なきごと 骨太でパワフルでエモーシ
ョナルが爆発した紛れもなくロックバ
ンドーー自分たちにしか伝えられない
歌を

なきごと自主企画ライブ『鳴言』 vol.2@2020.01.26(sun)渋谷eggman
なきごとの自主企画ライブ『鳴言』 vol.2が渋谷eggmanで行なわれた。昨年末の新代田FEVERのSAKANAMONとのツアーファイナルもそうだったが、なきごとは、いつも対バンにかっこいいロックバンドを呼ぶ。純粋に一緒にライブをやりたい相手に声をかけているのだとは思うが、この日、ゲストに招いた同世代のスリーピースバンドAbsolute area(アブソリュートエリア)も、そうだった。この日の対バンは、2020年、共にネクストブレイクが期待される2組という意味でも、注目の組み合わせではあったが、それ以上に、誰もが日常生活のなかで抱く言葉にできない感情を「歌」にする2組という意味でも、通じ合う信念を持つバンド同士だったことも印象的だった。なきごとは、ソングライティングのルーツにスピッツを挙げるが、Absolute areaはMr.Childrenに大きな影響を受けたバンドだ。90年代からロックシーンを牽引するレジェンドバンドたちから良質な遺伝子を受け継いだ2組は、現代的な感覚でそれを咀嚼し、今の自分たちにしか伝えられない歌を届けてくれた。
Absolute area 撮影=ちな
トップバッターのAbsolute areaは、開放的なロックナンバー「パラレルストーリー」で幕を開けた。ギター、ベース、ドラムの演奏と共に、同期でストリングスやコーラスを加えた王道のバンドサウンドにのせて、山口諒也(Vo.Gt)が優しいメロディを紡いでゆく。
Absolute area 撮影=ちな
「今日は同世代のなきごとの企画に誘っていただき、とても楽しみにしてきました!」。手短かな挨拶を挟み、心踊るポップなアレンジにのせた「会社員」のあと、この日、初披露するとアナウンスされていた新曲「あまのじゃく」へ。「大切な人ほど、相手を傷つけるようなことを言ってしまうことがある。そんな自分を戒めるための曲です」と紹介したそのミディアムテンポの楽曲を、山口はギターからピアノへと立ち位置を変えて歌った。
Absolute area 撮影=ちな
そのまま、昨年11月に配信リリースされたラブバラード「カフネ」につなぐ。不器用で、自分に素直になれない「僕ら」の純愛を丁寧な筆致で描いた歌は、触れば壊れそうなほど繊細で美しかった。最後のMCでは、バンド結成から重ねてきた6年間を、「繁華街を歩くような時もあれば、人のいない商店街を帰ってくるようなときもあった」と振り返り、4月19日に渋谷WWW Xでのワンマンライブに挑む熱い思いを伝えると、最後はアップナンバー「ひと夏の君へ」でフロアをあたためて終演。
Absolute area 撮影=ちな
「またあなたたちと歌えたら」と、真っすぐにお客さんに投げかけた視線には強い意志が宿っていた。
Absolute area 撮影=ちな
続いて、なきごとの出番だ。水上えみり(Vo/Gt)、岡田安未(Gt)に加えて、サポートのベースとドラムがステージに登場すると、4人で気合いを入れてから、「合鍵」でライブがはじまった。心を焦がすヒリヒリとした三拍子のバンドサウンドが、そこに集まったお客さんを、なきごとワールドへといざなってゆく。センチメンタルなポップソング「さよならシャンプー」、ファンキーなロックナンバー「連れ去ってサラブレット」、疾走感あふれる「忘却炉」へと、MCを挟まずに駆け抜けた冒頭。フロアの熱狂が一気に加速したのは、岡田が繰り出すエフェクティブなギターが抜群の存在感を放った「ユーモラル討論会」だった。頭のなかで繰り広げられる様々な感情のぶつかり合いを、目まぐるしいバンドサウンドで体現してみせた楽曲は、水上のソングライターとしての鋭敏なセンスを感じるが、同時に、それがライブで表現されたとき、音源で聴く以上に、骨太で、パワフルで、エモーショナルが爆発していることに驚かされる。たとえ女子ふたりでも、なきごとは紛れもなくロックバンドだ。

なきごと 撮影=南雲直人

最初のMCでは、水上が「今日、集まってもらったのには意味がある」と話すと、3月25日にセカンドシングル「sasayaki」をリリースすることを発表。その中から、早速、「アノデーズ」と「セラミックナイト」が披露された。「自分の中ではいらないと思っていたもの。邪険にしてしまって、どうでもいいと思っていたもの。それと同じ扱いを受けたときに、初めて自分がしていたことの重みを知った。謝りたくても、もう伝えることができない。そんな好き嫌いの歌を」と紹介したのは、なきごとらしいセンチメンタルなミディアムテンポ「アノデーズ」。一方、アグレッシヴなバンドサウンドのうえを、中毒性の高いメロディとギターが踊る「セラミックナイト」は、今までのなきごとにないバンド新機軸の楽曲だと思った。どちらも、バンド結成から1年半を経たなきごとの進化も感じる楽曲たちだ。そして、「大好きな曲を」と紹介したバンドの代表曲「メトロポリタン」では、お客さんの頭上にミラーボールがまわり、息の合ったハンドクラップを巻き起こすと、<愛されたかったなあ>とストレートに歌う「ヒロイン」、生まれ変わったら猫になりたいという素朴な気持ちを綴った「のらりくらり」、『夜のつくり方』のシークレット音源ではピアノの伴奏で収録している「B」を、バンドによるドラマチックなアレンジで届けた。
なきごと 撮影=南雲直人
最後のMCでは、最近、ある人に「それって、バンドでやってる意味があるの?」と言われて、とても悔しくて、泣いてしまったと明かした水上。そのとき、隣で同じ言葉を言われた岡田が、ポンポンと水上の頭を叩き、「私たちは、私たちらしくやろう」と慰めてくれたのだという。そういう岡田の存在に救われたことで、「これこそバンドをやる意味だと、改めて思った」と言葉を重ねた水上は、「バンドが私の居場所です。私に居場所をくれてありがとうございます」と伝えて、「Oyasumi Tokyo」へとつないだ。
なきごと 撮影=南雲直人
直前に、そんなMCがあったせいだろうか、この日、「Oyasumi Tokyo」を聴きながら、この曲は、水上が、落ち込んでいた岡田のために書いた曲だと、インタビューで話していたのを思い出した。岡田は、この曲の、「<泣き顔が一番綺麗だ>という歌詞が、とても優しくてきれいだ」と言っていた。なきごとの音楽とは、そんな2人が、互いに足りないものを埋め合いながら生み出される音楽でもあるのだ。そこから、ラストソング「ドリー」へとつなぐ流れはとても美しかった。「羊の安楽死の歌を」と紹介したその歌のなかで、水上は「誰だって、そこにいていい意味があります。私は、みんなの居場所はここだと言い張りたい」と力強く宣言した。なきごとのライブでは、無理に笑う必要はない。「疲れた」も、「死にたい」も、すべての泣き言を許してくれる、そういう優しい居場所だからだ。
なきごと 撮影=南雲直人
アンコールでは、開口一番、水上が、岡田に「大丈夫?」と声をかけた。本編の最後に届けた「ドリー」で、ギターの弦が切れていたらしい。うまく演奏はカバーしていたが、それぐらい激しい熱演だったということだ。そして、次回作「sasayaki」について、改めて「良い出来になったので、楽しみにしていてください」と期待を煽る言葉を伝えると、その収録曲から、この日、3曲目のナンバーとして、決して消えることのない未練を歌ったバラード曲「癖」を披露。あえてステージでは語られなかったが、バンド結成初期からライブでは披露されていた大切な楽曲がいよいよパッケージ化されるという嬉しい余韻を残して、最後は「深夜2時とハイボール」で、全14曲のライブを締めくくった。
なきごと 撮影=南雲直人
なお、ニューシングル「sasayaki」リリースの発表と同時に、この日のライブでは、4月から全国9ヵ所をまわる『なきごと「 sasayaki 」Release Tour 2020』を開催することも発表された。ツアーファイナルは自身最大規模の会場となる渋谷のTSUTAYA O-WESTだ。2018年のバンド結成から、じわじわと知名度をあげた2019年を経て、いよいよ2020年、なきごとが大きく躍進するときが来た。
なきごと 撮影=南雲直人
取材・文=秦理絵 撮影=南雲直人

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