【Hilcrhyme】明確な意思を持って作
ったシングル
Hilcrhyme通算18枚目のシングル「言えない 言えない」はTVアニメ『実は私は』のエンディングテーマ曲。原作を読んでファンになったというふたりが物語に沿って作った、Hilcrhymeらしさが如何なく発揮された意欲作である。
取材:帆苅智之
TVアニメ『実は私は』のエンディングテーマでもある最新シングル「言えない 言えない」は、原作コミックの内容に沿って制作したものだそうですが、こうした制作手法はHilcrhymeにとって初めてのことだったようですね。
TOC
「ルーズリーフ」(5thシングル)もドラマのタイアップで内容もリンクしていましたけど、楽曲そのものは学園ものではなかったし、ここまでガッツリ沿ったのは今回が初めてですね。単純に原作が面白かったから、原作の要素のひとつである、青臭い男子学生の言いたくても言えない気持ち…そんな今の自分が失いかけている感情を書きたいと思ったんです(笑)。
DJ KATSUさんも原作を読んですぐにファンになったそうですが。
DJ KATSU
(『実は私は』は)面白いですよ。今は単行本で12巻まで出ていますけど、今回の話をもらった時はまだ9巻で、そこがまた何ともモヤモヤとする内容なんです(笑)。主人公は真面目で一途、それゆえになかなか上手くいかず、“今日もまたダメだった…”みたいな男の子なんですけど、(バックトラックで)そういう青春の哀愁感が出せたらと思って。学園ラブコメディーなんですけど、“エンディングテーマだから哀愁感があるものを”というオーダーもありまして、個人的にはそういうタイプの曲も好きなんで、曲作りはやりやすかったですよ。
やわらかなサウンドでありつつ、どこかメランコリックでもあって、そこに“胸キュン”を感じます(笑)。
DJ KATSU
そうですね(笑)。自分が子供の頃に観ていたアニメのエンディングってそういう感じのものがあったと思うんです。オープニングは元気いっぱいの曲でも、エンディングはバラードとかね。ただ、単純な哀愁感じゃなく、ポジティブさもあって、そのちょうど中間というか、ハッピーで前向きな部分もありつつ、哀愁感もあるというところで、いいバランスが取れたと思います。
ピアノ、ストリングス、ギターが入っていて、Hilcrhymeの王道とも言えるサウンドではありますよね。
DJ KATSU
王道かもしれませんね。今回、ギターとストリングスは生です。最初ピアノがもっと歌っていたんですけど、それを抑えて、その分、ギターを入れて。楽器の数が多いんで、トラックの主張は強いとは思うんですけど、全体的にはいい感じになったと思います。
TOC
歌メロを作るのはやや大変だったかな? 今、Hilcrhymeの王道と言われたピアノ、ストリングス、ギターって歌に干渉しやすい楽器なので、そこを避けるように縫ってメロディーを作るというのは結構大変で。ただ、トップライン作りは自分の中では自信もあるし、ちゃんとバックトラックに合わせて作りましたよ。
なるほど。原作に沿った歌詞作り、バックトラックに合わせた歌メロ作り…TOCさんにとってはいずれも新たなチャレンジといった感じでしたか?
TOC
そうですね。アニソン扱いになることもチャレンジですよね。それも意識して作りました。アニソンであることは全然否定してなくて、むしろ新しいところへ飛び込むことへの楽しみがありまして。“シングルを出す時期が来ました”“じゃあ、作ります”で出すシングルって絶対に良くないと思っているし、そういう意味では明確な意思を持って作ったシングルですよ。でも、手前味噌になっちゃいますけど、それはいいことだと思います。飽きてないということは。飽きたら終わりだと思うんですよ。
まだまだ飽き足りませんか?
TOC
やりたいことがいっぱいあるんですよね。今だからやれることもたくさん出てきたし。デビューの時は新人でしたけど、あれから5~6年経って後輩もいるんですよ。背中を見せるべき相手というか。そういう子たちに見せたいこともあるし、もちろん先輩たちに投げかけたいものもまだまだあるし…だから、飽きないですよねぇ。
ちなみにDJ KATSUさんは今春から地元・新潟でラジオ番組を始めたそうですが、これも新たなチャレンジと言えるんじゃないですか?
DJ KATSU
ですね(笑)。2時間の生番組です。まぁ、ラジオはHilcrhymeとして3年間くらいやっていたんですけど、“DJ KATSUくん個人としてやっても面白いんじゃないか?”とお誘いがありまして。まだ始まったばかりで、ほんとこれから作っていく感じなんですけど、ディレクターさんからも“好きにやっちゃいなよ。失敗してもいいから”って言われてまして。
お、その“好きにやっちゃいなよ。失敗してもいいから”ってHilcrhymeらしいですよね。図らずも、「言えない 言えない」にも《結果だけが全てじゃない ほら行ってこい 背中押され》というフレーズがありますし、原作に沿ったとはいえ、当然のことながら、随所随所にしっかりとHilcrhymeらしさは垣間見えます。そこも「言えない 言えない」のポイントと言えるでしょう。
TOC
『実は私は』の主人公の黒峰朝陽くんって全然壁を作らない奴で、超フラットにみんなから愛されているし、みんなを愛しているし…って奴なんだけど、俺自身は中学校や高校の時はそうじゃなかったので…いや、それは今でもそうかもしれない。《何故にどうして?この取れない壁は》という歌詞もあるけど、わりと警戒心は強いし、人に対して壁を作るほうで…だから、(「言えない 言えない」は)原作に忠実とは言ったけど、主人公のキャラクターは俺ですよね(笑)。でも、だからこそ、いいんだろうと思います。原作に沿ってますけど、そこにはちゃんと俺がいるから。
分かりました。では、最後にカップリング曲について教えてください。今取材をしている時点でまだ音が上がっていないんですけど、どんな楽曲になりそうですか?
TOC
そうですねぇ…「New Era」(6thアルバム『REVIVAL』収録)に近いかな?
攻撃的なタイプ?
TOC
「New Era」よりも辛辣で、もう少しダークな感じで、「言えない 言えない」とは真逆のベクトルですね。サウンドもソリッド。タイトルは“I'm Ready”で、“俺たちは準備はできた。みんな、準備はいいか?”という内容ですね。
・・・
「言えない 言えない」2015年09月02日発売UNIVERSAL J
- 【初回限定盤(DVD付)】
- UPCH-7044 1836円
ヒルクライム:ラップユニットとして2006年に始動。09年7月15日にシングル「純也と真菜実」でメジャーデビュー。2ndシングル「春夏秋冬」が大ヒットし、日本レコード大賞、有線大賞など各新人賞を受賞。ヒップホップというフォーマットがありながらも、その枠に収まらない音楽性で幅広い支持を集めてきた。また、叩き上げのスキルあるステージングにより動員を増やし続け、14年には初の武道館公演を完売。「大丈夫」「ルーズリーフ」「涙の種、幸せの花」「事実愛 feat. 仲宗根泉 (HY)」などヒットを飛ばし続け、24年7月15日にメジャーデビュー15周年を迎える。ライミングやストーリーテリングなど、ラッパーとしての豊かな表現力をベースに、ラップというヴォーカル形式だからこそ可能な表現を追求。ラップならではの語感の心地良さをポップミュージックのコンテクストの中で巧みに生かす手腕がHilcrhymeの真骨頂である。耳馴染みのいいメロディーと聴き取りやすい歌詞の中に高度な仕掛けを巧みに忍ばせながら、多くの人が共感できるメッセージを等身大の言葉で聴かせる。その音楽性は、2018年にラッパーのTOCのソロプロジェクトとなってからも、決して変わることなく人々を魅了している。Hilcrhyme オフィシャルHP
ティーオーシー:HilcrhymeのMC、自身が主宰するレーベル『DRESS RECORDS』のレーベルヘッド、そして、アイウェアブランド『One Blood』のプロデューサーとして、多角的な活動を展開。Hilcrhymeとしてメジャー進出し、メジャーフィールドにもしっかりと爪痕を残し、スターダムに登っていったが、その活動に飽きたらずソロとしての活動を展開。2013年10月に1stシングル「BirthDay/Atonement」、14年11月にはソロとしての1stアルバム『IN PHASE』をリリースし、ソロとしての活躍の幅を広げていく。その後、ソロMCとしてのTOC、及び『DRESS RECORDS』がユニバーサルJとディールを結び、メジャーとして活動していくことを発表し、16年8月にメジャーデビューシングル「過呼吸」を、18年1月にメジャー第1弾アルバム『SHOWCASE』をドロップ。メジャーフィールドでポップスター/ポップグループとしての存在感とアプローチを形にしたHilcrhyme、Bボーイスタンス/ヒップホップ者としての自意識を強く押しだしたソロ。これまでに培われたふたつの動きがどう展開されていくか興味は尽きない。TOC オフィシャルHP