〝武藤彩未最後の勇姿〟残された時間
を噛み締めたLIVE

 キラキラしたオーナメントで装飾されたステージに、サンタクロースをイメージした赤いワンピースと帽子を着用した武藤が現れる。1曲目はサポートバンドメンバーであるnishi-ken(Key)、山本陽介(G)、野田耕平(B)、髭白健(Dr)の演奏で『ミラクリエイション』から本編スタート。POPな楽曲に合わせて無邪気に踊る。『Doki Doki』では、クリスマスツリーを彷彿とさせる緑のスポットライトを浴びながら、10代のエネルギッシュなパワーを会場いっぱいに振りまいていた。

 続く『Daydreamin’』では空気が一変。会場は暗転し、レーザービームが放たれる。テンポが速く難易度が高い楽曲だが、一語一語、正確に歌詞を届けていく。歌唱力の高さもさることながら、歌詞の聞き取りやすさにも驚くばかりだ。武藤が作り上げる歌の世界に、我々も惹きつけられてしまう。

 「今日はすっごく緊張していました。悲しくないけど、泣いちゃうかもしれない。でもやっぱり、明るく元気に終わっていきたい! 今日はいつもより長いです。オリジナル楽曲、全部詰め込んできました! 盛り上がる準備は出来てますか?」と力強く笑顔で開幕宣言すると、『SEVENTEEN』、そしてミラーボールの煌めく中で代表曲『宙』を歌い切り、会場を熱狂させる。『時間というWonderland』からは幾何学模様のワンピースに衣装チェンジし、「後ろに大きなリボンがついてるんです」と、ステージをくるっと一周してみせた。 「MCが足りなくて、話したいことが沢山あるんです」と語り出すと、観客も黙ってステージの彼女を見守る。その様子に武藤は「まだしんみりするところじゃないよ!」と笑い、26日に誕生日を迎えるバンドマスター、nishi-kenへバースデーソングを捧げる。ファンに向けては「私にとっては、今日がクリスマスですから。みなさんに歌のプレゼントです!」と、敬愛する松田聖子の『Pearl-White Eve』を熱唱。アコースティックギターの優しいメロディーにのせて、伸びやかな歌声を披露した。カバーだが完璧に仕上げられているところに、幼少期から松田聖子の楽曲を口ずさんできた様子が伺えた。更にここから『桜ロマンス』『とうめいしょうじょ』とスロウテンポな曲が続く。

 それにしても、武藤彩未という存在には驚かされるばかりだ。たった一人でワンマンライブを繋ぐのは、ただならぬ集中力が必要である。しかも小柄な彼女の場合、ステージ中央にはお立ち台が用意されている。基本的にはその上でパフォーマンスをするため、可動範囲は当然制限されている。大きな会場でも、彼女は過度に観客に歩み寄るようなことをしない。観客の心を、歌の力で自分の方にそっと手繰り寄せていくのだ。

 「しっとりした曲を続けて聴いていただきました。ここからは、盛り上がる曲で行きます! 後悔が無いように、気持ちを切り替えて!」と観客を煽ると、定番の”A.Y.Mコール”で会場を温める。「今日、赤坂BLITZは夏だーッ!」という掛け声から、『RUN RUN RUN』へ。今まで大人しく武藤の歌に聴き入っていたのが不思議なくらいに、ファンも拳を突き上げていた。マリオネットのような振り付けが特徴的な『A.Y.M』では、妖艶な雰囲気を纏いながら憂いがある表情をみせる。会場の声援に後押しされるように、残された時間を噛み締めていた。ライブレポート後編:
achico 寝ても覚めてもアイドルポップ!なOL / フリーライター。東京生まれH!P POP育ち。日々、アイドルに踊らされています。

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