【インタビュー】メモリアム「インス
ピレーションやクリエイティビティが
爆発している」

伝説的なイギリスのデス・メタル・バンドBolt Throwerは、ドラマー急逝により惜しくも2016年に解散してしまったが、その遺志を引き継ぐべく登場したのが、このメモリアムである。
元Bolt Throwerのカール・ウィレッツ(Vo)、アンディ・ホエール(Dr)、そしてBenedictionのスコット・フェアファックス(G)とフランク・ヒーリー(B)という、ふたつのバンドから集結したメモリアムは、Bolt Thrower同様にSacrilegeやAxegrinderといったバンドに代表されるイギリス特有のクロスオーヴァー・サウンドが根底に流れている。そのスタイルは、アメリカなどのデス・メタル・バンドと比較するとやけに暗く湿っており、非常に独特な質感を放つ。このようなヨーロッパ的な感触は多くの日本人の感性にもフィットするものだ。
完成したセカンド・アルバム『ザ・サイレント・ヴィジル』はどのような作品か、ヴォーカリストのカールに話を聞いてみた。
──ニュー・アルバム『ザ・サイレント・ヴィジル』がリリースになりますが、昨年のデビュー作『For the Fallen』と比べてどのような点が変化、進歩していると思いますか?
カール・ウィレッツ:実を言うと、デビュー・アルバムの音質に関しては少々不満があったんだ。あまりにデジタル臭すぎるというか…なので、今回のアルバムではその点に注意をした。もっとナチュラルなコンプレッションがかかるように、もっとオーガニックなサウンドになるようにね。曲に関しては、多少メロディックになった部分もあると思う。だけど個人的にはやっぱり一番の変化は歌詞だよ。Bolt Thrower時代から、戦争について歌うというのがトレードマークになっていたよね。前作でも戦争以外のトピックを扱ったものが何曲かあったけれど、今回の歌詞はもっとずっとバラエティに富んでいる。反人種差別や反ファシズム。将来に対する不安。これらは今の世界情勢を反映してのことだよ。それから次元についての歌詞もある。これは人の死というものに触れて、大きな衝撃を受けて書いたんだ。
──前作から約1年で2ndアルバムの完成ですが、Bolt Throwerが2005年以降10年以上新作を発表しなかったことを考えると、これは物凄いペースですよね。
カール・ウィレッツ:そうなんだよ(笑)。俺ももう50歳を過ぎて、人生というのは短いんだと感じはじめてね(笑)。このバンドは古くからよく知っている人間が集まっているので、インスピレーションやクリエイティビティというものが爆発しているという部分がある。俺としては5年に1枚しかアルバムを出さないというのではなくて、もっとどんどん作品を発表していきたいと思っているんだ。だからBolt Throwerの頃とは違って、あまり深く感が過ぎないようにしているよ。もうすでに次のアルバムのアイデアも湧いてきているんだ。
──曲を作る際に、Bolt Throwerっぽいものに、あるいはBolt Throwerとは違うものにしようという意図は働かせているのでしょうか。
カール・ウィレッツ:俺たちは確かにBolt ThrowerとBenedictionのメンバーで構成されているけれども、決してその2つのバンドが過去にやったことをなぞっているわけではない。だからといってBolt Throwerっぽくならないように故意に変えているわけでもないよ。曲は主にギターのスコット・フェアファックスが書いているんだ。彼は他のメンバーより10歳くらい若くて、多少俺たちとはジェネレーションが違う。彼がドラムマシンでデモを作ってきて、それを何度か聞いた上でどの曲、リフをやるか決めて、それでリハーサルをやる。曲を作っていく中で、自然とBolt ThrowerやBenedictionっぽい部分が出て来ることもあると思うけど、でもそれは決して故意にやっていることではないんだ。
──今回のアルバムのアートワークは何を表現しているのですか。
カール・ウィレッツ:良い質問だね。アートワークはDan Seagraveによるものだ。彼は1990年代に多くのデス・メタルのアートワークを手掛けているということもあって、彼に描いてもらった。Benedictionもやっているし。実は次のアルバムを含めて3部作にしようと思っているんだ。前回の『For the Fallen』では、アートワークの中心に棺があった。やはり今回も棺があるのだけど、そこからは木のようなものが出てきている。木のようなのだけど、それは生きているように見える。そして向こう側には光が見えるだろ?これが生命というものが向かっていくところを表現しているのさ。次のアルバムでは、これの続きが描かれる予定だよ。
──あなたの音楽的バックグラウンドはどのようなものなのだったのですか?初めて接したエクストリームな音楽は?メタルだったのでしょうか、それともパンクでしょうか。
カール・ウィレッツ:これも良い質問だね(笑)。実を言うと、俺は15~16歳の頃、オルタナティヴ・パンクにハマったんだ。Sex Gang ChildrenやSister of Mercy、Alien Sex Fiendとかね。これをゴスだと言う人もいるけれど、俺にとってはオルタナティヴ・パンクだった。その後、いわゆるアナーコ・パンクを発見した。Antisect、Flux of Pink Indians、Hellbastard、Axegrinder。それからもちろんSacrilege。Sacrilegeのライヴを見て、これこそ俺がやりたい音楽だと思ったんだ。俺の出身のバーミンガムというところはアナーコ・パンクがとても盛んな地なんだよ。Napalm Deathもバーミンガム出身だし。あとVenomなども聴いたし、アメリカのMetallicaSlayer、Possessed、ヨーロッパ大陸からはHellhammer、Celtic Forstなどを聴くようになった。スウェーデンのデス・メタルとかもね。というわけで、俺の初めてのエクストリームな音楽というのは、オルタナティヴ・パンクなんだ。Iron MaidenJudas Priestではなくて(笑)。
──あなたがBolt Throwerに加入したころ、Bolt Throwerをどのようなスタイルのバンドだと捉えていましたか?スラッシュ・メタルなのか、デス・メタル、あるいはパンク・バンドでしょうか。
カール・ウィレッツ:スラッシュ・メタル、デス・メタル、グラインドコア。あるいはウォー・メタルかな(笑)。あまりどうカテゴライズするということは気にしていなかったよ。スラッシュからアナーコ・パンクまで、すべて混ぜ合わせるのがBolt Throwerの得意技だったし、Bolt ThrowerはBolt Throwerだという感じだった。
──セカンド・アルバム『Realm of Chaos』で大きくサウンドが変わったという印象だったのですが、あれは意識して変化をしたのでしょうか。
カール・ウィレッツ:あそこから大きく音やコンセプト、ビジュアル的にも変わったのは間違いないと思う。Earacheと契約して、レコーディングの予算も十分に増えたし、色々なデス・メタルのバンドと一緒にステージをやる機会も多かったしね。個人的にも、あのアルバムから俺が歌詞を書くようになったというのもある。
──残念ながらBolt Throwerは日本でプレイする機会がありませんでした。
カール・ウィレッツ:そうなんだよ。実は15年か16年の頃、日本でプレイするという話もあったんだ。ぜひメモリアルを日本に呼ぶようみんなに働きかけてくれよ(笑)。
──では最後に日本のファンへのメッセージをお願いします。
カール・ウィレッツ:サポートしてくれてありがとう。俺の人生において、日本でプレイするというのは大きな目標なんだ。君が責任を持ってメモリアムを呼んでくれると思うけど(笑)。
Bolt Throwerは、Napalm DeathCarcassMorbid Angelらとともに、デス・メタル創世記を彩った素晴らしいバンドだ。特にライヴが素晴らしかった彼らが、ここ日本でプレイする機会がなかったのは残念でならない。ぜひともメモリアムとして来日し、UKデス・メタルの真髄を見せつけてもらいたいところである。
取材・文:川嶋未来 / SIGH

写真:Anne Swallow

メモリアム『ザ・サイレント・ヴィジル

3月23日発売

【CD】¥2,300+税

【日本語解説書封入/歌詞対訳付き】

1.ソウルレス・パラサイト

2.ナッシング・リメインズ

3.フロム・ザ・フレイムス

4.ザ・サイレント・ヴィジル

5.ブリード・ザ・セイム

6.アズ・ブリッジズ・バーン

7.ザ・ニュー・ダーク・エイジズ

8.ノー・ノウン・グレイヴ

9.ウェポナイズド・フィアー

《ボーナストラック》

10.ドローンストライク V3
【メンバー】

カール・ウィレッツ(ヴォーカル)

フランク・ヒーリー(ベース)

スコット・フェアファックス(ギター)

アンディ・ホエール(ドラムス)

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