「親が楽しんでいる姿を見るのが、子
どもの幸せ」“こどもフジロック”の
核心
(c)宇宙大使スター
フジロック開催20周年を記念して立ちあがったプロジェクトに【こどもフジロック】がある。2018年で3年目を迎えた【こどもフジロック】は、フジロックに子連れで参加する人にとって役立つ情報の収集/発信/シェアや呼びかけを行っており、「子どもも大人もフジロックを思いっきり楽しもう」という想いが活動のベースとなったものだ。
もちろん「役立ち情報」が得られることも重要だが、一方で未だ「そもそもフジロックという過酷な環境に子供を連れて行くことの是非」を問う向きもある。【こどもフジロック】プロジェクトを推進する主催者は、複雑で様々な問題を内包する「フジロックとこども」というテーマに、どのようなポリシーを持っているのか? フジロックを主催するSMASHの石飛智紹氏と【こどもフジロック】のスタッフを務める早乙女‘dorami’ゆうこ氏に、率直な意見をぶつけてみた。
◆ ◆ ◆
■ 親が本当に解放されているシーンなんて、普段の子育て生活ではあまりない
──フジロックが「お子さんも連れてきて!」とアナウンスし始めたのっていつ頃ですか?
石飛智紹(以下、石飛):1997年の第1回目からです。
──それは日高さん(日高正博/株式会社SMASH代表取締役社長)のコンセプトですか?
石飛:そうです。“3世代で楽しめるフェスをつくろう”というコンセプトでしたから。初年度からキッズランド構想はあったんです。「プールを作ろう」とかね。1999年の苗場1回目で具体的にキッズランドが作られました。
──石飛さんは何故キッズランドやこどもフジロックに関わっているんですか?
▲2002年の様子
石飛:はじめは単に仕事としてでしたが、10年ほど前に子どもが生まれてからは子どもの本質や親の悩みを知る機会も増え、わが家の子育てと子どもの成長に合わせて、子連れのお客さんを迎える環境を整えてきました。(※現在3人の小学生の親)
──「こども対応」と言っても2種類ある気がします。「託児所あります」とか「授乳コーナ完備」というのは、フェスを楽しみたい親御さんへのフォロー/ケアですよね? 「子供が楽しめるフェスを作る」とは視点が全く違う。「子どもも一緒にフェスを楽しもう」という視点と、「子どもを連れてきても大丈夫」というサービスの充実を、混在させて論じてはいけない気がする。
石飛:完全に別ですね。だからフジロックでは「ショッピングセンター型のサービス」は一切しません。
──やっぱりフェスを楽しんで欲しい?
▲2012年の様子/ (c)宇宙大使スター
石飛:そうです。だから託児所はないですよ。絶対に託児はしない。究極の答えを言えば「親が楽しんでいるところを見て子どもが育ったら、もっといいんじゃないか」ということなんです。親の背中を見て育つことの、ひとつのあり方です。親が本当に解放されているシーンなんて、普段の子育て生活の中ではあまりないでしょうから。
──なるほど。親が喜んでいる顔を、初めて子供が見ることになるかもしれない。
石飛:「素の家族を楽しんでもらえる環境づくり」みたいなことかもしれないですね。子どもが輝いていれば「連れてきてよかった。…私も楽しんでいいのかなぁ」と繋がるような設計を心がけてます。
(c)宇宙大使スター
早乙女‘dorami’ゆうこ(以下、ドラミ):フジロックの場合、私は「3歳とか5歳とか、ある程度は大きくなってからじゃないとだめかな」って思ってたんです。なにしろ山だし、母親なりたてで子どもの表情を読み取れる自信がなかったし。
──ドラミさんの息子さんのように1歳でフジに行くってチャレンジですよね?
ドラミ:そう思っていました。友人や同世代が子どもと一緒に行っている話を聞いたりして「自分も行きたいなぁ、でもいつごろ行けるかなぁ」って思っていたんですけど、実際に経験したことがないので答えが出せなかったんですね。そんなときに【こどもフジロック】のスタッフというチャンスをもらって不安な気持ちを飛び越えることができた。行ってみたら「あぁ、なんだ。行けるんだ」ということがわかったので、「行けるんだっていうことを伝えたい」というのが【こどもフジロック】をメンバーとしてやらせていただいているひとつの原動力です。
──でも人目も気になりませんか? 「小さいお子さんも一緒で素敵だな」とみてくれる人もいれば、「こんな小さい子を連れてくるなんて、親としてどうかしている」とネガティブにとらえる人もいる。
ドラミ:正直…私も独身時代はネガティブに見ていました。「こんな雨のなか赤ちゃん大丈夫かな」「夜、どうなんだろう」とか。子どもが楽しんでるのかもわからないし。だからこそ自分が「連れていきたい」と思ったときに矛盾が生じる。まぁ、周りに迷惑をかけなければ人の目なんか気にしなくていいと思ったんですけど、バラードで「ぎゃあー!」って泣かれたらいやだし…。
──難しいですね。
(c)宇宙大使スター
ドラミ:基本的にフジロックは「大人が楽しむ場」だと思っていたんです。だけど、ふと考えてみれば子どもがいても悪いわけでもないし、親になってから調べてみたら、小学生は無料で今では中学生まで無料となっている。フジロックって実は門戸を開いてウェルカムで待っていてくれたんだっていうのを初めて知ったんですよね。
──初回から小学生は無料なのに、全然気づいていない。
ドラミ:親という立場にならないと必要な情報を取りにいかないですよね。乳児用のテントがあるとか、キッズランドの中には授乳スペースがあったり、その中には“ママーズ”と呼ばれるボランティアのお母さん方がいたりして、目を配ってくれている。困ったことがあったりすると手を差し伸べてくれて。
──それは心強い。
(c)宇宙大使スター
ドラミ:子どもが遊ぶ場所として、キッズランドの中に森がものすごく大きく広がっていたり、山を切り崩してプレイパークが誕生していたり。皆ほとんど知らないですよね。一歩中に入って見るとその空間ってものすごい計算されていて、焚き火とか小さなステージがあって、“森の音楽会”もある。そこでは子どもに大人気のケロポンズが6年連続で出演していたり(今年の出演含め)、探す面白さもいっぱいあるんです。
◆インタビュー(2)へ
フジロック開催20周年を記念して立ちあがったプロジェクトに【こどもフジロック】がある。2018年で3年目を迎えた【こどもフジロック】は、フジロックに子連れで参加する人にとって役立つ情報の収集/発信/シェアや呼びかけを行っており、「子どもも大人もフジロックを思いっきり楽しもう」という想いが活動のベースとなったものだ。
もちろん「役立ち情報」が得られることも重要だが、一方で未だ「そもそもフジロックという過酷な環境に子供を連れて行くことの是非」を問う向きもある。【こどもフジロック】プロジェクトを推進する主催者は、複雑で様々な問題を内包する「フジロックとこども」というテーマに、どのようなポリシーを持っているのか? フジロックを主催するSMASHの石飛智紹氏と【こどもフジロック】のスタッフを務める早乙女‘dorami’ゆうこ氏に、率直な意見をぶつけてみた。
◆ ◆ ◆
■ 親が本当に解放されているシーンなんて、普段の子育て生活ではあまりない
──フジロックが「お子さんも連れてきて!」とアナウンスし始めたのっていつ頃ですか?
石飛智紹(以下、石飛):1997年の第1回目からです。
──それは日高さん(日高正博/株式会社SMASH代表取締役社長)のコンセプトですか?
石飛:そうです。“3世代で楽しめるフェスをつくろう”というコンセプトでしたから。初年度からキッズランド構想はあったんです。「プールを作ろう」とかね。1999年の苗場1回目で具体的にキッズランドが作られました。
──石飛さんは何故キッズランドやこどもフジロックに関わっているんですか?
▲2002年の様子
石飛:はじめは単に仕事としてでしたが、10年ほど前に子どもが生まれてからは子どもの本質や親の悩みを知る機会も増え、わが家の子育てと子どもの成長に合わせて、子連れのお客さんを迎える環境を整えてきました。(※現在3人の小学生の親)
──「こども対応」と言っても2種類ある気がします。「託児所あります」とか「授乳コーナ完備」というのは、フェスを楽しみたい親御さんへのフォロー/ケアですよね? 「子供が楽しめるフェスを作る」とは視点が全く違う。「子どもも一緒にフェスを楽しもう」という視点と、「子どもを連れてきても大丈夫」というサービスの充実を、混在させて論じてはいけない気がする。
石飛:完全に別ですね。だからフジロックでは「ショッピングセンター型のサービス」は一切しません。
──やっぱりフェスを楽しんで欲しい?
▲2012年の様子/ (c)宇宙大使スター
石飛:そうです。だから託児所はないですよ。絶対に託児はしない。究極の答えを言えば「親が楽しんでいるところを見て子どもが育ったら、もっといいんじゃないか」ということなんです。親の背中を見て育つことの、ひとつのあり方です。親が本当に解放されているシーンなんて、普段の子育て生活の中ではあまりないでしょうから。
──なるほど。親が喜んでいる顔を、初めて子供が見ることになるかもしれない。
石飛:「素の家族を楽しんでもらえる環境づくり」みたいなことかもしれないですね。子どもが輝いていれば「連れてきてよかった。…私も楽しんでいいのかなぁ」と繋がるような設計を心がけてます。
(c)宇宙大使スター
早乙女‘dorami’ゆうこ(以下、ドラミ):フジロックの場合、私は「3歳とか5歳とか、ある程度は大きくなってからじゃないとだめかな」って思ってたんです。なにしろ山だし、母親なりたてで子どもの表情を読み取れる自信がなかったし。
──ドラミさんの息子さんのように1歳でフジに行くってチャレンジですよね?
ドラミ:そう思っていました。友人や同世代が子どもと一緒に行っている話を聞いたりして「自分も行きたいなぁ、でもいつごろ行けるかなぁ」って思っていたんですけど、実際に経験したことがないので答えが出せなかったんですね。そんなときに【こどもフジロック】のスタッフというチャンスをもらって不安な気持ちを飛び越えることができた。行ってみたら「あぁ、なんだ。行けるんだ」ということがわかったので、「行けるんだっていうことを伝えたい」というのが【こどもフジロック】をメンバーとしてやらせていただいているひとつの原動力です。
──でも人目も気になりませんか? 「小さいお子さんも一緒で素敵だな」とみてくれる人もいれば、「こんな小さい子を連れてくるなんて、親としてどうかしている」とネガティブにとらえる人もいる。
ドラミ:正直…私も独身時代はネガティブに見ていました。「こんな雨のなか赤ちゃん大丈夫かな」「夜、どうなんだろう」とか。子どもが楽しんでるのかもわからないし。だからこそ自分が「連れていきたい」と思ったときに矛盾が生じる。まぁ、周りに迷惑をかけなければ人の目なんか気にしなくていいと思ったんですけど、バラードで「ぎゃあー!」って泣かれたらいやだし…。
──難しいですね。
(c)宇宙大使スター
ドラミ:基本的にフジロックは「大人が楽しむ場」だと思っていたんです。だけど、ふと考えてみれば子どもがいても悪いわけでもないし、親になってから調べてみたら、小学生は無料で今では中学生まで無料となっている。フジロックって実は門戸を開いてウェルカムで待っていてくれたんだっていうのを初めて知ったんですよね。
──初回から小学生は無料なのに、全然気づいていない。
ドラミ:親という立場にならないと必要な情報を取りにいかないですよね。乳児用のテントがあるとか、キッズランドの中には授乳スペースがあったり、その中には“ママーズ”と呼ばれるボランティアのお母さん方がいたりして、目を配ってくれている。困ったことがあったりすると手を差し伸べてくれて。
──それは心強い。
(c)宇宙大使スター
ドラミ:子どもが遊ぶ場所として、キッズランドの中に森がものすごく大きく広がっていたり、山を切り崩してプレイパークが誕生していたり。皆ほとんど知らないですよね。一歩中に入って見るとその空間ってものすごい計算されていて、焚き火とか小さなステージがあって、“森の音楽会”もある。そこでは子どもに大人気のケロポンズが6年連続で出演していたり(今年の出演含め)、探す面白さもいっぱいあるんです。
◆インタビュー(2)へ
(c)宇宙大使スター
■ フジロックでは緊張しているお母さん・お父さんがすごく多いように見える
──そうは言っても、やはり子連れは大変でしょう?
ドラミ:もちろんまわりは山ですから、自分と子どもの身を守るための雨耐用グッズなど必要なものはあります。レインスーツもペラペラのじゃなくてしっかりしたものを。大人が不快に思うことは子どもも不快ですから、そういう準備は絶対必要です。
(c)宇宙大使スター
──子ども向けのフェスめしはありますよね?
ドラミ:出店は100店ほどと聞いています。“こどもフジごはん”としてその中から毎年10店舗ほど取材をして、アレルギーがある子でも安心して食事を楽しめるように、お店側にも協力を仰いでメニューの全原材料を開示したり、子ども向けに唐辛子やマスタード抜きなどをお願いできることなどを紹介していて。もちろんそれだけじゃ間に合わないので、例えば離乳食とかだったら持ってきたほうがいいんじゃないかっていう提案は発信しています。
──他、思わぬ落とし穴とかなければいいけど。
ドラミ:私は初めて連れて行ったとき、最終日に「あぁー終わった。無事でよかった」と思っていたら、その日の夜中に子どもが熱を出したんです。そういうときの対応が自分は準備できていなかった。日中であればフジロック救護班がいるので「何かあっても大丈夫」と思っていたんですけど、もうフェスは終了。夜中の2時とかに「どうしよう」と思って。
──絵に描いたようなトラブルだ。
ドラミ:「だからみんな調べていこうね」って記事に書きました(笑)。最寄りの病院はどこにあるのか、持っていけるものはなにか、とか。
──大丈夫だったんですか?
ドラミ:大丈夫でした。結果的には宿の方が氷枕とか準備してくださって、救急に行くほどじゃなくなったので、朝になってから病院に行きました。
──風邪引いちゃったのかな?
ドラミ:風邪でした。はりきっちゃったんで。でも、そういうことってどこにいても同じことじゃないですか。大人でも子どもでも体調崩すし。
──注意深い目を持っていれば、大概のことはクリアできそうですね。
(c)宇宙大使スター
石飛:それは体験して勉強しながらであって、まさに子育てってそういうことです。
──親として鍛錬の場にもなるわけか。
ドラミ:ものすごくなりますね。シミュレーションのレベルがハンパない(笑)。日常ではない意識の配り方と、「親っていうのは何をすべきなんだろう?」をものすごく考えさせられる場です。まず私の場合、1歳の息子があそこで「どんな風になるんだろう」と。
──楽しむのか飽きちゃうのか…わからないですね。
ドラミ:参加自体、彼の意思ではないし。出発の時に説明はしましたよ、「フジロックというところに君は行きますよ」と。「今はわからないかもしれないけど、将来的に君はそれで“クールだ”と言われるから行こうね。ママの好きな場所に行きますよ。ちょっとお仕事手伝ってもらうかもね」ぐらいに(笑)。
──で、どうでした?
(c)宇宙大使スター
ドラミ:本人はものすごい楽しんで、息子はBARKS編集長をみつけ「イエーイ」ってハイタッチをしに行き、みなさんに遊んでいただいたりするぐらい、彼のほうが余裕ありました。イヤーマフつけて、忌野清志郎さんが描いた子ども用フジロックTシャツを着せてたら、いろんな方が「かわいい」ってハイタッチをしてくれる。
──子どものほうが楽しみ方を知っているようですね。
ドラミ:そう。私は知らない人とコミュニケーションをとることはしてこなかったんですけど、そこを息子が勝手に切り開いていくんです(笑)。カップルがイチャイチャしているところにヌッて入って行って、じっと見て、カップルも「なんかちっちゃいの来たぞ」みたいな。そしたら写真一緒に撮ったりしてインスタに「ちっちゃいの来た」って勝手に上げられてたり(笑)。お客さんとのコミュニケーションも子どものほうが先を行っている。
──結果的に、親が楽しませられる点もある?
ドラミ:初めて感じる感覚とか初めて見る場面が多かった。あとは優しさですね。フジロックのお客さんは本当にみんな優しくて、私は誰からも舌打ちをされたりしたことがない。これまで1歳、2歳と連れて行ったけど、手伝ってくださる方がほとんどで、嫌な顔もされない。それってすごいことだなと思っているんです。
(c)宇宙大使スター
──そうですね。日常だったらそうはいかないかもしれない。
石飛:フジロック・マジックだよね。
ドラミ:私が思うに、ここ2年はお子さん連れの人よりもお子さんがいない大人チームのほうが優しく接してくれる気がします。私もそうなんですけど、子ども連れの人って余裕がないんです。「自分と自分の子どもが迷惑かけないように」ということだけで精一杯。
──そういう人と人との交流も、日高さんが描いたフェスの風景なんだろうか。
石飛:そういうことですよね。そして日本型のスタイルとして進化した、ということだと思います。
ドラミ:グラストンベリー・フェスティバルを観に行ったとき、おじいちゃんから孫まで三世代でThe Whoを合唱していたんですね。「Who Are You」を一緒に歌っているところに子どもたちや赤ちゃんも普通にいて、おじいちゃん曰く「俺は50年観てるんだよ!」って、生活に根付いているのがすごくうらやましかった。すっごい楽しそうだったし、毎年家族で来てることを誇りに思っているんです。仲間が20人くらいいて、酒飲んで、子どもはジュース飲んで。寝てる子ももちろんいますしね。だけどみんながみんな楽しそうで、無理してない感じ。私には、フジロックでは緊張しているお母さん・お父さんがすごく多いように見えるんです。
◆インタビュー(3)へ
■ フジロックでは緊張しているお母さん・お父さんがすごく多いように見える
──そうは言っても、やはり子連れは大変でしょう?
ドラミ:もちろんまわりは山ですから、自分と子どもの身を守るための雨耐用グッズなど必要なものはあります。レインスーツもペラペラのじゃなくてしっかりしたものを。大人が不快に思うことは子どもも不快ですから、そういう準備は絶対必要です。
(c)宇宙大使スター
──子ども向けのフェスめしはありますよね?
ドラミ:出店は100店ほどと聞いています。“こどもフジごはん”としてその中から毎年10店舗ほど取材をして、アレルギーがある子でも安心して食事を楽しめるように、お店側にも協力を仰いでメニューの全原材料を開示したり、子ども向けに唐辛子やマスタード抜きなどをお願いできることなどを紹介していて。もちろんそれだけじゃ間に合わないので、例えば離乳食とかだったら持ってきたほうがいいんじゃないかっていう提案は発信しています。
──他、思わぬ落とし穴とかなければいいけど。
ドラミ:私は初めて連れて行ったとき、最終日に「あぁー終わった。無事でよかった」と思っていたら、その日の夜中に子どもが熱を出したんです。そういうときの対応が自分は準備できていなかった。日中であればフジロック救護班がいるので「何かあっても大丈夫」と思っていたんですけど、もうフェスは終了。夜中の2時とかに「どうしよう」と思って。
──絵に描いたようなトラブルだ。
ドラミ:「だからみんな調べていこうね」って記事に書きました(笑)。最寄りの病院はどこにあるのか、持っていけるものはなにか、とか。
──大丈夫だったんですか?
ドラミ:大丈夫でした。結果的には宿の方が氷枕とか準備してくださって、救急に行くほどじゃなくなったので、朝になってから病院に行きました。
──風邪引いちゃったのかな?
ドラミ:風邪でした。はりきっちゃったんで。でも、そういうことってどこにいても同じことじゃないですか。大人でも子どもでも体調崩すし。
──注意深い目を持っていれば、大概のことはクリアできそうですね。
(c)宇宙大使スター
石飛:それは体験して勉強しながらであって、まさに子育てってそういうことです。
──親として鍛錬の場にもなるわけか。
ドラミ:ものすごくなりますね。シミュレーションのレベルがハンパない(笑)。日常ではない意識の配り方と、「親っていうのは何をすべきなんだろう?」をものすごく考えさせられる場です。まず私の場合、1歳の息子があそこで「どんな風になるんだろう」と。
──楽しむのか飽きちゃうのか…わからないですね。
ドラミ:参加自体、彼の意思ではないし。出発の時に説明はしましたよ、「フジロックというところに君は行きますよ」と。「今はわからないかもしれないけど、将来的に君はそれで“クールだ”と言われるから行こうね。ママの好きな場所に行きますよ。ちょっとお仕事手伝ってもらうかもね」ぐらいに(笑)。
──で、どうでした?
(c)宇宙大使スター
ドラミ:本人はものすごい楽しんで、息子はBARKS編集長をみつけ「イエーイ」ってハイタッチをしに行き、みなさんに遊んでいただいたりするぐらい、彼のほうが余裕ありました。イヤーマフつけて、忌野清志郎さんが描いた子ども用フジロックTシャツを着せてたら、いろんな方が「かわいい」ってハイタッチをしてくれる。
──子どものほうが楽しみ方を知っているようですね。
ドラミ:そう。私は知らない人とコミュニケーションをとることはしてこなかったんですけど、そこを息子が勝手に切り開いていくんです(笑)。カップルがイチャイチャしているところにヌッて入って行って、じっと見て、カップルも「なんかちっちゃいの来たぞ」みたいな。そしたら写真一緒に撮ったりしてインスタに「ちっちゃいの来た」って勝手に上げられてたり(笑)。お客さんとのコミュニケーションも子どものほうが先を行っている。
──結果的に、親が楽しませられる点もある?
ドラミ:初めて感じる感覚とか初めて見る場面が多かった。あとは優しさですね。フジロックのお客さんは本当にみんな優しくて、私は誰からも舌打ちをされたりしたことがない。これまで1歳、2歳と連れて行ったけど、手伝ってくださる方がほとんどで、嫌な顔もされない。それってすごいことだなと思っているんです。
(c)宇宙大使スター
──そうですね。日常だったらそうはいかないかもしれない。
石飛:フジロック・マジックだよね。
ドラミ:私が思うに、ここ2年はお子さん連れの人よりもお子さんがいない大人チームのほうが優しく接してくれる気がします。私もそうなんですけど、子ども連れの人って余裕がないんです。「自分と自分の子どもが迷惑かけないように」ということだけで精一杯。
──そういう人と人との交流も、日高さんが描いたフェスの風景なんだろうか。
石飛:そういうことですよね。そして日本型のスタイルとして進化した、ということだと思います。
ドラミ:グラストンベリー・フェスティバルを観に行ったとき、おじいちゃんから孫まで三世代でThe Whoを合唱していたんですね。「Who Are You」を一緒に歌っているところに子どもたちや赤ちゃんも普通にいて、おじいちゃん曰く「俺は50年観てるんだよ!」って、生活に根付いているのがすごくうらやましかった。すっごい楽しそうだったし、毎年家族で来てることを誇りに思っているんです。仲間が20人くらいいて、酒飲んで、子どもはジュース飲んで。寝てる子ももちろんいますしね。だけどみんながみんな楽しそうで、無理してない感じ。私には、フジロックでは緊張しているお母さん・お父さんがすごく多いように見えるんです。
◆インタビュー(3)へ
(c)宇宙大使スター
■親が楽しんでいる姿を見るのが、子どもの幸せ
──肩に力が入っている?
ドラミ:もうガッチガチな感じで。私もまだそうなんです。だけど、そんなにガチガチにならなくてもって思います。3日間だけ突然現れる異空間があって、毎年そこに行けば自分の中の開放スイッチが入って新しいことに驚いたりとか、なかなか揺さぶられなくなった感情が揺さぶられたりとか、まだ新しい発見があり得るようなすごく大事で神聖な場所なんですけど、子どもを連れて行くとなるとちょっと違う。でもやっぱり、自分の愛する子どもを自分の好きな場所に連れて行きたいですよね。そこで一緒に過ごしたい。
──お子さんに変化はありましたか?
ドラミ:1歳のときはまだ意思表示ができなかったけれど、去年はわかったみたいで「ここ来たことある」って感じでした。大好きなケロポンズも出るからライブを観に来ている感があるみたいで、グリーンステージでジェイク・シマブクロを観ながらメロイックサイン出してた(笑)。「2歳だけど、こうやって子どもも変わるんだな」って。
──最高だな。
ドラミ:去年はグループ魂にものすごい興味を示してました。グループ魂を観て、2歳の息子と60代の母が拍手してる(笑)。「すごいシュールだな」って思って、ひとりで涙流して笑ってました。
──それもフジロックならではの風景かもしれないですね。
ドラミ:笑えますよね。ものすごい卑猥なこと歌っているのに、何も知らずに拍手してるんですよ(笑)。
(c)宇宙大使スター
──(笑) 今回の記事を読んで「家族で行ってみようかな」と思ってくれた人、どれくらいいるかな。
ドラミ:今になって、「2年前の自分に押してほしかった」って思うツボがあるんです。保育のスペシャリストの柴田愛子さんが「親が楽しんでいる姿を見るのが、子どもの幸せだ」と言い切ってくださったんです。
石飛:柴田先生は毎年遊びに来てくださってます。うちの日高と同世代で骨太なポリシーを持ってらっしゃる方です。
ドラミ:保育界のカリスマの方で、Eテレの『すくすく子育て』っていう番組でもコメンテーターで出ている人なんですけど、だいぶアナーキーというか風雲児というか、45年も子どもの心に寄り添う保育をやられているんです。そういう方が、「フジロックに行ったらあんな自由な空気があって、親が全力で喜んでいる姿ってなかなか都会や普段の生活では見られない。そういう姿を見せることがいいんだよ」って。その言葉にすごく背中を押してもらえたんです。
(c)宇宙大使スター
──「それでいいんだ」って?
ドラミ:むしろ「なんで悪いの?」って思えた。「連れていっちゃいけないわけじゃない。フジロックはいいって言っている。だって無料なんだから“来い”ってことでしょ?」と。あんなにたくさんの人間を一気に見ることもないですし、いい大人がものすごくはしゃいでいるわけで、その中に自分の親も含まれる。「あれ、なんかママ、“おおー!”って言ってるぞ」みたいな。
──「僕の知ってるママじゃないぞー?」って?
ドラミ:人が楽しんだりとか、悲しんだりとか、そういう感情のピークを子どもが見てくれて「そういう世界があるんだな。こういう場所があるんだな」ってことをわかってくれて、子どもが音楽を好きになってくれたら…そして毎年「また来たい」と思って、年を重ね友だちと来たり、結婚してそれこそ3世代で私がおばあちゃんになってから来れるかもしれないっていう夢を抱いちゃいます。グラストンベリーは長く続いているから3世代も定着している。フジロックは22年目ですよね。私は1回目のとき19歳で学生だったので、ちょうど3世代で来れる層ができてきたと思うと、すごく幸せを感じます。自分が19歳の頃には、親とフェスに行けるなんて考えられなかったから。
(c)宇宙大使スター
──親子3代参加に向けて、運営側も様々な創意工夫を重ねてきているんでしょうね。
ドラミ:トイレも2年くらい前から優先トイレができたことで、子どもを連れて待つ大変さが改善していたり。気づかないところでマイナーチェンジがたくさんされているんですよ。
──人知れず運営努力も行われているんですね。
ドラミ:必要としている側には気づいている人もたくさんいるんです。必要としていない人からすれば「なんかシールが一個増えたな」ぐらいにしか思わないけれど、「優先シールがあるから助かる」って言う声も実際たくさん聞きます。かといって難しいのは、「子どもがいるんだから優遇してよ」では絶対ないわけで、大人も子どもも全員公平。だからこそ、そこのさじ加減は親側の意識の問題だとも思うんです。
──「親が喜んでいる姿を見せる」…それに尽きる気もしますね。ストレスフルの現代社会では、喧嘩をしたり、イラついたり怒っちゃったりするシーンが多いでしょう? 笑顔が取り戻せる夢のような場所として行くのもいい。
ドラミ:【こどもフジロック】で子連れファミリーをインタビューしたんですけど、子どもに「どうだった?」と訊いたら「お母さんが変だった」って言ってたんですよ。EGO-WRAPPIN'のときにママが狂い踊っていたらしい(笑)。それを見て「ママ、変だった!」って。お母さんも「変だったって言われちゃいました(笑)」って言って笑っている(笑)。とても素敵だなと思いました。
──親は子どもを中心に考えますから、自分が楽しむのは二の次三の次になりがちですよね。
ドラミ:一番陥るところだと思います。
──そこを乗り越えて一緒に楽しむ、それがフジロックの醍醐味なんですね。
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ドラミ:「楽しんでいいんですよ」と伝えていきたいです。あと必要なのは、楽しむためにやはり「不安要素を消していくこと」だけなんです。だから必要な情報を全部発信していきたいんです。現在は、富士祭電子瓦版のコラムとFacebookに集約しています。
──フジロック会場で、夫婦喧嘩だけはしたくないからなあ(笑)。
ドラミ:子どもがいるとどっちかがイライラしたり…そういうお話も実際あるんですよね。
──それだと日常と何ら変わらない。そうならないための準備と情報入手ですね。
ドラミ:おそらくそれって心の余裕の持ち方次第。きっとどこにいても一緒で、フジロックで喧嘩している人は家でも喧嘩していると思う(笑)。ただ自然の中にいると、喧嘩の落とし所もいい方向に動く気がするんですよ。
──山に比べたら、喧嘩の中身が小せぇって(笑)。
ドラミ:「せっかくこんなところに来ているのに、なにをやっているんだ俺たちは」って気づける環境でもあると思うんですよね。
──深呼吸すれば、解決するかも。
(c)宇宙大使スター
ドラミ:親だけが楽しめばいいかっていうと、もちろんそうじゃなくて、当然子どもが優先ですよね。熱を出したり泣いていたら、観たいステージがあろうとも、それはもう諦めて子どもに向かう。ただ、そればっかりじゃなくて「親も遊んでいい」という加減ですよね。「子ども優先」を言い過ぎると親がどんどんしんどくなっていく。自分が楽しむことと子供を楽しませるものとのバランスは、すごくむずかしいです。
──自然環境に対応していく人間力も鍛えられるだろうし、それがいろんな糧になっていく。その様子を子どもに見せられるのはお金じゃ買えない財産でもありますよ。
ドラミ:子ども同士も見ていると面白いんです。キッズランドで大きなお兄ちゃんが小さな子を助けてあげたりしているんですけど、助けてもらったとき、見たことのないような笑顔を見せたりするんです。すごくいいなって思う。
──親が介在しない子どもの世界で、自立していくことや子供社会での自分の立ち位置を理解するのも、親には与えられない貴重な経験かもしれませんね。
(c)宇宙大使スター
ドラミ:それを音楽フェスで体験できる喜びと驚きですね。フジロックがそんな場所になると本当に思っていなかったので。しまいには自分の母親も巻き込んで「八代亜紀出るからさ、一緒に行こうよ」って(笑)。そしたら「『雨の慕情』最高だったわ」みたいなことになって、ちょっと信じがたいことが自分にも起きている気がします。それは「フジロックがそういう風にしてくれたから」と思っています。
石飛:徐々にお子さんも増えてきている中で、せっかくフジロックが好きな親御さんたちが子どもを連れてくるなら、そこがショッピングセンターと一緒じゃ意味ないし失礼になる。結果的には“フジロックらしい“という言葉を使わざるを得ないですけど、「そういう場所と環境をどう作るか?」みたいな目線でずっと捉えてきた。人が子どもが動物的な感覚を取り戻して育つためのルーツ感のある場をいかに提供するかだと思います。
──それこそがフジロック。
◆インタビュー(4)へ
■親が楽しんでいる姿を見るのが、子どもの幸せ
──肩に力が入っている?
ドラミ:もうガッチガチな感じで。私もまだそうなんです。だけど、そんなにガチガチにならなくてもって思います。3日間だけ突然現れる異空間があって、毎年そこに行けば自分の中の開放スイッチが入って新しいことに驚いたりとか、なかなか揺さぶられなくなった感情が揺さぶられたりとか、まだ新しい発見があり得るようなすごく大事で神聖な場所なんですけど、子どもを連れて行くとなるとちょっと違う。でもやっぱり、自分の愛する子どもを自分の好きな場所に連れて行きたいですよね。そこで一緒に過ごしたい。
──お子さんに変化はありましたか?
ドラミ:1歳のときはまだ意思表示ができなかったけれど、去年はわかったみたいで「ここ来たことある」って感じでした。大好きなケロポンズも出るからライブを観に来ている感があるみたいで、グリーンステージでジェイク・シマブクロを観ながらメロイックサイン出してた(笑)。「2歳だけど、こうやって子どもも変わるんだな」って。
──最高だな。
ドラミ:去年はグループ魂にものすごい興味を示してました。グループ魂を観て、2歳の息子と60代の母が拍手してる(笑)。「すごいシュールだな」って思って、ひとりで涙流して笑ってました。
──それもフジロックならではの風景かもしれないですね。
ドラミ:笑えますよね。ものすごい卑猥なこと歌っているのに、何も知らずに拍手してるんですよ(笑)。
(c)宇宙大使スター
──(笑) 今回の記事を読んで「家族で行ってみようかな」と思ってくれた人、どれくらいいるかな。
ドラミ:今になって、「2年前の自分に押してほしかった」って思うツボがあるんです。保育のスペシャリストの柴田愛子さんが「親が楽しんでいる姿を見るのが、子どもの幸せだ」と言い切ってくださったんです。
石飛:柴田先生は毎年遊びに来てくださってます。うちの日高と同世代で骨太なポリシーを持ってらっしゃる方です。
ドラミ:保育界のカリスマの方で、Eテレの『すくすく子育て』っていう番組でもコメンテーターで出ている人なんですけど、だいぶアナーキーというか風雲児というか、45年も子どもの心に寄り添う保育をやられているんです。そういう方が、「フジロックに行ったらあんな自由な空気があって、親が全力で喜んでいる姿ってなかなか都会や普段の生活では見られない。そういう姿を見せることがいいんだよ」って。その言葉にすごく背中を押してもらえたんです。
(c)宇宙大使スター
──「それでいいんだ」って?
ドラミ:むしろ「なんで悪いの?」って思えた。「連れていっちゃいけないわけじゃない。フジロックはいいって言っている。だって無料なんだから“来い”ってことでしょ?」と。あんなにたくさんの人間を一気に見ることもないですし、いい大人がものすごくはしゃいでいるわけで、その中に自分の親も含まれる。「あれ、なんかママ、“おおー!”って言ってるぞ」みたいな。
──「僕の知ってるママじゃないぞー?」って?
ドラミ:人が楽しんだりとか、悲しんだりとか、そういう感情のピークを子どもが見てくれて「そういう世界があるんだな。こういう場所があるんだな」ってことをわかってくれて、子どもが音楽を好きになってくれたら…そして毎年「また来たい」と思って、年を重ね友だちと来たり、結婚してそれこそ3世代で私がおばあちゃんになってから来れるかもしれないっていう夢を抱いちゃいます。グラストンベリーは長く続いているから3世代も定着している。フジロックは22年目ですよね。私は1回目のとき19歳で学生だったので、ちょうど3世代で来れる層ができてきたと思うと、すごく幸せを感じます。自分が19歳の頃には、親とフェスに行けるなんて考えられなかったから。
(c)宇宙大使スター
──親子3代参加に向けて、運営側も様々な創意工夫を重ねてきているんでしょうね。
ドラミ:トイレも2年くらい前から優先トイレができたことで、子どもを連れて待つ大変さが改善していたり。気づかないところでマイナーチェンジがたくさんされているんですよ。
──人知れず運営努力も行われているんですね。
ドラミ:必要としている側には気づいている人もたくさんいるんです。必要としていない人からすれば「なんかシールが一個増えたな」ぐらいにしか思わないけれど、「優先シールがあるから助かる」って言う声も実際たくさん聞きます。かといって難しいのは、「子どもがいるんだから優遇してよ」では絶対ないわけで、大人も子どもも全員公平。だからこそ、そこのさじ加減は親側の意識の問題だとも思うんです。
──「親が喜んでいる姿を見せる」…それに尽きる気もしますね。ストレスフルの現代社会では、喧嘩をしたり、イラついたり怒っちゃったりするシーンが多いでしょう? 笑顔が取り戻せる夢のような場所として行くのもいい。
ドラミ:【こどもフジロック】で子連れファミリーをインタビューしたんですけど、子どもに「どうだった?」と訊いたら「お母さんが変だった」って言ってたんですよ。EGO-WRAPPIN'のときにママが狂い踊っていたらしい(笑)。それを見て「ママ、変だった!」って。お母さんも「変だったって言われちゃいました(笑)」って言って笑っている(笑)。とても素敵だなと思いました。
──親は子どもを中心に考えますから、自分が楽しむのは二の次三の次になりがちですよね。
ドラミ:一番陥るところだと思います。
──そこを乗り越えて一緒に楽しむ、それがフジロックの醍醐味なんですね。
(c)宇宙大使スター
ドラミ:「楽しんでいいんですよ」と伝えていきたいです。あと必要なのは、楽しむためにやはり「不安要素を消していくこと」だけなんです。だから必要な情報を全部発信していきたいんです。現在は、富士祭電子瓦版のコラムとFacebookに集約しています。
──フジロック会場で、夫婦喧嘩だけはしたくないからなあ(笑)。
ドラミ:子どもがいるとどっちかがイライラしたり…そういうお話も実際あるんですよね。
──それだと日常と何ら変わらない。そうならないための準備と情報入手ですね。
ドラミ:おそらくそれって心の余裕の持ち方次第。きっとどこにいても一緒で、フジロックで喧嘩している人は家でも喧嘩していると思う(笑)。ただ自然の中にいると、喧嘩の落とし所もいい方向に動く気がするんですよ。
──山に比べたら、喧嘩の中身が小せぇって(笑)。
ドラミ:「せっかくこんなところに来ているのに、なにをやっているんだ俺たちは」って気づける環境でもあると思うんですよね。
──深呼吸すれば、解決するかも。
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ドラミ:親だけが楽しめばいいかっていうと、もちろんそうじゃなくて、当然子どもが優先ですよね。熱を出したり泣いていたら、観たいステージがあろうとも、それはもう諦めて子どもに向かう。ただ、そればっかりじゃなくて「親も遊んでいい」という加減ですよね。「子ども優先」を言い過ぎると親がどんどんしんどくなっていく。自分が楽しむことと子供を楽しませるものとのバランスは、すごくむずかしいです。
──自然環境に対応していく人間力も鍛えられるだろうし、それがいろんな糧になっていく。その様子を子どもに見せられるのはお金じゃ買えない財産でもありますよ。
ドラミ:子ども同士も見ていると面白いんです。キッズランドで大きなお兄ちゃんが小さな子を助けてあげたりしているんですけど、助けてもらったとき、見たことのないような笑顔を見せたりするんです。すごくいいなって思う。
──親が介在しない子どもの世界で、自立していくことや子供社会での自分の立ち位置を理解するのも、親には与えられない貴重な経験かもしれませんね。
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ドラミ:それを音楽フェスで体験できる喜びと驚きですね。フジロックがそんな場所になると本当に思っていなかったので。しまいには自分の母親も巻き込んで「八代亜紀出るからさ、一緒に行こうよ」って(笑)。そしたら「『雨の慕情』最高だったわ」みたいなことになって、ちょっと信じがたいことが自分にも起きている気がします。それは「フジロックがそういう風にしてくれたから」と思っています。
石飛:徐々にお子さんも増えてきている中で、せっかくフジロックが好きな親御さんたちが子どもを連れてくるなら、そこがショッピングセンターと一緒じゃ意味ないし失礼になる。結果的には“フジロックらしい“という言葉を使わざるを得ないですけど、「そういう場所と環境をどう作るか?」みたいな目線でずっと捉えてきた。人が子どもが動物的な感覚を取り戻して育つためのルーツ感のある場をいかに提供するかだと思います。
──それこそがフジロック。
◆インタビュー(4)へ
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■ みんなが楽しめる場を提供することがフェスティバルの仕事
石飛:あと大事なのは“人”ですよね。見守る環境…というと誤解されるところですが、実は舞台裏の演出者がいっぱい配置されていて、うちのスタッフ「プレーリーダー」はあの森の中で、遊びの発展を見守っていくようなイメージで居るだけで、子どもの遊びを直接誘導したりすることはしないんです。そうすることで、子ども同士の関わりが生まれたり、…自然という不便の中だからこそ、助け合う手を差し伸べてくれた、という現象が子ども同士でも起こるようになっていくわけです。
(c)宇宙大使スター
──そうやって、子どもがイキイキとできる環境を作ってくれているんですね。
ドラミ:この前のフジロックでも、遊具に登れない息子が「登りたい、ママー」って言うわけですよ。「どうしようかな」と思っていたら、小学2年生の子が来て「自分で登れないところは登っちゃだめなんだよ」って真っ当に言うんです。「自分で登れないんだから降りられないでしょ?」って、当たり前のことを教えてくれる。息子は「そっか」と納得して、そこで私は「大きくなったらお兄ちゃんみたいに登れるようになるから頑張ろう」「いっぱい食べて大きくなろう」と言うと、「大きくなる!」と応える。フジロックが終わったあとも「大きくなったら、大きくなったら」って(笑)、大きくなればできるようになるということがわかったようなんですね。私が「危ないんだから登っちゃだめ」と言うのと、子どもの視点で「登れないんだから登っちゃだめ」と言われるのは、全く違うんです。物の言い方や捉え方をすごく反省したし勉強になりました。私にとって一番の衝撃は小学2年生の言葉だったんです。
──あるいは安易に手を差し伸ばしてしまいそう。
ドラミ:そう、登らせるのは簡単なんですよ。プレイパークって「見守る」スタンスなので、親も試されているんです。「危ないから登っちゃだめ」って言うのは簡単だけど、それをぐっとこらえて見守るのは、「うぐぐぅ…」ってこっちが鍛えられる感じ。でもそれができたとき、親も嬉しいんです。
石飛:子どもには子どもの社会があるし、大人には大人の社会があり、そしてそれはどこかで必ず常に連鎖しているわけです。そういう連鎖が、また新しい化学反応を起こすような場にしたい。普段できない不便な体験をしたり自然の中にいることで、いろんな視線も変わると思うんですね。これもフジロック・マジックなのかもしれない。それもひっくるめて子どもを取り巻く3世代環境を作っていきたいなと思うんです。
(c)宇宙大使スター
──昭和の日本の原風景がある気がする。
ドラミ:そうですね。鼻垂らしながら走ってる的な。
石飛:保育の世界では、子どもの群れが大事といわれています。それは学年別というような横の軸じゃなくて、縦横無尽な群れ。現代は“孤”の時代ですから、子育ては“孤育て”、子どもも“孤ども”になりがち。だからせめてこういう場で、大自然の中で共通の音楽で感じられるバイブスみたいなことを、子どもたち同士もキッズランドで感じてほしい。できれば仲良くなってほしい。普段できない体験を通じて、みんながありのままに気づくわけでしょ? それはもう親も子もみんな共通ですよ。
ドラミ:花火や、虫とか川とかも初めて見たと思います。
石飛:新しい発見も、さっき話してたような突発的な事件も含めて、「起こるまで待ってみたら?」ってね。
ドラミ:それで見えてきたものもたくさんあって、すごく変わりました。私は育児に対して気が楽になったんです。見守る勇気によって、子どもはいろんなチャレンジと出会うことができる。子どもの無意識な行動を見守るのは時に心臓が潰れそうになるけど。
石飛:子ども用のリストバンドも作っていますから、ぜひフジロックで会いましょう。
ドラミ:ああいうの、子どもが喜ぶんですよね。
(c)宇宙大使スター
石飛:何に喜ぶって「自分も参加者になったんだ」っていう主体的な思いを証拠として持てるからです。自分も主人公になるツールなんですね。子どもも大人も平等だし、大人が感じているフジロックの魅力も千差万別だと思うんですけど、子どもも子どもなりにフジロックの魅力を感じてまた行きたくなってほしい。みんなが楽しめる場を提供することがフェスティバルの仕事なのかなって思います。「不便を楽しめ」というのも同じで、不便からなにか見つけて来るから、子どもたちも普段とは違う遊びになる。親子でフジロックを楽しんでほしいなと思っています。
取材・文:BARKS編集長 烏丸哲也
◆ ◆ ◆
<FUJI ROCK FESTIVAL'18>開催概要
2018年7月27日(金)28日(土)29日(日) 新潟県 湯沢町 苗場スキー場
総合問い合わせ/オフィシャルサイト:http://www.fujirockfestival.com
※入場券は販売時期によって料金が変わります。
※中学生以下は保護者同伴に限り入場無料となります。
※チケット料金、販売スケジュールにつきましてはオフィシャルサイトをご覧ください。
※出演者・出演日・出演順に変更が出る場合もあります。
■ みんなが楽しめる場を提供することがフェスティバルの仕事
石飛:あと大事なのは“人”ですよね。見守る環境…というと誤解されるところですが、実は舞台裏の演出者がいっぱい配置されていて、うちのスタッフ「プレーリーダー」はあの森の中で、遊びの発展を見守っていくようなイメージで居るだけで、子どもの遊びを直接誘導したりすることはしないんです。そうすることで、子ども同士の関わりが生まれたり、…自然という不便の中だからこそ、助け合う手を差し伸べてくれた、という現象が子ども同士でも起こるようになっていくわけです。
(c)宇宙大使スター
──そうやって、子どもがイキイキとできる環境を作ってくれているんですね。
ドラミ:この前のフジロックでも、遊具に登れない息子が「登りたい、ママー」って言うわけですよ。「どうしようかな」と思っていたら、小学2年生の子が来て「自分で登れないところは登っちゃだめなんだよ」って真っ当に言うんです。「自分で登れないんだから降りられないでしょ?」って、当たり前のことを教えてくれる。息子は「そっか」と納得して、そこで私は「大きくなったらお兄ちゃんみたいに登れるようになるから頑張ろう」「いっぱい食べて大きくなろう」と言うと、「大きくなる!」と応える。フジロックが終わったあとも「大きくなったら、大きくなったら」って(笑)、大きくなればできるようになるということがわかったようなんですね。私が「危ないんだから登っちゃだめ」と言うのと、子どもの視点で「登れないんだから登っちゃだめ」と言われるのは、全く違うんです。物の言い方や捉え方をすごく反省したし勉強になりました。私にとって一番の衝撃は小学2年生の言葉だったんです。
──あるいは安易に手を差し伸ばしてしまいそう。
ドラミ:そう、登らせるのは簡単なんですよ。プレイパークって「見守る」スタンスなので、親も試されているんです。「危ないから登っちゃだめ」って言うのは簡単だけど、それをぐっとこらえて見守るのは、「うぐぐぅ…」ってこっちが鍛えられる感じ。でもそれができたとき、親も嬉しいんです。
石飛:子どもには子どもの社会があるし、大人には大人の社会があり、そしてそれはどこかで必ず常に連鎖しているわけです。そういう連鎖が、また新しい化学反応を起こすような場にしたい。普段できない不便な体験をしたり自然の中にいることで、いろんな視線も変わると思うんですね。これもフジロック・マジックなのかもしれない。それもひっくるめて子どもを取り巻く3世代環境を作っていきたいなと思うんです。
(c)宇宙大使スター
──昭和の日本の原風景がある気がする。
ドラミ:そうですね。鼻垂らしながら走ってる的な。
石飛:保育の世界では、子どもの群れが大事といわれています。それは学年別というような横の軸じゃなくて、縦横無尽な群れ。現代は“孤”の時代ですから、子育ては“孤育て”、子どもも“孤ども”になりがち。だからせめてこういう場で、大自然の中で共通の音楽で感じられるバイブスみたいなことを、子どもたち同士もキッズランドで感じてほしい。できれば仲良くなってほしい。普段できない体験を通じて、みんながありのままに気づくわけでしょ? それはもう親も子もみんな共通ですよ。
ドラミ:花火や、虫とか川とかも初めて見たと思います。
石飛:新しい発見も、さっき話してたような突発的な事件も含めて、「起こるまで待ってみたら?」ってね。
ドラミ:それで見えてきたものもたくさんあって、すごく変わりました。私は育児に対して気が楽になったんです。見守る勇気によって、子どもはいろんなチャレンジと出会うことができる。子どもの無意識な行動を見守るのは時に心臓が潰れそうになるけど。
石飛:子ども用のリストバンドも作っていますから、ぜひフジロックで会いましょう。
ドラミ:ああいうの、子どもが喜ぶんですよね。
(c)宇宙大使スター
石飛:何に喜ぶって「自分も参加者になったんだ」っていう主体的な思いを証拠として持てるからです。自分も主人公になるツールなんですね。子どもも大人も平等だし、大人が感じているフジロックの魅力も千差万別だと思うんですけど、子どもも子どもなりにフジロックの魅力を感じてまた行きたくなってほしい。みんなが楽しめる場を提供することがフェスティバルの仕事なのかなって思います。「不便を楽しめ」というのも同じで、不便からなにか見つけて来るから、子どもたちも普段とは違う遊びになる。親子でフジロックを楽しんでほしいなと思っています。
取材・文:BARKS編集長 烏丸哲也
◆ ◆ ◆
<FUJI ROCK FESTIVAL'18>開催概要
2018年7月27日(金)28日(土)29日(日) 新潟県 湯沢町 苗場スキー場
総合問い合わせ/オフィシャルサイト:http://www.fujirockfestival.com
※入場券は販売時期によって料金が変わります。
※中学生以下は保護者同伴に限り入場無料となります。
※チケット料金、販売スケジュールにつきましてはオフィシャルサイトをご覧ください。
※出演者・出演日・出演順に変更が出る場合もあります。
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