【明田川進の「音物語」】第45回 「
幻魔大戦」でのりんたろう監督との仕
事
虫プロ時代、制作の仕事をしていた僕に何か技術を身につけるよう勧めてくれた(https://anime.eiga.com/news/column/aketagawa_oto/107539/ )、りんたろう監督との仕事についてお話しましょう。といっても彼とガッチリ組んでやったのは「幻魔大戦」「佐武と市捕物控」ぐらいで、他の作品は音響制作としての関わりが主でした。彼には音のイメージが明確にあって、音楽の入れ方も具体的なプランをしっかりもっているので、僕自身勉強させてもらった部分が大きいです。
「幻魔大戦」は、アメリカでの映画制作から帰ってきた頃(https://anime.eiga.com/news/column/aketagawa_oto/106696/ )、りん監督から「角川(春樹)さんとアニメ映画をつくるから、プロデューサーとして手伝ってくれないか」という話がきたのが最初です。僕が呼ばれたときには、りん監督のなかに音楽のプランはすでにあって、キャラクターデザインも大友克洋さんでやりたいという話をしていました。
当時、大友さんのキャラクターでアニメを作りたいという企画はいろいろなところで出ていたようですが上層部の判断で最終的にNGになることが多く、また作画関係からも大友さんのキャラは難しいという声がでていました。そんななか、りん監督がどうしてもやりたいからと、角川さんがOKを出したんです。「幻魔大戦」の原作は、もともと石森(章太郎)さんの絵でしたから、大友さんの絵でやろうと決断するのは、いろいろな意味で大変だったはずです。
大友さんは「幻魔大戦」ではキャラクターデザインの他に、原画でも参加していました。そこから大友さん自身も、やっぱり自分でアニメーションとして動かしてみたいと考え、その後のキャリアに繋がっていったのではないかと思います。
キース・エマーソンさんによる音楽は、事前にこちらからいろいろと資料を送ってメロディなどは現地でつくり、最終的な仕上げは日本に来てつくってもらいました。東京プリンスホテルの部屋に機材をもちこんで、1、2カ月ぐらいかかったはずです。
りん監督は、こんな感じの音楽をこういうふうに入れたいという考えをハッキリともっています。一緒にやる側としては助かる仕事で、キャスティングをふくめ「それだったらこういうのはどう?」というふうに進めていくことが多かったです。音楽的な引き出しも多くて、僕が芸能山城組で知って「AKIRA」の音楽に取りいれることを提案したケチャも、彼は「幻魔大戦」の頃に現地の音楽を収録したインドネシアのレコードでもっていて、こういう感じの音楽も使いたいと話していました。序盤の重低音のようなサウンドがそうで、「こういう音の使い方もアニメのなかでできるんだな」と思いました。
音楽好きのりん監督とは虫プロ時代、外タレのコンサートがあったら、よく一緒に行っていました。その帰りには必ず中古レコード店のハンターに寄って、レコードを漁っていたのも懐かしい思い出です。
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