【阿部真央】今までのアルバムの中で
一番いいアルバムだと思う

何かを伝えたい気持ちがすごく強いアル
バム

アレンジャーによるところも大きいと思うのですが、サウンドがロックしているし、バンドしているのも印象的でした。参加ミュージシャンのクレジットを見ても、一線で活躍するバンドマンや強者が名を連ねているし。

いろんなアレンジャーさんとやったし、たくさんのミュージシャンの方とやったんですよ。ほとんどが初めて一緒にする方ばっかりだったし、ずっと一緒にやりたかった方もいたりして、すごく貴重な経験をしたし、素晴らしい時間をすごせたなって。ほんと、一曲一曲が楽しかった。

ミュージシャンのセレクトは、アレンジャーさんにお任せ?

初めてやるアレンジャーさんはお任せでしたね。で、楽曲ありきっていうか、“この楽曲はこのメンバーじゃないと嫌だ”っていうのも何曲かあったり。

個人的にはakkinさんのアレンジがすごいなって。がっつりバンドしてますものね。

洋楽の音ですよね。ずっと一緒にやりたかったんですよ。私、ONE OK ROCKが好きで、Tomoyaくんのドラムの音がむちゃくちゃ好きなんですね。だから、akkinさんにお願いした時に“ドラムはTomoyaくんってどうかな?”って言われて、“えー!? 一緒にやりたかったんです!”って(笑)。ほんと、楽しかったですね。

アレンジもアレンジャーさんと相談しながら作っていったのですか?

十川ともじさんにお願いした1曲はお任せしたんですけど、あとは直接お会いして、ざっくりと“こういう感じで~”っていうイメージを伝えて、あとはデータとメールでやり取りをして…仮のアレンジのものに対して、“この◯分◯秒ところがこうで~”って全部書き出したりして(笑)。そういうことを多くて3回ぐらい繰り返して、おおもとを作ってもらったって感じです。そういうこともやったことがなかったんで、最初は大変だなって思いましたけど、私がするのが一番早いんで、結果的に良かったと思いますね。

そうなんですね。今までほとんどの曲にアコギが入っていたのに、「How are you?」にはアコギが入っていないじゃないですか。それも真央さんの判断で?

そうそう。最初に言ったんです。『for you』という曲もakkinさんなんですけど、『for you』はあっていいけど、『How are you?』はなくていいですって。なんとなく(笑)

なんとなくなんですか!?(笑) シングルの「側にいて」から自分でアコギを弾かないっていう選択肢ができましたけど、まったくアコギが鳴ってないのは意味があるのかなと思ってたのですが…。

ライヴで歌っている姿を想像した時に、この歌でアコギを弾きたくないなって思ったんですよね。それもあってアコギが必要か不必要かって言われたら、要らないんじゃないかなって(笑)。あと、今回はアコギを人に弾いてもらっている楽曲が多いんですよ。それって今まで私ができなかったことで…逆に、私が弾いてないと自分の作品なのに携わっている感がないって思ってたんですね。だけど、今回は私が真ん中に立って全部やったから、いい意味で余裕ができたっていうか。そこまでやらなくても、作っているのは私なわけだし、みんなが力を貸してくれるんだから、楽曲に合ったアコギの音色…私だと一本調子のガッという音しか出せないし、もっと違うアコギの活かし方で楽曲が映えるんだったら、それはもう任せちゃおうって。そういうふうに思えたっていうのも変化っていうか、成長なのかな。

なるほど。“阿部真央=アコギ”という、ひとつ呪縛が解けたのかと思っていました。

そうかもしれないですね。アコギがあった方が締まるし、やってて楽しいんですけど、別になくても全然大丈夫かなって。

そんなakkinさんが手掛けたロックなナンバーもあれば、「Sunday moring」のようなホーンも加わったポップでさわやかなアプローチもあるという。でも、この曲は男子の妄想なんですよね(笑)。

そうそう、おっぱいの歌だから(笑)。この歌、すごく好きなんですよ。最初からこういうイメージで…なんか夏っぽくて、ポップで、ラッパが鳴ってるっていう。出来上がった時にアガったっていうか、すごく楽しい曲ができたなって思いましたね。女友達と喋ってて“結局、男の人はおっぱいなんだよ”っていう話になった時に、その友達が“そうよね。胸ばかりじゃなくて、もっと上にある塗っているまつ毛とかも見てほしいよね。いっぱい塗ってるんだから”って言って、“それ、いいね~!”ってサビの部分ができたんですけど(笑)。で、“曲にしちゃってよ”って言われて、曲にしました(笑)

(笑)。とはいえ、よくここまで男の気持ちが分かりますね。

それね、他の男性のインタビュアーの方にも言われたんですよ。で、私の中に男の人がいるんじゃないかっていう説になって…今までも男子目線の歌を書いてきているし、否めないかもって。私、何回か生まれ変わっている中で男を経験しているのかもしれない(笑)

あと、楽曲的には「ここにいて」も新鮮でした。ただ、そう思うのは歌声が変わったせいなのかなとも思っていて。

確かにニュータイプですよね。アレンジがすごく綺麗だし、哀愁があるんだけど温かくて、歌詞の内容も暗くないっていう。で、歌声も変わっているし…声帯の治療をしてからノイジーさがまったくなくなったんですよ。治療前だったら声をかすれさせて、低く歌うことしかできなかったと思うんですね。手術して声帯も綺麗になったし、発声も変えたことで、いろんな歌い方ができるようになったのかなって。

やはり歌う時の感触みたいなものも変わりました?

違いますね。録っている時は、前みたいな歌い方ができなくなったと感じていて…かすれている声のほうが、鬼気迫る感じっていうか、切実感が出るじゃないですか。それがなくなった分、歌のレパートリーやニュアンスの種類が減ったと思っていたんですけど、こうやって取材していただいたり、自分でも改めて出来上がったアルバムを聴いてみたりすると、そうでもないなって。枯れた声は出なくなったけど、今までになかった声っていうのがあるし。

枯れた声や叫ぶような声じゃなくても、「18歳の唄」とかは切実感があったし、そういう印象は残りましたよ。

そうなんですよね。だから、“あっ、これでいいんだ”って思いました。

曲順もいいですよね。1曲目が「How are you?」で最後が「for you」というのは、現在の真央さんのテンションを感じるというか。それはサウンドがロックということではなく、気持ち的に振り切っているのが伝わるということで。

それは嬉しいですね。私の中ではデモの段階で、この最初と最後は決まっていたんですよ。

「for you」で終わるところがいいですよね。ファンへの感謝のメッセージでもありますし。

そうそう。ライヴでも最後にやりたいですね。地味にいいんですよ~。音もカッコ良いし。

いろいろな意味で、やっぱり力強いアルバムですね。

阿部真央の今までのアルバムの中で一番いいアルバムだと思ってます。ただファンの人に届けたくてできたアルバムって感じなんですよ。みんなに何かを伝えたい気持ちがすごく強いアルバムだから、聴きやすいし、プラスな感じがあるんですよね。すごく前向きだし。内面をさらけ出して“分かってほしい”って叫んでいただけの阿部真央から、違うステージに行ったというか。

このアルバムを引っ提げて、初のホールツアーに出るわけですが。

始まるんですよ! いや~、どうなるかな~。大分で一回、ホールライヴはやったことはあるんですけど、それを全国でやるっていうイメージができなくて…規模も大きいですし。だから、どういうライヴをするかっていう楽しみ半分、不安半分っていう感じです。テーマを掲げてスタートしたんですけど、アルバムをリリースして、ツアーが終わるまでがコンセプトだから、そのテーマをライヴに活かせるか…それは装飾なのか、今までやってきた音作りをさらにこだわるのか分からないですけど、“来て良かった!”ってみんなに思ってもらえるようなものにしたいですね。頑張りたいと思います!
『戦いは終わらない』2012年06月06日発売PONY CANYON
    • 初回盤(DVD付)
    • PCCA-03594 3500円
    • 通常盤
    • PCCA-03595 3000円
阿部真央 プロフィール

アベマオ:1990年1月24日生まれ、大分県出身。06年、高校2年生の時に『YAMAHA TEENS' MUSIC FESTIVAL』の全国大会で奨励賞を受賞。09年1月にアルバム『ふりぃ』でデビュー。感情的なアコギで押し出す、等身大でリアルな歌詞、表現力豊かなヴォーカル、バラエティーに富んだ楽曲、同世代の女性を中心に、幅広い層から注目と共感を集める。14年10月にデビュー5周年を記念して初の日本武道館公演を開催。16年5月、産休明け第一弾シングル「Don’t let me down」で完全復活を果たし、デビュー10周年となる19年1月にはベストアルバム『阿部真央ベスト』を発表し、2度目の日本武道館公演を成功させた。阿部真央 オフィシャルHP

OKMusic編集部

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