石田泰尚×﨑谷直人、“最強”ヴァイ
オリンユニットにインタビュー 「ク
ラシックもロックも遠くにある別々の
ものではない」

神奈川フィルハーモニー管弦楽団でソロ・コンサートマスターを務め、室内楽やソロでも活躍する、石田泰尚と﨑谷直人によるバイオリン・ユニットDOS DEL FIDDLES(ドス・デル・フィドル)が2021年8月13日(金)に、東京・浜離宮朝日ホールでコンサートを行う。“最強”バイオリニストの二人に、デュオとして今年初めてのステージについて聴き所などを話してもらった。
◆結成のきっかけは﨑谷から 「イメージに囚われているようで窮屈だった」(﨑谷)
﨑谷直人
――ドス・デル・フィドルは昨年2020年9月に東京・紀尾井ホールで行われたステージで本格始動されました。結成の経緯から振り返っていただけますか。
﨑谷直人:「石田さんとやりたいんだけど」とマネジャーの背中に向かってつぶやいたことが始まりでした。神奈フィル(神奈川フィルハーモニー管弦楽団)に入る前から、石田さんのことは知っていたのですが、石田さんを身近で見て、接しているうちに、この人にしかないものがあると気がついたんです。それがどうなっているのか、オーケストラ以外でも見たいなと思って。
――石田さんとは、また新しい扉が開きそうな予感がしたのでしょうか。
﨑谷:そうですね。同じオケで演奏している人と、オケ外で何かを一緒にやることは珍しいですし。僕自身、コンマスなどいろいろな経験を積ませていただいて、ありがたいことにクラシック界での評価はそれなりにいただいているのですが、この世界だけではなく、いろいろな場で表現をしたいと思ったこともありました。
――二人だからこそ創り上げられるものがあるという、思いがあったのでしょうか。
﨑谷:普通にやっていても、異端児のような目で見られてしまうことが多いんですよね。本格派だとか、それはそれでありがたいんですけど……。少なくとも僕は、クラシック奏者だからといって、クラシックしか聴かないということはなくて、普段の生活で聴くのはロックとかばっかりなんです。ロックを聴いているときと同じ感覚でクラシックを聴き、演奏をしている。でも多くの奏者は、ロックはリラックスしながら聴いていても、ベートーヴェンになった瞬間に畏まってしまうというか、蝶ネクタイを締めていないとクラシックじゃないみたいな、イメージに囚われてしまうというか。それがすごい窮屈で。
◆「僕と﨑谷くんは全くタイプが違う」(石田)

左から 石田泰尚、﨑谷直人

――石田さんは、﨑谷さんにデュオに誘われたとき、どんなお気持ちでしたか?
石田泰尚:最初、「何かやりませんか?」と言われたときはビックリして、「エッ?!!」っていう感じでしたね。「オレでいいの?」と確認をしたの、まず。それでやるんだったら、本格的にやろうと。お互い同じオケにいるんだけれど、同じ立場なんで、そんなにしょっちゅう会わないんですよ。僕が頭をやっているときには彼はいないとか、そういうことが多いので。とはいえ、同じオケなのに他でもオレとやりたいって、オケで会うのに??って。だから、言われたときはちょっとビックリでしたね。
――﨑谷さんに対しては、どのような印象をお持ちでしたか?
石田:僕とタイプが違うんです。死ぬほどキレイな音を出すんですね。最初に一緒にオケで演奏したときから、「めっちゃいいキレイな音を出すな」と思っていて。それが最初の印象でした。それから、僕はどっちかっていうと、本能というか感覚的に弾くタイプなんですけど、彼は理論派っていうんですかね、僕から見たら。そこがちょっと違うっていうか。タイプが違うから、勉強になるんですよ。盗めるところは盗もう、﨑谷くんの良いところを吸収しようとしています。
――デュオとしてのデビューコンサートは、どんな手応えがありましたか。
﨑谷:(石田との)演奏は、昔から一緒にやっていましたが、神奈フィルでの感じとはまた少し違う感覚がありました。山中(惇史)くんが僕らのために書き下ろした曲「晴れのちケルト」もありましたし、いろいろな角度から音楽を楽しんでもらえたのではないかなと思います。夏に行ったレコーディングは、山中くんがしつこくて大変でしたけど……(笑)。
――ブラームスからピアソラなど、幅広い選曲に驚かされました。終演後、ご自分たちの舞台を映像などでご覧になった感想は?
﨑谷:映像で見るとまた違って見えました。クラシックの演奏会って、奏者も聴き手もかっちりしているから。あんまりない(スタイル)……っていうか。クラシックの演奏会って、告知のポスターからしてお遊戯会みたいだなと言うイメージを僕は持っていて、こんなんじゃお客さんが来てくれるわけないよなって思うので……。型にはまらないものを見せたいと考えていたので、面白いステージを見せることができたのではないかなと思っています。
◆弾き手として気持ちいいと感じる部分を、もっともっと出していけたら
石田泰尚
――ソリストの二人がデュオでステージに立つことからして、ぶっ飛んでいると感じましたが、お二人がヴァイオリンを手に聴き手をにらみつけるようなまなざしを見せるアーティスト写真も、飛び出す絵本のような〝振り切った感〟があって、見たことがないものを見せてもらえるのだろうなという期待感がありました。ボクシングの打ち合いじゃないですが、「負けないぞ!」という気持ちでステージに臨まれたのでしょうか。
﨑谷:全然全然。割と優しい感じです。
――オケでやられるときよりも、リラックスしていましたか?
﨑谷:殺伐としているオケもある中で、割とうちのオケは和気あいあいとしていますよね。石田さんが入ってくると、現場はピリッとしますけど。多分、怒らせたら面倒くさいなと思われているのは、どっちかと言ったらオレなんですよ……。石田さんの方がすごいキャパ広いから。逆に見えると思うんですけれど。
――石田さんは、﨑谷さんとの演奏を重ねられる中で、自分がこれまで気づいていなかった面を引き出してもらえたなど、変化がありましたか?
石田:そうですね。たまになんですけど、オーケストラで二人並ぶことがあるんです。オーケストラでやるときは、いろいろアンテナ張っていないといけないんですけど、二人並ぶとやっぱり、面白いんですよね。すごい楽しくて。僕はどんなジャンルでも、基本は楽しく仕事したいんです。﨑谷くんはうまいし、いろいろ考えているから、すごい楽しい。楽しすぎてちょっとふざけちゃうっていうのは、あるんですけど。
﨑谷:でも本当、並んで弾くの楽しいんですよ。
石田:うん、だからそれは、ドスデルでも同じっていうか。
﨑谷:こう来るだろうなというのも、なんとなく分かるし。本能的な部分なんですけど、それがすごく気持ちいいんですね。弾き手として気持ち良いと感じる部分を、もっともっとドスデルでも出せたらなと思います。
◆クラシックもロックも、同じ延長線上にあるもの

石田泰尚

――弾き手の楽しさが観客に伝染していくのって、ライブならではのことですよね。8月13日(金)の浜離宮朝日ホールでの公演はどんなステージになりそうですか。
﨑谷:僕ら「ドス・デル・フィドル」と名乗っていて、“フィドル”をテーマに活動しています。昨年のデビュー公演もフィドル系の曲を集めたんですね。今後はもちろんいろいろな展開をしていきたいと考えていて、例えば僕が好きなロックとかも取り入れて。8月は難しいですが、一緒にやりたい人は何人かいるので、ゲストを入れた形でもやってみたいです。
――いつも仕掛けていく。お二人の鋭い眼光からは、そんな決意も感じます。
﨑谷:そうですね。僕、将来的に絶対にやりたいのは、WANDSの(ギタリストの)柴崎浩さん。ずっとファンで。本当は一緒にやるはずだったんですけど、コロナ禍で流れてしまって実現できていないので。すごいギターを弾くので、そういうクラスの人と一緒にやりたいです。全く違うジャンルの、僕が尊敬する人とやってみたい。絶対かっこいいと思うんです。
石田:クラシックはもういいんですよ……。色んなジャンルの人が集まる、フェスとかに出るのも良いですね。
﨑谷:ライブハウスでやるのも良いですよね。ロックやりたいです。
石田:何って言われても、たぶん曲を知らないんで困りますけど。言われた曲をやります(笑)。
﨑谷:僕、Charさんとかも大好きで。ビーイング(T-BOLANなどが所属する事務所)で五味孝さんとかすごいギタリストが集まる『Being Guitar Summit』っていうイベントがあるんですけど、めちゃくちゃレベル高いんですよね。ヴァイオリンって、そういうものがないから。バンドとか、クラシックでいうオーケストラや弦楽四重奏っていう形態ではなく、昔のクラプトンとかジミ・ヘンドリックスみたいな楽器1本のギターヒーローのような……「ギターと言えばCharだよね」みたいなモノを、ヴァイオリンでも作れるはず、あってもいいはずなのに。
﨑谷直人
――伝統とか、かたい感じではなくてですよね。
﨑谷:そう。お金持ちじゃないとできないとかじゃなくて。その延長線上に、ベートーヴェンってあると思うのに。特別にそれだけ分けて考えないで……。奏者のマインドも変わって行かないと、何も変わっていかないと思うんです。
――そもそもベートーヴェンが、ロックですもんね。
﨑谷:そう。「東京事変かっこいい」って思う人が、ベートーヴェンのカルテットを聴いて「かっこいい!」って思わないわけはないんですよね、入り口が違うだけ。(ベートーヴェンの)後期の作品なんてオルタナティブ的な部分もあるし。
以前、坂本龍一さんが面白いことを言っていたんですよ。Op.131の七楽章ぐらいあるうちの1つが、コンピューターミュージックみたいな音がするって。もちろん弦楽四重奏だから、4人だけのものなんだけど、オレもそういう感じがしました。それで、「もしかしてベートーヴェンって、当時なかったような音が聴こえていたんじゃないか」「もう250年も前に、いまオレがやっていることをやられちゃっているんだ」って坂本龍一さんが言っているのを、インタビューで拝見したことがあって。
本当、マジそうだなと思いました。僕はいま、両方を知っているから。そうやって思っていることが、(聴き手に)なかなか伝わらないんですけど……。大声で言うと、「何だ、あいつ」ってなっちゃうけど、普段、本格的にクラシック奏者として活動しているからこそ、クラシックもロックも遠くにある別々のものではないということを、伝えていくことができる。そういうユニットになることができればと思っています。
――そうですね。最後に8月13日(金)の公演に足を運んで下さる方にメッセージをお願いします。
石田:今年初めての公演なので、楽しみにしていて欲しいです。ヴァイオリン二人のユニットってどこにも存在しないので、やるからには知名度を上げたいと僕は思っています。いまはコロナ禍で難しいですけど、将来的には全国展開もできたらと思っています。やっぱり舞台で弾くのが仕事なんで、元気なうちはステージに立ち続けたいです。それでお客さんが喜んでくれたら最高です。
﨑谷:僕も同じです。楽しんでもらえたらと思うし。いま東京近郊でしかやれていないので、地方に行く機会も増やしたいです。後は、YouTubeチャンネルを持って配信も力を入れたいと思っているので、楽しみにして欲しいです。
取材・文=Ayano Nishimura 撮影=池上夢貢

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