【ヒトリエ ライヴレポート】
『ヒトリエ Amplified Tour 2021』
2021年7月7日 at 心斎橋BIGCAT
“ちょっと待って!”
開始早々、トラブルが発生した。ギターをかき鳴らしながらステージの前へ躍り出たシノダ(Vo&Gu)が転倒。すぐさま起き上がったものの、転んだ時に彼の愛機ジャズマスターが故障してしまったようだ。
“大変だよ。本番1曲目でギターがぶっ壊れたんだから。ファイナルがこれかね。バーン、ズデーン、ピーンだよ(笑)。絶対忘れない、今日のことは。このツアーは奇跡みたいなんだよ。(コロナ禍において)一本も中止せずに全カ所やれたんだもの。その集大成がこれですから”
そう語るシノダは苦笑いしながらも悔しそうだ。ヒトリエにとって新体制になってから初めて作ったアルバム『REAMP』を引っ提げてのツアーだ。その意味を考えれば、シノダをはじめ、メンバーたちの困惑も理解できる。しかし、観客にとっても忘れられない日になったことを思えば、やっぱり彼らは“持っている”と思うし、イガラシ(Ba)にサブのギターの存在を指摘されながら、“ジャズマスターへの思いが詰まりすぎて諦めきれない。直りそうな予感がある”と粘ったシノダの願いが通じたのか、7分ほど経ったところでジャズマスターが蘇ったんだから、もちろんそれはスタッフの尽力には違いないが、この日のヒトリエは確かに“持っていた”。
“じゃあ、どっから行く?”と尋ねるシノダに“ド頭からだよ!”とゆーまお(Dr)が答え、改めてライヴは「センスレス・ワンダー」でスタート。シノダが奏でるギターにイガラシのベースとゆーまおのドラムが絡みつくような演奏が、『REAMP』からの「curved edge」と「ハイゲイン」と繋げる中でひとつに溶け合っていくさまが観ながらすこぶる心地良い。
“『Amplified Tour Final』、始まりました。転んだって、また立ち上がればいいということをファイナルで教えられました。(不退転の決意を歌った)「ハイゲイン」の歌詞が自分に刺さる刺さる。分かる!と思いながら歌いました(笑)。走り出したからには最後まで走り抜きたいと思います!”
シノダが今一度、ツアーファイナルに臨む意気込みを語ってから3人が演奏したのは、セットリストの軸になる『REAMP』の曲とこれまでの代表曲の数々だった。シノダがギターを持たずにハンドマイクで歌ったエレクトロニックなダンスナンバー「bouquet」、揺れるトーンがサーフミュージックっぽいギターとともにミッドテンポの演奏にメランコリーを滲ませた「うつつ」といった曲を敢えてじっくりと聴かせてからの後半戦は、一転して、「カラノワレモノ」「トーキーダンス」とダンサブルなロックナンバーで観客をジャンプさせる。そして、そこから緩急の変化をつけた目まぐるしい展開がやがて3人が重ねる“Ohh ohh ohh”というコーラスとともにアンセミックな印象に変わる「アンノウン・マザーグース」、アグレッシブな魅力を押し出したロックナンバー「Marshall A」とつなげ、さらに会場の温度を上げていく。
“みんなの声が聴こえる。幻聴だな(笑)。ヒトリエがやることも、僕ら(観客とバンド)の関係性も、何も変わらない”
シノダが言ったその言葉にはコロナ禍の中でも、という意味に加え、ヒトリエが3人になってもという想いも入っていたのかどうか。いずれにせよ、何も変わらないと思えたのは、この日のライヴに大きな手応えを感じていたからこそ。
シノダ、イガラシ、ゆーまおによるトリッキーなプレイの応酬、めまぐるしく場面が展開する構成、そしてその中を貫く疾走感と聴く者の気持ちを鷲掴みにする哀愁というヒトリエの魅力を凝縮した「3分29秒」から本編最後の「YUBIKIRI」までは、一曲ごとにシノダが思いを語りながら、バラードの「青」、《太陽の裏側に行くのさ》と歌う「イメージ」を披露していった。ラストスパートをかけるように一気に曲をたたみかけなかったのは、一曲一曲に、この日、演奏する意味があったからだと思うのだが、なんだかツアーの終わりを先延ばしにしているようにも見えた。
“旅が終わっちゃうよ。でも、いい旅でした。胸張って言える。心の底からそう思えるツアーができたと思ってる”(シノダ)
この日、シノダは言葉を変えながら、ツアーが終わることが名残惜しいと語ったが、それだけ充実したツアーになったということだろう。
“もう終わっちゃうのか。あっと言う間だね。終わるのはやっぱ嫌だな。でも、終わらないと、次が始まらないから、みなさん、またライヴハウスで会いましょう!”(シノダ)
再会の約束するという想いを込め、さわやかさと切なさが入り混じるポップソングの「YUBIKIRI」で本編を締め括ったバンドがアンコールに選んだのがロックナンバー「ポラリス」だった。何度も繰り返す《誰も居ない道を行け》という歌詞は、この日に限って言えば、3人になったヒトリエによる前進の誓いだったはずだ。最高のツアーになったという手応えを持つのと持たないのとでは、「ポラリス」を歌う意味も全然違うものになっていた。
その「ポラリス」を演奏する前にサブのテレキャスターを手に取ったシノダにイガラシが“使うの⁉ (中断していた)あの時間は何だったの?”と突っ込みを入れるという見事なオチ(?)もついた。
太陽の裏側を目指して、誰もいない道を進み続けるヒトリエのこれからがさらに楽しみになった。
開始早々、トラブルが発生した。ギターをかき鳴らしながらステージの前へ躍り出たシノダ(Vo&Gu)が転倒。すぐさま起き上がったものの、転んだ時に彼の愛機ジャズマスターが故障してしまったようだ。
“大変だよ。本番1曲目でギターがぶっ壊れたんだから。ファイナルがこれかね。バーン、ズデーン、ピーンだよ(笑)。絶対忘れない、今日のことは。このツアーは奇跡みたいなんだよ。(コロナ禍において)一本も中止せずに全カ所やれたんだもの。その集大成がこれですから”
そう語るシノダは苦笑いしながらも悔しそうだ。ヒトリエにとって新体制になってから初めて作ったアルバム『REAMP』を引っ提げてのツアーだ。その意味を考えれば、シノダをはじめ、メンバーたちの困惑も理解できる。しかし、観客にとっても忘れられない日になったことを思えば、やっぱり彼らは“持っている”と思うし、イガラシ(Ba)にサブのギターの存在を指摘されながら、“ジャズマスターへの思いが詰まりすぎて諦めきれない。直りそうな予感がある”と粘ったシノダの願いが通じたのか、7分ほど経ったところでジャズマスターが蘇ったんだから、もちろんそれはスタッフの尽力には違いないが、この日のヒトリエは確かに“持っていた”。
“じゃあ、どっから行く?”と尋ねるシノダに“ド頭からだよ!”とゆーまお(Dr)が答え、改めてライヴは「センスレス・ワンダー」でスタート。シノダが奏でるギターにイガラシのベースとゆーまおのドラムが絡みつくような演奏が、『REAMP』からの「curved edge」と「ハイゲイン」と繋げる中でひとつに溶け合っていくさまが観ながらすこぶる心地良い。
“『Amplified Tour Final』、始まりました。転んだって、また立ち上がればいいということをファイナルで教えられました。(不退転の決意を歌った)「ハイゲイン」の歌詞が自分に刺さる刺さる。分かる!と思いながら歌いました(笑)。走り出したからには最後まで走り抜きたいと思います!”
シノダが今一度、ツアーファイナルに臨む意気込みを語ってから3人が演奏したのは、セットリストの軸になる『REAMP』の曲とこれまでの代表曲の数々だった。シノダがギターを持たずにハンドマイクで歌ったエレクトロニックなダンスナンバー「bouquet」、揺れるトーンがサーフミュージックっぽいギターとともにミッドテンポの演奏にメランコリーを滲ませた「うつつ」といった曲を敢えてじっくりと聴かせてからの後半戦は、一転して、「カラノワレモノ」「トーキーダンス」とダンサブルなロックナンバーで観客をジャンプさせる。そして、そこから緩急の変化をつけた目まぐるしい展開がやがて3人が重ねる“Ohh ohh ohh”というコーラスとともにアンセミックな印象に変わる「アンノウン・マザーグース」、アグレッシブな魅力を押し出したロックナンバー「Marshall A」とつなげ、さらに会場の温度を上げていく。
“みんなの声が聴こえる。幻聴だな(笑)。ヒトリエがやることも、僕ら(観客とバンド)の関係性も、何も変わらない”
シノダが言ったその言葉にはコロナ禍の中でも、という意味に加え、ヒトリエが3人になってもという想いも入っていたのかどうか。いずれにせよ、何も変わらないと思えたのは、この日のライヴに大きな手応えを感じていたからこそ。
シノダ、イガラシ、ゆーまおによるトリッキーなプレイの応酬、めまぐるしく場面が展開する構成、そしてその中を貫く疾走感と聴く者の気持ちを鷲掴みにする哀愁というヒトリエの魅力を凝縮した「3分29秒」から本編最後の「YUBIKIRI」までは、一曲ごとにシノダが思いを語りながら、バラードの「青」、《太陽の裏側に行くのさ》と歌う「イメージ」を披露していった。ラストスパートをかけるように一気に曲をたたみかけなかったのは、一曲一曲に、この日、演奏する意味があったからだと思うのだが、なんだかツアーの終わりを先延ばしにしているようにも見えた。
“旅が終わっちゃうよ。でも、いい旅でした。胸張って言える。心の底からそう思えるツアーができたと思ってる”(シノダ)
この日、シノダは言葉を変えながら、ツアーが終わることが名残惜しいと語ったが、それだけ充実したツアーになったということだろう。
“もう終わっちゃうのか。あっと言う間だね。終わるのはやっぱ嫌だな。でも、終わらないと、次が始まらないから、みなさん、またライヴハウスで会いましょう!”(シノダ)
再会の約束するという想いを込め、さわやかさと切なさが入り混じるポップソングの「YUBIKIRI」で本編を締め括ったバンドがアンコールに選んだのがロックナンバー「ポラリス」だった。何度も繰り返す《誰も居ない道を行け》という歌詞は、この日に限って言えば、3人になったヒトリエによる前進の誓いだったはずだ。最高のツアーになったという手応えを持つのと持たないのとでは、「ポラリス」を歌う意味も全然違うものになっていた。
その「ポラリス」を演奏する前にサブのテレキャスターを手に取ったシノダにイガラシが“使うの⁉ (中断していた)あの時間は何だったの?”と突っ込みを入れるという見事なオチ(?)もついた。
太陽の裏側を目指して、誰もいない道を進み続けるヒトリエのこれからがさらに楽しみになった。
撮影:西槇太一/取材:山口智男
<アーカイブ配信情報>
『ヒトリエ Amplified Tour 2021』
大阪・心斎橋BIGCAT公演2デイズ
アーカイブ配信:
7月6日(火)公演:2021年7月12日(月)23:59まで
7月7日(水)公演:2021年7月13日(火)23:59まで
販売URL:https://eplus.jp/hitorie202107st/
『ヒトリエ Amplified Tour 2021』
大阪・心斎橋BIGCAT公演2デイズ
アーカイブ配信:
7月6日(火)公演:2021年7月12日(月)23:59まで
7月7日(水)公演:2021年7月13日(火)23:59まで
販売URL:https://eplus.jp/hitorie202107st/
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