ハンバートハンバート 2人きりでラ
イブ定番曲やカバー曲を録音したアル
バム『FOLK2』を語る

 ハンバートハンバートが結成20周年を迎えた。デビュー15周年の時に発表されたサポートなし2人きりでライブ定番曲やカバー曲を録音したアルバム『FOLK』。今回は、その第2弾『FOLK 2』が発表された。録音方法含め、オリジナルアルバムとの違いについても佐野遊穂、佐藤良成に聞いている。また、2人のルーツや出逢いなども聞いているので、是非、入門編的インタビューとして読んで頂きたい。
――20周年という事で、まずは音楽をやっていきたいと思い始めたのが、いつ頃からお伺いしたいなと。
佐藤:12歳くらいからですかね。好きな事が見つかると、それ以外は考えられないので。それまでは手塚治虫になりたくて(笑)。中学生くらいになるとロックも聴き始めて、それでミュージシャンになりたいと思いましたね。その頃、映画の『スタンドバイミー』を観て、あの、いわゆるオールディーズな音楽を全部好きになったんです。
佐野:私は音楽で食べていきたいと思ったのが、いつだったのかというのは、はっきり覚えてなくて……。でも、親が音楽がずっと好きで、最初に買ってもらったCDが『天空の城のラピュタ』のサントラなんです。歌詞カードがボロボロになるくらい聴いてましたね。全部、英語をカタカナに書き直して、CDと一緒に歌ってました。その当時は楽器をやりたいとかも、あんまり思ってなかったし、自分で音楽をやるという発想が無かったですね。
佐藤:僕も最初はCDに合わせて歌っていたんですけど、ギターが弾けるようになってからは自分の好きな曲の伴奏をしたいなと思って。
佐野:私は本格的に楽器をやるという事には縁遠くて。小学校に入ってから、ピアノやエレクトーンはやってましたけど。でも、出たがりは出たがりで、バレエを習っていたりしたので、人前で目立つのは好きでした。
ハンバートハンバート 撮影=渡邉一生
――で、そんなふたりがハンバートハンバートをされるんですよね。
佐藤:わりと軽いノリで誘ったんです。
佐野:「デモテープを作るから、やってくれない?」みたいな。それから、「ライブをやるけど、やるよね?」みたいな感じでしたね。
佐藤:華やかな女性コーラスを入れたくて。スライ&ザ・ファミリーストーンを観て、そう思ったんだったかな? イメージは、ホーンも入れてみたいなつもりでしたね。でも、出来る曲はにぎやかなものではなく、「この曲に、どうコーラスを入れるの?」みたいな。だから、なるべくして、こうなったというか。遊穂は、「歌上手いな」と思ったんですよね。
ハンバートハンバート 撮影=渡邉一生
――20年も続くと思っていましたか?
佐藤:全然ですね。
――最初の頃から、しっかりと方向性が決まっているイメージが勝手に持っていました。
佐藤:いえいえ、実は最初の頃のライブは、ポエトリーリーディングもやってましたからね。やりたい事が、たくさんあったんですよ。固まり出したのは、最近ですよ。『FOLK』(2016年発表アルバム)を出した頃じゃないですかね。ふたりきりで演奏するというコンセプトが決まって、音の方向性とかも決まったんですよ。それまでは、出来たものをレコーディングする感じだったので。
ハンバートハンバート 撮影=渡邉一生
――中学生の頃にロックを聴き始めて、そこからフォークに興味を持ち始めたのは、いつ頃ですか?
佐藤:高校生の頃に渋谷系が流行っていて、そんな時に3人くらいの友達とベルボトムを履いて、ゲタで歩くみたいな事をしていて。
佐野:「ボーダー着ねぇ!』」みたいな(笑)。
佐藤:でも、大学生になったら、フォークやだなと思って、別の事をやろうと思ったんですよ。でも、やっていく内に、フォークを好きだった頃に戻っていくというか。曲も素朴でシンプルなものが多いですから。
――『FOLK』制作時、そのフォークソング調にやっていくというコンセプトは、どうやって決まったのですか?
佐藤:その頃、細野(晴臣)さんのライブイベント呼んでもらったりしていて、翌年、年賀状を頂いたんです。そしたら、「今年もフォークソングに励もう」と書いてあって、いいなぁと。細野さんが言っているんだったら、励もうとなって。ふたりきりの録音も今まで無かったですし。で、『FOLK』を出して、細野さんのラジオに呼んでもらった時に「何でフォーク?」と聞かれたので、事情を説明したら、細野さんが高校生の時に書いた年賀状をカラーコピーしただけだった事がわかったんです(笑)。
――とんだ勘違いだったんですね(笑)。でも、サポートメンバーを入れて録音するのと、2人きりで録音するのって全く違いますよね。
佐野:『むかしぼくはみじめだった』(2014年発表)というアルバムをナッシュビルのスタジオで録った時に、そこが窓もあってスタジオっぽくなくて良かったんですね。だから、良成が自宅近くにレコーディングができる仕事場を借りているのですが、そこで録ったものを家で聴いたりするのも良いかなと思ったのですが、地獄でした(笑)。
佐藤:地獄だよね(笑)。
ーー自分たちの仕事場と家で、自分たちだけで作業するのも良し悪しがあるんですね。
佐野:どこを良しとするかというジャッジ基準がふたりで違うし、良しとしていたものも、2日くらい経つとわからなくなって。もっとやれば良くなるのかなと思ったりもするし。
佐藤:誰か他にいたら「これで充分だよ」とか言ってくれたりするんでしょうけど。普段の様にスタジオで録っていたら、時間も限られているし、「これでOK」となったりするんですよ。要は大変だよね。
佐野:まぁ、今回は2回目だから慣れたけど。
ハンバートハンバート 撮影=渡邉一生
――録音終わってからって、聴き直したりするものですか?
佐藤:録音が終わってからも、気になり続けるので、なるべく後で聴きたくないですね。
佐野:私も録音終わってからは、しばらく聴かないですね。
佐藤:聴くとチェックしちゃうから、疲れちゃうので。「ウッ……」となる。「ちょっとここ違う」となるので。
――なるほど。ちなみに普段から曲は作っておられますか?
佐藤:わりとギターは触ってますね。〆切に追われるのが苦手なんで。でも、凄いコツコツも出来ないし、凄いギリギリも出来なくて。
佐野:今、(曲を)作ってるのは、後で困りたくないから?!
佐藤:ではないよね(笑)! 次から次へとおもしろいものは出来ないし、だから、出来ない時はつまんないし、苦痛だし。
ーーでも、「FOLKシリーズ」はライブ定番曲の再録とカバー曲が基本のコンセプトなのに、そこに新曲があるのは、聴く方も凄く嬉しいんですよ。
佐藤:本当は、ずっとオリジナルアルバムを作っていたいですけどね。毎回、「これぞ!」と思って作っていますが、後で聴き直すと、「こうすれば良かった」という点が出てくるんです。だから、その次にオリジナルアルバムを録る時は、やり直すチャンスだと思っているんですよ。
ハンバートハンバート 撮影=渡邉一生
ーー毎回、それだけの想いで作られているんですね……。後、音楽の聴き方も時代と共に色々と変わってきてますが、そのあたりは、どうお考えですか?
佐藤:(聴き方は)何でもいいっすよ。レコードみたいにアナログシステムで聴くのは好きですけど、iPhoneで聴こうと、良いものは良いですから。
佐野:私は本当にイヤホンで聴くのがダメなんですよ。降りる駅で降りれなくなるので。一度にひとつの事しか出来なくて。だから、料理をしている時に、音楽をかけたら一緒に歌ってしまうので、料理の手が止まっちゃうんです。
――遊穂さん、聴き方というのは、そういう意味ではなくて、配信とかSpotify的な意味合いでして(笑)。
佐野:あっ、そういう事ですね(笑)。でも、慣れてる聴き方で聴いてもらえたら良いですね。
――本当にそうですよね。今日は色々と聴けて楽しかったです。ありがとうございました。
取材・文=鈴木淳史 撮影=渡邉一生

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