夢追い虫が追いかけた夢とユメ

夢追い虫が追いかけた夢とユメ
UtaTen特別企画 『コラムで綴るスピッツ愛』

歌詞検索・音楽メディアUtaTenでは、シングル・コレクション・アルバム『CYCLE HIT 1991-2017 Spitz Complete Single Collection -30th Anniversary BOX-』が7/5にリリースされるのを記念して、コラム特別企画を実施!UtaTenライターによる『コラムで綴るスピッツ愛』を7/3から短期集中連載。UtaTen自慢のコラムニスト・ライターが独自の解釈で、スピッツの曲に纏わるコラムをお届けします。

大ヒットとなった「空も飛べるはず」のイントロを聴いているだけで、ドラマ「白線流し」のセーラー服姿の酒井美紀さんが浮かんでくる。言葉一つ一つが慎重で儚くて、正直空なんて飛べるはずなんてない。でも彼らがそういうならば、もしかしたら本当は空は飛べるんじゃないかと思ってしまう。そんなマジックさえ持ち合わせているようだ。いつも美しい歌詞やタイトルで織りなっているイメージのはずが、ある一曲、ちょっと似つかわしくない感じ、スピッツらしくないとも言えるタイトルがある。「夢追い虫」。

こちらの歌2001年に話題になった映画「プラトニックセックス」の主題歌であった。映画自体もとてもディープで、今までのスピッツの楽曲の中で性的描写なんてなかったはずだ。そもそもあって欲しくない。それよりも何故この歌の中で出てくるのは「虫」なのかということ。少なくとも虫は2匹いる。「あたり前の生活を2人で過ごせは羽も生える」あたり前の生活はまだ手に入っていない。そして手に入ったとしてもそれは「羽」なのだ。「翼」ではない。羽で行動できる範囲など限られているはずだ。もっとも翼を持つ生き物よりも羽を持つ生き物の命なんてあまりにも短いことは計り知れている。

「虫」は「夢」は見てはいけないのか。ここではずっと「ユメ」になっている。夢を語るのを恐れているのか。翼を持つものに対して遠慮しているのか。あたり前の生活を手にした後のその先の場所はどんな所だったのだろうか。そのために今少しずつ進んでいるのに。「あくまでも」おそらく「悪魔」とかけている。夢を追いかけようとすると、嫌でも悪魔的な存在に出くわす。対人であったり対出来事であったり、そもそも周りの何かではなく、もう悪魔は自分の中にいる事の方が多いかもしれない。虫はそれに気づいてしまった。羽を持つものでしか見えない何かを見てしまったのか。

やはり虫は自分の運命を分かっていた。でも虫は1人ではない。君がいるから。どんなに煙たがれ嫌がられ行き場がなくなったって、一緒に踊ってくれる君がいる。やはりスピッツの歌だった。例え悪魔の存在に気づいてしまっても、彼らが引き戻してくれる。

スピッツはインディーズ時代パンクバンドとして
活動していたと言われいる。ブルーハーツに憧れていたらしく現在こんなにも人気のある彼らが、パンクバンドで成功するという夢は、惜しくも叶わなかったといえるのだ。彼らも「夢追い虫」であった時代が少なからずあったのだろうか。夢が叶う事と成功は似ているようで全く違うものだ。彼らが創り上げた世界は「夢」だったのか「ユメ」だったのか。それは本人達にしか分からない。夢追い虫であったものにしか分からない。

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