LUNA SEA 『EDEN』を“異色作”から
“名作”へと見事に昇華させた2018年
クリスマス公演DAY2レポート

LUNA SEA LUNATIC X'MAS 2018 -Introduction to the 30th Anniversary- SEARCH FOR MY EDEN

2018.12.23 さいたまスーパーアリーナ
12月22日、23日の2日間にわたってさいたまスーパーアリーナにて『LUNATIC X’ MAS 2018-Introduction to the 30th Anniversary-』を開催したLUNA SEA。今回は結成30周年のアニバーサリーイヤーに向けて、初日はメジャーデビューアルバム『IMAGE』を携えて1992年に行なった全国ツアー『IMAGE or REAL』を、2日目はメジャー2ndアルバム『EDEN』を携えて1993年に行なった全国ツアー『SEARCH FOR MY EDEN』を再構築したライブを開催した彼ら。ここでは、その2日目の公演『SEARCH FOR MY EDEN』のレポートをお届けする。この公演を通して、LUNA SEAはバンド結成30周年を記念して2019年5月29日に東京・ZEPP TOKYOにてSLAVE限定の無料ライブ『LUNA SEA The 30th Anniversary SLAVE限定GIG』を、さらに5月31日、6月1日には東京・日本武道館で『LUNA SEA The 30th Anniversary Special Live 日本武道館2days』を行なうことを発表した。
ライブ2日目のテーマとなったメジャー2ndアルバム『EDEN』は、LUNA SEAの作品のなかでも“ポップすぎる”“明るすぎる”と賛否両論が巻き起こった異色作で、今作の曲は、ライブでおなじみとなった曲以外は後年披露されることはなくなっていった。最新作『LUV』を作り上げたとき「『EDEN』を作った頃の感覚にすごく近い」と教えてくれたのはJだった。そうして、この日のライブを通してこれら二つの作品を、時空を超えて繋ぎ合せてプレイすることで、彼らは『EDEN』を異色作から“名作”へと見事に昇華させていったのだった。「賛否両論は次に進化するためのステップだ」とかつて語っていたSUGIZO。その言葉を見事に体現する、素晴らしいアクトだった。これだから、LUNA SEAはやめられない。
LUNA SEA/RYUICHI 2018.12.23 撮影=LUNA SEA Inc.
まだ開演時間前だというのに、場内にはLUNA SEAの登場を待ちきれないファンの手拍子がすでに巻き起こっている。この日の場内には、開演前から明らかに異様な熱気が満ちていた。
『EDEN』のジャケットビジュアルがステージを覆う紗幕に映し出されたあと、前日に続き、この日も当時と同じようにケイト・ブッシュの楽曲「Rocket's Tail」をSEにメンバーが登場。真矢は赤髪のメッシュ、RUYICHIは青いメッシュを入れ、角度によってはワンレンのボブに見えるスタイルで当時を再現。
ライブはRYUICHIが「JESUS、Don’ t you love me?」と囁いたあと、真矢の小気味いいドラムがギターリフを呼び込む「JESUS」で、アルバムと同じように幕開け。<あなたに>、<すべてを>と合いの手を入れるSLAVEの声が大迫力で響き渡り、Jは手で目を覆いながら<JESUS、Don’ t you love me!>と激しく連呼。真矢が掲げたスティックを振り下ろすと同時に音玉が大爆発して始まった「Dejavu」では、RYUICHIが<繰り返す>と歌いながら、手をぐるぐる回しコール&レスポンスでオーディエンスをさらに沸かせる。この後、短く挨拶をしたRYUICHIが「今日もさらに進化したLUNA SEAをお届けします」と告げ、20年以上演奏していない『EDEN』の曲を次々と披露していく。
「ANUBIS」は、真矢のお得意のドラミングに乗って、Jのベースがグイグイ曲を推進していくところがとてつもなくカッコよかった。ドラムがシャッフルビートに切り変わり、SUGIZOがフレットレスギターで流れるようなフレーズを奏でて始まった「STEAL」は、いまのLUNA SEAが演奏するとダンサブルで、そのサウンド感と女言葉を歌うRYUICHIのねっとりとした艶っぽいボーカルの対比が印象的だった。そして、当時を再現するように「STEAL」とセットで次は「LAMENTABLE」へ。「STEAL」のアウトロからだんだんと音数が減り、ベース音だけが残る。ブレイクの間にベースを持ち替えたJが「LAMENTABLE」のイントロを長めに弾き、そこから再び音数がだんだんと増えていくところは、いまのバンドサウンドが曲に新しい生命力を吹き込んでいってるようで、観ていてドキドキが止まらなかった。
ここで、来年2019年で結成30周年を迎えるLUNA SEAについて、RYUICHIは「俺たちのやってきたことは無謀であったりめちゃくちゃだった。でも、そこにはLUNA SEAっていう“筋”があるから、めちゃくちゃ楽しいんです。これからもLUNA SEAの道を5人で行きたいと思います」と伝えたあと、「RECALL」の演奏からライブを再開。
LUNA SEA/SUGIZO 2018.12.23 撮影=LUNA SEA Inc.
INORANが儚くせつないフレーズをアコギで奏で、間奏ではSUGIZOがギターで木漏れ日のようにこの曲に光を注いでいくと、前日は魔界の帝王のようだったRYUICHIが情感たっぷりに素晴らしい歌唱でこの曲を丁寧に歌い上げていった。ステージに紗幕がかかり、そこにSUGIZOがバイオリンを弾くシルエットが映し出されると、無数のキャンドルと教会のステンドグラスが映し出され「Providence」が始まった。SUGIZOが1曲まるごと流麗なバイオリンを奏でるこの曲は、アルバムのなかでも要となる、これまでのライブでも演奏し続けてきた三拍子のバラードナンバーだ。
耽美的な雰囲気に包まれた場内に、真矢のリムショットが鳴り響き、始まったのは「BELIEVE」のC/W曲「Claustrophobia」だ。こちらもライブ披露は20数年ぶりとなる。INORANの儚いアルペジオ、SUGIZOのギターフレーズが作り上げた静謐で陰影のある世界観。それを、魔界の帝王に急変したRYUICHIが、曲の後半、感情をむき出しにしたシャウトで突き破っていく姿は圧巻で、曲が終わると場内からは大歓声があがった。
LUNA SEA/INORAN 2018.12.23 撮影=LUNA SEA Inc.
そして、ライブはドラムソロ、ベースソロのコーナーへ。「さすが、私たちを含め、今日はみんな20代!! 歓声もお若いですね(笑)」。そんなギャグを平然といってのける真矢は、音を詰め込んで爆音で鳴らしていた昔と違って、いまは音のない間合いで、ドラムソロを成り立たせるというスゴ技を披露。当時ベースソロパートはなかったJは、最新ツアー同様、EDMトラックに合わせて(誰もが真似できるようにという意味で)シンプルなベースフレーズを弾き、コール&レスポンスでオーディエンスのテンションをどんどん上げていく。ベースソロで、こんな風に観客を煽って盛り上げていくスタイルを作ったのもJが初めてだろう。
リズムセッションをはさんだあと、30年近く彼らがライブで演奏し続けてきた定番曲「BLUE TRANSPARNCY」が始まると、SLAVEがヘドバンを巻き起こす。INORANが手拍子で客席を煽ると、コール&レスポンスで観客は割れんばかりの大合唱を届けていった。
そうして、この後のMCではキラキラ光るジャケットに着替えたRYUICHIが、30周年に行なう音楽活動について少し触れる。「ライブは、俺らの想いをみんなの側で届けたいと思います」といって、前日に続きファンの期待感を煽る発言を届け、そのあと「待っててくれる?」と魔界から戻ってきたとは思えない無邪気なスマイルを浮かべて観客に語りかけるRYUICHIは、最強だった(笑)。
LUNA SEA/J 2018.12.23 撮影=LUNA SEA Inc.
このあとは前日同様「White Christmas」、「I for You」をパフォーマンス。演奏し終るとRYUICHIが「いままでの過去、超えてみない? どう? 人間って本気になるってあるじゃん。いま、やってみない? スタッフもカメラマンもどう?」と提案する。LUNA SEAはステージから必ず「コンサートスタッフにも拍手」という言葉で、裏方スタッフを労うのは有名だが、このRYUICHIのひと言で、関係者全員の本気スイッチが入ったのはいうまでもない。SLAVE同様、関係者、スタッフまで“本気”にさせて、さらなる先にある頂点を一緒に見たいと思わせてくれるLUNA SEAの吸引力は、いまも昔もまったく変わらない。これは、本当に本当に、凄いことだと思う。そうして、この後RYUICHIのタイトルコールに客席全員が発狂したのが「STAY」だった。20年以上まったく演奏されなかったアルバム随一のポップチューンが、いま目の前で蘇る。オーディエンスはそんな曲にも関わらず、サビの<FOR YOU>、<FOR ME>の掛け合いをパーフェクトに歌い上げてみせ、驚いたINORANは満面の笑みを浮かべ、客席に拍手を送った。この曲で開けたポップ感を、続く「IN MY DREAM(WITH SHIVER)」がさらに解放していく。
ここではメンバーも解放的になり、上手ではSUGIZOとJがお互いのジャケットを引っ張りあいっこ。INORANはドラム台に上がり、真矢の背後に立って肩をトントントン。そうして、下手サイドでSUGIZOが間奏のソロを弾きだすと、センターでINORANとRYUICHIが向かい合って耳元でコソコソ内緒話をしたあと、RYUICHIがコミカルな動きをしだしてINORANの大爆笑を誘う。そんなメンバー同士の微笑ましい仕草で、ファンを喜ばせていった彼らが「TIME IS DEAD」では、表情が一変。真矢が“Hey!”と叫ぶ生声とともに、ものすごい集中力でジャージャン、ジャージャンと5人の音がナイフのようなキレ味で揃うパフォーマンスはオーディエンスのテンションを上げていく。そこから、フロント4人がドラム台の前に並んで揃ったときの半端ないオーラと王者感。このLUNA SEAを見て、興奮しない人はいないはず。そこに、本編最後を飾る曲として「BELIEVE」を届けた彼ら。センターで、満場の観客が高らかな大合唱で応えるのをじっと見つめるRYUICHI。すると、そのうちRYUICHIの表情が崩れていき、涙を堪えたような表情になっていく。「RYUICHI!」と叫ぶSLAVEのエールで再び笑顔を取り戻し、曲をフィニッシュへと導いていっていったシーンは見る者すべてが心を震わせたに違いない。
LUNA SEA/真矢 2018.12.23 撮影=LUNA SEA Inc.
アンコールは、SLAVEたちがペットボトルにスマホライトを当てるというワザで場内をキラキラさせながら「きよしこの夜」の大合唱をLUNA SEAにプレゼント。RUYICHIは「ありがとう」と感謝を伝えた後「ファンの歌はウチが一番!」ととびきりの笑顔をうかべて、観客を讃えた。そして「俺たち5人の想いをみんなに届けたいと思います」といって、ミラーボールがきらめく下で、今度は彼らがLUNA SEAのクリスマスソング「HOLY KNIGHT」をプレゼントすると、ステージ上空から真っ白い雪まで降ってきた。
そんな幻想的な冬の景色をレインボーカラーのド派手なレーザービームが遮り、始まったのは最新アルバム『LUV』の「BLACK AND BLUE」だ。アルバムのなかでも客席に天使が舞い降りてくるような包容力と祝祭感で、ライブのたびに大感動を与えてくれるこの曲で、『EDEN』と『LUV』をいまこの瞬間に見事に繋いでみせたアクトは、頭のなかで謎がバタバタと解けていくようなマジカルな高揚感を体内に引き起こし、クライマックス級の高まりと多幸感を呼び起こしていった。
メンバー紹介のコーナーでは、真矢が「僕は根っからのヴィジュアル系なんで、ヴィジュアル系のクリスマスソングを歌います」といって、「赤鼻のトナカイ」を巻き舌で<真っ赤のお鼻のぉぉ~かかってこーい!!”と煽りながら歌い、メンバーとオーディエンスを笑わせた。そしてRYUICHIが「ここで大事な告知をしたいと思います」と告げたあと、みんなへの感謝の気持ちを込めて2019年5月29日に東京・Zepp TokyoでSLAVE限定のフリーライブを行なうこと、さらには30周年のスペシャルライブとして、2019年5月31日、6月1日に日本武道館2Daysを行なうことを発表すると、ファンの絶叫がどっと場内に響いた。そうして、最後は「ROSIER」、「WISH」というキラーチューンを投下して、会場を狂騒と歓喜で大爆発させ、高揚の果てへと導いていった。
そうだった――。これはまだまだ30周年の序章に過ぎないのだ。2019年、LUNA SEAはいったいどんなことをやらかそうとしているのか。この後の展開が待ち遠しい。
取材・文=東條祥恵 撮影=LUNA SEA Inc.
LUNA SEA 2018.12.23 撮影=LUNA SEA Inc.

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