L→R イガラシ(Ba)、シノダ(Vo&Gu)、ゆーまお(Dr)

L→R イガラシ(Ba)、シノダ(Vo&Gu)、ゆーまお(Dr)

【ヒトリエ インタビュー】
“3人で初めて作った曲”
ということを大事にしたいと思った

覆りようのない現実に
立ち向わなきゃいけない

これまではwowakaさんが曲を作ってましたからね。

ゆーまお
ちょっとした細かいところで“これは知らない”ってことが多かったから、それまでのセオリーが通用しないというか、wowakaが許容している範囲のものとは別のものなので、ちょっと大変でしたけど、まずはシノダが作ったものをなぞらなきゃと思いながら挑みました。レコーディングでサウンドを作る時は、ヒトリエが今までやってきた音作りの延長というか、“当然こうなるよね”っていう音質で仕上げたいとは思っていたから、それをやった感じでしたね。

「3分29秒」を作った経験がその後、『REAMP』を作る時に生かされたわけですね?

シノダ
そうですね。「3分29秒」がほんとにスタートだったので。だから、サウンドメイクを考える上で、メンバーとどういうディスカッションをすればいいのかも含め、僕がディレクションしなきゃいけない。もちろん「3分29秒」で全てを学べたわけではないですけど、『REAMP』の制作ではかなり役に立ちました。「3分29秒」をいったんかましておいて、マジで良かったと思います。
ゆーまお
で、カップリングの「Milk Tablet」は最近録ったんですよ。

そうなんですか。ということは…

ゆーまお
3人になって最初に録った曲とアルバムを挟んで一番最近録った曲が入っているシングルになったので、個人的には面白いと思っています。

その「Milk Tablet」はR&B、ファンク的なダンスナンバーですが、こういうダンサブルなアプローチは、もはやヒトリエには欠かせないものになっていますね?

シノダ
そうだと思います。ただ、ベーシックにあるのはハウスとかミニマルテクノとかなので、こういうちょっと緩いというか、ミドルテンポの4つ打ちのダンスナンバーはあんまりなかったよね?
ゆーまお
そうだね。
シノダ
こういうアプローチは、たぶんやったことないんじゃないかな?

シンセの差し音は入っていますが、バンドサウンドはすごく生っぽくて、そういうところも新鮮でした。

シノダ
それはイガラシとゆーまおの功績だと思います。
イガラシ
功績というか、現場でいざ録り始めると、シノダはそれまで考えていた以上のことを閃きがちなんですよ。だから、普通に想定した感じで録り終わってから、またアレンジみたいな作業が始まることがあって。
シノダ
そうだね(苦笑)。
イガラシ
その都度、ベースを変えていった結果、こうなったんです。何か話が違うことが結構あるんですよね(笑)。“これでいいって言ってたじゃん!”って。
シノダ
“早く言えよ!”ってことだよね(笑)。
ゆーまお
“あれ? コミュニケーションがちゃんと取れてなかったのか?”って一瞬思うんですけど、そうじゃないんですよ(笑)。
イガラシ
『REAMP』を作った経験を踏まえて、「Milk Tablet」を録る前は具体的にチェックしていったんですよ。“ここはこれでいいね? いいね?”ってレコーディングに臨んだんですけど、やっぱり現場でどんどん変わっていったので、閃きの産物は仕方ないと思うことにしました。閃いちゃう男なんですよ、シノダは。
ゆーまお
覆してくる。
イガラシ
才能にあふれているんです。
シノダ
だいぶ良く言おうとしてるね(笑)。
イガラシ
うん。
シノダ
裏に込められた意味をすごく感じるけど(笑)。苦言だよね。でも、このふたりは対応が早いから。
ゆーまお
イガラシは結構黙ってやるけど、僕は言われた瞬間はちょっと怒ります。“早く言えよ!”って(笑)。でも、閃いちゃうんだからね。
シノダ
ずっと苦言を呈されてる(笑)。

そのようにアイディアがいろいろと閃いたのは、「Milk Tablet」では新しいことをやりたいという気持ちがあったからなのですか?

シノダ
新しいことというよりも、カップリングだし、自由に作ってもいいのかなって。趣味というか、自分のフェティシズムみたいなものを出してもいいのかなという気持ちが強かったです。趣味でミニマルテクノの曲を作ってたこともあったので、その経験をバンドに下ろしてみました。

「Milk Tablet」は歌詞も面白い。たぶん誰もがこういう経験をしたことがあるんじゃないかと思うのですが。

シノダ
基本的に僕はこういう考え方なんですよ。
イガラシ
部屋の中のシノダって感じですね。
シノダ
部屋の中の俺を見たことあるのかよ(笑)。
イガラシ
ないけど、こうなんだろうなって(笑)。
ゆーまお
逆に俺は“えぇ、ここまで考えてる⁉”って思いましたけど(笑)。
シノダ
“こんなに暗いのか?”って?(笑) でも、こういう人は結構いるんじゃないかと思ったんですよ。こういう言い方はあまり好きじゃないですけど、そういう人たちに共感してもらえたら…みたいな。わりと人に共感を求めた歌詞かもしれないです。

「3分29秒」の歌詞はTVアニメの世界観にどれくらい寄り添っているのですか?

シノダ
ほぼ100パーセントですね。原作を読んで書いたんですけど、作品の世界って本当に深刻なものなんです。ちょっとやそっとじゃ、もはや覆りようのない現実に立ち向かわなきゃいけない主人公たちの状況が前提としてあって、その覆りようのない現実は僕らには身の覚えがあるものなので、そこをシンクロさせながら書きました。

《安心しなよ、/僕達みんな終わるまで/やることは同じさ》という歌詞が、この曲のパンチラインなのかと思ったのですが。

シノダ
主人公が考えていることでもあるでしょうし、僕らもこうだなって。曲を作ってる時やレコーディングスタジオに入った時、僕らがやっていくことは何も変わらないって思ったんです。世の中的には新型コロナウイルスが蔓延してたり、そのせいでライヴができなくなったり、僕たちも3人体制になってしまったりとか、いろいろなことが重なってますけど、それでもバンドとしてやっていくべきことは何も変わらない。レコーディングスタジオに入った時、バンドとしてこれからもこうやってやっていくんだなと痛感したんです。

それは大袈裟な言葉になっちゃいますけど、ヒトリエをこの3人で続けていくという覚悟、決意と言ってもいいものですか?

シノダ
どうなんでしょうね? 覚悟とか、決意とかって言葉はあんまりなぁ…“ここまでやっておいて、まだ断言できないのか!?”って話ではあるんですけど(苦笑)。
ゆーまお
でも、止まるつもりはないってことだよね。
シノダ
あぁ、そうだね。
イガラシ
ちょっと達観している感じが、俺はしましたよ。もはや事実として受け止めているというか、演奏をやめられるわけはないと思うんです。だってね、一年ライヴができなかっただけであれだけ具合が悪くなっちゃうんだから(笑)。この歌詞は純粋な事実として、俺にはかなり響きましたね。

取材:山口智男

シングル「3分29秒」2021年6月2日発売 非日常レコーズ/Sony Music Associated Records
    • 【完全限定生産盤】(CD+Blu-ray)
    • AICL-4064~5
    • ¥6,050(税込)
    • 【期間生産限定盤】(CD+Blu-ray)
    • AICL-4066~7
    • ¥1,980(税込)
    • ※描き下ろしイラストデジパック仕様

ライヴ情報

『ヒトリエ Amplified Tour 2021』
6/08(火) 宮城・仙台Rensa
6/09(水) 宮城・仙台Rensa
6/15(火) 新潟・CLUB RIVERSTOPEN
6/16(水) 新潟・CLUB RIVERSTOPEN
6/30(水) 東京・ZeppDiver City(TOKYO)
7/01(木) 東京・ZeppDiver City(TOKYO)
7/06(火) 大阪・心斎橋BIGCAT
7/07(水) 大阪・心斎橋BIGCAT

ヒトリエ プロフィール

ヒトリエ:wowaka(Vo&Gu)、シノダ(Gu&Cho)、イガラシ(Ba)、ゆーまお(Dr)の4人により結成。ボカロPとして高い評価を集めていたwowakaがネットシーンで交流のあったイガラシ、ゆーまおに声をかけ、シノダが加入し、2012年に活動をスタートさせた。同年12月にミニアルバム『ルームシック・ガールズエスケープ』、13年4月にはEP『non-fiction four e.p.』を立て続けに自主制作盤として発表し、初のワンマンライヴ実施。同年11月にソニー・ミュージックグループ傘下に自主レーベル『非日常レコーズ』を立ち上げることを宣言。14年1月にメジャーデビューシングル「センスレス・ワンダー」を発表し、その後も精力的なリリースとライヴ活動を展開するが、19年4月にwowakaが急逝。残るメンバーは3名体制で同年9月より全国ツアーを開催した。20年8月にベストアルバム『4』、21年2月に新体制初となるフルアルバム『REAMP』を発表し、同年6月にシングル「3分29秒」をリリースした。22年も入り、全国ツアーを実施しながら5月からはシングル「風、花」とアルバム『PHARMACY』を2カ月連続で発表。7月からはツアー『ヒトリエ Summer flight tour 2022』をスタートさせる。ヒトリエ オフィシャルHP

「3分29秒」MV

『RIVER FOG, CHOCOLATE BUTTERFLY
from「HITORI-ESCAPE 2021
-超非日常六本木七周年篇-」
at EX THEATER ROPPONGI』

OKMusic編集部

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