竹中直人と生瀬勝久の終わりなき口論
の先にあるものとは…!? 舞台『火星
の二人』稽古場レポート

竹中直人と生瀬勝久による演劇ユニット「竹生企画」が、三たび帰ってくる! 倉持裕を劇作・演出に招き、ヒロインには竹中・生瀬の二人がぜひ舞台で共演してみたい旬の女優を迎えるという「竹生企画」の公演『火星の二人』が、2018年4月10日(火)、東京・シアタークリエを皮切りに全国16都市にて上演される。
今回、ヒロインに迎えたのは女優・歌手として活躍著しい上白石萌音。そして池岡亮介、前野朋哉、高橋ひとみという個性豊かな役者たちが揃い、新たな「竹生ワールド」を作り上げていく。この舞台の稽古場の模様をレポートする。
『火星の二人』稽古風景
【あらすじ】
大事故から奇跡的に生き延びた男・朝尾(竹中)は事故の後、生きる気力を無くし別人の様になっていた。そして彼の息子正哉(池岡)も人が変わったようになり、その恋人さやか(上白石)は悩んでいた。そこに、やはり同じ事故から生還した男・志波(生瀬)が訪ねて来る。 生死の境が曖昧になってしまった男と、同じ経験からむしろ活力をみなぎらせている男の、恐るべき因縁とは。また、そんな二人の果てしなき口論から垣間見えるものとはいったい――。

『火星の二人』稽古風景
稽古場には竹中演じる朝尾の自宅と思しきセットが組まれており、そこに竹中、高橋、池岡、上白石、そして生瀬が三々五々集まり、思い思いの方法でストレッチや発声、気になるセリフを何度も口にしていた。とはいえ、皆一応にリラックスしており、生瀬が「今日はカメラが入っているから、ちゃんとやらないとね!」とわざと口にしては、皆で笑い合っていた。
ほどなく、演出卓に座る倉持の合図ですうっと芝居に入る一同。さきほどまでの空気とはまるで違う状態を一瞬で作り上げていた。
朝尾に大事故のことを取材するそぶりの志波。精神不安定な夫を心配しながら話に耳を傾ける妻のもとみ(高橋)と息子まさや、そして何故かこの場に同席しているまさやの元カノ・さやか。自らの正体を明らかにするまでの志波と朝尾たちの言葉のやりとりは、真剣そうに見えて、ところどころクスッと笑いたくなる。
『火星の二人』稽古風景
『火星の二人』稽古風景
『火星の二人』稽古風景
志波を演じる生瀬は、演出家としての顔を持つこともあり、「ここはこんな風に見せたいからこう動いて…」と時々自分に演出を付けるように口に出して、それを再現していた。
『火星の二人』稽古風景
『火星の二人』稽古風景
一方、竹中は、口数少なく自身の役どころに集中しているかのように見えたが、時々、倉持からの演出を受けた上白石が、考えこみながら少しずつ具現化しようとしているのを見て「このくらい思い切ってやっちゃっていいんだよ」と暗に伝えるように、半ばふざけながら上白石のセリフを大げさに表現しては場を和ませていた。
『火星の二人』稽古風景
『火星の二人』稽古風景
そんな竹中を見て、倉持も「思い切ってやってみよう。やり過ぎたところを削っていけばいいから」と上白石にアドバイス。すると、二人の言葉でほぐれたのか、たちまちぐんと動きが良くなる上白石だった。
『火星の二人』稽古風景
高橋演じる朝尾の妻・もとみはあるシーンで突然何かのスイッチが入ったかのように叫びだし、息子を翻弄する。朝尾によって部屋から無理やり追い出される際に、高橋の口から出たアドリブがあまりに主婦としてリアルで、思わず倉持らが吹き出していたのが印象的だった。
『火星の二人』稽古風景
『火星の二人』稽古風景
正哉役を演じる池岡は、大事故の後、父親とはやや異なる角度で人が変わってしまった、と指摘される演技を自然体で演じていた。おそらくこの場面ではないどこかで真実が語られるのだろう。
『火星の二人』稽古風景
『火星の二人』稽古風景
稽古の後半では、楠見役の前野が登場。どこか高圧的に正哉に話しかける楠見と、それに逆らわず受け入れている正哉、そして思ったことをそのまま口に出し、逆に楠見をビビらせるさやか。そこに志波が現れて…という場面が披露される。稽古前に「この場面からはまだセリフが入ってないんだよー」とこれまた生瀬が台本を手にアピール(笑)。その言葉に一同吹き出し、そして稽古を続けていた。
『火星の二人』稽古風景(右端は劇作・演出の倉持裕)
『火星の二人』稽古風景
『火星の二人』稽古風景
大事故の後、闇を抱えてしまったような朝尾と、活力をみなぎらせている志波、真逆の状態となってしまった二人が想いを言葉にしてぶつけ合う、そこから生まれてくるものが何なのか。そんな二人に周囲の人間がどのように絡んでいくのか。タイトルにある「火星の二人」とは何を示唆するのか。初日の幕が上がるまでのあと一か月でどう仕上げてくるのか、今から楽しみだ。
取材・文・撮影=こむらさき

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