KANA-BOON、「あの頃の自分たちが聞
いたら腰を抜かすぐらい感慨深い」憧
れ続けるアジカンとの対バン

東名阪対バンツアー「Let's go TAI-BAAN!!」・東京公演 2018.5.30 Zepp Tokyo
5周年のメモリアル企画が続くKANA-BOONが、東名阪対バンツアー「Let's go TAI-BAAN!!」の初日をZepp Tokyoで開催。ASIAN KUNG-FU GENERATIONとの念願のツーマンライブを行った。今回の東名阪ツアーでは、各地でリスペクトを寄せる先輩バンドを迎えたメモリアルなライブを予定しているKANA-BOONだが、特にアジカンとの共演には大きな意味がある。
KANA-BOON 撮影=山川哲
アンコールで谷口鮪(Vo/Gt)が語った言葉がその意味を表していた。「中学でアジカンに出会って、高校の軽音部ではアジカンのコピーばっかりしてて、作る曲がアジカンみたいだった。鳴かず飛ばずのライブハウス時代もアジカンを聴いて、アジカンのライブのオープニングアクトができるっていうキューンのオーディションで優勝して、なんとアジカンの後輩になり。NANO-MUGENにも呼んでくれて、こないだは札幌でアジカンメインのツーマンライブにも出させてもらって。で、今日は俺らが誘って、オッケーしてくれました。本当に今日は、あの頃の自分たちが聞いたら腰を抜かすぐらいの感慨深い1日です」。
ひとつの偉大なバンドの存在が、次の世代の新しいバンドを生み、その若いバンドの5周年を祝うために大勢のお客さんが集まった会場で2組が共演する。その物語を知ればこそ、この日は、いろいろな想いが胸に込み上げてくる特別な共演だった。
ASIAN KUNG-FU GENERATION 撮影=山川哲矢
ASIAN KUNG-FU GENERATION 撮影=山川哲矢
大きく数字の「5」をデザインしたKANA-BOONのアニバーサリーなフラッグが掲げられたステージ。先攻で登場したアジカンは、「サイレン」からスタートした。一音一音に深みのある重心の低いバンドサウンドにのせて、強い意志を宿した後藤正文(Vo/Gt)の歌声がくっきりと会場に響き渡った。喜多建介(Gt)と伊地知潔(Dr)が向き合いながらイントロを奏でた「Re:Re:」、混沌とした間奏を長めのセッションで聴かせた「リライト」。バンドの代表曲が惜しげもなく披露されると、会場からは待ってましたとばかりの喝采が起こる。KANA-BOONがホストとなる対バンだけに、この日の会場は20~30代ぐらいの若いお客さんが多かったと思う。その多くは2010年代以降に結成されたような新しい世代のバンドをリアルタイムとして体感する世代だが、そんな若い世代のバンドに絶大な影響を与えているのがアジカンだ。KANA-BOONだけでなく、多くの若いバンドマンのバイブルのような存在でありながら、アジカンは決して老成せず、衝動に満ちた音を鳴らしていた。
ASIAN KUNG-FU GENERATION 撮影=山川哲矢
ASIAN KUNG-FU GENERATION 撮影=山川哲矢
MCでは6年前にキューンのオーディションで優勝したKANA-BOONがアジカンのオープニングアクトに出演したことに触れて、「すっかり立場が逆転しまして。今日は僕らがオープニングアクトです」と、ゴッチ。「ちょっと気になることがあるんだけど、鮪くんって眼鏡かけてた? 今日ずっと楽屋でかけてるから、俺のコスプレをしてるのかと思って(笑)」と気さくなトークで笑い誘うと、伊地知と山田貴洋(Ba)が繰り出す大らかなグルーヴにのせて、生命の儚さに想いを馳せるような「生者のマーチ」は素晴らしかった。今年リリースされたばかりの『BEST HIT AKG 2 (2012-2018)』に収録された新曲だ。そして、目の前の景色を一瞬にして青春色に染める2004年の名曲「エントランス」へ。長い歴史を持つアジカンの初期曲と、最新の曲とが美しく地続きになるステージは、おそらく袖で見守っているであろうKANA-BOONにとっても感慨深いものがあったのだろう。その後のステージで谷口は「エントランス」で「爆泣きした」と明かしていた。最後の一音まで、聴き手の心を揺さぶり続けたアジカンのライブは「今を生きて」で終了。「良いね、音楽は。こうやって世代を超えてさ」と、穏やかに喜びを語るゴッチの言葉が印象的だった。
ASIAN KUNG-FU GENERATION 撮影=山川哲矢
ASIAN KUNG-FU GENERATION 撮影=山川哲矢
ASIAN KUNG-FU GENERATION 撮影=山川哲矢
「いくぞー!」という谷口の力強い掛け声と共に「シルエット」を投げかけたKANA-BOONは、いつも以上に気合いの入ったパフォーマンスだった。飯田祐馬(Ba)と小泉貴裕(Dr)の息の合ったリズム隊が繰り出す疾走感あふれるビートと、デビュー当時からバンドの大きな持ち味だった古賀隼斗(Gt)の華やかなギターリフ、そこに鮪のハイトーンボーカルが訴求力の強いメロディを紡いでゆく。デビュー以降、急激にスターダムへと駆け上がったバンドの勢いに振り落とされまいと、5年間、必死に磨き上げてきた彼らのバンドサウンドは、今やアリーナ級の会場でも十分に届く強靭で逞しいものへと進化していたが、やはりアジカンを見た直後には、「若いな」と感じる。否が応にもアジカンを意識するがゆえの必死さとエモーショナルが、この日のKANA-BOONのライブを特別なものへと変えていた。「ディストラクションビートミュージック」や「Fighter」など、彼らの楽曲の中でもとりわけエッジの効いたロックナンバーで会場の熱気をぐんぐんと高めていく。
KANA-BOON 撮影=山川哲矢
KANA-BOON 撮影=山川哲矢
MCでは、アジカンとのツーマンについて「長年の夢が叶いました!」と、最高の笑顔で込み上げる喜びを伝えた谷口。「ひとつ言っておきたいことがある」と前置きをすると、アジカン・ゴッチのコスプレ疑惑に触れて、「あれはコスプレじゃないですから」と笑いながら訂正。会場から「ゴッチー!」と上がる声に、「ゴッチじゃない(笑)」と楽しそうに返していた。4人が個性を活かしたスリリングなバンドアンサンブルを聴かせたのは、最新ミニアルバムの表題曲「アスター」。「ゴッチが褒めてくれた曲をやります」と紹介したのは「Wake up」。ファルセットを交えた瑞々しいメロディにのせて“生まれ変わるのさ”という熱い想いを力強く歌い上げた。二度目のMCも話題はアジカン。「高校時代から、ずっとアジカンが好きだけど、やっぱり初期のアジカンを好きって言いがち。思い出がたくさん詰まってるから。でも、最近のアジカンがかっこいいなって思う」。鮪の心からの言葉に、アジカンファンと思われるお客さんを中心に温かい拍手が起こる。そのリアクションに少し驚いたような表情を見せた谷口は、「やっぱり最新がかっこいいバンドが、一番かっこいい」と続けた。そんなアジカンのバンドとしての在り方を受け継ぐように、この日のKANA-BOONは最新ミニアルバムから楽曲も数多く披露したが、どの曲も最近の彼らしいセンチメンタルと青春感を湛えながら、バンドの現在地を大きく更新する曲ばかりだった。
KANA-BOON 撮影=山川哲矢
KANA-BOON 撮影=山川哲矢
KANA-BOON 撮影=山川哲矢
「やっぱねえ……アジカンは強いよ。勝てるのは若さしかないから(笑)」。クライマックスに向け、残りのエネルギーを全て注ぎこむように、がむしゃらに全力疾走するアップテンポなナンバーを畳みかけて、ライブは終了。アンコールでは、ゴッチを迎えたコラボで「君という花」を披露した。KANA-BOONが高校時代に一番カバーしたという曲だ。伊地知のドラムを小泉が、山田のベースを飯田が、喜多のギターを古賀が、それぞれリスペクトを込めて演奏するなか、谷口と後藤はしっかりと目を合わせながら歌う。その光景は、過去から未来へと想いを受け継いでゆくロックバンドの夢そのものだった。
KANA-BOON 撮影=山川哲矢KANA-BOON / ASIAN KUNG-FU GENERATION・後藤正文 撮影=山川哲矢
KANA-BOON / ASIAN KUNG-FU GENERATION・後藤正文 撮影=山川哲矢
なお、KANA-BOONは、6月7日に Zepp NagoyaでORANGE RANGEを 、6月8日にZepp Osaka Baysideでフジファブリックを迎えた対バンライブを行う。さらに5周年を祝うメモリアルな企画もまだまだ続く予定だ。濃密な5年間の日々には葛藤も多かったKANA-BOONだが、今最も音楽を楽しめているというようなバンドの雰囲気もとても良い。

取材・文=秦理絵 撮影=山川哲矢
KANA-BOON 撮影=山川哲矢

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