【LOW IQ 01】アルバムの中でフェス
をやってるみたいな感じ
パンクシーンの重要人物、LOW IQ 01の3年振りの新作『Stories Noticed』には、細美武士(the HIATUS、MONOEYES)、TOSHI-LOW(BRAHMAN、OAU)ら強者たちが大集結。シンプルなポップパンクに回帰した強力な一枚だ。
取材:宮本英夫
もう、理屈抜きで嬉しくなっちゃうアルバムですよ。パンクで、ポップで、メロディック。それ以外は一切なし!
今までさんざんいろいろやったんで(笑)。
この傾向は去年のミニアルバム『THE BOP』から始まってましたよね。
同時進行だったんで。ミニアルバムをバンドサウンドで作って、次に自分のアルバムでドーンとやってみたいなって。その1個前のアルバムぐらいから、ライヴ感を意識してたんですよ。やっぱりライヴってこういうストレートな曲をやっても面白いし、オーディエンスも楽しいんじゃないかなと。要は今の僕のモードですね。
ポイントはライヴ感、バンドサウンド?
バンドサウンドでレコーディングするなんて、それこそ20年近くやってなかったんで、すごく新鮮で。“こういう感じだったな”みたいな。ずーっとソロをやってると、自分の色になってしまうんですよね。もちろんそれは大事なんだけど、ひとつの色に慣れてしまうと、そればかりになってしまうのかなと。何の職業でもそうだと思うけど、特にミュージシャンはマンネリ化しちゃうと刺激がなくなるので。
確かに。
ずっとひとつの色でやるのも正解だと思うんだけど、僕は刺激が欲しいし、いろいろ勉強にもなるし。前作のミニアルバムでは、しのっぴー(渡邊忍)とか、ひなっち(日向秀和)とかに、そういうものを引き出してもらった。ギターサウンドもベースサウンドも、あそこですごく勉強になったんですよ。今回もベーシックトラックは僕とTDC(福田忠章)のふたりで作りましたけど、新しい試みとしてゲストメンバーにいい刺激をもらいましたね。アルバムの中でフェスをやってるみたいな感じ。お祭りアルバムです。
例えば、細美武士さんからはどんな刺激を?
まず、人のレコーディングってあんまり見たことないんですよ。それを見るのが楽しかったのと、歌も上手いし、美声でピッチもいいし、ほぼ一発OKでしたね。本人が納得するまで何回かやってもらったけど、一発目から“来た来た!”と思った。
TOSHI-LOWさんは前作にも参加してましたね。
1stアルバムから参加してもらってますね。今回新たな試みとして歌詞を書いてもらったんですけど、これもまたいい刺激でしたね。
「青い鳥」ですね。非常にストレートで素直な、愛にあふれた日本語のメッセージで。
TOSHI-LOWがメールでひと言、“カッコ付けずに歌ってね”って。そういう泥臭い感じが欲しかったんじゃないですかね。非常にストレートでシンプルで、今までの僕には書けなかった歌詞だし、それを引き出してくれたと思います。
MAN WITH A MISSIONのトーキョータナカさんも。
彼は昔からの付き合いで。この曲に彼の太い声を絡めてみたいと思ってたんで、案の定、上手い具合にいきました。何の打ち合わせもなく会いに行って、オオカミの顔見て(笑)、“今度、歌入れてくんない?”って言ったら、応えてくれました。
もうひとりの田中さん、勝手にしやがれの田中和さんは?
カズは20歳ぐらいからの友達で、何十年振りかにフェスで会って、何かできたらいいねとか言ってたんです。今回、この曲調にトランペットが合うんじゃないかなと思ってお願いしたんだけど、すごすぎてびっくりしちゃった。あまりにも良すぎて、ソロを付け加えたんですよ。このアルバムがガツンとスマートにロックに聴こえるのは、インストがこの1曲しか入ってないからじゃないですかね。いつもは2、3曲入れちゃったりするから。その代わりこの1曲がいい味付けになってるのかなと。
リリックに関しては怒りや不満じゃなくて、やさしさや愛や、そういうテーマが大半を占めているのがすごく印象的で。今回言いたかったことは?
不満も怒りも結局は自分次第なのかなと。怒ったとしても自分に対して怒ってると思うし、全部が歌詞に跳ね返ってきてるものだと思うんで。確かに前々作ぐらいまでは怒ってる的な歌詞が多かった気がするけど、何かもう、笑うしかないのかなという感じもひとつあって。不安も不満も考え次第…例えばジェラシーも超えると攻撃になっちゃうけど、“あいつ、頑張ってるな”と思えば自分も頑張れる。紙一重のところは自分の感じ方次第だと思う。
そうですよね。
もちろんみなさん、不満はいっぱいあると思いますよ。僕もそうだし、学生も社会人も外の世界に出たら、人間関係にしろ、ノンストレスなわけがない。自分が音楽を好きでやり始めた頃は、こんなことは考えてなかったんですけど、やり続けているといろんな人の言葉を聞くんですよ。“通勤の時にイッチャンの音楽を聴いて気合い入れてます”とか、“辛い時に聴いて救われました”とか。こんな俺でも1ミリでも人の役に立てるんだなと思うし、だからここまで音楽を続けられたんだなと思うし。
今回は特にそういうアルバムだと思います。入りやすいし。
そうそう。間口が広いと思います。ベテランならではのトリッキーとかじゃなくて、もうそろそろ子供返りですよ。音の子供返り(笑)。
では最後に、“Stories Noticed”というタイトルに込めた想いというのは?
気付かされたストーリー。気付けるということは、幸せだなと。“俺が! 俺が!”だけじゃダメなんだなと。もちろん自信に満ちあふれるのはすごくいいことだけど、やっぱりひとりで生きてるわけじゃないですからね…って、カッコ付けたこと言っちゃったな(笑)。柄でもない言葉が出ちゃったけど、でも最近は本当にそう思うんですよね。