May’n

May’n

【May’n インタビュー】
たくさんのMay’nを
ジャンルレスに見せていくのがテーマ

誰かの答えが出ない問いに対して、
次元を超えて答えられる曲にしたかった

再び新曲が登場する終盤までは既発曲が並んでいるわけですけど、改めて聴き返してみて、どんなことを感じました?

全体を通して、すごく歌詞を書いたなとは思いました。自分で歌詞を書いたことで当時のことをより思い出せたから、音楽のアルバムでありつつ、まるで自分のフォトアルバムを眺めるような気持ちにもなりましたね。例えば、タイアップで初めて作詞作曲をした「オレンジ」(2021年11月発表のシングル)では、アニメーションとのリンクを探すのにすごく苦労したとか、89秒で曲を作ることの難しさを実感したとか。そんな自分にとってある意味“始まり”の曲と、伝えたかった想いを込めることのできたそれ以降の数々のタイアップ曲を一枚のアルバムに収録できて、とても嬉しいです。このアルバムを通して自分の“作る=クリエイティブ”という面での振り返りもできましたし、これからも自分がその時々に思った言葉をアーティストとして、もしくは誰かのために残していきたいと改めて心に決めました。

10曲目の「ハッピーエンド、」なんて、まさしく“誰かのために”書かれた曲ですよね。

草野華余子さんが作曲なのですが、今作にも収録されている「蒼の鼓動」(2022年4月発表の配信シングル)で初めてご一緒させてもらった際に“これはMay’n以外に渡すつもりはないんで、使わなくてもいいから受け取って!”と渡されたバラード曲があったんです。それがすごく素敵な曲で、いつかかたちにしたいと漠然と考えていた中、アルバムの新曲制作が始まって。まずは『Prismverse』を象徴する始まりの曲と、ライヴで盛り上がりそうな曲は自分で作曲すると考えた時、もう1曲はバラードがいいと思い、“じゃあ、前に草野さんにいただいた曲をかたちにしよう!”と正式にオファーさせていただいたんです。それで、改めて草野さんが仕上げてくださった曲を聴いてみたら、ある意味不思議な曲で。“美しさも悲しさもあって、次元を超えるような空気感のあるメロディーだな”という第一印象を受けた時に、今の私の想いを歌うよりも、誰かの答えが出ない問いに対して次元を超えて答えてあげられるような曲にしたいと思いました。そんな中、私の親友が大切な人とのお別れを経験して、“この想いが届いているんだろうか?”って悩んでいたんです。私は“それ、絶対に届いてるよ!”って言っていたんですが、そういったメッセージを音楽でも伝えたかったんです。

先日、ご自身の番組で“1,000人に届く曲じゃなくても、たったひとりに届けば、“× 1,000”になるんじゃないかと考えて作った曲がある”というようなお話をされていましたが、もしやこの曲のことでしょうか?

あっ、そうです。広い会場でライヴをさせてもらうと、どうしても“ここにいる大勢の人に届けたい!”という気持ちになるので、特に初期はたくさんの人に届く普遍的な歌を書こうって考えがちだったんですね。でも、あまりそれを考えすぎると薄くなってしまう気がして。逆に、自分がライヴを見ている側でも“自分に届いた!”っていう感覚があると、やっぱり感動するんです。だから、ここ数年は目の前にいるひとりひとりに“あなたのために歌うからね”っていう気持ちで毎回パフォーマンスしています。この曲にしても家族、友人、いろんな人との別れを経験したことのある人は少なくないでしょうし、そんな人の隣にいてあげられる歌であったら嬉しいなって。そして、今伝わらなかったとしても、いつか自分の"メインテーマ"として聴いてもらえたらうれしいです。そうやって音楽がずっと生き続けることができたらすごくありがたいし、素敵だと思うんです。

深い想いが籠っていることは、エモーショナルなヴォーカルからも伝わってきます。ちなみにタイトルが“ハッピーエンド、”と、最後に読点がついているのはなぜなんでしょう?

“ハッピーエンドの続きはちゃんとあるよ”っていう意味です。私、終わりがあることが何より一番寂しくて、好きなドラマの最終回がハッピーエンドだとしても“いやいや、来週も観せてよ!”と思っちゃうんです(笑)。人生でも何でも終わることが一番嫌なので、ハッピーエンドの続きをもっと見せてほしい…という想いでつけました。

なるほど。そして、最後の「カラフルスコープ」はとても苦労したとおっしゃっていましたが。

当初「To the Prismverse」は導入の歌にする予定だったので、そこまで自分の歌手としてのプライドとか信念を書くつもりはなかったんです。それは「カラフルスコープ」のほうで表現しようと考えていたので、同じようなテーマで歌詞を書かなければいけなくなったのが、すごく難しかったんです。“じゃあ、テーマを変えようかな?”とも考えたんですけど、この曲は自分で作詞作曲すると決めていたので、やっぱり『Prismverse』を総括する内容だったり、“ここから来年の20周年に向けて頑張っていきます!”と宣言する曲にしたかったんです。その結果、もう締め切り超えちゃうんじゃないかってくらいギリギリの制作になって、初めて泣きそうになりました(笑)。

テーマが似通っているせいか“カラフルスコープ”というタイトル自体、「Prismverse」と非常に近しいところがありますよね。

この曲を作るにあたり、まずは自分の音楽人生を振り返ってみようと絵を描いたんです。とりあえずペンで丸を描いて、今まで歌ってきた曲からイメージする色で塗りつぶしていったら、すごくカラフルになったんですよ! 同じ頃、ツアーのパンフレット撮影を巨大万華鏡の中でしたんですが、そこで光がどんどん合わさって景色が変化していくのを見て“これってPrismverseだなぁ”と感じた瞬間、“あっ! 私はカラフルなカレイドスコープかもしれない!?”と閃いたんです。そこからカメラマンさんがセッティングしている間に、その万華鏡の中で歌詞の下書きをバーッと書いて仕上げたので、たぶんあの撮影がなかったら書けていないですね。

最初は神秘的な雰囲気で始まってポップに広がるという展開といい、とてもキャッチーで楽しい曲だなとも感じました。

嬉しいです。私が作曲をするとどうしてもマイナー調になりがちなんです。でも今回はもっと明るい曲にしたかったので、キャッチ―なメロディーが印象的な加藤裕介さんに共作をお願いして、たくさん音楽的なアドバイスをいただきました。サビを作る時も“このコードから始めたらメジャーになるよ”ってアドバイスをいただいたのに、なぜかマイナーなメロを作って“こっちじゃないよ!”と引き戻してもらったり(笑)。おかげでマイナーが香っているメジャー調の曲になったというか。完璧なポジティブではなく、ときどき胸がキュッとするようなエッセンスも入って、“未来にどんなことがあるか分からないけれど、自分を信じて頑張っていく”というポジティブなメッセージを最終的には込められたと思います。

ある意味「To the Prismverse」と対になっているような印象だったので、先に“カラフルスコープ”というタイトルを決めて曲を作ったのかと思いきや…これはもう運命ですね。

今となっては“もう、これしかない!”って思っていますからね。変わらない強い想いがありながら、やっぱり変化していきたいというテーマも自分の中にはあって、“変わらない私のまま変わり続けていきたい”というのが、ここ数年、一番強く持っている想いなんです。それってビジュアルで表せば、万華鏡=カレイドスコープだし、自分の持っているカラフルな音楽と合わせると、カラフルスコープになるんですよね。なので、サビのあと、さらに違うメロディーでサビが来る展開も気に入ってますし、そこでもカレイドスコープを表せたんじゃないかな?

さらに広がって、さらに色が変わるようなイメージですよね。

そうですね。“景色を変えていこう!”っていう。

OKMusic編集部

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