Jが語るLUNA SEAの現在と未来、『LU
V』ツアーファイナル日本武道館、そ
して『LUNATIC FEST.2018』へ

6月23、24日に千葉・幕張メッセで開催する主催フェス『LUNATIC FEST.2018』(通称ルナフェス)まで残り1ヵ月をきったLUNA SEA。今回もまた、ここでしかありえないようなラインナップを揃え、ルナフェスに向けての期待感が高まるなか、メンバーを代表してJ(Ba)がSPICEに登場。最新アルバム『LUV』について、さらにそれを掲げて開催した全国ツアー、そして気なるルナフェスの内容について、たっぷり訊いた。
“LUNA SEAってこうだよね”というところにはいつだって戻れるんだから、その先にある世界を作りたい。自然な欲求だよね。バンドという生き物の。
――まずはLUNA SEAの最新アルバム『LUV』がJさんにとってどんな作品だったのかというところから聞かせて下さい。
まずアルバムを作り始めた頃まで時間を戻すと、前作『A WILL』の制作過程とかあのツアー、全部をひっくるめた上で、自分たち自身が守り続けてきたものや、確かめようとしたものの答え、うまく言葉にはならないんだけど……バンドの皮膚感覚で“俺たちってやっぱりこうだよね”っていうものが確実につかめ、そしてなにか一つ終えた気がしたんだ。それを経て、俺たちの新しい旅が始まった感じがする。実際『GOD BLESS YOU~One Night Dejavu~』(2007年12月24日、東京ドームで一夜限りの復活と称して開催)からずっと自分たちが作り上げてきたものや、守り続けてきたものを、自分たち自身で確かめる作業をものすごくしていたような気がしていて。
――えっ! そんな昔から?
うん。長い長い時間をかけて、やっとそういう一つの儀式が終わったんだと思うんだよ。
――だからその間に、バンドの原点を確認するかのようにセルフカバーアルバム『LUNA SEA』を作ったり、LUNA SEAってこうだよねというのをイメージして『A WILL』を作る必要があったんですね。
うん、そうだと思う。自分たちが前に進むためにはとても重要なことだったんだ。それを経て、バンドが“さあ、次は新しい場所へ進む時間だ”というモードになったんだと思う。それも、みんなで話し合ってという感じではなくて、ちょっとしたムードや雰囲気、会話の端々で自然と。だから、5人の呼吸感がそれまでとは違ってたというのはあったよね、今回は。
――そういう5人の呼吸感のなかで制作した『LUV』。Jさん自身、新しい場所へ進めたという実感は?
まず今回は曲を作っていく段階から、とりあえずフリーに、白いキャンバスに描いていったんだ。それによって“いま”の自分たちがどこに向かっているのかを見たかった。当然それは、俺たちがいままで見たことがない景色、感じたことがないものではあるから楽しい部分もあると同時に“おいおい、これどこ行くんだ?”っていうのも当然生まれてくるんだ。でもその不安は当たり前だよね? 自分たちがまだ行ったことがない場所に行こうとしてる訳だから。そういう“冒険心”はいままで以上にあった。純粋にそれを欲してたバンドがいたからね。もう、LUNA SEAってこうだよねというところにはいつだって戻れるんだから、その先にある世界を作りたい。それは自然な欲求だよね。“バンド”という生き物の。
――LUNA SEAとして新しいものを作ろうとコンセプトを掲げた訳ではなく、再始動からのプロセスを経て、よしこれで準備は整ったから先へ進もうというBANDの意思が、自然と5人を新しい世界へと導いていったと。
うん。コンセプトを掲げて、そこに合わせてパーツを構築していくやり方もあるんだろうけど、今回はそうではなかった。縛りのないところにぶちまけて、生まれ出る無垢な姿を自分たちで知る。まだ誰も見たことがない自分たちのストーリーというものをものすごく欲していた。それを作っていくことの勇気を、それまでの時間で得たんだろうね。
――新しいところに飛び出すためには、LUNA SEAでも“勇気”が必要なんですか?
と、思うよ。だって何ができるか分かんない状態で作っていくんだから。結果、失敗はしてはいけないけど、それでも(新しい景色に)たどり着かない可能性だってある訳だから。
――ああー。そうですよね。
だからもちろん慎重にもなる。けど、怖れていたら絶対に新しい景色にはたどりつけないから。そういった思いのなかで、みんながいちミュージシャン、いち表現者として向かったアルバムなんだよね。『LUV』は。全然難しいことはしてないんだ。けど、それでも俺たちにしかできない音が詰まってる。それが、今の俺たちなんだと思うな。
――新しい、見たことがない景色に向かってアルバムを作っていく過程はどんな気分でしたか?
五里霧中だよ(笑)。それに冒険に冒険が続く感じ。これはいったいどこにたどり着こうとしてるんだろう? というときも実際あったし。おいおいこれどうすんだ? みたいな制作過程もあった。そういうのを経て、出来上がったアルバム。
LUNA SEA/J 撮影=田辺佳子
ダークなのは表現したい何かがあったからであって、別にその世界に浸りたくて近づいていった訳じゃない、LUNA SEAは。あくまでも結果なの。
――そうして完成した『LUV』は、ポップで明るいタッチの曲が多くて、聴き終えたあとにポジティビティー溢れ、光に包まれた未来が広がる。そんな新しい景色が感じられる作品になったなという印象を受けました。
それもすごい自然な流れで。俺は、自分たちが作ってきた『EDEN』(1993年発売)とか。あれを作った頃の感覚にすごい近いなと思ってた。
――あのアルバムもLUNA SEAのヒストリーのなかではダークなトーンは控えめで、メロディアスでポップな印象が強い作品でしたもんね。
ダークでいる必要がないでしょ? いまは。
――おぉー。いますごい名言がでましたよ。
だっていまのダークな感じって嘘くさいんだもん。そんなに苦しい? そんなに悲しい? みたいなバンドが多すぎると思わない?
――おぉーぶっちゃけますね(微笑)。
だって、楽屋に戻ったら笑ってるんだから(笑)。結局、ダークネス自体が最近はエンタテインメントになってるんだと思う。
――ああー。中二病的な闇系のダークな世界観にハマったり浸るという行為をみんなで楽しんでる感じですもんね。
ダークなのは表現したい何かがあったからであって、別にその世界に浸りたくて近づいていった訳じゃないんだよ、LUNA SEAっていうのは。あくまでも結果なの。だから、当然次のアルバムがどうなるかは分からないけれど、わざわざ不気味な音階を使うことはないし。
――ふはははっ(笑)。
もちろん、わざわざポップな音階を使うこともなくて。自分たちの心のなかに自然と鳴り響くものをやるだけなんだよ。
――なるほど。
あと、『LUV』が“明るいアルバム”といわれることも、俺はすごい違和感があるんだ。
――そうなんですか?
“明るいな”と思って作ってないから。本当に、そういうのが前にきてないんだよ。
――明るいとかポップということを狙って作った訳ではないってことですよね?
うん、自然だから。例えば「Hold You Down」と「闇火」が一緒に入ってるんだよ。ウチのバンドは。でもそれがいまのLUNA SEAだから。だけど、“明るいね”とか“ポップだね”という周りのリアクションを聞くと、まだ誰も見たことがない景色が作れたのかなという気がするよね。そのリアクションは、ポジティブな意見だけではないだろうから。いろんな意味が含まれてる訳でしょ?
――まあ、そうでしょうね。
だって、俺たちが今回目指した場所は、まだ誰も見たことがない場所だった訳だから。そういう思いで曲も書いて、アルバムを作っていた訳だから。僕たちが作ってる最中に“いったいこれはどこに向かうんだろう?”ともう何カ月も前に味わったことを、アルバムを聴いた人たちが感じることもあるだろうし。それは当然なんだよね。来たことがない道なんだもん。見たことがない世界なんだもん。でも、それが表現であり、新しい世界を作っていくってことなんじゃないのかなと俺は思う。だから、このアルバムを何度も何度も聴いてもらった後に見える世界。それがまさに、いま俺たちが立ってるその世界なんだよ。
―― “一度は死んだバンド”とJさんはよく表現されるけど。そんなLUNA SEAが復活して、そこからバンドが息を吹き返し、さらに新しい世界を欲するって、すごいバンド力だと思うんですよ。
そうだよね。あと、もっというとウチはみんな欲張り。いつまで経っても満たされない症候群で。
――それが、LUNA SEAというバンドの機動力になってるんですかね。
だと思う。俺たちがライブハウスでライブを始めた頃からいろんな時代を経てきたけど、いつだってそれは変わらない。
LUNA SEA/J 撮影=田辺佳子
――分かりました。次はこの『LUV』を提げて行なった約3年ぶりの全国ホールツアー『LUNA SEA LUV TOUR 2018』についてです。あとファイナルの日本武道館公演を残すのみとなりましたが。ここまで終えて、手応えはいかがですか?
今回のアルバムを掲げたツアーなんだけど、新しい曲をメニューに入れてもまったく違和感がなくてね。昔からプレイしているような感覚でやれているのが本当に不思議。これまでずっとやってるような感じがして。バンドと観に来てくれてるみんなとの呼吸感が、いままでで一番自然に存在してる感じがするな。
――そこは、ステージと客席が近いというホールならではの距離感も影響していそうですね。
今回のツアーは、みんなの側に行きたいよねという話になって、ホールツアーにしたんだ。
――セットリストは、1カ所2days開催に合わせて2パターン用意していたんですか?
そうだね。セットリストも、アルバムを出せば新曲をプレイすることを当然求められると思うし。それだけではなくて、いままでの自分たちも求められる部分もあるから。限られた時間のなかでどういう風にいまの自分たちを表現していくかというところで、セットリストはいつもものすごい時間をかけて考える。
――ホールを攻めるとき、Jさんがステージ上で心がけていることというと?
ホールだからというじゃなく、どんな会場でも“ライブ”というものに置き換えると、お互いが気持ちよくなる空間。そういうものであるべきだと俺は思うから。自分たちだけではなくて、そのときの会場の雰囲気やムード、テンションを自分たちのグルーヴに巻き込んでいく。そこが一番、最重要事項かな。そうしないとライブは面白くならないから。
――あと、Jさんといえば「ROSIER」のマイクスタンド投げのパフォーマンスがあるじゃないですか? あれはリハのときに各会場ごとの距離感をつかんで、毎回本番に挑む感じなんでしょうか。
リハなんかやったことないよ(笑)。だから俺、さいたまスーパーアリーナのときに後ろのLEDぶっ壊しちゃったんだよ。あんとき、パキーンって音がしたもんね(笑)。あれでみんな“アイツはガチで投げてんだ”って分かったんじゃない? そこからライブ中、映像がつかないんだから(笑)。
――なるほど。では、ツアーファイナルとなる日本武道館。どんな景色を見れたら最高ですか?
今回のツアーは、本当にものすごい熱を帯びたツアーになっていて。今回のツアーがバンドに与えてくれた力っていうのは、次に向けてのエネルギーにも変わっていく、ものすごいものだったと思うんだ。なので、武道館はツアーで得た熱、それをバンドとして最大限出して、みんなと一緒に盛り上がる武道館にしたいね。武道館はいままでもすごく達成感を何度も感じてきた場所なので、今回はいままで以上に感じたことがないぐらいの熱を会場に来てくれたみんなと作っていけたらいいなと思ってる。
LUNA SEA/J
自分たちがシンパシーを感じるバンドと“一緒にライブをやりたい”と純粋に思って、声を掛けさせてもらった。他にはないキャスティングだと思う。
――武道館の約1カ月後となる6月23日、24日にはいよいよ主催のフェス『LUNATIC FEST.2018』も開幕します。今回、再びフェスをやろうと思った一番の要因はなんだったんでしょうか。
2015年に初めてやったときは、自分たちなりの音楽に対する姿勢みたいなものを、あのルナフェスを通して観てもらえたと思うんだ。素晴らしい方々と共演することで、フェスとしてのグルーヴ感が生まれたこと、それはそれはものすごかったし。ヤバイぐらいの2日間になった。それをまた蘇らせようという思いを、実は前々からあたためていてね。それが2018年、ついに開催になったってこと。
――前回のルナフェスとの違いは?
前回同様、LUNA SEAだからこそやれるフェスにしないとダメだよねと俺は思っていて。いままで自分たちが進んできた道、やってきた音楽、スタンスも含めて、すべてが俺たちらしいものでなければやる意味はないというのがあったんだ。だから前回は特に、自分たちがここに来るまでの歴史のなかにいるバンド、アーティストのみなさんにまず声をかけさせてもらって。そういう方々がぎゅうぎゅうに詰め込まれたフェスだった。LUNA SEAとは何なんだというのを説明するためにも、そうでなければいけなかったと思うんだよ。
――それでXJAPANを始め、LUNA SEAに関わりのある方々が出られていたんですね。
俺たちが観てきた音楽、聴いてきたバンド。さらには僕たちのことを観て、聴いてくれていたバンド。そういう方々を一つのフェスにつめこんだのが前回だったと思うんだけど。今回も当然その流れを汲みつつ、自分たちがシンパシーを感じるバンドと“一緒にライブをやりたい”と純粋に思って、声を掛けさせてもらった。当然、カッコいい音楽をやってきたすごいアーティストがこれだけ集まるというのは、他にはないキャスティングだと思うし。LUNA SEAにしかできないフェスになってると思うんだよね。これだけとんでもないバンドが一堂に集うフェスなんて、本当にないから。
――LUNA SEAとback numberを一緒に観られるフェスなんて、ここしかないですもんね。
そう?(笑) back numberのベースの小島(和也)君は、元々LUNA SEAを聴いて楽器を始めたみたいなんだよね。
――その他にも大黒摩季さんからAA=BRAHMANが同じ日に並ぶところもルナフェスじゃないと組めないラインナップという気がします。
まさに狂ってるよね(笑)。
――Jさんと濃い繋がりがあるlynch.女王蜂の名前もありますしね。
lynch.は1曲だけ(「TRIGGER feat.J」で)ベースも弾いてるし。女王蜂とは(『氣志團万博』でスペシャルバンド)“J王蜂”もやったし。The BONEZも一緒にライブやってるし。
――そして、今回も朝からLUNACYとしてオープニングを飾るんですよね。
主催フェスなので、前回も思ったんだけど、自分たちがまずみんなを迎えるという意味も込めてやりたいよねというのはあった。
――そして、2日間トリを飾るLUNA SEAのステージは両日違うものに?
うん。違うだろうね。
――前回のように、他のバンドのライブを観ていたら突然Jさん乱入、というサプライズも?
あるかもね(笑)。
――back numberのステージにJさんが加わって、この日限りのコラボステージとか観られたら最高ですね。
ははははっ(笑)。それ面白い?
――いや、絶対面白いですって。
あ、そう(笑顔)。まあ、そういうのも迷惑がかからない程度に(笑)、みんなと一緒に楽しいことがやれたらと。お祭りだし。
――では、最後にルナフェスに向けて、Jさんから一言お願いします。
また、あの熱が蘇ります。ルナフェス2回目。前回以上にとんでもないフェスになりそうです。みんなも気合を入れて、楽しみに来て下さい。こんなキャスティング、ここでしかあり得ないですからね。ぜひ、この歴史的瞬間を目に焼き付けに会場に遊びに来て欲しいですね。
取材・文=東條祥恵

LUNA SEA/J

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