NEWSが華やかに歌い踊り、Superfly、
sumikaらの極上のメロディが響き合う
 テレビ朝日ドリームフェスティバル
2018・2日目

■テレビ朝日ドリームフェスティバル 2018・DAY2 2018.9.16 幕張メッセ
Official髭男dism (c)テレビ朝日 ドリームフェスティバル 2018 / 写真:岸田哲平
フェスの場にはニューカマーの出演もよくあるが、未だかつてこんなにも会場を掌握した新星がいただろうか。僕は記憶にない。
Official髭男dism (c)テレビ朝日 ドリームフェスティバル 2018 / 写真:岸田哲平
SEなし、イントロもなしで、いきなりピアノとともに歌声を響かせた藤原聡(Vo/Key)。柔らかながらパワフルで、どこまでも伸びていきそうな高音に耳を奪われるうち、「愛なんだが・・・」「異端なスター」と楽曲は続く。ソウルやR&Bの流れを組むサウンドからは、マルーン5など洋楽のエッセンスが伺えて、いそうでいなかった感じだ。均整のとれた演奏や生み出すグルーヴの心地よさ、随所に見えるロック要素のバランスも文句無し。おまけにちょっとしたジェスチャーや表情のつけ方で巧みに煽るライブ巧者ぶりなんて、まるで何十年もやっているバンドを観るかのようじゃないか。何者なんだOfficial髭男dism。
Official髭男dism (c)テレビ朝日 ドリームフェスティバル 2018 / 写真:岸田哲平
「すごいですね幕張メッセ、みなさんはよくいらっしゃるんですか?」の投げ掛けに「そのお店みたいなノリ何なん?」と突っ込みが入ったりとくだけたトークの後は、一人称のラブソング「115万キロのフィルム」で詩人ぶりをも見せつけ、「犬かキャットかで死ぬまで喧嘩しよう!」ではコール&レスポンスで場内を一つに。……なんで猫じゃなくてキャットなんだろう? というか、その前にこのバンド名は何故なんだ? 髭生えてないし、ダンディという年齢でもないし……気になるポイントだらけの彼らだが、それはきっと思うツボ。ちょっとした引っかかりで気になって、出会ったら最後、しっかり魅了しきる術を持っているバンドだ。ラストの「SWEET SWEET」が<聴けば心が踊りだす なんてステキなライブなんだ!>と歌詞を変えて歌われ、曲中に藤原が「また絶対にライブで会いましょう!!」と叫んだ頃には、完全にこちらのセリフ状態であった。ファン、確実に増えたはず。
Nulbarich (c)テレビ朝日 ドリームフェスティバル 2018 / 写真:岸田哲平
2番手に登場したのはNulbarich。フロントマンのJQが「よろしくお願いします」と挨拶をして、「everybody knows」でスタート。ギター2人、ベース、キーボード、ドラムというバンド編成による柔らかなアンサンブルが幕張メッセを温かく包み込み、「It's Who We Are」へ。しなやかで強靭なグルーヴを背中に受け、JQはステージを歩き回りながらフロアへ歌を届けていく。
Nulbarich (c)テレビ朝日 ドリームフェスティバル 2018 / 写真:岸田哲平
Nulbarichといえば、黒いシルエットのキャラクター“なるバリくん”をメインビジュアルに掲げていたりと、謎めいたイメージをお持ちの方も多いだろう(最近はJQがメディアで顔を出すこともあったが)。この日初めて彼らのことを観たオーディエンスも多いはずだが、「咳と練習のし過ぎで喉をこじらせてしまったので、今から(くまの)プーさん並みにハチミツを飲みますけど」とボトル入りのハチミツを飲んでみせたり、「On and On」では「共同作業したいんですよ」とフロアにマイクを向けたり、ランウェイとステージを何度も往復したりと、JQのチャーミングなところ、サービス精神旺盛ぶりに、ぐっと距離が近づく感覚をおぼえた人も多いのでは。
Nulbarich (c)テレビ朝日 ドリームフェスティバル 2018 / 写真:岸田哲平
とはいえ、Nulbarichの真ん中にあるのは、あくまで音楽。官能的で快楽性の高い「Zero Gravity」や、自然と笑みがこぼれる多幸感に満ちた「ain't on the map yet」など、ブラックミュージックを基調としつつ、最先端でありながらもどこか親しみやすさもあるポップソングは、自然と身体が動いてしまうものばかり。なかでも、サビ突入直前に「こっからドーンっていきますんで!」と前置きした「Kiss You Back」では、幕張メッセという大空間にふさわしい、いや、それを凌駕するような壮大なスケール感を放っていた。「絶対に帰ってきてやるからな、マジで」と、喉の調子を悔しそうにしていたJQではあったが、きっと近い将来、この場所で、彼らは最高のステージを見せてくれるに違いない。そう思えるほど、彼らが生み出す音楽とライブには、キラキラと輝くマジックのようなものが存在していた。
sumika (c)テレビ朝日 ドリームフェスティバル 2018 / 写真:岸田哲平
陽気なカントリーのリズムに合わせたクラップが迎えたのは、sumika。1曲目「フィクション」のイントロから最高潮だったボルテージは、最後まで落ちることがなかった。というよりも、上昇し続けた。彼らのサウンドは、聴くだけで半強制的に心の扉を開いてくれるような、楽しく人懐っこいものだが、大前提として本人たちがまず心底楽しそうに演奏している。随所にライブアレンジを施した歌唱と多彩なアクションで魅せる片岡健太(Vo/Gt)と、汗ビショビショになりながらも大きく動き続ける黒田隼之介(Gt)だけでなく、担当楽器的に動きづらい小川貴之(Key/Vo)と荒井智之(Dr)も含めた全員が、いつ映像で抜かれても満面の笑顔なのである。
sumika (c)テレビ朝日 ドリームフェスティバル 2018 / 写真:岸田哲平
フロアに声出しを促した後、「……髭男とNulbarichで疲れちゃったのかな?」「こんなときにみんなを復活させられる呪文、あったっけなぁ?」と曲フリをして、大きな歓声を呼んだのは、会心のアッパーチューン「ふっかつのじゅもん」だ。ロック色の強いストレートなバンドサウンドが炸裂した「ファンファーレ」から、対照的にブラックミュージックのグルーヴで会場の空気を都会的な色に塗り替えた「Summer Vacation」への流れなど、短い時間の中にも引き出しの多彩さを見せつけて、どんどんギアが上がる。
sumika (c)テレビ朝日 ドリームフェスティバル 2018 / 写真:岸田哲平
目と目を合わせて音楽ができることへの喜びを述べた上で、「本当に大事なのは、目の前の人、音、感動を自分の目や鼓膜で感じること」だとMCで語った片岡。「そのためにドアを開けて外に出て、ここに来てくれた」オーディエンスたちへ向けて、最後に届けたのは「Lovers」だった。徹底的に目の前の人を見つめ、向き合い、楽しみ楽しませることが自らの戦い方だと確信、体現し続けているからこそ、sumikaのライブはどこまでも清々しく、惹きつけられるのだろう。
Little Glee Monster (c)テレビ朝日 ドリームフェスティバル 2018 / 写真:岸田哲平
続いては、昨年に引き続き2年連続での出演となったLittle Glee Monster。バックバンドのパワフルな演奏を身に受け、「幕張―!」と威勢よくステージに姿を現したカレン、MAYU、芹奈、manaka、アサヒの5人は、その勢いのまま「全力REAL LIFE」で走り出した。タオルを振り回しながら、美しいハーモニーを響かせると、「みなさんの声を聴かせてくれますか!?」とコール&レスポンスを巻き起こし、そのまま「SAY!!!」へ。会場の熱気をぐんぐんと高めていく。
Little Glee Monster (c)テレビ朝日 ドリームフェスティバル 2018 / 写真:岸田哲平
筆者は昨年も『ドリフェス』で彼女達のステージを見ているのだが、そのときと比べると、あきらかに5人全員が逞しくなっている。LEDスクリーンに映し出される一瞬の表情や、ステージから放たれる熱量、そして、彼女達の歌声に漲るポジティヴィティは、強烈なまでに力強いものになっていた。今年行なった初のアリーナツアーやアジアツアーなど、様々な場所で積んできた経験を、しっかりと血肉としてきているのだろう。「今日の出演者の中で最年少」とMCで話していたのだが、そんなことを微塵も感じさせない、貫禄すら感じさせる歌声とパフォーマンスで、しっかりオーディエンスを魅了していた。
Little Glee Monster (c)テレビ朝日 ドリームフェスティバル 2018 / 写真:岸田哲平
なかでも圧巻だったのは、オーディエンスの手拍子をビートに繰り広げられた「アカペラコーナー」。アースウィンド&ファイア「Fantasy」を皮切りに、ファレル・ウィリアムス「HAPPY」、星野源「SUN」など、有名曲を次々に繋いだ後、最後にそれらすべての楽曲のフレーズをマッシュアップして歌い上げると、フロアからは大きな拍手が惜しみなく送られ、しかもなかなか鳴りやまなかった。同じくアカペラで幕を開けた「Jupiter」をドラマティックに届けると、「最後は笑顔で終わりたいです!」と、CMでもお馴染みの最新曲「世界はあなたに笑いかけている」を披露。躍動感たっぷりのバンドサウンドの上で踊る、5人の盤石のハーモニーは、幕張メッセ全体をハッピーな空気で満たしていき、ここからのさらなる飛躍を期待させるに十分なものであった。
Superfly (c)テレビ朝日 ドリームフェスティバル 2018 / 写真:岸田哲平
ジャンル不問・多種多彩なアーティストが集うドリフェスだが、2日目の顔ぶれを見渡してみると、特に“歌”にフォーカスを当てたラインナップに思える。中でも破格な存在感を示したのは、4年ぶりの出演となるSuperflyだった。ホーン隊やコーラスも加わったバンド陣がスタンバイするステージに越智志帆が姿を現し、まっすぐ前を見つめた彼女がフッと表情を緩めた次の瞬間、「Beautiful」からライブが始まった。
Superfly (c)テレビ朝日 ドリームフェスティバル 2018 / 写真:岸田哲平
豊かな声量とパワフルな歌唱の印象が強い彼女だが、それだけに留まらずしなやかさ、軽やかさをも持ち合わせているからすごい。その歌声が空気を伝わり、ときに強烈に、ときに優しく鼓膜を震わす度、「今、最高の贅沢を味わっているな」という気持ちにさせられる。しかも、イヤモニの調子がおかしいのか、時折外して歌っているにもかかわらず、全くその影響を感じさせなかったのも特筆すべきだろう。初見も多いフェスの場を意識して組んだと思われるセットリストも最高で、イントロから大いにどよめいた大名曲「愛をこめて花束を」から、それまでの歌姫の佇まいからロックシンガーのそれへと変貌した「Alright!!」「タマシイレボリューション」へと、怒涛の展開で盛り上げる。参ったな、鳥肌が収まらない。
Superfly (c)テレビ朝日 ドリームフェスティバル 2018 / 写真:岸田哲平
「せっかくだから一曲ぐらいは、勇気を振り絞って前(センターステージ)に出よう、とスタッフと話していたら……気づけば2回も前の方に(笑)」
曲が始めればある種の神々しさすら感じさせる越智志帆の、MCで見せる表情や発言が実にキュートなところも見逃せない。後半にかけては、人生賛歌のような輝きを放つ「Bloom」や、ブルースへとアレンジされた初期曲「マニフェスト」でのフェイクをふんだんに織り込んだ歌唱も披露。ライブが終わりのときを迎えると、総立ちの客席からはまるでスタンディングオベーションのように、鳴り止まない拍手が送られ続けた。

■NEWS
いよいよ2日目の大トリ、先日結成15周年を迎えたばかりのNEWSの登場だ。暗転した瞬間、場内には歓喜の声が鳴り響く。「Overture」が流れる中、オープニング映像がスクリーンに映し出されると、その声はさらに大きくなり、歓声が途切れる間もなく、1曲目の「チャンカパーナ」がスタート。マイクスタンドを前に、小山慶一郎、加藤シゲアキ、増田貴久、手越祐也の4人が華やかに歌い踊り、続けて「BLUE」へ。今年のワールドカップの熱狂再びといわんばかりに、オーディエンスが一丸となってタオルを振り回していると、曲の終盤ではトロッコがステージ脇にスタンバイ! そのままなだれ込んだ「恋祭り」では、メンバーそれぞれが乗り込んだトロッコがフロア後方までぐるりと回り、オーディエンスの興奮を煽りまくっていた。
手越はHYDEX JAPANを観るために、初日公演にプライベートで観に来ていたようで、MCで「ハンパなかった!」と興奮気味に話す。そして、初日に負けないように頑張りたいと意気込みを話しているうちに、なぜか「手をNの形にしてジャンプしてみる?」ということになり、Xジャンプならぬ「Nジャンプ」をオーディエンスと共に繰り広げていた。また、この日4人が着ていた衣装は増田が手掛けたもので、『ドリフェス』の公式Tシャツをリメイクして作ったという一品。この日のステージのためだけに制作されたという事実からも、彼らの気合いが伝わってくる。
賑やかなトークで場内を盛り上げた後は、最新曲「生きろ」を披露することに。曲に入る前に、「この曲は、いろんなメッセージを込めて歌っています。結成15周年を迎えた僕達自身に向けてもそうですし、いろんな場所にいる、いろんな人たちに届けたいと思っていて」と加藤。それを受け取った小山が、今年は数々の自然災害が日本を襲ったことに触れ、「日本各地で頑張っているみなさんに向けても歌いたい」と、今の想いをしっかりと伝えていた。そして、力強く歌を届ける4人の熱唱ぶりは、まさに全身全霊という言葉にふさわしいもので、エモーショナルな歌詞と歌声に、胸を熱くさせられた。
他にも、ランウェイで4人が背中合わせになり、フロアを見渡しながら届けられたスロウバラード「madoromi」や、カラフルな紙吹雪が天高く吹き上げられる中で披露された和風EDM「KAGUYA」、大音量のシンガロングを巻き起こした「U R not alone」など、様々な楽曲でオーディエンスを魅了していた4人。とりわけ、ジャニーズJr.と共にパフォーマンスされた「夜よ踊れ」「JUMP AROUND」「BLACKHOLE」といった、クールで官能的、かつオントレンドで本格的なHIPHOPチューンの3連発は、NEWSを初めて観たというオーディエンスにとって、かなりの意外性と興奮をもって歓迎されていたと思う。「僕たちがどんな感じかわかってくれましたか?」と手越がMCで話していたように、彼らの魅力を存分に堪能できるステージであり、彼らのことをもっと深く知りたくなる内容だった。ラストナンバーは「weeeek」。Jr.も交えて大盛り上がりのパフォーマンスを繰り広げ、最後にはキャノン砲でテープが発射され、大熱狂のままドリフェス2日目は幕を下ろしたのだった。

取材・文=風間大洋(Official 髭男dism、sumika、Superfly)/山口哲生(Nulbarich、Little Glee Monster、NEWS)
撮影=岸田哲平

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