80/90sリバイバル!FEMMが交差させる
ヒト、モノ、トキ

FEMM『80s/90s J-POP REVIVAL』

FEMM『80s/90s J-POP REVIVAL』スポット映像)

世界中が大注目しているマネキン・ラップ・デュオのFEMMが、カバーアルバム『80s/90s J-POP REVIVAL』をリリースした。本アルバムは、誰もがどこかで耳にしたことのある、J-POPの不朽の名作だけを収録したもので、FEMMが楽曲のテーマのひとつにしている「80/90s REVIVAL」の集大成というべきアルバム。

収録内容を見てみると、『My Revolution』(渡辺美里)、『どんなときも。』(槇原敬之)、『There will be love there -愛のある場所-』(the brilliant green)、『浪漫飛行』(米米CLUB)、『今夜はブギー・バック』(小沢健二 feat. スチャダラパー)など、80-90s好きにはたまらないリストになっている。

これらの80-90s楽曲にフューチャーベースやトロピカルなど現代的なアレンジを加え、おしゃれでカッコいい作品に仕上がった。ジャケットも洗練されたレトロフューチャー感があって今っぽい。
(FEMM『80s/90s J-POP REVIVAL』ジャケット)

完璧なコピー

このアルバムの何がすごいかって、コピーが完璧すぎること。
まずは10月13日に公開された『淋しい熱帯魚』のMVがこちら。
(FEMM『淋しい熱帯魚』MV)

『淋しい熱帯魚』は、鈴木早智子相田翔子による伝説的なアイドルグループ・WINKの楽曲で、1989年にリリースされた。第31回日本レコード大賞、第22回全日本有線放送大賞などを受賞し、この曲で紅白歌合戦にも出場。「大魔神ポーズ」と呼ばれる振り付けが大流行した(「ハローウェー」と歌っている部分。ちなみに歌詞は「Heart on Wave」)。

本家であるWINKの『淋しい熱帯魚』MVはこちら。
(WINK『淋しい熱帯魚』MV)

同時に再生してみるとよくわかるが、振り付けだけでなく、カット割や画面構成、画質などもすべてが完璧にコピーされている。

そのなかで、ファッションには2017年のトレンドを盛り込み「ネオ80s」とでも言うべきスタイルに仕上げたり、テロップに「淋しい熱帯魚(2017)」と記したりするなど、随所に遊び心が感じられる。

WINKはその「無表情」ぶりが当時話題になったアイドルグループだが、FEMMの完璧な無表情と独特な動きのシュールさは、本家のさらに上を行く。このシュールさは、FEMMというユニットが本来持っている性質によるものだ。

なぜなら、彼女たちは「マネキン」だからだ。

FEMMとは?

FEMMは、「Far East Mention Mannequins」の略で、RiRi(リリ)とLuLa(ルラ)の意思を持つマネキン2体からなるダンス・ラップデュオ。2013年頃、エージェントであるHoney-B(ハニービー)とW-Trouble(ダブルトラブル)により東京の街中で発見された。
(『FEMM’S AGENCY SYNDICATE』オフィシャルティザー映像。ハリウッド映画かと見紛う壮大さ)

2014年に発表した『Fxxk Boyz Get Money』が欧米のティーンを中心にスマッシュ・ヒットし、ガールズアンセムとして世界中のインフルエンサーから支持を獲得。MVは2017年10月現在、160万回も再生されている。
(FEMM『Fxxk Boyz Get Money』MV)

『ULTRA JAPAN』や『YouTube FanFest』にも出演し、アメリカのVICEやイギリスのDAZEDをはじめ、世界各国主要メディアも注目。USビルボード「WORLDチャート」ではTOP10を取得、UK Haffington Postでは「2016年注目すべきアーティスト」に選出されるなど、世界のカルチャーシーンで大注目の存在となっている。

日本では、水原希子などがいち早くFEMMに注目していた。

Super kawaii FEMM❤ new japanese idol🎌 I wanna see them vogue💃❤ #fxxkboyzgetmoney #Femm

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ヒト、モノ、時間の境目をユラユラSwi
mmin’

繰り返すが、彼女たちは「マネキン」。
2016年に「マネキンチャレンジ」が世界的に流行ったが、日本ではすでに意思を持ったマネキンがアーティスト活動をしていたわけだ。

ちなみにこちらは、FEMMとスタッフ、そしてビヨンセやマドンナに楽曲を提供し自らもヒット曲をリリースしているLIZによるガチのマネキンチャレンジ。
(『#MannequinChallenge with LIZ』)

これからのカルチャーは、「ヒトとモノの境目」という視点でとらえると、新しい何かが見えてくるかもしれない。

昨今はVR(仮想現実)やAR(拡張現実)、さらにはIoT(インターネットのモノ化)などの技術革新により、ヒトとモノの境界線が曖昧になってきている。
音楽の分野では初音ミクをはじめとしたボーカロイドがあったし、よく考えれば、ボーカルにエフェクトをかけることや、そもそもマイクを通して声を出すことだって、ヒトとモノの境目を超えた事象だということもできる。

そうしたなか、「意思を持ったマネキン」であるFEMMというアーティストは、ヒトとモノとの新しいインタラクティブな関係を提示しているのかもしれない。

さらに、今回の『80s/90s J-POP REVIVAL』には、ヒトとモノという要素に加えて明確に「時間」の要素も加わった。
単なるカバーではなく「REVIVAL」=復活をテーマにした本作。復活とは「よみがえる」ことだ。もし、『80s/90s J-POP REVIVAL』を聴くときに80-90sがよみがえるとすれば、FEMMは時空を超えて、過去ともインタラクティブな関係を築いていると言える。

つまりFEMMは、ヒトやモノ、時間に関するあらゆる境目を「ユラユラSwimmin’」しているのだ。
ヒト、モノ、そして時間の境目を行き来し交差させるアーティスト・FEMM。
すでに欧米ではカルチャーの最前線にいるが、ここ日本でも、今後より注目されるだろう。
今のうちにぜひチェックを!
FEMMによるカバーアルバム『80s/90s J-POP REVIVAL』は、10月18日に配信先行リリース。フィジカル(CDとカセットテープ)は10月25日に発売。

『80s/90s J-POP REVIVAL』
01 My Revolution feat. Akina, Anna & Mikako from FAKY
02 CANDY GIRL
03 淋しい熱帯魚
04 どんなときも。
05 すみれ September Love
06 There will be love there -愛のある場所-
07 Dear Friends
08 浪漫飛行
09 卒業
10 BELIEVE IN LOVE
11 SEVEN DAYS WAR
12 今夜はブギー・バック (nice vocal) feat. Lil’ Fang from FAKY & Yup’in
FEMM OFFICIAL WEB

FEMM OFFICIAL Instagram

FEMM OFFICIAL You Tube


Text_Sotaro Yamada

80/90sリバイバル!FEMMが交差させるヒト、モノ、トキはミーティア(MEETIA)で公開された投稿です。

ミーティア

「Music meets City Culture.」を合言葉に、街(シティ)で起こるあんなことやこんなことを切り取るWEBマガジン。シティカルチャーの住人であるミーティア編集部が「そこに音楽があるならば」な目線でオリジナル記事を毎日発信中。さらに「音楽」をテーマに個性豊かな漫画家による作品も連載中。

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