【BONNIE PINK】大和魂を呼び覚まし
てほしい!
昨年9月にリリースした、アコースティックのセルフリメイクアルバム『Back Room』が好評を得たBONNIE PINKが、1年5カ月振りのシングル「冷たい雨」をリリース。ドラマ主題歌としても話題のこの曲について語る。
取材:榑林史章
ニューシングル「冷たい雨」がドラマ『ダーティ・ママ!』主題歌として好評ですね。ドラマ主題歌は5年振りとのことですが、書かれる時に意識することは何ですか?
私はドラマの現場にはいないけれど、ドラマのスタッフさん方と一緒に臨むつもりで、みんなと同じビジョンを持って制作するようにしています。だから、単純に新曲を書くのとは、また少し違った緊張感がありますね。
ドラマのプロデューサーと話をしたりとか?
ディレクターを介して、ドラマ制作者さんサイドのお話を伝え聞いて。第一話の台本を読ませていただき、先方からのイメージや要望を反映させながら数曲書いたうちの1曲です。
何曲か作られたのですね。
ちょっと迷ってしまったんです。こんな感じだったら良いなという、その“こんな感じ”のイメージが、人によって異なったので、全員がハッピーになれるものはどれか、と。それで、スタイルの違う曲をいくつか書いて、その中から『冷たい雨』を選んでいただきました。
「冷たい雨」は、非常に力強いロックに仕上がっていますが、他の曲はどういうスタイルだったのですか?
例えば、歌詞の内容がもっとドラマに寄せたものだったり、サウンドのスタイルがもっとポップだったり。でも、スローな曲ではないほうが良いと言われていたので、どれもリズムを強調したものということを意識していました。
ドラムのフィルインから曲が始まり、それに続けていきなり歌に入るのがカッコ良いですよね。
四の五の言わずに始まる感じですね(笑)。長いイントロは、ドラマの内容には合わないと思ったので。
歌詞は、どういうイメージで書かれていったのですか?
それで「冷たい雨」に?(笑)
歌詞を読むと《ざけんな》とか、結構強めの言葉が並んでいて、いつもとは少し違うと思いました。
ドラマの主人公が、結構強い女性で、やりすぎじゃないか?と思うくらいのことまでやってしまう逞しい人なんです。そのキャラクターを重ねている部分もありつつ、“こういう時代だから頑張っていこう”とか、“女だからってナメるなよ!”という気持ちもあったり。それに3.11以降、動いてナンボという気持ちもすごくあって、そういういろいろな感情が折り混ざって、曲として仕上がっていると思います。
考える前にとにかく動くという、能動的なメッセージが感じられますね。
まず一歩を踏み出そう!ということですね。それはもともと持っていた気持ちですが、特に去年はいろいろあったので、“負けてたまるか!”という大和魂みたいなものを、聴いてくれる人に呼び覚ましてほしいという気持ちも込めています。
プロデューサーは、久々にトーレ・ヨハンソンですね。
トーレは、とにかく仕事が早いし、私たちの想像を超えるアイデアを出してくれるし。彼とは付き合いが長く、私の音楽への理解も深いので、迷わず決めました。
どんなやりとりをされたのですか?
データのやりとりだったのですが、今回はとにかく細かくやりとりしました。というのは、最初は歌詞を全部細かく訳して渡したわけではなかったので、ポップでカラフルな楽曲が上がってきたんです。それで“今回はそういう方向じゃない”と、ドラマの内容はもちろん、この曲を今出すことの意味や、現在の私の心境とか、今の日本のこととかいろいろ説明して。そうした上で、ポップな音色のシンセはいらないから、“むしろ歪んだギターを入れてほしい”“ドラムは打ち込みではなくて、生で大きなフィルをたくさん入れてほしい”と。音が仕上がる度に、細かく軌道修正しながら作ったんです。結果的に今までの彼との作品の中で、最もマッシヴで骨太なロックになりました!
カップリングには、一転して打ち込みでエレクトロサウンドの新曲「Keep Crawling」と、アコースティックライヴの音源を収録していますが、どうしてこういう構成のシングルにしようと?
いつもはわりとシングルの次にアルバムが控えていたりするのですが、シングル単体で出すのは久々なので、バリエーションに富んだ内容にしたいと思って。
「日々草」と「金魚」(初回盤のみ)を選んだのはどうして?
昨年座って観ていただくアコースティックツアーを初めてやったのですが、想像以上に評判が良くて。上の年齢層の方には“むしろ毎回、座って観たいです”と言っていただいたりとか(笑)、すごく充実したツアーでした。そのツアー後にスタッフやお客さんの評判が良かったのが、その2曲。実際に『日々草』の次に『金魚』を歌う流れだったので、両方が入っている初回盤はライヴの一部分を切り取った感じになっています。CDでも、その臨場感をぜひ体感してほしいと思って収録しました。
いちファンとしては、シングルを聴いたら、次はアルバムが聴きたいです。次のアルバムの予定はどうなっていますか?
いろいろなテイストを盛り込んだ作品になると思います。気持ちの部分では、前向きなパワーを感じてもらえる作品にしたくて。私は作品を発表する側の人間なので、気持ち的にみんなよりちょっと前に出て…責任感とまで言うと大げさだけれど、そういう心意気で作っていこうと思っています。聴いてもらって“明日頑張ろう”と思ってもらえるものになったら最高です!
ボニー・ピンク:洋楽的なアプローチで幅広い人気を博すシンガー・ソングライター。1995年、アルバム『Blue Jam』でデビュー。トーレ・ヨハンソンのプロデュースによる97年の2ndアルバム『Heaven's Kitchen』が大ヒットしたことで、一躍注目の存在に。以降もマイペースに、歌心と先鋭的な音楽性を両立させた珠玉のポップ集を届けてくれている。BONNIE PINK オフィシャルHP