恋を生きがいにする女性の強さ YUI『
Good-bye days』

『タイヨウのうた』は2006年に公開された映画である。主演はYUI、塚本高史の二人。色素性乾皮症を患い夜しか活動できないミュージシャンの雨音薫と彼女に出会った藤代孝治の、純愛と死を描くストーリーになっている。

そんなYUIの『Good-bye days』は、YUI演じる雨音薫から塚本高史演じる藤代孝治に向けて書かれた曲。純愛と死をテーマにしてるだけあり、歌詞にもこれらを匂わせるような表現がされている。





この曲の冒頭は「だから」で始まっている。普通に考えたら後ろの「ポケットのこの曲を君に聴かせたい」という文にかかっているようにみえる。しかし、この「だから」には死が迫っているから今すぐ会いに行かないと時間がないという、この映画主題歌の文脈ならではの思いが込められている。作った曲を彼に早く聴かせたいという恋愛の要素も含めつつも、死が背景にあることを含んでいる。




悲しい想いとは主人公にとっては死という現実だろう。つまり、彼との永遠の別れを意味する。ここは映画を観ると歌詞に込められた意味が分かる。「でもやってくるでしょ?」という問いかけは、色素性乾皮症を持って生まれてきた主人公から神様への「私はこういう運命なんだよね?」という問いかけ。自分の運命を受け入れたくはないが、受け入れなければならないという諦めのようなもの。

しかし、「そのとき笑顔でYeah hello!! my friendなんてさ言えたならいいのに…」というフレーズから分かるように、後悔のようなものも読み取ることが出来る。




この引用部分は、死と隣り合わせで生きている雨音薫が藤代孝治に恋をし、彼女が恋を生きがいにしていくという映画の文脈を考えると、この「Good-bye days」という表現は、藤代孝治と過ごした“日々”にさようならという意味にもとれるし、彼に出会う前の生活にさようならという意味を表していることが分かる。かっこよくない優しさという表現は、藤代孝治の性格を表しているが「かっこよくない」と言うあたりがYUIらしい。

この楽曲、実はアーティスト名がYUIではなく、YUI for 雨音薫という名義になっている。
彼女は映画の演技だけでなく、この楽曲の制作においても、雨音薫の魂を自身の内に確かに宿らせていた。

死に怯えながらも周りの人の支えや音楽を通して死に向き合っていく。雨音薫は藤代孝治に出会うことで死に立ち向かうことができたのだ。一度音楽から離れた彼女をもう一度向き合わせたのも彼の存在があったからだった。それができたのも生きがいを見出したからなのだ。

雨音薫を演じたYUI自身も、音楽だけでなく恋にも生きがいを見出し、2015年にはめでたく結婚した。FLOWER FLOWERとして初のシングルがリリースされることも決定している、彼女の音楽に期待したい。

TEXT:川崎龍也

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