SUPER BEAVER 「“なんとなく聴いた
ことある”は自分たちでは絶対に作れ
なかった状況」ーー出会いがもたらし
た変化と選択肢

SUPER BEAVERにとって2018年は日本武道館でのライブ、夏フェス、初の全国ワンマンツアーにシングル「予感」はドラマ主題歌(『僕らは奇跡でできている』)になり、今年も彼らは常に走り続けた。環境が変わり始め変化していく中、できることが増え選択肢が増えた。その中で感じるある事とはーー。実は今回のシングルにもそのキーワードが深く大きく関係していた。《予感のする方へ 心が夢中になる方へ》自分らしく気にせず進もうとプラスの感情に働く時、同時に動く感情、人なら誰しもが立ち止まり考える瞬間がある。だけど彼らはその感情にどこまで本気で真剣に向き合えたかが大事だと話す。今回のインタビューではツアーを振り返り、現在の心境をメンバー全員に話してもらった。
SUPER BEAVER 撮影=日吉“JP”純平
ーー『歓声前夜』をリリースして、初の全国ワンマンツアーでしたね。
渋谷:初めてのワンマンツアーではあったんですけど、今までのツアーでもワンマンライブはやっていましたし、どちらかと言うと対バン編とワンマン編をセパレートしてる感じのツアーも回ってきたので、「よし、心機一転新しいことをするぞ!」という気持ちでは正直なかったんです。でも自分たちのツアーで自分たちしかいないというのは身の引き締まる思いもしました。対バンは誰かと一緒にやったりするのがすごく楽しいから、好きでやってたんですけど、今回は各地で長く聴きたいという声もすごくたくさんいただいてたので、対バンに挑むワクワクさとは全然違う、大きなワクワクで挑めたツアーではありました。あとは自分自身と向き合う時間が長かったですね。対バンがない分、すごくいろいろ感じることがあったし、この先の自分たちのビジョンも少し見えたし。自分たちが楽しく音楽をやっていく上で、どういうことをしたいのかというのが見えたツアーでした。
柳沢:それぞれみんな感じてることも似てるのかなと思うんですけど、ワンマンツアーなので、自分たち4人と固定のツアースタッフで、ずっと回れていたので良い意味でのルーティンもちゃんと出来ていました。例えば、その日の公演で感じたことや、音も含めてなんですけど、技術的なギターのアンプの音がどうだったとか……、そういうことも含めてすぐに反映できる良さも感じました。基本的にメンバーもスタッフもずっと一緒にいるので、そういうディスカッションみたいなものを新鮮なうちにしてましたね。プレイヤーとしても細かい作業というか、ひとつひとつのクオリティを少しずつあげていけるようなツアーになりました。
藤原:今、2人が言ってたみたいに同じチームでワンマンを回れてたので、チームとして形になってきて、やっとひとつのツアーを回れたのかなと感じています。まだまだメンバーも努力しないといけないこともあるし、スタッフもそうなんですけど、今まではドーンっとライブをして、お客さんがそれに対して盛り上がってくれて「ああ、今日は良いライブだったね」ということが多かったと思うんです。だけど、今回のワンマンは単純に盛り上がったということだけじゃなく、本当に待ってくれてたというか愛みたいな暖かい空気みたいなのがライブ中に感じれました。またひとつビーバーの音楽の届き方が新たな届き方ができるようになったと今回思いましたね。
上杉:今までもストイッックにやってきたと思うんですけど、より今回のツアーでレベルアップじゃないですけど、そういった空気感はあったツアーでした。武道館をやった後、じゃあ今後どういうふうにやっていきたいのかとか、大きいところでもやりたいけどライブハウスでもずっとやりたいというバンドなんで、いろんな気持ちが入っていた気がします。個人的にもベースというもので、プレイヤーとしてもやらなきゃいけないこと、頑張りたいことに向き合えた実りのあるツアーでした。
●楽しいの根源を知っていたほうが、より楽しくなると自分たちは知ってる●
SUPER BEAVER 撮影=日吉“JP”純平
ーーSUPER BEAVERのライブはいつ観ても心に迫ってくる熱量がありますよね。自分たちで対バン、ワンマンの違いなど意識されたりしますか?
渋谷:ワンマンというのは自分たちのことを観にきてくれてる人しかいないので、そういう前向きな気持ちが大きな塊で存在するので、また違った空気感はあります。でも基本的には一緒。それが音楽をやる上では一番ピュアな形だと思います。その日でしかないものとかって存在すると思うし、例えばそれが自分たちのことを知らない人だとか、そういうことは一旦、度外視するほうが良いんじゃないかなって。まあ、喋り方とかは当然変わりますけど、ライブで自分たちの気持ちを伝える上で自分たちのことを知ってようが知ってなかろうが伝えるスタンスは変わらないようにしてます。芯の部分は。
ーーなるほど。SUPER BEAVERはツアーだけに限らず、年間を通してライブの本数が多いほうですよね。
渋谷:ライブをやってる時間が楽しいんですよね。
柳沢:俺もちょっと思ったことあるのは、規模が全然違う話かもしれないけど、アーティストさんによっては2、3年に1回アルバムを作って、大きなツアーを回って、そこからまた制作期間に入ってるアーティストの方もいらっしゃるじゃないですか。でも俺たちはそういうスタンスではやってないし、今のライブの本数もリリースすることも疑問に思ったことはないですね。もちろんリリースのタイミングだから、ライブの曲数多すぎないほうが良いんじゃないかとかは話しますけど。
SUPER BEAVER 撮影=日吉“JP”純平
ーーライブの本数を少し減らそうとは思ったりしないんですか?
柳沢:そういう会話は一度もないですね。
渋谷:本当はこれでも足りないんだろうなと思う瞬間はありますね。
藤原:それは思うな。
渋谷:日本は狭いと言えども、それぞれの土地にライブハウスがあるし、このペースでやってても、実はまだそんなに多いほうでもないんだなというのは思いますね。増やしたい気持ちはあるけど、慢性的にもなってはいけないとも思ってます。100本前後がちょうどいいかな。このペースを守りながら、もっといろんなところも回れたらな良いなと思います。
柳沢:回り方とかね。そういうのもあるかもしれないけどね。
ーー常に走り続けていて、バンドの中の雰囲気も変わらず?
渋谷:中の雰囲気はずっと変わってない気がします。メジャーを落ちて、自分たちで始めた時から変わってないですね。なるべく根源を分かってたいチームだと思うので、不透明な部分は減らしていこうと思ってます。それは自分たちがより効率的に前に進むためにもそうですし、楽しいの根源を知っていたほうが、より楽しくなると自分たちは知ってるので、それをしようとしてるだけですね。わりと好奇心かな。
SUPER BEAVER 撮影=日吉“JP”純平
ーーチームとして動いてる中で、例えば自分が頑張ってる時とか、人のことが気になることはあるんですか?
渋谷:ありますあります。みんなそうだと思います。でも油断させる状況にはしてないし、しないように思ってますけどね。それは別に「俺がこんだけやってんだから、お前もやれよ」ではなく、それぞれの姿勢を見ていたら伝わってくるものだと思うので。こと1本のライブや、発言の1つにしても「あ!」と思う瞬間が多発しないとバンドって続かないと思うんです。足並み揃えて4人でやりましょうじゃなくて、誰かが突出することも時には必要だし、追いつく状況、追いつかれる状況、追い抜いた状況というのを自分で理解してることも大事だと思います。
藤原:ぶーやん(渋谷)はそういうのをメンバーやチーム内に責任を感じさせるの上手だよね、良い意味で。ぶーやんからも責任というのもを感じるし、「これどう思う?どうしよう?」って会話してても「任せるよ」って言うんですよね、答えがあったとしても。好きにやっても良いよみたいな言い方するというか。メンバーとしては「あ、これは適当にやっちゃダメなんだな」って。ぶーやんは自然とメンバーやスタッフにもやってると思うんですよね。
渋谷:そもそもチームで動くことはすごく難しいと思います。敢えて言うより行動で示したほうが確実に人に響くことって多いと思ってるんで。今回のワンマンツアーもチームで動くじゃないですか。絶対に仲良くなる、仲良くなったらなったなりのマイナスの面も出てきちゃうんですよね。慣れとか慢心はあると思う。やっぱりチーム内でひりひりさせてなきゃいけない空気だと思ってますね。自分たちに関与することにはそれぞれ責任感、自分も含めて全員感じて動くべきだと思っています。
上杉:本当にみんながみんなぬるま湯に浸かってない関係性という感じはしますね。昔からですけど、基本的にその人の意見を尊重して、言ったからにはやってくださいねという空気感は常にバンド内にはあると思います。
●このバンドが純粋に思いっきりやれば、ピュアな楽しいというものをやれてる気がする●
SUPER BEAVER 撮影=日吉“JP”純平
ーー今、バンドを取り巻く環境の変化していって、『Bowline』のキュレーターだったり、応援する人たちも今年1年だけでもすごく増えていきました。
渋谷:楽しくなってきてる感じはしますね。当然、会う人も増えれば、めちゃくちゃ仲良くなる人もいるし、嘘くさいなと思う人もやっぱりいます。そういう人たちが増えていく中で、だからこそ応援してくださる人というのは大事なんだなと思える部分がすごく多かったりもします。とにかく人とたくさん会えるというのは、自分の中でもとても楽しいことだし、そのチャンスが増えていくというのは嬉しいですね。今の状況、全然満足してるような状況ではないけど、これからどんどん先を見据えながら楽しく音楽できてるなという自覚はすごくあります。
柳沢:本当にライブに来てくださる方とか、CDを手にとってくださる方とかがいてこそ、というのは根本にあるので。そこに対するシンプルに「ありがとう」という気持ちはずっとあります。その気持ちが年々大きくなってきてると思っていると同時に、身近というか表舞台じゃないところでも、本当に「ありがとうございます」と思う気持ちが年々増えてる気がしていて。それは渋谷も言ったように顔を合わせる人が増えれば増えるほど、そう思う回数が増えていって、「ビーバーをこういうふうに伝えたい」という想ってくださる気持ちに対して、すごくありがたいことですし嬉しいことですね。だからこそバンドマンとして、もっと良い曲を作りたいなと思いますし、カッコ良いライブをしていきたいと尚更思ったりします。
SUPER BEAVER 撮影=日吉“JP”純平
ーー楽しいっていうプラスの感情が働く時、マイナスの感情が出てきやすくなったりもすると思うんです。例えば、楽しいなと思った瞬間、前からずっと気にしていたこととかが更に気になったり。
柳沢:僕らが思ってる楽しいって、受動的な楽しいではないと思ってるんです。向こうからやってくるのを待ってる楽しいではないので、その裏にはそれぞれ個人の責任もあると思うし、自分たちから作り出していくところに楽しいと心から思えるものがあるのかなと思います。
上杉:比較対象があっての楽しいでもないような気がしますね。大人になると平日は働いて仕事して土日は休みがあって、平日は本当に嫌いだなと思うけど土日は楽しいってなる。子供の頃ってそうじゃなくて、目の前のこと全部が楽しい!と思ってたことのほうが多いと思うんです。その感情に近い気がしてます。もちろんそれだけじゃない部分もあるんですけど、チームとして出来上がってきて、応援してくださる方も増えてきてるので、このバンドが純粋に思いっきりやれば、ピュアな楽しいというものをやれてる気がしますね。
SUPER BEAVER 撮影=日吉“JP”純平
ーー今回、シングル「予感」ですが、ドラマの主題歌にもなりました。
渋谷:元々、俺たちの音楽をずっと好きで聴いてくださってた方が動いてくださって。火曜日の21時なんて、そうそう取れない枠なのにSUPER BEAVERの音楽をもっと広めたいと、今回お話をいただく前から言ってくださっていたので、そういう意思のある方からいただけたお話だったので嬉しかったですね。
ーー主題歌を担当することによって何か反響はありましたか。
渋谷:正直、大きな反響は感じでないです。多分、タイアップとか主題歌をやることって無意識化にその人に種を植える作業に近いと思ってるんですよね。なんとなく聴いたことがある名前は聞いたことあるが、今後の自分たちの活動によって目が出るか目が出ないか決まるんだと思うんです。今回の主題歌をいただけたことによって自分たちの集客が2倍になりましたとかっておそらくない。ある場合もあるのかもしれないけど、多分ないんじゃないかなと思って。でも、このなんとなく聴いたことあるは自分たちでは絶対に作れなかった状況で、これがのち何かで聴く機会があった時に「あ、なんか聴いたことある、好きなドラマの主題歌の人たちだ」となって、そこからじゃあ聴いてみように繋がると思うんです。それが目が出るということだと思います。
ーー目に見える結果というよりも、のちに跳ね返ってくる結果の方が大きいと。
渋谷:そうですね。もちろん目に見える形でも反響あるんですけど、もっと大きな形で作用してるんじゃないかなと今回やらせてもらって思いました。俺たちのことを好きでいてくれてる方でも、まだ主題歌をやってたことを知らない人もいるくらいですから。目に見える形での大きな反響よりも、水面下でいろんなものが広がってるワクワク感は感じてます。なので「あ、こいつらか!」みたいな瞬間が1番強いパンチだと思います。
●自分で言い切れるくらい向き合えたかどうかの積み重ねが、最初の一歩になるのかなって●
SUPER BEAVER 撮影=日吉“JP”純平
ーー歌詞の中にもある《他人の目なんて あって無いようなものさ 感性は自由 名も無き感動に 感情に 想うがままの名前をつけていこう》とあって、さっきのお話にも繋がってくるのですが、常識や価値観に捉われずに行動することって、すごく難しいことなんじゃないかなと思うんです。すごく気にしますし。
柳沢:そうですね。人の目も気にするけど、自分はこうでありたいと思ったことを貫くというか。周りにどう言われようが、その信念で動いてみる時に一番大事なことって、さっき渋谷も言ってた責任だったりするんじゃないかなって。人から何かを言われた時にちゃんと説明できるとか、こうだからって自分で言い切れるくらい向き合えたかどうかの積み重ねが、最初の一歩になるのかなって。じゃないと人の目を気にしないって本当の意味では無理なのかなと思います。自分たちももっとそうでありたいと思うし、個人的にもそう思う。今回の「予感」でも込めた気持ちでもあります。
上杉:人はみんな1人で生きてるわけじゃないので、例えば自分が良いと思っても周りが不快な思いをしてるとか、正しいと思っていても周りから違うと思われてしまうことだって多々あるので。だから気にした上でちゃんと思ったことに責任持ってやろうと思うし、逆に周りから「え、なんで?」とか思われても自分が向き合ってこれだと思って責任持って出来れば良いと思って行動はしてますね。
ーーM-2「まごころ」にも通じる部分があるなと思っていて、いろんなことを気にする時代だからこそ、身近な優しさだったり、自分が感じることを大事にしたいなと思いました。
柳沢:この曲で知ってる、知らないって言葉も使ってるんですけど、知らないからこそ今の話もそうだけど、能動的というか勝手に想像して人のことを気にすると思っていて。自分でも思ったことなんですけど、自分がすごく気にしてる時って、周りはそれほど気にしてなかったりすることが多い。反転させて考えてみると全く同じ状況の人をみた時に、実は周りからみると気にならないことなんじゃないかなって。例えば見た目、容姿のことでもそうだと思うんです、カメラに映る瞬間ってカッコいい、可愛い顔で写っていたいけど、実はそれ以外を見られてる時間の方が圧倒的に長い。どう見られてるかもそうだけど、自分だったらどう見るとか。それがこの「まごころ」で言うと、もっと人の背景というか、もちろん言葉を交わさないとわからないけど、少しでもわかろうとする歩み寄りが、大切なんじゃないかなと思ったことでもありますね。
SUPER BEAVER 撮影=日吉“JP”純平
ーー来年のツアーですが、各地ホールとライブハウスを同時に回るツアーになっています。そして15年目にも突入します!
渋谷:大きなところでやりたいという意味でホールはやりたかったんですよ。純粋にホールツアーはやったことなかったので。やりたくてもやれない状況だったらやれないと思うし、でも今だったらできるかもしれないと思ったから。で、ライブハウスもやろうと言ったのは、俺たちはライブハウスのバンドだし、フロムライブハウスを掲げてるんで。同じ場所で2つあったら選べるなと思って。見に来てくださる方にも選んでもらいたいんです。自分が好きに見られる環境を選んでもらって、それができるようになってきたのでホールとライブハウスを2回やろうとこのツアーを組みました。
藤原:相変わらずライブもたくさんやるし、来年はこうしようとかあまり明確にはなくて。バンドとして今日より明日みたいな感じで1本1本、毎日積み上げて来年もやりたいなと単純に思うだけですかね。
柳沢:初めてのホールなんですけど、15年目で初めてのことがあるというのは嬉しいことだしありがたいことだなと思います。今決まってるだけでも初めてのことがあって、まだ全く予想もできていないことも起こるんじゃないかなって。嬉しい誤算みたいなものを起こせるようにするのは日々の活動なのかなと思うので、来年も初めてのことにドキドキしながら面白いなと思える毎日になれば良いなとおもいます。
上杉:『Bowline』でも掲げてましたけど、このバンドは常に現場至上主義でありたいです。あとは関わる人が増えてきたり、タイアップをいただいたりとか、いろいろ嬉しい誤算があって、そういうものに対していろいろ出来るバンドにはなりたいです。どんな会場でもどんな対バンでも変わらずその瞬間を大事にして今年よりも来年はやっていきたいなと思います。
SUPER BEAVER 撮影=日吉“JP”純平
取材・文=高野有珠 撮影=日吉“JP”純平

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