?」ってなりました。セットリストを受け取った音楽チームのリーダーが、「『ROCK』はどうなっちゃうんだ……」って一瞬ざわついたらしいです(笑)。実は『POP』では「射手座☆午後九時Don't be late(以下、「射手座」)」もやるつもりだったんです。本編15曲のアンコール1曲で16周年へ向けての意味も込めた16曲、でも一番最初のライブは17曲とかでもいいかなって思ったんですけど、「「射手座」やったら死ぬ!」ってなって泣く泣く外したんですよ! でも終わったあとに「外してよかった」「これ無理だよ」って、畳み掛ける楽曲が続く中に「射手座」があったので、お客さんがアップアップしちゃうなと。
撮影:山口宏之
――そんな背景があったんですね! そんな試行錯誤もあった中のオンラインライブですが、みなさんからの反応はいかがでしたか?
「初めてMay'nのライブが見れました!」っていう方も結構ありました。海外配信もさせていただいたので、日本人の方だけでなく海外の方からも反響があり、行ったことない南米からのコメントもあったので、オンラインだからこそ出会えた人が確実にいる、というのは思いましたね。オンラインだからこそより近く感じて欲しいというのは毎回テーマとして持っていて、バックヤードみたいな所や、普段見れない所までカメラが入ってもらえたのはよかったと思います。
――オンラインライブの映され方、映像と写真ではやはり違う意識の仕方があるのでしょうか?
写真は平面なのでキャリアを通して慣れてきたというのはあります。例えば商品はセレクトできるので、一番いいところを使えるというのが良さだと思うんです。でも、今回は生配信にこだわってきたので、本当に素だったり「ここの角度いけてないんだよね私」とか「ちょっと素過ぎるな」とか荒々しさもライブの良さだと思うので、「あえてどこからでもOKです」というのはディレクターさんにも話していました。生配信ならではの、ちょっとうまくいかなさとかもライブの良さだと思っているので、それが商品と違う映像になったんじゃないかなと思います。
――今回の5ヶ月連続ライブでMay’ nさんの中で印象的なライブはありますか?
『POP』の時に、クレーンカメラを押し返して動きをつけようと思ったら、私の力が強すぎてカメラが壊れかけたんです。それで映像チームは焦ったみたいで、『ROCK』のライブの時にスタッフの人から「あの時はカメラが本当に壊れるかと思いましたよ~」って笑いながら言われたので「本当に破壊してみたい!『ROCK』だから本当に破壊するのはどうですか?」って言ったら「え……?」みたいになって(笑)。実際には壊さずに、割れたレンズを入れ込んでそういう演出を作って不思議な映像にしてくれたんですが、最終的に『MUSIC』の時には「本当に破壊していいよこのカメラ」って言われました。なんでもありな演出をそれぞれ出し合えたのは本当に楽しくて、「本当に壊して欲しいなら壊したろうかな?」くらいの気持ちでカメラを蹴飛ばせたので、実際には壊れなかったんですけど、そういう思いだったからこそ力強いキックをカメラも撮ることができたので、多分初めましての方とのライブだったらあのくらい力強く蹴られなかったと思うと半年の集大成だなと思いましたね。
――チームとの信頼関係も構築できたと。
そうですね。舞台チームはいつもやってくれている方々なんですけど、映像チームはコロナ禍で初めてご一緒した方もたくさんいるので、毎月配信ライブをおこなったからこそできたことでした。あと音楽的にやり切ったなと思うのは『ACOSTIC』ですね。その時のテンポ感や呼吸感を体で奏でた感覚があり、音楽のことをすごく考えてやり切ったライブだなと思います。『MUSIC』は有観客っていう嬉しさもありますけど、オンラインの集大成みたいな気持ちも私の中ではありました。ステージを意識し過ぎると逆にオンラインは取り残されてしまうので、何を意識したらいいんだろう、というのはすごく試行錯誤しました。どちらも叶えることが意外と難しくて、リハーサルを重ねながら舞台監督さん、映像ディレクターさんとすごい何度も話し合いましたね。特にオンラインでのライブ照明は、テレビのようなもの意識して作ってもらっていたので、有観客での照明は本当に難しいだろうなと思いました。
――オンライン配信に特化した最後に、オフラインとのハイブリッドという新しい壁が出てくるのはまだまだ考えないといけないことがあるという意味でも良いですね。
オンラインライブって最初は「お客さん入れられないんだ」という残念な気持ちからのスタートでしたが、オンラインになった時に本来のライブの良さにも気づけた期間だったと思います。ライブが当たり前のようにできる時代になったとしても、ライブになかなか足を運べない人も絶対にいるはずなので、オンラインとオフラインの共存はずっとテーマとして持っていたいなと思います。
――May'nさんはライブの“部”は部活の“部”と仰っています。今回のライブはまさに「ライ部」感があったと思いましたし、どのMay'nが好きか選べるライブだったと思いました。
それはすごく嬉しいですね、みんなが「これが一番好き」って教えてくれたのも印象深かったです。特に「『ACOSTIC』が一番素敵でした」って言ってくれる人が多かったのがすごくびっくりしました。しかも、言ってくれたのが私のファンクラブとかに入ってくれているようなファンの方だけじゃなくて、May'nのライブを見たことないって人も多かったんです。チャレンジだなと思ってやったことも意外と一番反応が良かったと思うと、怖がらずにどんどん自分が良いって思うことを発信していきたいし、自分の“かっこいい”とか“好き”っていうのを信じていればいいんだなと、ここ最近の活動ですごく思わせてもらって自信をもらいましたね。
――ご自身でもオンラインライブを見られるということで、観客目線で見たときのオンラインライブの面白さはどういう所だと思いますか?
B’ zさんのオンラインライブを見たときに思ったんですけど、有観客で出来るような演出を全力でしているところもすごく魅力的なんですが、ソファーに座って松本さんと稲葉さんが楽屋みたいなノリで、アコースティックギターで魅せてくれたシーンが一番グッときたんです。これってオンラインならではで、近さが一番良いところだなって思ったんです。なので『ACOSTIC』も隣で歌っているような、家にMay'nがいるような気持ちになって欲しいという思いで作りました。有観客と無観客って違う良さがあるなっていうのは改めて思いましたね。
撮影:山口宏之
――確かに配信とオフラインでのライブは感覚が違いますよね。そんな配信ライブを踏まえての『MUSIC』は有観客でしたが、久々の有観客のライブはいかがでしたか?
お客さんがいるってこんなに心強いんだ、私はみんなのことをこんなに待っていたんだって気づかされました。楽屋にいるときは「よっしゃやるぞ!」とか「楽しみだ」というワクワクが強かったんですが、最初のサビを歌い終わって、扉が開いてみんなの顔やサイリウムの光が見えた時にブワーっとこみ上げてきて説明できない感情になりました。大切なライブの時には胸が動く感じというのは経験したことはあるんですが、あんなに自分を制御できないくらい心が乱れた感覚はキャリアの中でも初めてだったので。
――初めて、というぐらいやはり有観客のライブは大事なものだと感じたわけですね。
初めてですね、ちょっと涙が出る、鼻声になっちゃうとかはあっても、今までは歌えていたんですが、「歌えない私」になりました。そのくらい感じたことない感情だったので、とにかくみんなを待っていたんだなって。1年3ヶ月もライブができない期間が空いたのって初めてだったので。Twitterとかの交流や無観客でもみんなの反応があるといっても、やっぱりみんなを実際に見ると、不思議な感覚というか、人と人があったときに生まれるオーラや空気感って絶対あるんだなとその時に思いましたね。だから、オンラインライブは続けていきたいけど、人と人が離れ離れになることってやっぱり無理なんだなというのも実感しました。
――確かに人の存在感というのは絶対にありますよね。自分もMay’ nさんを初めてライブで見たときにステージに立つ気合いやオーラみたいなものを感じました。配信でのライブも素敵ですが、生のライブはやっぱりいいなと思います。
そう思っていただいていたら嬉しいです。今回のオンラインライブを見てMay'nのライブを実際に見てみたい、行ってみたいなって思ってくれる人が増えていたらやっぱりすごく嬉しいですね。
――そして今度はアルバム『momentbook』についてもお伺いしたいのですが、4年振りのアルバムのリリースですよね?
4年振りとは思わなくて、ミニアルバムも出させていただいていますし、配信でも新曲はたくさん聴いていただいているのですが、やはりアルバムを作るというのはまた違った特別な思いがあります。シングルも収録することができるのがアルバムの良さでもあるので、この4年間の自分の歩んできた道を込めることができた作品になりましたし、この作品からレーベル移籍という新たなMay’ nでもあり、移籍前の楽曲もたくさん収録させていただいているので、過去・今・未来を繋ぐことができた大切なアルバムになったなと思います。
――リリックビデオが公開されている「Walk with moments」はご自身で作詞作曲を務められています。込められた想いをお聞きしたいのですが。

プロデューサーの田中宏幸さんとは10年来の付き合いがあって、TVアニメ『タブー・タトゥー』のOPテーマ「Belief」や、仮面ライダーフォーゼのEDテーマ「Giant Step」など数年間に一度、大切なタイミングでご一緒させていただいている方なんです。そんな方が「今回はMay’ nのパーソナルな部分を音楽に活かしたい」「普段のMay'nの良さをもっとたくさんの人に届けたい」と言ってくださったので、自分で作詞をしてMay’ nのパーソナルな部分を音楽に出せていけたらいいなというのが、まずひとつ大きなテーマでありました。なので、これまで積極的に裏側を見せたがる方ではなかったんですけど、CDに同梱されているBlu-rayには、「Awesome Studio-May'n-」と題し「Walk with moments」の制作風景を収録しており、楽曲ができるまでという裏側を出しています。でも全く裏側を見せないでやってきたかというと、SNSもやっているしMCでは何でも喋るタイプではあるので、音楽も自分自身のパーソナルな部分と変わらず一緒になっていけば、歌っていても、ありのままで表現できるのかなという新しいチャレンジでした。きっとファンの方にはより楽しんでもらえるし、May’ nのこと知っているだけという人にもMay’ nってこうだったんだ! って思ってもらえるんじゃないかなって期待はありますね。
撮影:山口宏之
――今回は若手のアーティストさんから楽曲提供を受けていますが、どういう視点でディレクションされたのでしょうか?
大石昌良さんに作っていただいた「未来ノート」は、もっと前から楽曲ができていたので、このアルバムに向けてという形では新曲を5曲作っているんですけど、この5組の方は私が今好きな方たちに声をかけさせていただきました。向井太一さんとRin音さんは、ここ最近私が一番ハマっている2組で、田中秀和さんと田中隼人さんは、以前もお仕事させていただいているんですけど、新しい曲でもぜひご一緒したいなということでお声がけをさせていただきました。h-wonderさんは初めましてなんですけど、デビューのきっかけになったオーディションでもh-wonderさんが作曲と編曲をされている楽曲を歌ったくらい、デビュー前から憧れている作家さんでした。デビュー前とかは「この人にお願いしよ!」っていう気持ちでクレジットを見ていなかったんですけど、ふと歌詞カードを見たときに「あれ、この人の名前よく見る」という方がh-wonderさんだったんです。そんな青春の憧れの方もご一緒させていただけて、自分の憧れや好きを詰め込むことができたアルバムなんじゃないかなと思います。
――レーベル移籍して制作環境に変化はありましたか?
こんなにひとつのアルバムの中で一気に作詞をしたことがなかった、というのがあります。今までも作詞作曲はしているんですが、「私今作りたい曲があるから作ります」とか「良い曲ができたので入れてください」とか、自分の好きなタイミングでずっと作詞作曲をしてきたんです。ただ、今回は新曲は全部作詞作曲をやることにチャレンジしてみましょう、とプロデューサーの方からも言っていただいて、自分の好きなタイミングであれば「今これ開けたいんでこの引き出しを開けます」って出来ますけど、5曲ともなると開けたことのない引き出しも開けないと、似たようなテーマになってしまうし、締め切りもある中で5曲全部を書くというのは今までと違う環境だったと思います。
――やはり締め切りのある中で作詞作曲は大変でしたか?
大変でしたね。1曲ができたらすぐに次を書かないといけないし、プロデューサーの方からも「May'n電車乗りがち」、「May'nカフェ行きがち」って言われて、パーソナルな部分を入れるとすぐに電車とカフェがでてくるんだなと(笑)。
――作詞って言葉じゃないですか、普段使っている言葉だったり文章だったり、そのボキャブラリーって生活の中からしか生まれてこないというところもありますよね。
本とか映画からも生まれてくることもありますけど、今回曲が先で、曲は自分で作っていないからこそ、メロディから引き出してもらえる世界観とかもありました。特に向井太一さんの楽曲は向井さんがデモを適当英語でご自身の素晴らしい歌声で「ライライ」って歌って、そのぐちゃぐちゃ英語の「ライ」が「ライ……? あ、嘘だ!」となり、嘘をテーマに歌詞を書こうと膨らんでいき、向井さんの色気ある声も印象深かったので男の人の嘘をテーマに歌詞を書こうと思いました。これは確実に向井さんから引き出してもらった歌詞だったので、あれがシンセのメロディだったら違っただろうなって思いましたね。
撮影:山口宏之
――仮歌から感じる世界観って面白いですね。
そうですね、Rin音さんも歌詞の世界観が浮かばないとメロディが浮かんでこないという方だったので、私の人生を小説にしてお送りしました。「May’ nさんの人生を双六のような曲にするのはどうですか?」って言ってくださり、タイトルの「place roulette」という言葉もRin音さんが考えてくださって、歌詞もどんどん広がっていきました。自分一人の引き出しだけではできなかった、アーティストさんとのコラボだったからこそできた曲だなと思います。すごく嬉しい出会いです。
――まさにアーティストとアーティストがコラボすることによって生まれた楽曲ですね。では最後の質問になるのですが、レーベルを移籍して新しい16周年が始まっていくということで、今後やっていきたいことはあるのでしょうか?
よりクリエイティブをこだわって強くしていくというのは、キャリアを重ねたからこその目標ではあるかなと思います。今回、作詞をたくさんしたことで、開けたことない引き出しをたくさん開けることができたと思います。今まで自分自身が作詞作曲をしてきていても、作品に寄り添った楽曲というのはあまり作ったことがなかったので、ボーカリストとして歌のクオリティをあげていくのはもちろんですが、作詞作曲などのクリエイティブの方面でもパワーアップできる1年にできたらいいなと思います。ライブの演出もこれまで以上にこだわって、May'nとしてものづくりにこだわることのできる1年、そしてこれからのキャリアであったらいいなと思います。
取材・文:波多野彩花 撮影:山口宏之

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