“ただの総集編ではない”「
ゼーガペインADP」　がむしゃらだっ
た10年前に戻った浅沼晋太郎

　テレビアニメ「ゼーガペイン」は、浅沼にとっては声優としてのデビューを果たした記念すべき作品だ。しかし実は、当時すでに30代になっていた浅沼が、芝居から身を引いて実家に帰ろうと考えていた折りのオーディション合格だったという。「あのころは『ゼーガペイン』を心のよりどころとしていました。『この仕事があるから東京に残らなきゃいけない』って思っていましたね。『ゼーガペイン』は、僕の手を引いてグッと引っ張り上げて、なにかしらの覚悟を与えてくれた作品でした」

　そんな浅沼が、10年ぶりにソゴル・キョウを演じるに当たって心がけたのは、まさしく、必死だった当時の心境に立ち返ることだった。かつてテレビシリーズに触れたファンが違和感を抱かないよう、これまでに培ってきたテクニックを、あえて使わないことを意識した。「当時は声優としての声の出し方を何ひとつ知らなかったんです。絶叫するセリフでは声が裏返ってしまうこともあって。でも、それが何事にも本気でぶつかるキョウらしさなんだと、当時、下田正美監督からも言われました。今では、力の入れ加減も無意識に調節できるようになりましたが、それを一度忘れて『喉を潰してもいい』と、がむしゃらだった10年前に戻ったつもりで演じています」と語る浅沼は、スムーズに収録するためのテクニックを残しつつ「荒削り感」を表現するのに苦心したという。「昔の自分を消さずに、現在の自分と共存する。テレビシリーズ第25話のキョウと同じ境遇でした」

(C)サンライズ・プロジェクトゼーガADP　そんな10年ぶりの「ゼーガペイン」。収録現場の様子はどうだったのだろうか？　浅沼は「綾ちゃん（ミサキ・シズノ役の川澄綾子）は、いつまでも変わらず僕の先輩。香菜ちゃん（カミナギ・リョーコ役の花澤香菜）は当時17歳で、この10年で周囲を取り巻く環境が激変したはず。にも関わらず、誰もが納得するカミナギを演じてくれました。当時からとてもお忙しく、今ではなかなか会えなくなってしまった立木文彦さん（タルボ役）とも会えました」と感慨深げだ。また、ハヤセ役の神谷浩史との再会には、思わず涙がこぼれそうになってしまったのだとか。「神谷さんは、テレビシリーズの収録中に大きな事故に見舞われてしまったので、またこうして『ゼーガペイン』の座組で再会できたことが、とにかく嬉しかったんです」

　今作「ADP」では、コクハラ・ナツミ、ルーパといった新キャラクターが多数登場するほか、ソゴル・ミサキ、カノウ・トオルといった、テレビシリーズではわずかに（あるいは名前のみ）しか登場しなかったキャラクターの活躍も見どころだ。浅沼は「ミサキ役の遠藤綾さんに『（テレビシリーズ最終話にミサキが登場して以来）すごい人気なんですからね！』って説明したら『一瞬しか出てなかったのに!?』ってビックリされました」と笑い、「ずっとループしている『ゼーガペイン』の世界に新しいデータが増えたような気がして、とても嬉しいです」と新キャラや新キャストの参加を歓迎していた。

(C)サンライズ・プロジェクトゼーガADP　そんな「ADP」の浅沼イチオシの見どころを尋ねると、「新キャラだけでなく、実は新メカも登場します」と新事実が明かされ、さらに「ミナトがとてもカワイイです。演じている井上麻里奈さんも『こんな子だったっけ!?』と驚くくらい。意外な一面が発見できると思います」とニッコリ。

　「ADP」では、テレビシリーズからのファンであればこそ驚く、新たなストーリーが描かれるという。「正直な話『ただの総集編ではない』『もはや新作』という言葉は、宣伝上の売り文句だと思っていました。僕としては、たとえ総集編でも、新しい展開があることを嬉しく思っていたんです。ところが、フタを開けてみれば『総集編』という言葉はどこへ消えたのか、まさに新作としか言いようのないものでした……！　テレビシリーズからの流用カットがあるとはいえ、このキャッチコピーでは、謙虚すぎると思います（笑）」